「若者の車離れ」の中で残存者利益を狙う【9882】イエローハット株

株式市場がコロナショックから立ち直りつつある中、カー用品ショップ大手のイエローハットの株価は割安に評価されています。イエローハットの業界では若者が自動車を持たなくなってきているといわれ、衰退するとの声があります。しかし実態を調べてみると自動車の需要は十分にあり、自動車整備業界では人材不足に悩まされているのです。そのような状況でイエローハットは市場の変化を的確に捉えた戦略で業績を伸ばし続けています。

 

この記事ではイエローハットに株式投資をする価値があることを、業界の動向、同社の経営戦略と業績、そして株価の割安性の観点から解説します。

イエローハットはカー用品販売とメンテナンスで業界2

株式会社イエローハットは東京都千代田区に本社がある自動車用品販売と卸売を行う企業です。昭和37年に設立以降店舗を増やし続け現在は国内738店舗、海外に3店舗を展開しています。地域のカーライフをサポートする企業として、消耗品(オイル・タイヤ・バッテリーなど)の交換や車検サービスを中心に営業しています。

 

自動車整備市場は約5.5兆円の規模がある

 次に自動車整備業界の展望について解説します。イエローハットが属している自動車整備業界は自動車が普及している日本では一定の市場があります。国土交通省の調査によると自動車整備業界は平成16年から平成26年にかけて5兆円から6兆円規模の市場があったとしています。

 

自動車保有台数は今でも伸びている

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【出典】自動車検査登録情報協会公式ホームページより引用

https://www.airia.or.jp/publish/file/r5c6pv000000ogxg-att/(1).pdf

 

若者の車離れが叫ばれていますが、国内の自動車数は増えています。自動車検査登録情報協会によると、2019年の自動車保有台数は約8,200万台です。保有自動車数の増加傾向は過去数十年間続いており、今後は人口減少の影響を受けるものの急激な減少は無いと見られます。

 

自動車使用年数は長くなっている

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【出典】自動車検査登録情報協会公式ホームページより引用

https://www.airia.or.jp/publish/file/r5c6pv000000ogyc-att/(3).pdf

 

一方で自動車を使用し続ける期間は長くなっています。自動車検査登録情報協会によると平成31年の乗用車の平均使用年数は13.26年です。これは平成21年と比較して1.58年伸びています。

 

これは自動車の性能が向上したことが原因として考えられます。そして車を長期間使用することは消耗品であるオイル・タイヤそして、法定点検に対する需要を後押します。

 

三大都市圏以外は自動車がメインの移動手段

 

●交通手段として自動車を使用する分担率(平成22年)

三大都市圏

21.4

地方中枢都市圏

(札幌・仙台・広島・福岡・北九州)

44.9

地方中核都市圏

(人口30万~40万人)

62.3

その他の地方都市

71.2

【出典】国土交通省 平成22年全国都市交通特性調査集計

https://www.mlit.go.jp/common/001095345.pdf

 

都会で自動車を保有することは駐車場代など維持費が高くなります。さらに都会では鉄道網が発達しているので自動車を保有しない人が多くいるのです。国土交通省が平成22年に調査した結果では三大都市圏で自動車が交通手段としての役割を果たしている比率は21.4%でした。

 

ところがそれ以外の地域では交通手段として自動車が担っている比率は高くなります。人口30万~40万程度の地方中核都市やさらに人口の少ない地域では自動車を交通手段とする比率は60%を超えているのです。例えば地方都市に住む家族では大人1人につき1台の自動車を保有していることも多く見られます。

 

自動車整備企業の8割が中小・零細

次に自動車整備業界の内情について解説します。国内で自動車整備業を営むには国道交通省から認証工場もしくは指定工場として認可を受ける必要があります。国土交通省による平成25年の調査では国内の事業者数は7.4万、そして認証工場は約9.2万あるとされています。さらに事業者の規模を従業員の人数で分類すると約77%の事業者は従業員10人以下で運営されているのです。

【参考】https://www.mlit.go.jp/common/001095345.pdf

 

整備士学校への入学者は半減している

近年の自動車整備業界では人材供給不足が問題になっています。国土交通省の調査では自動車整備士の高齢化と志望する若者の減少が顕著になっています。自動車整備要員の平均年齢は平成10年から平成26年の間に5歳以上高くなったのに対して、平成15年から平成26年にかけて自動車整備士養成校への入学者数は半減しているのです。

 

また業界全体として十分な人員を確保できない企業が過半数を占めています。実際ある自動車ディーラーに働く整備士も休日の確保に苦労するくらい人手不足だと言っています。

【参考】https://www.mlit.go.jp/common/001095345.pdf

 

高度化する自動車技術への対応力とカー用品の内製化

一方で自動車整備業界は活躍できる市場が狭められています。近年の自動車はハイブリッドカーを始め電子制御されているものが多く、整備には専用の機器が必要です。そのため整備業界では機器の導入と整備士の知識向上に投資する必要があるのです。

 

また自動車整備業界の利益を支えていた各種カー用品は自動車メーカーによる純正品が普及したため、カーショップでの売上が低迷しています。またスマートフォンなど通信機器の発達も市場を狭めているのです。

 

例えば、かつてはカー用品の定番だったドリンクホルダーですが今では自動車に標準装備されています。またカーナビに関してもスマートフォンで代用するドライバーが多くなっているのです。したがって自動車整備業界では車検とタイヤ・オイルといった消耗品を軸にして、時代に合わせた商品戦略を立てていく必要があるのです。

 

後継者不足は廃業や事業の売却が進む

このような現状に自動車整備業界では事業の継続をあきらめるケースが増えています。後継者が不足した状態を改善するには自動車整備士養成校への入学者数が増える必要があります。また中小の整備事業者では商品を格安に仕入れるだけの規模がありません。したがって自動車整備業界の廃業や事業譲渡は今後も続くものと推測できます。

 

イエローハットは地方のカー用品店をМ&Aで子会社化

自動車整備市場に持続性がある中で、人材不足になっている現状に対してイエローハットはМ&Aを用いて事業を拡大する戦略をとりました。

 

●イエローハットの主な企業買収事例

年度(平成) 買収先企業名 現社名

平成22

株式会社イッシン

福岡イエローハット

株式会社ジョイフル

 

平成23

株式会社モンテカルロ

広島イエローハット

平成24

株式会社ドライバースタンド

2りんかんイエローハット

平成25

株式会社アップル

栃木イエローハット

平成26

株式会社ウィル

SOX・イエローハット

平成28

株式会社ベストウィング

山形イエローハット

平成30

株式会社ホップス

新岐阜イエローハット

【出典】イエローハット公式ホームページより引用

http://www.yellowhat.jp/corp/about/history.html

 

このようにイエローハットでは地方で活躍していたカーショップを次々と買収しました。その結果イエローハットは急速に全国展開を進めることができたのです。

 

イエローハットは商品を仕入れることに専念している 

積極的な買収を進めたところで、業績が伴わなければいけません。イエローハットでは買収先の企業に対して従来の経営陣やスタッフで事業を継続させる方針をとっています。そして各買収先の企業にはイエローハットが一括仕入した商品を販売してもらうのです。

 

そのため買収先の自動車整備会社はこれまで通り地域顧客との関係を継続しながら、共同仕入れによって消耗品や流行の商品を安い価格で販売できるようになったのです。こうして買収先の企業から顧客が離れることを防ぎ、イエローハット全体として業績を伸ばすことができたのです。

 

シェアトップの【9832】オートバックスセブンよりも良好な業績推移

ところで自動車整備業界ではイエローハットの上を行く「オートバックスセブン」という会社があります。オートバックスセブンとイエローハットでは業績にどの程度違いがあるのでしょうか。

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【出典】オートバックスセブン・イエローハット各社公式ホームページより引用

https://www.autobacs.co.jp/ja/ir/finance/pl.html

http://www.graphbutler.jp/graph/E02735/jp/

 

実はこの10年間オートバックスセブンでは売上が伸び悩んでいます。一方でイエローハットは買収戦略が功を奏し増収を続けているのです。

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【出典】オートバックスセブン・イエローハット各社公式ホームページより引用

https://www.autobacs.co.jp/ja/ir/finance/pl.html

http://www.graphbutler.jp/graph/E02735/jp/

 

利益面でも両者の違いは顕著です。2014年までは両社ともに利益成長が見られました。ところがそれ以降、オートバックスセブンは利益が低迷する中でイエローハットは利益を保持しているのです。

 

株式市場では成長しないと思われている

ではイエローハットは株式市場でどのような評価を受けているのでしょうか。イエローハットの2020526日の終値は1573円でした。これはPER9.8倍そしてPBRでは0.86倍となります。株式市場はイエローハットの成長性は期待されていないと分析できます。しかし今後もイエローハットは着実な成長ができると信じられる方は、今なら割安な株価で投資することができるのです。

 

アフターコロナではイエローハットの今後の成長に期待できる

 

今回は成熟した自動車整備業界で成長し続けているイエローハットについて解説をしました。記事のポイントは以下の通りです。

 

l自動車整備業界は今後も需要が堅調

l自動車整備業界では人材不足

lカー用品は時代に合わせた機動力のある商品戦略が必要

lイエローハットは買収戦略で人材不足と商品戦略を解決した

l最大手のオートバックスセブンを凌ぐ利益をあげている

l今の株価は成長性を加味されていない

 

このようにイエローハットは業界の残存者利益を得るために着々と戦略を実行し、成果を上げています。さらに今後は新型コロナウィルスの予防に向けて、郊外や地方への移住や自動車通勤が増えて自動車整備への需要が高まることが期待できます。イエローハットのさらなる成長に期待したいものです。

 

*本稿は協力執筆者による記事です。

*投資は自己責任でお願いいたします。

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