コロナショックでプロの投資家が仕込んだ優良銘柄を調査

マーケットが急落する局面は、もちろん多くの投資家にとってピンチです。しかしその一方で、安く株を買うことのできるチャンスでもあります。このタイミングで投資のプロである機関投資家たちが、どのような銘柄を買っていたのでしょうか。機関投資家の運用レポートを確認することで、プロたちが今回の下落局面で買い向かった銘柄を調べてみました。

 

2020年は日本にとって国内で開催されるオリンピックイヤーであり、また昨年まで懸念されていた米中貿易摩擦の問題も解決には至らないものの落ち着きをみせていました。株式のテーマでは5Gをはじめ、本格化するIOTやAIなど期待の大きい一年となるはずでした。しかし、1月から武漢を中心として新型コロナウイルス感染症COVID-19が発生し、世界中が大混乱に陥りました。この影響を受け、1月20日には24083円だった日経平均株価は、3月18日には16552円を付けています。

 

この大暴落により個人投資家たちの多くは巨額の損失を出し、またマーケットからの退場を余儀なくされた方もいらっしゃったようです。このタイミングで投資のプロである機関投資家たちが、どのような銘柄を買っていたのでしょうか。

 

機関投資家には、アクティブファンドとパッシブファンドがあります。アクティブファンドは、投資のプロであるファンドマネージャーが銘柄を選定しています。それに対してパッシブファンドは、例えば日経平均株価やTOPIXのような指数に連動するように売買を行います。したがって、パッシブファンドには、暴落局面だからといって銘柄を選別する余値は残されていません。そのためパッシブファンドの動きを考察しても参考にはなりませんので、アクティブファンドの動向を探ることにしました。

 

調査対象は日本国内の個別銘柄をメインに投資しているファンドとし、3月の組入銘柄が読み取れるよう、2月末と3月末時点でのレポートがインターネット上に公表されている投資信託としています。これを比較することで、彼らが3月に買い向かった銘柄を調べてみました。

 

レオス・キャピタルワークス(以下、レオスと表記します)が運用するひふみ投信は、人気の投資信託です。また積極的にFacebookやTwitterなどメジャーなSNSを用いて情報をオープンにしていますので、毎月のひふみ投信の保有銘柄を確認することは容易にできます。

 

2月末の時点での運用状況は、3月上旬に公表される月次運用レポートで確認することができ、3月末の時点での運用状況は、4月上旬に公表された月次運用レポートで確認できます。これらを比較すると、レオスは2月末の時点で、現金比率を31.2%にまで高めていました。2月25日のレオスのHP「最高投資責任者 藤野英人より」の冒頭には「現金の比率を過去の運用の中でも最大規模に高めています」とのメッセージがあります。この現金比率は3月末の時点で19.3%まで引き下げられています。現金比率が減ったということは、つまり3月中に株などに投資したということです。ひふみ投信の純資産総額は6000億円強なので、約660億円を投資に振り向けたという計算になります。

 

ひふみ投信の3月末時点の組入れ比率上位10銘柄を確認すると、2月に組み入れられていたZoom Video Communications(クラウドベースのビデオ会議システム提供)の姿が消えています。New Oriental EDR(中国全土で英語教室やオンライン教室を展開)も消えています。この海外の2銘柄が上位から姿を消した一方で、KDDIとNTT、テルモ、シスメックスという日本の4銘柄が新しく上位に入ってきました。KDDIとNTTのような情報通信業は、人々のライフスタイルが家にこもってインターネットを利用する機会が増えるとの見方でしょう。そして感染拡大により必要となる人工心肺や体温計を生産するテルモ、検査キットで注目を集めたシスメックスのような医療機器関連の会社に目を付けたといえます。藤野氏は「新型コロナウイルス感染症の影響はしばらく続く」とコメントしており、コロナと共存する「with コロナ時代」を見据えた銘柄を選択していると言えます。

 

アセットマネジメントOneのMHAM日本成長株オープンの、2月末の時点での運用状況と3月末の時点での運用状況を比較します。3月末には新たにイー・ギャランティー、GMOペイメントゲートウェイ、エムスリー、日東紡績が新しく上位10銘柄のなかに組み込まれています。イー・ギャランティー は売上債権関連のサービスを手掛けており、リーマンショック後の不景気でも株価が上昇した銘柄です。GMOペイメントゲートウェイは電子商取引決済処理サービスの大手で、ネット通販・サービスの増加を見越した銘柄選定と言えます。エムスリーは医療従事者向け専門サイトを運営し、オンライン診療を見越した銘柄選定と言えます。日東紡績はグラスファイバーの大手ですが、5Gの進捗により大容量高速通信の基板用スペシャルグラスの需要が期待されています。MHAM日本成長株オープンでも、今年のテーマに沿った銘柄を選んでいると考えられます。

 

明治安田アセットマネジメントの新成長株ファンド(グローイング・カバーズ)の、2月末時点での運用状況と3月末の時点での運用状況を比較します。3月末には新たにエランとメディアドゥが新しく上位10銘柄のなかに登場しています。 エランは病院や介護施設と提携し、入院・入所時のパジャマやタオルなどのセットを提供しています。メディアドゥは、電子書籍のディストリビューションの提供をしています。グローイング・カバーズもやはり、入院患者の増加やインターネットサービスといった「with コロナ時代」を見据えた銘柄を選択していると言えます。

 

日興アセットマネジメントの日興グローイング・ベンチャーファンドの、2月末の時点での運用状況と3月末時点での運用状況を比較します。3月末の月次運用レポートでは、KEEPER技研がトップにきています。アセンテックも8位入っています。アセンテックは仮想デスクトップのトータルソリューションベンダーです。株式市場ではテレワーク関連銘柄と位置づけられています。KEEPER技研は、自動車用コーティングや洗車の専門店の運営等を行っています。金融資産が下落する局面で、中古の高級車をピカピカにする需要を狙っているのかもしれません。あるいは「with コロナ時代」を見据えた銘柄とは考えにくいことから、将来性のある銘柄なのでこのタイミングでも買い向かったのかもしれません。

 

いずれのファンドでも、新型コロナウイルスの影響を意識した投資行動であったと言えます。その直接の影響として、医療機器関連の評価が上がるとの見方をしています。そして、在宅ワークなど自宅にこもる生活がしばらく続くことを前提とした生活の変化に着目していると言えます。その結果、インターネットサービスや通信量の増加を見越した銘柄を選択しているようです。また新型コロナウイルスの影響が実態経済にも大きな影響を及ぼし、本格的に不況が訪れるとの見解に基づいた投資行動を取っているファンドもありました。

 

(参考URL)

レオス・キャピタルワークス
運用レポート・運用報告書
https://www.rheos.jp/toushin/about/report/

アセットマネジメントOne ファンド情報 MHAM日本成長株オープン
http://www.am-one.co.jp/fund/summary/110002/

明治安田アセットマネジメント新成長株ファンド(グローイング・カバーズ)
https://www.myam.co.jp/fund/growing_c/

日興アセットマネジメントの日興グローイング・ベンチャーファンド
https://www.nikkoam.com/products/detail/952354/character/

 

*本稿は協力執筆者による記事です。