ソフトバンクグループの株はなぜ割安といえるのか?

ソフトバンクグループ(9984)の株価を評価する時に重要なことを解説していきます。

ソフトバンクグループ(9984)の業績、決算から株価を評価するときに二つのやり方があります。一つが売上、利益などが掲載されている決算短信など内容をもとに株価を評価する通常の方法です。これとは別の方法として、ソフトバンクグループがもっている株の価値で、株価を評価する株価評価の方法です。

(1)決算短信による株価評価。通常の事業会社に対する一般的な株価評価方法。損益計算書の売上や営業利益、純利益の推移や貸借対照表の資産、負債、純資産などをみて理論株価を推定する。主に使われる指標としてはPERやPBRなどがある。ここでは一株当たりの純資産で評価してみます。

(2)株主価値による株価評価。その会社が持つ株の時価総額から純利子負債を引いた金額を発行済み株式数で割った価で評価する方法。

通常の事業会社では(1〉の方法が用いられます。(2)はファンドなどの投資会社に用いられますが、一般的ではありません。

さて、ソフトバンクグループを事業会社と思うか投資会社と思うかが論点になりますが、とりあえずそれぞれの方法でソフトバンクグループの理論株価を計算してみましょう。

(1)一株当たりの自己資本は3290円

(2)一株当たりの株主価値11682円

((2)の計算についてはソフトバンクグループのホームページも参照https://group.softbank/corp/irinfo/stock/stock_value/

実際の株価(2020年3月)は5013円で、丁度(1)と(2)の間です。

一株当たりの自己資本と人か当たりの株主価値には3倍くらいの開きがありますが、どちらで考えるのが良い良いのでしょうか?そしてなぜこんな大きな開きがあるのでしょうか?

結論から言うと(2)です。そして、この大きな開きの原因は、会計制度にまつわるソフトバンクが保有するアリババ株の存在にあります。

以下ではこのことを解説していきます。

まずソフトバンクの決算を見るときに重要なのがまず全体像を把握するのとです。

ソフトバンクには以下の通りに直接投資と間接投資の二つの投資のやり方をしています。

(1)直接出資をしている会社

ソフトバンク(連結決算)
スプリント(連結決算)
アーム(連結決算)

アリババ(非連結)

(直接出資の含み益は決算の営業利益に反映されない。)

(2)間接出資をしている会社
ビジョンファンド
(この中にウィワーク、ウーバーが入っている。)

(間接出資の含み益は決算の営業利益に反映される。)

上記の通りに、ソフトバンクグループが直接投資をしている会社には携帯事業会社としてのソフトバンク(注、持株会社のソフトバンクグループとは異なる日本国内の携帯事業会社)、スプリント、アーム、アリババです。ソフトバンクはこれら直接投資している会社の株を持っていますが、その持株に含み益や含み損が出ても決算の営業利益には計上されません。

一方、ビジョンファンドを通じて投資しているウィワークやウーパーなどの株の含み益や含み損は決算の営業利益利益に計上されます。

さらにややこしいのが、直接投資している会社にも二種類あって、ソフトバンク、アリババ、アームなどの持ち株比率が50%を超えている連結子会社と、アリババのように持株比率が30%以下の非連結会社です。

携帯ソフトバンクやスプリント、アームのような連結会社であれば、決算内容が連結されて、営業利益や貸借対照表などが全て合算されます。なので、携帯ソフトバンクやスプリントやアームのような会社の株が上がろうが下がろうがソフトバンクの決算には反映されませんが、そのかわり営業利益などの損益計算書やバランスシートの数字は反映されるので問題ないわけです。

一方のビジョンファンドを通じたウィワークやウーパーのような投資は、もちろん連結決算ではないのでその投資した会社の業績が良かろうが悪かろうが、その株価だけが評価されてソフトバンクグループの営業利益に合算されます。

さて、ここまできて、読者の皆さんも奇妙なことにお気づきになったのではないでしょうか?そうソフトバンクグループの所有するアリババ株の存在です。

ソフトバンクグループの総資産が36兆円そして時価総額10兆円であるなか、アリババ株だけで約12兆円もっています。え、って感じですよね。仮にソフトバンクを買い占めて、アリババ株を売ったらそれだけで2兆円の利益になります(笑)

実はこのアリババ株が今の会計制度では、決算内容にしっかりと反映されていなくて混乱を招く原因になっています。

アリババ株はソフトバンクバンクグループの決算のどこに書かれているのでしょうか?

その答えは貸借対照表(バランスシート)の投資有価証券(持分法で会計処理されている投資)にアリババ株は分類されており、そこでは2兆7千億の簿価で評価されています。時価は、12兆円なので、10兆円近い大きな開きがあります(笑)

また、ソフトバンクグループはアリババ株の26%を保持してきますが、連結対象ではないのです。それゆえにアリババの営業利益などはソフトバンクグループの決算には反映されません。

要するに、ソフトバンクはアリババ株を12兆円という莫大な額もっているにもかかわらず、それはソフトバンクの営業利益などの損益計算書にも、簿価表示ということでバランスシートにも適切に評価されずにお化けのような存在になってしまってきます。

これが、この記事の最初の質問であるソフトバンクグループ株の(1)一株当たりの自己資本3290円での評価と、(2)一株当たりの株主価値11682円ので評価の大きな違いになったわけです。

ここまでお読みになった読者の方はもうおわかりと思いますが、ソフトバンクグループの株を評価するのには、アリババの時価を含んだ評価額である(2)一株当たりの株主価値11682円ので評価が適切と考えられます。

現在の株価が5013円ですので、非公開株の評価の問題もありますが、まあソフトバンクグループ株は割安と言えるんではないでしょうか。

※投資は自己責任でお願いします。