収益率のべき乗則〜〜株式・FXへの投資・トレードへの応用

株やFXのトレードや投資をしていて、統計的にどれくらい儲かるのか、または損するのか(汗)気になるところです。どれくらい儲かるのか(損するのか)とは言い換えると収益率のことですが、今回は株や為替の収益率の分布とそれの投資・トレードへの応用について解説したいと思います。

 

株価やFXの収益率とは

株価やFXの収益率とは、前日終値と比べた当日終値の上昇率(下落率)のことです。ニュースなどで今日は株が2パーセント上がったとか、1パーセント下がったとかいうやつが収益率ですね。もちろん、株価などが下落した場合は収益率はマイナスになります。

 

まあ、株の場合は通常、数パーセント以内で10パーセントも動くときはめったにありません。FXの場合は、もっと収益率の幅は小さくて、ドル円でも通常は1~2パーセント程度でしょう。

 

例えば、株の場合は営業日が250日ほどあります。よって一年で250日ほどの収益率の値があります。これをヒストグラムにしたものが収益率の分布表です。

 

それでは、この収益率分布はどのような分布に従っているでしょうか?以下で解説したいと思います。

 

正規分布とベキ乗分布

統計分布で最も有名でよく使われるのが正規分布です。正規分布とは、身長などや体重などが従う分布として知られていて、統計学では最もなじみの深い分布です。この正規分布の特徴は、外れ値、異常値というものが観測されないことです。なので、身長が通常の人の10倍の17メートルの人とかはこの世に存在しないわけですね。

 

一方、ビッグデータ科学は発達してきて、いわゆる「べき乗則」の重要性が認識されてきています。ベキ乗則とは、分布の形が指数関数でなくて、べき乗の形をしていることです。べき乗則、分布の端っこ(テール)が分厚いことが特徴です。ファットテールなどと呼ばれます。分布の端っこが分厚いために、正規分布では観測されない異常値が、ちょくちょく観測されることになります。

 

この2つの分布(正規分布、ベキ分布)を図示すると以下のようになります。

(http://jitha.me/power-law-working-hard-enough/より引用)

べき乗・正規分布1

上図で左の図がいわゆる正規分布で、右図がベキ乗分布を表します。左の図の正規分布は最頻値(山が一番高いところ)が存在して、そこから離れると頻度が急速にゼロに近づきます。そして異常値をとる確率はほぼゼロです。これは、身長や体重の分布など、多くの場面で観測されます。

 

一方、右の図のベキ分布は値が大きくなっても、頻度は小さくなりますが、いつまでも裾野が厚くなっています。この現象をFat tail(厚い裾野)と言います。これは、値が大きくなっても(異常値)であっても、その値をとる確率が小さいながらも存在していることを意味します。

 

では、実際の株や為替の市場では、収益率はどのような分布になるでしょうか?これを次で解説します。

 

市場では収益率はべき乗則に従う。

金融の様々な研究より、株や為替の収益率の分布は、正規分布ではなくて、べき乗則に従うことが知られています。

 

実際のデータを見てみましょう。下の図が実際の株価の収益率の分布を表したものです。(収益率はマイナスになることもあるので、その絶対値で分布を表示しています。)

(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0135600より引用。)

べき乗則・正規分布・対数スケール

上図で青色が実際の株価の収益率(絶対値)の分布です。比較のために、赤色は正規分布を表しています。上図をみてもわかる通り、実際の株価の収益率は正規分布から乖離しています。青色のカーブはべき乗分布と一致しており、株価やFXの収益率の実際の分布はべき乗分布に従っています。

 

ここで注意なのですが、2つ前の図と正規分布とべき乗分布の形が違うように見えますね。これは2つ前の図は縦軸、横軸共に普通の軸であるのに対して、直前の図は縦軸、横軸共に対数軸であるからです。なので2つ前の図と一つ前の図で描かれている正規分布とべき乗分布は同じものです。

 

べき乗分布のトレード・投資への応用

観測された収益率のべき乗分布の指数は3ぐらいになります。(べき乗分布の指数は上図の青色の線の傾きで推定できます。)

 

べき乗の指数が3だと、通常の変動幅の10倍変動するときが、およそ1000回に1回起こります。

 

これが、いわゆるマーケットの大暴騰や大暴落になるのです。一年の営業日が250日位ですので、4年に一回くらい普段の10倍程度変動することがあることがわかります。4年に一回くらいの市場に大暴騰と大暴落があると、覚えておくと良いと思います。

 

何年かに一回、大暴騰や大暴落がありますが、べき乗分布の統計学の観点からはありえない現象ではなくて、極端だけど必ず起こる現象であるということですね。

トレードにおいては、そのような大暴騰や大暴落がそんなに頻度はないけど着実に起こることを想定して戦略を練る必要がありますね。