NTTドコモ(9437)とソフトバンクグループ(9984)のこれまでの業績、株価を比較して、今後の両社の業績、株価の予想・見通しをしたいと思います。
この記事の内容をざっくりまとめると次の2点になります。
1、ドコモとソフトバンクの携帯事業は安定的で将来の発展性のある良いビジネスである。
2、ドコモへの投資はローリスクローリターン、ソフトバンクの投資はハイリスクハイリターンである。ソフトバンクの方が投資の面白みがあるだろう。
ドコモもソフトバンクも携帯通信と言う安定的なビジネスをしています。IoTなどの発展で今後ますます通信トラフィックは増えると予想され、今後もドコモもソフトバンクも携帯通信部門は安定的に利益を稼ぎ出すでしょう。
ドコモとソフトバンクでは経営方針に大きな違いがあります。ドコモは携帯通信と言うビジネスに特化して、大きなリスクを取らずに安定的にビジネスをしています。一方のソフトバンクは、国内、国外の携帯通信事業のみならず、英国のARMと言う半導体回路設計の会社を買収したり、ビジョンファンドと言うAIに特化した投資ファンドを立ち上げたり様々なIT分野に進出しています。ソフトバンクは、大きな借り入れをしてレバレッジを効かせ、リスクをとった経営をしていますが、成功した時のリターンも大きいです。この経営方針の違いの一因として、ドコモは雇われ社長あるのに対し、ソフトバンクはオーナー社長であることがあげられます。
早速ドコモとソフトバンクの業績を見てみましょう。ドコモとソフトバンクグループのそれぞれに対して、売上高(緑色)と純利益(青色)の推移を示したのが次の2つの図です。
NTTドコモは売上、利益とも若干上向きですが、ほぼヨコヨコの感じです。一方ソフトバンクグループは売上高が急上昇しており、企業規模が年々大きくなっていることがわかります。またソフトバンクの利益も売上高とともに上昇しており良い感じです。安定感と言う意味ではドコモも悪くありませんが、成長と言う意味ではソフトバンクの方が圧倒的に軍配が上がりますね。
次の2つの図はそれぞれドコモとソフトバンクグループのキャッシュフローの推移です。
(NTTドコモ) 赤色が営業キャッシュフロー、黄色が投資キャッシュフローです。
(ソフトバンクグループ) 青色が営業キャッシュフロー、赤色が投資キャッシュフローです。
ドコモのキャッシュフローは営業キャッシュフロー、投資キャッシュフローともにヨコヨコですが、営業キャッシュフローが投資キャッシュフローは絶対額で上回っていて悪い形ではありません。ドコモは良い意味でも悪い意味でも安定感がありますね。
一方のソフトバンクは営業キャッシュフロー、投資キャッシュフローともに拡大傾向にありますが、投資キャッシュフローが営業キャッシュフローを絶対額として大きく上回っており、大きな経営リスクを取っていることがわかります。
次の図はドコモのセグメント別の利益の表です。
(NTTドコモのセグメント別)
ドコモのセグメント別利益の表を見ると、ほぼ通信事業の単一セグメントと考えてもよさそうです。
次の図はソフトバンクグループのセグメント別の売上高、利益の表です。
(ソフトバンクグループのセグメント別)
ソフトバンクのセグメント別の表を見ると、ソフトバンク通信事業、スプリント事業、Yahoo!事業、アーム事業、ソフトバンクビジョン事業、ライトスター事業と通信事業以外にも多岐に渡っています。ソフトバンクは事業会社というより自他共に認める投資会社になっています。
次の2つの図は、それぞれドコモとソフトバンクグループの株価と理論株価の推移です。
(NTTドコモ)青色が株価、黒色が理論株価です。
(ソフトバンクグループ)青色が株価、緑色が理論株価です。
ドコモの理論株価と株価はほぼ同水準で推移しています。また緩やかな右肩上がりになっていて良い感じです。ドコモは携帯通信と言う安定的なインフラ事業で着実に成長してる感じがします。またドコモの図をよく見てみると、2008年から2013年まで株価が理論株価を下回っています。これは2008年あたりから始まったリーマンショック、それに続く欧州債務危機などの世界経済の不況が影響しています。不況時には株価がその企業のファンダメンタルよりもアンダーバリューになるのは仕方ないところです。
一方のソフトバンクグループも理論株価と株価は同水準で推移してきましたが、最近になって理論株価が急上昇しています。これにはソフトバンクグループが始めたソフトビジョンファンドの含み益が純利益として計上されていることが原因です。含み益は安定性に欠けるので、理論株価ほど株価が上昇してないと考えられます。
ドコモとソフトバンクを比較してみると、株価、理論株価ともにソフトバンクの方が上下動が激しいことが見てとれます。これはソフトバンクのビジネスの方がハイリスクハイリターンである事に起因しています。
両社への投資戦略としては、預金感覚で安定的な運用したい人はドコモ、リスクを取ってハイリターンを目指した人はソフトバンクを選択すると良いでしょう。