中国株テンセント(Tencent:騰訊)のこれまでの業績と、今後の株価の予想(見通し)

中国株のテンセント・ホールディングス(騰訊)(Tencent Holdings Ltd、HKG: 0700)のこれまでの業績と市場環境、株価の動向を振り返り、今後の業績、株価の予想・見通しをしたいと思います。

 

テンセントは、日本ではあまり馴染みがないですが、中国におけるSNSとゲームの運営会社で、中国では時価総額がもっとも大きい巨大IT企業です。テンセントは中国の深センに本拠を置く会社で、香港市場に上場しています。

 

この記事をざっくりと要約すると以下の3つになります。

 

1、テンセントは中国で時価総額が最大の企業である。また世界の時価総額ランキングのトップ10に入っている巨大企業である。

 

2、14億人の人口を擁する中国のSNS、ゲーム事業を独占しており、これらのインフラを利用して今後、分野横断的に様々なビジネス展開をしていくポテンシャルのある高成長企業である。

 

3、テンセントは、今後も高成長を続けると思われるが、それらを織り込んでいると考えても株価は高値圏にあり、投資は慎重になった方が良いだろう。

 

 

中国のインターネット鎖国政策と3大IT企業

中国はインターネット鎖国政策をとっており、例えば検索エンジン最大手のグーグルの検索エンジンは中国では使えません。中国のインターネット規制の為に、中国IT業界は、グーグルやアマゾンが席巻する世界のIT業界とは異なる様相になっています。

 

グーグル(Google)やアマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)が使えない中国では、中国IT企業が検索エンジン、オンラインショッッピング、SNSなどに対して、独自のインターネットサービスを提供しています。これらの中国企業の中でも重要なのが、大手中国IT企業のテンセント、アリババ、百度(Baidu)の三つです。

 

テンセントは、中国最大(実は世界最大)のゲーム会社であると同時にFacebook、インスタグラム、LineのようなSNSも運営しています。一方、アリババは、中国版のアマゾンといったところでオンラインショッッピングの最大手ですね。また、百度は、中国版のグーグルと言えるでしょう。まとめると次の通りになります。

 

テンセント:フェイスブック、twitterのようなSNS事業、ゲーム事業

アリババ:アマゾンや楽天のようなオンラインショッッピング事業

百度(Baidu):グーグルのような検索エンジンの事業

 

中国政府によるインターネット規制は、そもそも政治的な意図によるものと言われていますが、経済的にも中国にとって有利に働きました。中国インターネット規制によりグーグルなどの世界の巨大IT企業を中国から締め出すことができ、中国に独自の巨大な国内IT企業を育てることができました。14億人の人口を抱える中国のIT市場を外資に奪われなくて済みました。中国のインターネット規制は、政治的側面のみならず、経済的にも大成功だったと言えそうです。

 

世界の時価総額ランキングにおけるテンセントの順位

さて、この中国の最大手IT企業であるテンセントがいかに巨大な企業なのかを世界の時価総額ランキングの中で確認して見ましょう。次の表は2018年度の世界の時価総額ランキングです。

 

世界の時価総額ランキングhttp://www.180.co.jp/world_etf_adr/adr/ranking.htmより引用)

世界時価総額ランキング

まず、世界の時価総額ランキングのトップ10の企業を見てみると、なんと8つものインターネットもしくはそれに付随するスマホ関連の企業がランクインされています。(アップル、アマゾン、マイクロソフト、アルファベット(グーグルのことです)、フェイスブックなど。)現在はまさにインターネットによる情報革命の時代であることがわかります。

 

この時価総額ランキングには、言わずと知れたアップルやアマゾン、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、フェイスブックなどの超有名IT企業と共に、中国企業であるテンセントが世界時価総額ランキング7位として堂々とランクインしています。

 

テンセントは日本ではあまり知られていませんが、世界の巨大IT企業に引けを取らない大きな企業であることがわかりますね。

 

ちなみに日本の時価総額最大企業はトヨタ自動車で37位です。ちょっと寂しい感じがします。日本頑張れですね。。。

 

中国国内における時価総額ランキングにおけるテンセントの順位

時価総額のランキングを、中国企業に限定した時の時価総額ランキングが次の表です。(https://glotechtrends.com/2017-china-listed-company-ranking-180111/より引用。)

中国時価総額ランキング

この表を見てもわかるように、中国国内における時価総額トップの会社がテンセントです。2位にアリババが続きます。ただ、検索エンジン中国最大手の百度(Baidu)は、意外と順位は高くなく17位にとどまっています。世界の検索エンジンの最大手のグーグルと比較すると、百度(Baidu)が相対的に時価総額が小さいのは意外感があります。

 

テンセントは日本ではあまり知られていません。ただ、中国には日本の人口の10倍以上の14億人の人口がいますので、その中国でSNSやゲーム事業を独占しているテンセントは、大きな競争力を持った企業と言えるでしょう。

 

テンセントの事業内容

さて、中国首位の巨大IT企業であるテンセント(騰訊)の事業内容は具体的にはどんなものがあるでしょうか?

テンセントの事業内容をまとめた図が以下の通りです。(テンセントのIRからの抜粋

テンセントプラットフォーム群

まず、テンセントの大きな柱が上図の青色の歯車シンボルにあるWeChat,QQ,QzoneなどのSNS事業です。WeChatとQQはメッセンジャーアプリで日本だとLINEに当たります。QQの方が古いアプリであるのに対して、WeChatは2011年にリリースされた比較的新しいサービスです。QQとWeChatは似たようなメッセンジャーサービスを展開していますが、QQはどちらかというと若者をターゲットにしているのに対して、WeChatは中高年向けのサービスです。WeChatの方が機能が簡略化されているので、中高年に受けが良いですね。テンセントはこの2つのSNS(WeChatとQQ)を展開しています。

 

また、オレンジ色の歯車シンボルは、PC・スマホ向けのゲームのプラットフォームです。あとでも詳しく解説しますが、ゲーム事業はテンセントで売上高がもっとも高いビジネスです。日本でもそうですが、ゲーム事業は儲かりますね(笑)。

 

あと、今後伸びていきそうなのが、ピンク色のモバイルペイメントですね。いわゆるフィンテック事業に分類されていますが、既存の銀行業務を奪い取るような形でさらに拡大していきそうです。

 

テンセントのセグメント別売上高

さて、テンセントのセグメント別の売上高の推移を見てみましょう。下図は、テンセントのセグメント別の売上高の推移です。(https://chinatechnewsletter.com/2017/03/22/tencents-active-mobile-payment-users-reached-600m-in-q416/より引用)

テンセントセグメント別売上

上の図で、それぞれの年の最初の一番濃い青色の縦棒はテンセントのオンラインゲームの売上です。次の2番目に濃い青色の棒がSNS(仮想アイテム、有料デジタルコンテント、月額課金)による売上です。3番目の棒は、広告の売上です。4番目の棒がワイヤレスサービス(フューチャーフォーン)、5番目の棒がクラウドサービスです。

 

この表を見てもわかる通り、テンセントのビジネスの主軸は、ゲーム、SNS、インターネット広告であることがわかります。そして、テンセントは年々、非常に早いスピードで成長していますね。

 

特にオンラインゲームの売上の規模と伸びがすごいですね。。。あと、最近だとクラウドサービスの伸びも見逃せないところです。

 

SNSにおけるテンセントと他の媒体との月間アクティブユーザー数の比較

さて、テンセントとフェイスブックの比較をしてみましょう。次の図は、テンセントとFacebook、または他の媒体の月間アクティブユーザー数の比較です。(https://www.statista.com/chart/9238/monthly-active-users-social-media-facebook-tencent/より引用)

 

テンセントとfacebookのMAU比較

濃い青色の棒がFacebookのSNSサービス(Facebook,Whatsapp,Facebook Messenger, Instagram)です。薄い青色がテンセントのSNSサービス(QQ, WeChat, Qzone)です。

テンセントは、世界展開しているフェースブックには及ばないものの、それに匹敵する程度のアクティブユーザー数を誇っています。中国には14億人の人口がおり、テンセントは中国市場を独占していますので、この膨大なユーザー数を獲得できているわけですね。

 

テンセントとFacebookの比較

それでは、世界の2大SNSサービスを展開しているテンセントとFacebookの売上高と純利益の比較をして見ましょう。(下図の左の図。下図の右の図はMAUで一つ前の図と統計をとっている年月以外は同じです。https://www.statista.com/chart/5549/tencent-vs-facebook/より引用)

 

テンセントとfacebook売上利益比較

上図の左図ですが、フェイスブックとテンセントの売上高と純利益の比較です。青色がフェイスブックで橙色がテンセントです。テンセントは売上高も純利益もフェイスブックとそれほど遜色ないですね。

 

テンセントの売上高、EBITDA、純利益の推移

さて、以下ではテンセント(騰訊)の財務状況をみてみましょう。次の図はテンセントの売上高、EBITDA、純利益の推移です。

テンセント売上高

青色がテンセントの売上高、赤色がEBITDA、黄色が純利益の推移です。テンセントの売上高、EBITDA、純利益共に右肩上がりに、そして加速度的に急成長していることがわかります。

 

テンセントのキャッシュフローの推移

次の図はテンセントのキャッシュフローの推移です。

テンセントキャッシュロー

青色がテンセントの営業キャッシュフローです。赤色が投資キャッシュフローで、黄色が財務キャッシュフローです。

 

営業キャッシュフローが上昇、投資キャッシュフローがマイナス方向に下がっています。この営業キャッシュフローと投資キャッシュフローがワニ口のように広がる形は、急成長企業によく見られる形です。アマゾンのキャッシュフローの推移も似たような形をしており、テンセントのキャッシュフローの推移は良い形をしています。

テンセントのバランスシートの主要項目の推移

次の図はテンセントのバランスシートの主要項目(総資産、流動資産、負債、自己資本)の推移です。

テンセント資産

青色はテンセントの総資産の推移、赤色が流動資産の推移、黄色が負債の推移、水色が資本の推移です。テンセントのバランスシートの主要項目も、バランスよく拡大しており、良い形をしています。

 

テンセントの売上高、総資産、時価総額の比較

テンセントの売上高(純利益)、総資産、自己資本、時価総額を比較してみましょう。これらの数字は会社の異なる三つの側面、つまり利益面、資産面、株価面をみています。これらの数字は大体同じオーダーになり、比較することにより、会社の数字面の全体像を把握するすることができます。

 

売上高: 281 Billion HKD(純利益: 84 Billion HKD)

総資産: 657 Billion HKD  (自己資本: 328Billion HKD)

時価総額: 3780 Billion HKD

*1HKD(香港ドル)は14円くらいです。

 

これから投資に必要な主要な指標を計算できます。

 

売上高純利益率:29%

自己資本比率:49%

ROA:12%

ROE:25%

PBR:5.7倍

PER:45倍

 

これらの指標をみてまず目につくのは、売上高純利益率の高さです。ほぼ30%近くあり、非常に高い利益率ですね。テンセントはゲーム事業など利益率の高いビジネスをしているので、この高い売上高利益率になっているわけです。自己資本比率も、ROAもROEも十分高く魅力的ですね。

 

ただ、PERが45倍と高く、株価は割高であると考えられます。成熟産業のPERが通常15倍程度と考えると、テンセントは今後およそ3倍の成長が株価に織り込まれていると考えれられます。

 

テンセントの株価と理論株価の推移

次の図はテンセントの株価と理論株価の推移です。(理論株価は一株あたりの純利益の15倍で計算されています。)

テンセント株価

青色がテンセントの株価、緑色が理論株価の推移を表しています。理論株価と比べたとき、実際のテンセントの株価はかなり割高ですね。

 

先ほども述べたように、テンセントはあと3倍程度の成長を織り込んでいると考えられますが、実際にあとどれくらい成長できるか考えてみます。

 

テンセントは中国国内インターネットのコングロマリット企業と言えるでしょう。テンセントはあらゆるオフライン業務をオンライン再定義化して、業界横断的に勢力範囲を拡大していっています。

 

具体的には、スーパーマーケットのインターネット販売、カーシェアリング、配車サービス、銀行を介さない金融融資サービス、ソーシャルネットワークによって集められたビックデータによる信用調査サービスなどが次のテンセントのビジネスターゲットです。

 

中国は、欧米、日本に比べて個人情報保護の規制がゆるいために、SNSによる個人情報ビックデータの利用がしやすく、中国のSNSの最大手のテンセントは個人情報利用型ビジネスをするには非常に有利な立場にいます。

 

また、今後もIoT(Internet of Things)や人工知能の発展でますます情報革命が進んでいくことは確実です。そんな状況の中、中国のインターネット規制のおかげで外資から守られているテンセントは将来的にも中国国内のIT需要を独占的に取り込んでいくと考えられます。テンセントは今後も順調に高成長を続けるでしょう。

 

ただ、テンセントへの株式投資を考えると、将来の成長を考えたとしても現在の株価(PER45倍)は決して割安とは言えないでしょう。株価が何かの一時的なショックで落ち込むのを待ってから、投資するのが良いと思われます。

 

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