【2025年版】NTT(日本電信電話)20年株式分析レポート
日本電信電話(NTT)は日本の通信インフラを担う巨大企業グループとして、携帯通信(NTTドコモ)、固定通信(NTT東日本・西日本)、システムインテグレーション(NTTデータ)、グローバル事業(NTTコミュニケーションズなど)を包含し、多方面にわたって事業を展開しています。安定した通信需要を背景とした財務基盤を持ちつつ、近年は海外企業買収や新サービスの拡充にも積極的です。
本記事では、NTTの過去20年(2005年~2024年)の株価推移や主要な財務データをChart.jsで可視化しつつ、初心者にもわかりやすい形で解説していきます。株価や売上、純利益、キャッシュフロー、バランスシート、セグメント別業績などをデータドリブンに確認することで、NTTのビジネスと成長性をしっかり捉えましょう。
1. 株価推移(2005~2024年)
以下のグラフは、NTT株の2005年末~2024年末の調整済株価(円)を年ごとにプロットしたものです。過去に株式分割が実施されているため、すべて調整後株価で比較しています。
2005年には調整後で50円台だった株価は、リーマンショック時に40円台まで下落しましたが、2010年代以降は安定的に上昇。2024年末は158円と、20年前と比較して約3倍近くまで成長しています。NTTは固定電話の衰退懸念で伸び悩んだ時期もありましたが、携帯通信やITソリューションへのシフトを進めることで市場から再評価されています。
2. 売上高の推移
NTTグループの連結売上高(営業収益)は、国内通信の成熟化により大きな伸びこそないものの、安定的に10兆円規模を維持してきました。近年は海外事業拡大やグループ再編(ドコモ完全子会社化)を背景に13兆円を超える水準に到達しています。
2005年度は約10.7兆円、2009年度には10.1兆円まで落ち込む場面がありましたが、光回線事業やモバイル通信の普及が下支えし、2010年代後半からは徐々に増収基調に転換。2024年度には13.7兆円を超え、過去最高を更新しました。
3. 当期純利益の推移
続いて、親会社株主に帰属する当期純利益を見てみましょう。売上高が横ばい~緩やか成長であるのに対し、効率化や構造改革を進めた結果、純利益はこの20年で大きく増加しました。
2005~2006年頃は純利益が4,000~5,000億円台に留まりましたが、2010年代には5,000~7,000億円規模に拡大。2020年代に入るとNTTドコモ完全子会社化などの影響で純利益は1兆円を超える年が続き、2023年度には約1.28兆円と高水準を維持しています。
4. キャッシュフロー(営業CF・投資CF・財務CF)の推移
NTTの稼ぐ力を示す営業キャッシュフローは毎期2~3兆円のプラスを確保し、潤沢な資金を生み出しています。一方、通信設備投資や海外M&Aにより投資キャッシュフローは継続的にマイナス。不足分や株主還元などは財務キャッシュフローで調整する形です。
ドコモ完全子会社化などの大型投資があった2020年前後は投資CFが大きくマイナスとなる一方、社債や借入で資金を調達したため財務CFが一時的にプラスとなりました。平時は安定した営業CFで投資と配当をまかない、足りない分を借入などで補う堅実な資金繰りです。
5. 資産・負債・自己資本の推移
NTTグループの財政状態を表すバランスシートは、この20年で総資産が約20兆円弱から30兆円弱へ拡大しました。負債も増加しましたが、自己資本も堅調に積み上がっており、自己資本比率は30%台を維持しています。
直近ではドコモ買収や研究開発投資などで有利子負債が増加していますが、営業CFが強固なため財務リスクは抑制されていると見られます。株主還元と成長投資を並行できるだけの財務体質が整っている点がNTTの強みです。
6. セグメント別売上高の推移
NTTグループは主に「移動通信(NTTドコモ)」「地域通信(NTT東・西)」「グローバル(NTTコミュニケーションズ等)」「データ通信(NTTデータ)」の4セグメント(旧区分)を中心に事業を営んできました。ただし一部の古い年度は非開示部分もあるため、データなしの年もあります。
2005年頃は地域通信の売上が移動通信とほぼ同規模でしたが、その後は携帯電話の普及・データ通信収入増でNTTドコモがグループ最大の売上源に。地域通信は固定電話減収の影響から逓減。グローバル事業やデータ通信事業は海外買収やシステム需要拡大を背景に着実に売上を伸ばしてきました。
7. セグメント別営業利益の推移
営業利益の面ではNTTドコモ(移動通信)が圧倒的な稼ぎ頭であり、地域通信は固定回線の維持コストや料金規制の影響から利益率が低い傾向にありました。長距離・国際通信も黒字化しているものの、利益水準は移動通信には及びません。一方、NTTデータはシステム開発分野で安定した成長を続けており、近年は営業利益が1,000~2,000億円規模に拡大しています。
2010年代半ば以降はNTT東西でも光回線の普及とコスト削減により利益率が改善し、数千億円規模の利益を確保できるようになりました。ただし近年は携帯料金値下げの圧力が高まり、ドコモの利益がやや圧迫される傾向があります。
8. まとめ
以上、NTTの過去20年間にわたる株価・財務データを概観しました。国内通信事業の成熟化や固定電話の減少などの構造変化に直面しながらも、携帯通信やITサービス、グローバル展開によって着実に事業を拡大してきたことが数字から読み取れます。
- 株価は2005年の50円台から2024年末158円まで上昇、約3倍に。
- 売上高はおおむね10兆円前後で推移し、近年は13兆円を突破。
- 純利益はコスト効率化やグループ再編の効果で1兆円規模に拡大。
- 営業CFが2~3兆円と潤沢で、投資・配当・自社株買いを両立可能な財務体質。
- セグメント別では移動通信が柱だが、地域通信・グローバル・IT部門も安定成長。
インフラビジネスの特性上、景気の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄である一方、携帯料金の値下げや設備投資リスク、グローバル展開リスクなど課題も少なくありません。投資判断には、NTTが描く次世代ネットワーク(IOWN構想など)や海外成長戦略の進捗を注視する必要があります。とはいえ、20年分のデータが示すように、通信の基盤収益を強みに安定成長を続けてきた実績は大きな魅力と言えるでしょう。