ソフトバンクは、国内事業と海外事業の両方をしています。国内事業としては、主に携帯事業、ヤフー、流通です。海外事業としては、主に米国携帯会社のスプリント、英国ARM社、巨額ファンドです。
国内の携帯事業は、言わずとしれたソフトバンクのブランドの携帯電話の事業ですね。ドコモとAUが競合になりますが、市場としてはほぼ飽和しています。ただ、携帯電話は一旦契約すると、同じ会社の携帯を長期に使うことが多く、また景気に左右されず携帯電話は使われ続けるので、景気に左右されない安定収入となります。これはソフトバンクにとっては心強い収入源ですね。
ヤフーは広告収入、eコマース、会員事業をしていて、日本国内では圧倒的なブランドです。売り上げとしては、携帯事業の6分の1程度ですが、利益率が高く携帯事業の3分の1程度の利益を稼いでいます。つまりヤフーの利益率は、携帯事業の2倍程度と高いです。やはり、携帯事業は設備投資に費用がかかるのに対して、ヤフーは費用が小さくて済むことが高利益率の原因でしょう。
次に海外事業のスプリントですが、米国の4大携帯会社のうちの一つです。米国携帯会社はAT&TとVerizonの2社が二強になっています。この二社を追うスプリントは、解約者の増加に苦しんでいましたが、ここにきてそれも反転して業績を持ち直しています。売り上げは、日本の携帯事業と同程度ですが、まだ立て直し途中なので利益はあまり出ていません。これから、反転攻勢が着々とすすめば、スプリントはさらなる利益増大が見込めそうです。今後が楽しみなセグメントです。
最近、ソフトバンクは英国のARM社を買収しました。ARM社は半導体チップの設計図をつくっていて、この先大きく成長すると予想されます。これからIoT時代を迎えるといわれており、冷蔵庫、エアコン、自動車などありとあらゆる電化製品がインターネットにつながると予想されます。その時にこのIoT製品の半導体の設計で覇権を握るのがARMになりそうです。すでに、IoTの基本機器であるスマホの半導体設計ではシャアを独占しています。また、パソコンのチップで覇権を握るインテルや、OSで覇権をにぎるウィンドウズをみてもわかるように半導体チップは規格が重要なので、ARM社が独占する可能性が高いです。このことから、現在はまだ利益幅は小さいですが、今後アーム社は大きな利益を稼いでいきそうです。
最近、ソフトバンクは10兆円ファンドを作りました。中東の国からも出資を受けているようです。この額は、ソフトバンクの時価総額とほぼ同じで、非常に大きい規模のファンドです。このファンドで、ソフトバンクはさらなる飛躍を遂げそうです。まず、あげられるのが孫さんの投資の能力です。これまでも創業期のヤフーやアリババに投資して大きなキャピタルゲインを得ていることに成功した実績があります。孫さんの投資は、世界中のにあるさまざまなファンドよりもはるかに高いリターンを得ています。
また、この10兆円ファンドの規模の大きさが将来のリターンをより確実なものにしています。ファンドの規模が大きいので、その業界のNo.1企業に出資できるのが大きなメリットです。グーグルやアマゾンなどからもわかる通り、IT業界はNo.1企業が市場を独占することが多いです。No.1企業に投資できるこのファンドの規模が大きな魅力となります。
ソフトバンクの成長の実績は目覚ましいものがあります。過去の売り上げ、利益の推移をみても右肩上がりです。それは既存のビジネスをキープしつつ次々と新しい市場に参入して勝負していることにソフトバンクの強みがあります。ソフトバンクは当初パソコンのソフトの販売からはじまりましたが、ボーダフォーンを買収して国内携帯市場に参入し、そしてそれが軌道に乗るとスプリントを買収して米国携帯市場の参入をしました。そして現在アーム社を買収して半導体市場に勝負をかけています。このつぎつぎと新しいビジネスに参入していることがソフトバンクの成長の源泉です。ドコモやAUと比べると、その成長の大きさは際立ちますね。
セグメント別にみると、稼ぎ頭である国内の携帯事業とヤフーは飽和状態に近づきつつありますが、海外のスプリントは現在反転攻勢にでている最中です。スプリントはリストラを進めていて、赤字から黒字体質に変わりつつあります。今後、スプリントが国内携帯事業と同じくらいの利益率になればソフトバンクの利益が倍近くに膨らみ、さらなる成長が期待できます。
また、半導体設計会社のアームと10兆円ファンドはまだまだ未知数ですが、これからの成長が大いに期待できます。飽和状態にある国内市場だけを相手にしている他の国内企業に比べて、成長余地が大きいことが魅力です。
ソフトバンクの自己資本比率は15%と低いですが、事業内容の特殊性からそれほど危険とは言えないでしょう。ソフトバンクの稼ぎ頭は国内携帯事業ですが、これは先ほど説明したとおり景気に左右されずに安定的に利益を稼ぐことができます。これはソフトバンクの自己資本比率が低く、リバレッジをかけた経営をしていても安心な理由です。また、実際にリーマンショックの時も、他の製造業などの景気循環株にくらべて、ソフトバンクはそれほど痛手をこうむっていません。
ソフトバンクはリバレッジを大きくかけており、のれんも大きいのでとりあえず資産価値はゼロとしておきます。一方、利益価値ですが、一株当たりの利益は来期予想で550円です。これを15倍すると8250円になりますが、これがソフトバンクの理論株価と考えられます。2017年8月7日現在の株価が9023円ですので、若干株価は割高かもしれません。
ただし、この係数15倍は将来の成長期待を織り込んでいないので、もしソフトバンクの成長を信じるならばこの株価はまだまだ大きく割安であると考えられます。特に、スプリント、アーム、10兆円ファンドが大きく成長すれば、まだまだ株価は大きく上昇していくでしょう。
ソフトバンクの成長が楽しみですね。