米国株のエヌビディア(NVIDIA)のこれまでの業績と株価を振り返り、今後の業績と株価の予想をしたいと思います。
エヌビディア(NVIDIA)は、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)の世界のリィーディングカンパニーです。ゲーム用や人工知能の深層学習用などにGPUを提供しています。
GPUとは、コンピューターで高速に画像処理を行うときに用いられるモジュールです。ゲームなど高速で画像処理をしなければいけないときに、コンピューターに拡張搭載されます。また、GPUは最近の人工知能の発展の原動力になっている深層学習(ディープラーニング)の高速化にも重要なモジュールです。
GPUのブランドとしては、GeForceやTegraなどがあります。Tegraは任天堂ゲーム機のSwitchにも採用されています。
さて早速、エヌビディア(NVIDIA)の一株あたりの売上高(緑色)、純利益(青色)の推移を見てみましょう(下図)。
売上はここ10年以上に渡って、右肩上がりに伸び続けています。力強い成長ですね。ただ、最近になって売上高、利益とも少し落ち込んでいます。これは、仮想通貨の価格の下落と、米国・中国間の貿易摩擦の影響です。NVIDIAの主力商品のGPUは、仮想通貨のマイニングをするのに使われますが、仮想通貨の価格下落でGPUの需要が落ち込んでしまいました。
上図で、特に純利益(青色)を取り出して表示させてのが下図です。
純利益は2008年のリーマンショックの後に大きく落ち込んでいますが、その後、持ち直しています。そして、最近に到るまで純利益の方も大きく伸びています。ただ、先ほども述べたように、仮想通貨の下落と、米中間の貿易摩擦で純利益の方も落ち込んでいます。。。
さて、実際の現金の流れを表すキャッシュフローの方も見ておきましょう。下図で、営業キャッシュフロー(青色)、投資キャッシュフロー(赤色)、財務キャッシュフロー(黄色)を表しています。
営業キャッシュフローを順調に伸ばしていますね。投資キャッシュフローも営業キャッシュフローと大体同じような範囲の大きさで、適切な額の投資をしていることがわかります。
最近になって業績が少し落ち込んでいますが、2016年あたりから本格的なブームが訪れている人工知能用のGPUが、エヌビディア(NVIDIA)の業績を伸ばしています。人工知能では、深層学習という技術が用いられています。深層学習では、コンピューターに学習用のデータを大量に与えて、人工知能の心臓部のパラメーターを最適化させます。このとき、非常に長い計算時間が必要で、データが大量になると学習に一ヶ月以上かかることも珍しくありません。
ところが、GPUを使うとこの計算時間を10分の1以下に短縮することができます。そのため、人工知能の開発ではこのGPUを用いることが必修になります。
エヌビディア(NVIDIA)は、人工知能の開発に欠かせないGPUの世界のリーディングメーカーです。
今、世界中の企業が人工知能の開発に手を出し始めていて、エヌビディア(NVIDIA)のGPUが飛ぶように売れているわけです。これがこれまでのエヌビディア(NVIDIA)の業績が2018年まで好調だった理由です。(先ほども述べた理由で最近少し業績が停滞していますが、、、)
さて、次にエヌビディア(NVIDIA)の財務面の分析をして見ましょう。一般に時価総額と総資産と売上はだいたい同じオーダーの額になります。そして、それらを比較することにより、その企業が成長・成熟・衰退のどの段階にいるのか推定できるので重要です。
エヌビディア(NVIDIA)の現在(2019年1月期)の時価総額、総資産(純資産)、売上(純利益)は以下の通りです。
時価総額:151ビリオンドル
総資産:13.2ビリオンドル(自己資本9.3ビリオンドル)
売上:11.7ビリオンドル(純利益4.1ビリオンドル)
これらの情報から主要な指標を計算すると以下のようになります。
自己資本比率:70%
売上高純利益率:35%
ROA:25%
ROE:36%
PER:36倍
PBR:16.2倍
エヌビディア(NVIDIA)は、売上高純利益率や、ROA、ROEも高く、儲かるビジネスをしていることがわかります。後ほどみるように株価は再上昇してきていて、PERとPBRはだいぶ割高かもしれません。
実際にエヌビディア(NVIDIA)の株価の推移を見てみましょう。
2016年頃から急激に上昇して、2018年までの2年で6倍以上になっています。この上昇は、人工知能ブームによる影響が大きいですね。実際にこの人工知能ブームで業績も伸びているのですが、それ以上に株価が上昇していました。ただ、昨年2018年末から急激に株価が落ち込んできました。これはさきほども述べたように仮想通貨のブームが去って、仮想通貨のマイニングに用いられるGPUの需要が減るなどと予想されていることと、米中間の貿易摩擦のために株価が落ち込んでいます。
その後、2019年後半から最近まで、一旦落ち込んだ株価は前回の最高値に付近まで再上昇しています。
次にエヌビディア(NVIDIA)の実際の株価(青色)と理論株価(黒色)を比較してみましょう(下図)。(理論株価は一株あたりの純利益の15倍で計算しています。)
2018年位までは実際の業績の上昇に比べて、株価の方が異常に上昇していました。業績以上に株価が上昇してましたが、昨年2018年末にきて、理論株価の水準まで下落してきました。
2018年位までの株価の異常な伸びは、人工知能に対する期待が織り込まれていたと思われますが、昨年2018年末にきてその期待が剥落してきました。
最近、少し業績が落ち込んでいますが、今後、エヌビディア(NVIDIA)の業績は人工知能市場の伸びと共に、少しづつ上昇していくでしょう。ただ、株価のほうはだいぶ回復してきたとはいえ、前回最高値を抜けてこれまでのように第2弾の急上昇があるとは考えにくいですね。理由は、エヌビディア(NVIDIA)が提供しているGPUの使用用途にあります。
GPUは、人工知能を開発する時に必要なデベロッパー側のツールで、完成した人工知能(学習済みモデルと言われます。)には不要です。なので、一般消費者側(コンシューマー側)に売っていくわけではないので、どうしても売上に上限が出てしまいます。
そのために、繰り返しになりますが、人工知能は今後伸びていく分野ではありますが、前回高値を抜けて2018年位までのような株価の急上昇は難しいと思われます。ただ、人工知能はこれからも重要な分野ですので、今後も少しづつ着実に業績を伸ばしていくでしょう。
現在の株価はだいぶ理論株価に比べてだいぶ割高の水準です。これからのエヌビディア(NVIDIA)への投資戦略としては、今は様子見で、将来理論株価付近まで株価が下落するのを待って投資したほうが良いと思われます。
(注意)投資は自己責任でお願いします。