検索エンジンでお馴染みのグーグル(google:正式会社名アルファベット(Alphabet Inc))のこれまでの業績と株価とビジネスモデルを振り返り、今後の業績と株価の予想をしてみたいと思います。
グーグル(アルファベット,GOOGL)は、いわずと知れたインターネット検索の世界最大手です。インターネット検索エンジン、Youtube、グーグルマップなど利用したことがある人も多いのではないでしょうか。また、スマホ分野でiPhoneに並んで主流となっているアンドロイドのOSはグーグル製です。また人工知能分野の基本的なプラットフォームとしてpyhon上で動くTensoflowを提供しています。グーグル社のTensorflowは人工知能分野の言語の中で世界的シャアでナンバーワンで、これからの金の卵の人工知能分野でも覇権を握ろうとしています。
グーグル(google)は、最近になって会社名を「google(グーグル)」から「alphabet(アルファベット)」に変えました。ただ、「グーグル」という名称の方が馴染みが深いと思うので、この記事ではこの会社をグーグルと呼ぶことにします。
ITのみならず全ての分野を通じて時価総額最大の会社は、iPhoneで有名なアップルですが、このグーグル(アルファベット)は堂々の第2位です。グーグル(アルファベット)の時価総額は600ビリオンドル(日本円で60兆円位)です。これがいかに巨大かというと、日本の国家予算と同じくらいの規模あります。最近の世界の巨大IT企業は小さな国家よりも大きな存在感がでています。
さてさっそく、グーグル(アルファベット)の業績の一株あたりの売上高(緑色)と純利益(青色)の推移を見てみましょう(下図)。
この図を見てもわかる通り、グーグルは売上高も純利益も右肩上がりに順調に成長しています。直近の純利益が減っていますが、これは税制改正による一時的な費用処理が原因で特に問題ありません。
上図の売上高、純利益のグラフを見ると、2009年頃に売上高と純利益が伸びていることは伸びていますが、伸び率が少し低いです。言い換えると、まっすぐな右肩上がりな曲線が、2009年ごろに少したるんでいます。これは、リーマンショックの影響です。グーグルの主な収益源は広告収入です。景気が悪くなってくると、企業は広告費を削ってくるので、グーグルの業績にも悪影響があります。どちらかというと、グーグルはディフェンシブ株というより景気循環株に近いですね。
一方、グーグルの売上高営業利益率も25%と高いです。ROEも来期予想で19%と申し分ありません。特筆すべきは、グーグルの自己資本比率は77%と、米国企業としては非常に高いことです。米国企業は通常、資本効率を高くしようとしますので、自己資本比率はそれほど高くないのが一般的です。ところが、グーグルの自己資本比率は他の米国企業に比べて高いです。これは、グーグルが過去から現在に到るまで大きく利益を出し続けており、その利益を順調に蓄えてきたことを物語っています。この潤沢な資金を使って、グーグルは人工知能など新しいビジネスに大きく投資できるわけですね。
次に一株あたりの営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローをみてみましょう(下図)。
営業キャッシュフローは、本業による実際の現金収入を表しており、売掛金などや減価償却費などとは異なり会計操作が難しく信頼できる会計の数字です。またフリーキャッシュフローは、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いた数字を表していて、企業が設備などに投資した後に、自由に使える現金収入を表します。
上の図をみてわかる通り、グーグルの営業キャッシュフローは力強く伸びており、まだまだ成長が続きそうです。また、フリーキャッシュフローをみても、人工知能や自動運転などの新規事業に投資した後でも、十分にキャッシュが入ってきています。ここまで、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフローが右肩上がりの優良企業は少なく、グーグル(アルファベット)の成長の力強さが再確認できますね。
次に、グーグル(アルファベット)のビジネスの詳細をセグメント別の売上高をみて確認しましょう。グーグルには以下のように4つのセグメントがあります。最初の3つがグーグルブランドで、最後の一つがグーグルブランド以外の新規事業です。
1、Google properties revenues (google検索、gmailやyoutubeなどグーグル所有のサイトからの広告収入)
2、Google advertising revenues(googleの所有ではないサイトからの広告収入。adsenseなど。)
3、Google other revenues(グーグル事業で広告収入以外のビジネス。クラウド事業など)
4、Other Bets(グーグルブランド以外の事業。人口知能の自動運転への応用などの新規事業)
これらのセグメント別の売上高が下の表です。(アルファベットの年間報告書からの引用)
上の表をみても分かる通り、グーグルの売上高のほとんどは広告収入です。ただ、広告収入以外のクラウド事業などからの収入も大きく伸びてきています。また、Other Betsに分類されているグーグルブランドではない人工知能の自動運転応用などの事業からの売上も急激に伸びてきており、これから大きな成長が期待できます。今後はこのOther Betsに分類される人工知能事業による収入がグーグルをさらに大きく成長させるでしょう。
次に世界の地域別の売上比率をみてみましょう(下図)。
上の表でUnited Statesと書いてあるので米国、EMEAはヨーロッパ(Europe)、中東(Middle East)、アフリカ(Africa)を表します。また、APACはアジア(Asia)と太平洋地域(Pacific)を表します。
米国とヨーロッパ、中東、アフリカ地域の売上高が、アジアに比べて相対的に高いですね。アジアの比率が低いのは、人口14億人の人口大国の中国でグーグルが使えないからです。中国政府が政策でIT鎖国をしており、グーグルを締め出しています。中国では、中国固有の企業の検索エンジン(Baidu)が使われており、今後もグーグルはアジアでの売上を大きく伸ばしていくのは難しいでしょう。
成長著しいグーグルですが、どこまで成長できるでしょうか?現在、人工知能などの新分野に進出していますが、とりあえず検索エンジンビジネスの側面からグーグルの成長余地を考えてみたいと思います。
世界の検索エンジンのシェアは以下の図のようになっています。
グーグルが検索エンジンの8割のシェアを占めています。次に大きいのがマイクロソフトのBingでシェアで7%程度です。ウィンドウズパソコンを買うと、デフォルトで検索エンジンがBingになっているのが、マイクロソフトが第2位のシェアを握ることができている理由でしょう。ちなみに、グーグルはiPhone(Safari)のデフォルトの検索エンジンをグーグルにするために、アップルに対価を支払っています。
これからますますスマホシフトが進み、人々はパソコンを使わなくなっていくことが予想されます。なので、スマホで覇権を握っているグーグルがますます検索エンジンのシェアを拡大していく可能性が高いですね。当面、検索エンジンとしてのグーグルのビジネスは頑強であると言えるでしょう。
さて、それでは検索エンジンのシェアは独占できるとして、どこまでパイを広げることができるでしょうか?
下の表が世界のインターネット使用者の人口に対する割合を示したものです。
この図を見るとやはり北アメリカやヨーロッパなどの先進国はインターネット使用率が高いことがわかります。一方、アフリカではまだまだインターネットの使用率が低く、人口の3割程度しかインターネットを使えていません。全世界的に見ると、およそ全世界の人口の半分がインターネットを使用できていますが、残り半分の人は未だにインターネットを使用できない環境にいます。
これからアフリカなどを中心に世界のインターネット普及率が増えていけば、グーグルの検索エンジンビジネスはまだまだ成長できるでしょう。検索エンジンビジネスは、単純計算で規模にしてさらに2倍の成長余地があると思われます。
グーグル(アルファベット)はすでに大きく成長していますが、まだまだ成長は飽和していなくて、さらに加速度的に成長していく思われます。理由は、グーグルは検索エンジンのみならず、今後あらゆる産業の主力となる人工知能分野への投資・開発にも力を入れており、現在この分野でも世界をリードしているからです。人工知能は、今後のIT業界のみならず、自動運転車など分野横断的に大きなインパクトを与えると予想されています。自動運転、自動翻訳、検索エンジンの高度化、コールセンターの自動化、IoT(Internet of Things)などその波及効果はとても大きいですね。
グーグルは、人口知能用のプラットフォーム「Tensorflow」などIT開発に置ける重要なプラットフォームを無料公開しており、グーグルのプラットフォームを無料公開してその分野の覇権をにぎるというビジネス手法は世界の市場を制するのに優れた手法です。これは、グーグルがアンドロイドOSを無料公開することにより、スマホ分野でも検索エンジンの覇権を握ったこと思い出します。
さて、これまでグーグルの業績をみてきましたが、グーグルの株価をみてみましょう。
緑色がグーグルの株価を表していて、青色が理論株価(一株利益の15倍の値)を示しています。(青色の線は、資産価値抜きの理論株価です。)なので、株価(緑線)が理論株価(青線)と同じであれば株価は適正水準、株価(緑線)が理論株価(青線)より上であれば割高です。
現在の株価を見ると、理論株価の2倍程度(PERだと29倍位)まで買われています。グーグルの株価は割高な水準に見えます。
現在、グーグルは株価としては割安ではないので、投資戦略としては様子見で良いと思います。ただ、グーグルは非常に魅力的な株ですので、何かの経済ショックなどでPERで30倍程度まで株価が落ちてくることがあればグーグル株を買っても良いかもしれません。
あと、グーグル(アルファベット)株を買う際の注意点があります。グーグル株は実は2種類あって、A株とC株というのがあります。(B株というのもあるのですが、経営陣が保有する株で我々は買うことができないので関係ありません。)
グーグルA株(「GOOGL」という名称)は、議決権のある普通の株です。一方、グーグルC株(「GOOG」という名称)は、議決権がない特殊な株です。(C株のその他の権利はA株と同じです。)A株の方が、C株より少し高く取引(2017/9/4で15ドルくらい)されています。
議決権のない株が株と言えるのか疑問符が残ります。C株の将来の価値の希薄化も念頭において、議決権のあるA株の方に投資をしておいた方が良いでしょう。