ここのところ、金融緩和をつづけているECBですが、ユーロ経済について解析して、今後の世界経済への影響を調べてみたいと思います。
まず、ユーロ圏の人口は、3億3千万人です。GDPは現在1500兆円程度ですので、一人あたりのGDPは500万円弱程度になります。国によって格差はありますが、大雑把にいって日本と同程度ですね。
下図は、ユーロ圏のGDPの経済成長率です。中国などの経済発展中の国と比べて、経済は成熟していますので、経済成長率は大きくありません。
(tradingeconomics.comより。以下の図やデータも同様。)
2009年にリーマンショックの影響で、GDP成長率が大幅に落ち込みマイナス3パーセントになっていることが目につきます。最近はずっと1パーセント以下の低成長率が続いています。
次に、ユーロ圏の失業率を見てみましょう。
ユーロの失業率は少しづつ改善されていますが、いまだに10パーセント以上と高止まりしています。良くないですね。
さて、ECBも気にしているユーロ圏のインフレ率ですが、ここ10年ほどの推移は以下のとおりです。
2008年にリーマンショックで大きく下がって、その後2011年ごろに3パーセント位に回復していますが、その後、現在までユーロ圏のインフレ率の下落が止まっていません。直近のデータを見ても、インフレ率がマイナスになっており、デフレ傾向にあります。
さてユーロドル為替レートを見てみましょう。ユーロドルの16年間の長期のチャートです。
ユーロドルは、1.2のサポートをブレイクしたから、下落基調です。一つの目安はパリティ(1.00のこと)ですね。
ユーロ圏の経済がデフレから脱することができずに、アメリカ経済の調子が落ちなければ、まだまだユーロドルは下げ余地があります。特にECBは、デフレを気にしているので、インフレ率に注目しておきたいと思います。
インフレ率が改善しなければ、ECBはさらなる金融緩和をして、ユーロドルの下押し圧力になるでしょう。
ユーロの株価も見ておきましょう。ユーロ各国にも当然株価がありますが(たとえばDAXなど)、ここではユーロ全体的な動きを表すユーロ・ストックス50指数(euro stoxx 50)を見ておきたいと思います。
リーマンショック(2008年)と欧州債務危機(2011年)ころに大きく落ちていますが、最近では好調です。この欧州株価指数は、日経平均と動きが似ていますね。
株価以外でも、日本と欧州の経済状態は共通点が多いです。共通点とは、デフレ傾向にあること、中央銀行が金融緩和やマイナス金利を導入して景気を刺激をしようとしていること、それにもかかわずインフレ率が改善しないことです。またその前提としてですが、日本とユーロともに成熟国であるが新産業が育っておらずに(アメリカと比較して)成長率がとても低いことです。
これらの指標をみると、ヨーロッパや日本は経済規模は大きいですが、世界経済の牽引役になることは、期待できません。どちらかというと、中国経済が沈むのと合わせて、世界経済の足を引っ張ることになりそうです。
ユーロは今後ともインフレ率に注目していきたいと思います。