為替や株の値動きを統計的に調べると、リバレッジ効果というものが観測されます。(混乱しやすいのですが、リバレッジ効果は、手元資金の何倍もの資金を投資するリバレッジとは名前は同じですが関係ない概念です。)
この記事の内容をざっくりとまとめると以下のようになります。
(1)リバレッジ効果は、株の上昇時と下落時には非対称的な値動きがあることを統計的に確認された市場の特性である。
(2)リバレッジ効果によると、株価の上昇時はゆっくりと上がって行き、株価の下落時には一気に下がることがわかる。
(3)投資・トレードでは、株の上昇時には回転売買が有効であり、株の下落時には回転売買はせずに一旦ショートポジションを持ったらホールドし続けるのが良い。
リバレッジ効果の概要
相場には、上昇100日、下落3日という格言があります。これは、株価が上昇している時は少しづつ時間をかけて上昇していく(100日)に対して、株価が下落する時は短期間(3日)に一気に急落するというものです。
2008年あたりのリーマンショックはまさにこのような値動きをしましたね。。。大雑把にいうと、この格言の趣旨を統計的に効果が確認したものがリバレッジ効果(leverage effect)です。
通常リバレッジというと、FXや先物などで少ない証拠金で、大きな金額のトレードをすることをさしますが、ここでいうリバレッジ効果とは、これとは全く別物です。なぜ、こんな紛らわしい名前を付けたかは不明ですが、とにかく上昇100日、下落3日という格言を実証したものがリバレッジ効果ということを覚えておくと良いと思います。
さて以下でレバレッジ効果の具体的な話をしたいと思います。
リバレッジ効果の実証的な結果
株価の収益率と、ボラティリティの間に負の相関があることが観測されており、これをリバレッジ効果といいます。具体的にリバレッジ効果を計測する指標Lは次のようになります。
L=<(R(s+t))^2 R(s)>
ここでR(s)は、時刻sでの株価の収益率です。上の式の(R(s+t))^2は時刻(s+t)の時のボラティリティ、<>は平均をとる操作を表しています。
リバレッジ効果の指標Lは、ある時点の株価の収益率と、時間t後のボラティリティの間の相関の平均を測っていることになります。リバレッジ効果の指標Lがマイナスということは、収益率がプラスの時はボラティリティは小さく、収益率がマイナスの時はボラティリティが大きいということです。
実際の米国株インデックスのS&Pを構成している個別株のリバレッジ効果を調べたのが次の図です。(リバレッジ効果の指標Lは、個別株全体の平均をとっています。)
上の図で縦軸がリバレッジ効果の指数Lで、横軸が収益率とボラティリティの計測時の時間差tです。
この図を見てもわかる通り、時間差tが小さいほどリバレッジ効果の指数Lは大きくマイナスになっています。これは、具体的にいうと、短期的には、株が上昇しているときは値動きの変動幅(ボラティリティー)は小さいが、株の下落時には変動幅が大きくなるということを示しています。株の上昇時と下落時では、値動きが非対称的になるわけです。
上のことをざっくりというと、株が上昇するときは、じりじり上がっていく。ただ、株が下落するときは、一気にストーンを落ちるという感じです。上昇100日、下落3日なんて言われ方もしますね。。。
これは、株をやっている人であれば、なんとなくわかっている人も多いのではないでしょうか。
リバレッジ効果のトレード、投資への応用
このリバレッジ効果を投資・トレードに応用すると次のようになります。
株の上昇時(景気が上向きの時)、株価は上下動を繰り返しながら長期間をかけてじりじり上がって行きます。そこで、上がったら売り、下がったら買いと、細かいエントリー・利確を積み重ねていく回転売買が有効になります。
逆に、株の下落時は、株価は一気に下がります。なので、細かい回転売買をする時間はなくて、空売り(ショート)ポジションを持ったままホールドして、一気に株価が落ちていくところを捉えるといった感じになります。
株価上昇局面の戦略(買い): 細かいエントリー、利確を繰り返す。回転売買が有効。
株価下落局面の戦略(売り); 最初にショート(空売り)のポジションを持ったらホールドし続けて、下落分を一気に獲る。細かい回転売買はしない。
相場は一見するとランダムに動いているように見えますが、統計的に詳しく調べると、トレードや投資に役に立ついろいろな性質が見えて面白いですね。