最近になって、いわゆるアルゴリズム取引が、株や為替取引の大きなシェアを占めるようになっています。
このアルゴリズム取引とは、コンピューターで自動売買されるシステムによる取引のことで、ロボットトレードとか、高頻度取引(HFT)などと呼ばれることもあります。
特徴は、1秒の1000分の1というとても短い時間でのトレードで、コンピューターによるスキャルピングともいえます。
市場によっては、アルゴリズム取引が全取引量の半分以上をしめることもあるようです。
日本株だと、東京証券取引所にHFT専用のコンピューターを置く場所があって、ミリ秒の速さを競って、高頻度取引をしているようです。まさにロボット対ロボットの戦いですね。
最近の日本株の板の動き方をみると、異常に早くて人間の目では追い切れなくなっています。これもHFTの影響と思われます。
このコンピューターによる高頻度取引(HFT)に対して、「フラッシュボーイズ」というタイトルの本が出版されています。
この本は特にアメリカ市場でのコンピューター取引の実態について解説しています。読んでみると、面白く驚くべき内容が書かれています。
アメリカの株式市場は、日本の市場と違って、株の取引所が複数あって、同じ銘柄がいくつか別の市場でも取引されています。すると、同じ銘柄でも、若干取引価格がずれることがあり、その裁定機会を狙って、コンピューターがアルゴリズム取引をしています。
ここまでは、なんとなく想像できるのですが、驚くべきことがいろいろと出てきます。アメリカには、顧客の注文を一番安く提供している市場で取引しなければいけないというルールがあり、これ自体は一見すると合理的に見えるのですが、実はこのルールを逆手にとって儲けているHFT業者がいるようです。
どう言うことかというと、次のような手口です。ます、HFT業者が自分が所有もしくはコントロールできる市場で、すくないロットで一番安い値で、ある銘柄を売りに出します。(アメリカは市場がたくさんあるので、こういうことができるんですね。)
すると、顧客から依頼された大口の取引をしなければいけない証券会社は、その注文の一部をまずその市場に出さなければいけないので、先のHFT業者に取引が、ばれてしまいます。すると、そのHFT業者が、他の市場に先回りでその銘柄を買占め、そのあとで証券会社が高い値で買わされてしまうというわけです。いわゆる先回り取引をして儲けているわけですね。
他にも、いかに高速で先回り取引をやるかということについて、取引の高速化のために山を掘って光回線を引く話など、驚くべき内容が読みやすく書かれていました。
日本の場合は、取引所が東京取引証券所一か所だけなので、この本にかかれている手法がそのまま適用されているわけではないと思いますが、東証にあるコロケーションサービスを見ると、似たようなアルゴリズムが働いていることは疑いの余地はありません。