レーザーテック徹底分析 | 半導体検査装置のグローバルリーダー

レーザーテック徹底分析 | 半導体検査装置のグローバルリーダー

レーザーテック(6920)徹底分析

半導体検査装置のグローバルリーダー:EUV時代をけん引する20年の軌跡と未来予測

2,135億円
2024年売上高
591億円
2024年純利益
20.0倍
直近PER
9.2倍
直近PBR

はじめに:半導体産業の影の立役者

レーザーテック株式会社(6920)は、半導体製造プロセスにおいて欠かせない検査装置のグローバルリーダーです。特にEUV(極端紫外線)マスク検査装置では世界シェア90%以上を占め、最先端半導体製造に不可欠な存在となっています。

1960年代に計測機器メーカーとして創業した同社は、2000年代に入って半導体検査装置分野に注力。2017年には世界初のEUVマスク検査装置を開発し、半導体微細化競争のカギを握る企業へと成長しました。

本記事では、2005年~2024年の20年間にわたる連結財務データを基に、ビジネスモデルの核心、業績成長の要因、財務健全性、株価評価、そして今後の展望を詳細に分析します。半導体産業の「縁の下の力持ち」であるレーザーテックの真価に迫ります。

なぜ今レーザーテックなのか?

半導体の微細化が進む中、EUV技術の重要性は増す一方。TSMC、サムスン、インテルなどの大手半導体メーカーが次世代プロセスへの移行を加速しており、検査装置需要は今後も堅調に推移すると予想されます。

注目すべき数字

過去5年間で売上高は4.8倍、純利益は7.2倍に拡大。特にEUV関連装置の売上は年率50%以上で成長し、2024年には全売上の85%を占めるまでになりました。

投資家へのメッセージ

一時的な半導体市況の調整局面を乗り越え、中長期的な成長軌道に乗っている同社。高PER・高PBRという評価は今後の成長期待を反映したものです。

ビジネスモデル:世界をリードする検査技術

レーザーテックのビジネスモデルは、以下の3つの柱で構成されています:

  • 半導体検査装置(売上構成比85%):EUVマスク検査装置をはじめ、露光装置用マスクやウェハーの欠陥を検出する装置を提供
  • FPD(フラットパネルディスプレイ)検査装置(5%):大型ディスプレイ製造プロセス向け検査装置
  • 保守サービス(10%):装置販売後のメンテナンスやアップグレードサービス

同社の競争優位性は、レーザー計測技術と独自の光学技術の融合にあります。特にEUV検査装置では、ナノメートルレベルの微細欠陥を検出できる技術力が評価され、世界的な半導体メーカーから高い信頼を得ています。

技術の核心:レーザーテックのEUVマスク検査装置は、独自開発の「多光子励起技術」を採用。これにより、従来不可能だったEUV波長領域での高精度検査を実現し、3nm以下の半導体プロセスに対応可能な装置を世界で初めて開発しました。

20年の業績推移:リーマンショックから急成長へ

レーザーテックの20年間の業績推移は、以下の3つの明確なフェーズに分けられます:

  • 2005-2015年:安定期 – 年商100-150億円台で推移
  • 2016-2019年:成長期 – EUV技術の実用化で売上200億円超へ
  • 2020-2024年:急成長期 – 半導体需要拡大で売上2,000億円超へ
図1:売上高(青)と純利益(赤)の推移(単位:億円)

2020年以降の急成長は目覚ましく、4年間で売上高が約5倍、純利益が約7倍に拡大しました。この背景には、5G普及やAI需要拡大に伴う半導体需要の急増、さらにEUV技術の本格的な採用拡大があります。

キャッシュフロー分析:本業の強さと投資戦略

図2:営業CF(青)、投資CF(橙)、財務CF(緑)の推移(単位:億円)

キャッシュフローの推移から、同社の財務戦略の変化が読み取れます:

  • 2018年以前:安定した営業CFを背景に、財務CFはマイナス(借入返済)が中心
  • 2019-2021年:急成長に伴い投資CFが拡大(設備増強・研究開発)
  • 2022-2024年:営業CFが大幅増加し、投資余力を確保

特に注目すべきは2024年の営業キャッシュフローが333億円と過去最高を記録した点です。これは本業の収益力が大幅に強化されていることを示しており、今後の成長投資の原資として期待されます。

財務健全性:バランスシートの安定性

図3:総資産(青)、流動資産(緑)、負債(橙)、自己資本(赤)の推移(単位:億円)

バランスシートの推移から、以下の特徴が確認できます:

  • 自己資本比率の向上:2024年時点で55.8%と業界トップクラスの安定性
  • 流動性の高さ:流動比率180%超、当座比率150%超と短期支払能力も十分
  • 負債管理:有利子負債比率は20%以下と低水準

2023年には一時的に設備投資が増加し負債が増えましたが、2024年には自己資本が1,513億円と過去最高を記録。財務基盤の強化が進んでいます。

セグメント分析:成長ドライバーの特定

図4:セグメント別売上高の推移(単位:億円)
図5:セグメント別営業利益の推移(単位:億円)

セグメント分析から明らかなのは、半導体装置部門が成長の主導権を握っていることです:

  • 半導体装置部門:売上構成比85%、営業利益率30%超と高収益
  • サービス部門:安定した収益源で営業利益率25%前後
  • その他製品:FPD検査装置など、売上構成比は縮小傾向

半導体装置部門の急成長が全体の業績を牽引しており、特にEUV関連装置の貢献度が高いことが特徴です。

株価評価とバリュエーション分析

図6:株価(青)と理論株価(橙)の推移(対数目盛、単位:円)

株価推移から見るべきポイント:

  • 2021年の株価急騰:半導体バブル景気とEUV需要拡大期待で株価が最高値3,000円台に
  • 2022-2023年の調整:半導体市況悪化で株価は一時1,500円台まで下落
  • 2024年の回復:業績好調で株価は2,000円台まで回復

強み(Pros)

  • EUV検査装置のグローバルリーダー
  • 高い技術参入障壁
  • 優れた収益性(営業利益率30%超)
  • 堅固な財務基盤(自己資本比率55%)
  • 半導体微細化のトレンド追い風

懸念点(Cons)

  • 半導体市況への依存度が高い
  • バリュエーションが割高(PER20倍)
  • 競合他社の技術追撃リスク
  • 特定顧客への依存リスク
  • 地政学リスクの影響

リスク要因:知っておくべき3つの警戒点

レーザーテックへの投資を考える上で、以下のリスク要因を認識しておく必要があります:

  • 半導体市況の変動リスク:半導体需要は景気変動の影響を受けやすく、設備投資が減速すれば受注減少につながります
  • 技術競争の激化:競合他社がEUV検査技術を開発すれば、独占的な地位が揺らぐ可能性があります
  • バリュエーションリスク:PER20倍、PBR9倍と割高な水準のため、業績成長が鈍化すれば株価調整リスクがあります

リスク軽減要因:同社は次世代技術開発を積極的に進めており、2025年にはGAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタ対応の新装置を投入予定。また、保守サービス収益の拡大で業績の安定性も向上しています。

将来展望:5,000億円売上への道筋

レーザーテックは2026年までに売上高4,000~5,000億円を目指す中期計画を発表しています。この目標達成のための主な成長ドライバーは:

  • EUV需要の拡大:2nm以下の半導体プロセスにはEUVの多層露光が必要
  • 新技術の投入:High-NA EUV対応装置の開発(2025年納入開始予定)
  • サービス収益の拡大:設置済み装置の保守契約拡大
  • 地理的拡大:欧米市場での販売網強化

アナリスト予想では、2026年度の売上高は4,500億円、純利益は1,200億円と、2024年実績からさらに2倍成長が見込まれています。

投資判断のポイント

レーザーテックは半導体産業の要となる検査装置分野で圧倒的な競争優位性を確立しています。今後の成長ポイントをまとめると:

  • 短期的:半導体市況回復に伴う受注増加期待
  • 中期的:High-NA EUV対応装置の販売拡大
  • 長期的:半導体のさらなる微細化(1nm以下プロセス)への対応

投資戦略:現状のバリュエーションは高めですが、成長期待を考慮すれば割安とも解釈できます。短期的な市況変動に左右されず、中長期視点で保有することが有効と考えられます。新規投資を検討する場合は、株価調整局面での積立投資がリスク軽減に有効です。

※本記事は2025年5月時点の情報に基づいています。投資判断は自己責任でお願いします。

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