【2025年版】楽天グループ(4755)の20年株式分析レポート:財務・株価・成長性をやさしく解説

楽天グループ(以下「楽天」)は、インターネット通販の楽天市場や旅行予約の楽天トラベル、 キャッシュレス決済やネット銀行を含むフィンテック事業、そして携帯キャリア事業(楽天モバイル)など、 多角的なサービスを展開する日本の大手企業です。 本記事では2005年から2024年までの実際の財務データと株価推移に基づき、 楽天のビジネスモデルと成長性を初心者向けに丁寧に解説します。売上や利益の推移、キャッシュフロー、 財政状態、セグメント別の業績、株価動向とバリュエーション評価、考え得るリスクや今後の展望について、 図表や具体例を用いて分かりやすく説明します。本記事は投資勧誘ではなく情報提供を目的としています。

1. 楽天のビジネスモデル概観

楽天は「楽天経済圏」と呼ばれる自社サービスのエコシステムを構築しています。 そのビジネスモデルは大きく3つの柱に分かれます。 第一に、インターネットサービス事業です。楽天市場(ネット通販モール)や楽天トラベル(オンライン旅行予約)などが該当し、 ネット上の「商店街」として多数の店舗とユーザーを仲介しています。例えば楽天市場では、 ユーザーが買い物をすると店舗が楽天に手数料を支払い、楽天はポイント還元でユーザーを惹きつける、といった仕組みです。

第二の柱はフィンテック(金融)事業で、楽天カード(クレジットカード)や楽天銀行、楽天証券、楽天ペイ(スマホ決済)など 金融サービスを提供しています。楽天カードで買い物をすればポイントが貯まり、楽天市場で使えるなど、 金融と通販が連携してユーザーの囲い込みを図っています。まるで「楽天」という街で銀行口座を持ち、 楽天通貨(ポイント)で買い物をするようなイメージです。

そして第三の柱がモバイル事業、つまり携帯電話通信(楽天モバイル)です。 楽天は2019年に自前の携帯回線サービスを開始し、大手携帯キャリアに挑戦しています。 この事業では巨額の基地局投資が必要ですが、通信契約や関連サービスで楽天経済圏のさらなる拡大を狙っています。 要するに楽天は、「オンラインのデパート」に「銀行」と「携帯会社」を加え、 一つの経済圏でユーザーの日常サービスをまるごと提供しようとしているのです。

2. 売上高と純利益の20年推移

まず、楽天の売上高と最終利益(純利益)の長期推移を見てみましょう。 下図は2005年から2024年までの売上高と純利益の推移を示したものです。 売上高はこの20年間で約18倍に拡大し、2024年には約2兆2,792億円に達しています。 特に2000年代後半から2010年代にかけてECや金融事業の拡大で売上が急成長しました。 一方、純利益は事業投資の影響で大きく変動しており、黒字と赤字を繰り返しています。 2012年以降は携帯事業への先行投資により赤字が続き、 2022年には約3,772億円の最終赤字となりました。

【図1】楽天グループの売上高と純利益の推移(2005~2024年)。 売上高は右肩上がりで成長し、2024年には約2.28兆円に達した。 一方、純利益は携帯事業への投資負担などで大きく変動し、2019年以降は赤字が続いている。 特に2022年は過去最大の赤字となった。

売上高について見ると、楽天は2005年の約1,298億円から2024年には約2兆2,792億円へと、 20年間で爆発的な成長を遂げています。特に2005年(前期比+184.8%)や2006年(+56.6%)などは 大型の企業買収や事業拡大により売上が急増しました。例えば、2005年には楽天はプロ野球球団の買収や 大手企業への出資を行い、それが連結売上に大きく寄与しました。また2010年代前半にはEC利用者の増加や 金融事業の伸びで年率15~20%前後の成長が続きました。

一方、純利益(最終損益)は売上ほど順調ではありません。 楽天は成長のために積極的な投資を行ってきたため、利益が大きくブレやすいのです。 例えば2006年は売上が前年度比+56%増と急拡大した一方で、純利益はわずか27億円(前年比-86%)にとどまりました。 この年は新規事業投資や楽天証券の評価損計上など特別損失が発生し、利益が大幅に圧迫されたとみられます。 その影響で株価も2006年には前年末比-51%下落しています。

また2007年は営業利益がほぼゼロに落ち込む一方、投資売却益で最終利益は369億円の黒字となりました。 しかし2008年には世界金融危機の影響もあり、楽天は約550億円もの連結最終赤字に転落しています。 このように外部環境や一時的な損益要因で、楽天の利益は乱高下してきた点に注意が必要です。 特に2010年代後半からは携帯キャリア事業への巨額投資が利益を圧迫し、 2019年以降4年連続の赤字となっています。2022年の最終赤字は約3,394億円にも上り、 楽天の過去最大の損失となりました。

ただ、2023年~2024年にかけて赤字幅は縮小傾向にあります。 2024年12月期の純損失は約1,624億円と、前年(2023年)の約3,395億円赤字から半分以下に改善しました。 携帯事業の損失縮小や一部資産売却による効果で、利益面は底を打ちつつあるようにも見えます。 もっとも、依然として大幅な赤字であることに変わりはなく、黒字転換にはさらなる収益改善が必要でしょう。

3. 営業CF・投資CF・財務CFの推移と解説

次に、楽天のキャッシュフロー計算書の推移を確認します。キャッシュフローは企業のお金の流れを示し、 営業活動によるCF(本業の儲け)、投資活動によるCF(設備投資やM&Aに使ったお金)、 財務活動によるCF(資金調達や借入返済の動き)に分けられます。 下図では2005年から2024年までの営業CF・投資CF・財務CFの推移をプロットしました。

【図2】楽天グループの営業キャッシュフロー(営業CF)、投資キャッシュフロー(投資CF)、 財務キャッシュフロー(財務CF)の推移(2005~2024年)。営業CFは本業の現金収支、 投資CFは設備投資や企業買収等への支出、財務CFは資金調達や返済の状況を示す。 グラフから、楽天は成長投資のため恒常的に投資CFが大幅なマイナスとなり、 それを財務CFの資金調達で賄っていることが読み取れる。

楽天のキャッシュフロー構造を見ると、営業CFは黒字基調ながら年によってばらつきがあります。 例えば楽天市場など既存事業が好調だった2018年は営業CFが約1,456億円のプラスでしたが、 携帯基地局投資が本格化した2022年には約2,620億円のマイナスとなりました。 携帯事業関連の設備投資や顧客獲得費用で、本業の現金収支が一時的に悪化したためです。

一方、投資CFは長年にわたり大幅なマイナスが続いています。これは楽天が成長のために積極投資を続けている裏返しです。 2000年代後半には各種企業買収や出資(例:TBS株取得や楽天カード設立など)に資金を投じ、 2005年の投資CFは約1,441億円の流出でした。その後も、クレジットカード・銀行・証券といった金融事業への投資や、 近年では携帯基地局の建設投資が嵩み、2019年以降の投資CF流出額は毎年5,000億円規模に膨らんでいます。

この潤沢な投資資金をどう捻出しているかを見ると、グラフの通り財務CFが常に大きなプラスとなっています。 楽天は必要資金を株式や社債の発行、銀行借入などで調達してきました。 特に携帯事業への投資期である2020~2022年には、財務CFがそれぞれ約8,081億円、1兆4,026億円、1兆4,867億円と 巨額の資金流入を記録しています。これは楽天が増資(新株発行)や社債発行により市場から資金を調達した結果です。

要するに「投資CFの巨額マイナスを財務CFの巨額プラスで埋め合わせている」状態であり、 これは成長企業によく見られるパターンです。楽天の場合、本業(EC・金融)でキャッシュを稼ぎつつ、 それ以上に将来の成長(携帯など)へ投資しているため、フリーキャッシュフローは大幅なマイナスが続いています。 この点は、新規事業が軌道に乗り投資フェーズが落ち着けば改善が期待できますが、 それまでは綱渡りの資金繰りが続くことになります。

4. 総資産・流動資産・負債・自己資本の推移と解説

続いて、楽天の貸借対照表(バランスシート)の推移を見てみましょう。 総資産(会社が保有する資産の総額)、負債(他人資本)、自己資本(株主資本)の観点から、 財務健全性を解説します。さらに流動資産(現金やすぐ現金化できる資産)も含めて、 会社の体力を確認します。

【図3】楽天グループの総資産・負債・自己資本・流動資産の推移(2005~2024年)。 総資産は金融事業(預金等)と携帯基地局投資で急拡大し、2024年末には約26.5兆円に達した。 負債も預金や社債・借入金の増加で約25.3兆円まで膨らみ、 自己資本比率はわずか3~5%台に低下している。流動資産(主に現金・預金)は6兆円強と豊富だが、 同時に流動負債も巨額であり流動比率は低い。

楽天の総資産は、金融子会社の保有資産や携帯事業の設備投資に伴って急拡大しました。 2005年末の総資産は約1.65兆円でしたが、2024年末には約26.5兆円と、この20年で約16倍に膨れ上がりました。 特に2013年以降、楽天銀行の預金残高や楽天カードの未収債権(カード利用残高)の増加に加え、 2019年以降の基地局設備の増強により資産規模が大きく跳ね上がっています。

総資産の内訳を見ると、流動資産(現金・預金等すぐ現金化可能な資産)も巨額です。 2024年末時点で楽天の流動資産は約6.17兆円あり、その多くは楽天銀行における現金預金(顧客の預金)です。 しかしこれは同時に負債側では預金(顧客への将来返還義務)として計上されます。 実際、2024年末の楽天の負債総額は約25.3兆円にも達しています。

負債の膨張に対し、楽天の自己資本(株主資本)は約0.93兆円(2024年末)に留まります。 自己資本比率で見ると、2000年代半ばは20%以上あったものが年々低下し、 近年はわずか3~5%程度まで低下しました。 これは金融系子会社を抱える企業にありがちな現象で、銀行預金は負債、融資は資産となるため 貸借対照表が膨らみ、相対的に自己資本比率が薄まるのです。

この数字から言えるのは、楽天の財務レバレッジ(他人資本への依存度)が非常に高いということです。 もっとも、負債の大部分は楽天銀行の預金など長期安定資金であり、返済期限のある借入とは性質が異なります。 また6兆円超の現金等(流動資産)を手元に抱えており、直ちに資金繰りが逼迫しているわけではありません。 しかし、自己資本が薄い状態だと一度巨額損失が出た際に債務超過に陥るリスクもあります。 楽天は資本増強策として子会社上場や外部資本受入れを進めており、 2023年には楽天銀行を上場して約3,323億円の資金調達を実施しました。今後も財務健全性の改善が課題と言えるでしょう。

5. セグメント別売上高・営業利益の推移と分析

それでは、楽天の事業セグメント別の業績を詳しく見てみます。 楽天は前述の通り主要セグメントとして「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の3部門があります。 各セグメントの売上高と営業利益の推移(2018~2024年)をグラフ化したのが下の図です。 2018年以前にも楽天はこれら事業を展開していましたが、当時は携帯事業が存在しなかったため、 比較可能な2018年以降で示しています。

【図4】楽天グループのセグメント別売上高推移(2018~2024年)。 インターネットサービス(EC等)、フィンテック(金融)、楽天モバイル(通信)の各売上高を表す。 ECは堅調に成長し1兆円規模に達した。金融も右肩上がりで、2024年に約8,204億円。 携帯は加入者増で売上拡大したが、2023年に料金値下げの影響で一時減少、2024年は再び増収。
【図5】セグメント別営業利益の推移(2018~2024年)。 インターネットサービス、フィンテック、楽天モバイルの各営業利益(億円)を示す。 ECと金融は安定して黒字を確保しているが、携帯部門は巨額の赤字が続いている。 ただし2021年をピークにモバイルの赤字幅は縮小傾向にある。

グラフを見ると、まずインターネットサービス(EC等)部門は堅調に売上を伸ばしています。 2018年に約6,767億円だった売上高は、2024年には約1兆2,820億円に達し、 楽天全体の売上の約半分強を占める最大セグメントです。この部門の営業利益率は概ね10~15%前後で推移しており、 安定した収益源となっています。

フィンテック(金融)部門も売上・利益ともに右肩上がりで推移しています。 売上高は2018年の約4,245億円から2024年には約8,204億円へとほぼ倍増しました。 楽天カードのショッピング取扱高増加や、楽天銀行の預金残高拡大に伴う利息収入、 楽天証券の利用者増などが要因です。この部門の営業利益率は常時15%前後と非常に高水準で推移しており、 2024年の営業利益は約1,533億円と、楽天全社の利益を支える柱となっています。

一方、楽天モバイル(携帯)部門は大きな赤字が続いています。 売上高は2018年の約899億円から2024年には約4,406億円と急拡大しましたが、 基地局整備や顧客獲得の費用が重く、営業損益は2018年以降ずっと赤字です。 損失額は拡大の一途をたどり、2021年には約4,212億円の営業損失となりました。 しかしその後は、料金プラン改定やローミング費用減少により損失幅が縮小しつつあります。 2024年の営業赤字は約2,089億円まで圧縮されました。 楽天モバイルは契約者数こそ順調に増えたものの、 基地局投資の減価償却や他社回線レンタル費用が収益を圧迫しています。 楽天は携帯部門の年度黒字化を2026年度に達成する見通しと表明しており、 コスト削減と加入者純増によって損益改善を図っている最中です。

総じて、楽天のセグメント別構造を見ると 「ECと金融で稼いだ利益を携帯に注ぎ込んでいる」状態といえます。 EC・金融の2本柱は安定して高収益を生み出しており、 そのおかげで携帯の巨額赤字を全社でカバーできている状況です。 これは戦略的には楽天経済圏拡大のための投資と位置付けられ、 携帯事業が軌道に乗れば将来的な利益成長につながる可能性があります。 ただし、それまでの間は既存事業の稼ぐ力が不可欠であり、 ECや金融の競争力維持も重要な課題となるでしょう。

6. 株価動向の要因分析(製品リリース、業績、社会情勢など)

それでは、楽天の株価推移とその要因について解説します。 楽天の株価(分割調整後の年次終値)は下図のように推移しており、 業績や外部環境に応じて大きく変動してきました。

【図6】楽天グループの株価推移(年末終値ベース、2005~2024年、調整後株価)。 実線は楽天株の実際の終値、点線は理論株価(EPS×15倍)を示す。 株価は業績悪化局面で大きく下落し、好材料時に急騰する動きを繰り返している。

楽天株は2000年代からボラティリティ(変動)が高い銘柄として知られています。 2005年末の株価は調整後で1,140円でしたが、ライブドアショックなどもあった2006年には 一時株価が急落し、年末終値は555円と前年から半値以下になりました。 これは当時の業績悪化に加え、ITバブル崩壊後の新興市場低迷の影響もありました。

その後、2007年~2008年にかけては概ね横ばいでしたが、リーマンショック直後の2008年末時点で570円と低迷しました。 2009年には業績黒字転換や景気回復期待から株価は持ち直し、前年比+24%の707円で終えています。

楽天株が大きく飛躍したのは2013年です。2013年末の株価は1,564円と、年間で+132%という急騰劇でした。 この背景には、楽天が2013年に大型買収(電子書籍のKobo社や動画配信サービスの買収)を行い グローバル展開を加速させたこと、そして国内EC事業の成長で過去最高益を更新したことがあります。

しかしその後、携帯参入計画が明らかになった2014年以降は株価が軟調となります。 2015年末には1,403円、2016年末には1,145円まで下落しました。これは携帯事業への巨額投資負担が嫌気されたほか、 競合の台頭による楽天市場の成長鈍化懸念もあったためです。

その後、2019年になると楽天モバイルのサービス開始や楽天カード会員数の急増といった明るい話題もあり、 株価は935円(前年比+27%)まで回復します。しかしコロナ禍直後の2020年~2022年にかけては再び下落基調となり、 特に2022年末の株価596円は前年比-48%という大幅下落でした。

2023年以降、楽天株は持ち直しの動きを見せています。 2023年末は628円(+5.4%)とわずかな上昇でしたが、2024年は携帯赤字縮小など好材料から36.8%の上昇で858.9円となりました。

以上のように、楽天の株価は業績と成長ストーリーに敏感に反応してきました。 ECや金融が順調で利益拡大期には株価は大きく買われ、一方で携帯投資などで利益圧迫時には売られる傾向があります。 今後も重要な製品・サービス発表や、業績の黒字転換などが株価にインパクトを与えるでしょう。

7. バリュエーション分析(PER・理論株価と比較)

楽天株のバリュエーション(投資価値評価)を、株価収益率(P/E)や理論株価との比較で考えてみます。 上の図では、楽天の年末株価と、楽天の当期EPS(1株利益)×15倍の値(理論株価の一例)をプロットしました。 P/E=15倍は株式市場での平均的な目安とも言われますが、楽天の場合この理論株価と実勢株価の乖離が大きい時期が度々あります。

例えば2013年は、EPS約33.6円に対し年末株価1,564円とP/E約46倍にも達していました。 この時期は市場が楽天の高成長を織り込んで買い過ぎていた状態で、 理論株価(約503円)の3倍以上が付いていた計算です。

一方、2018年末はEPS105円に対し株価736円と、P/E約7倍と割安でした。 これは携帯投資負担から楽天の将来利益成長に悲観的な見方が広がり、 利益水準に比して株価が低く抑えられていたことを意味します。

最近では、楽天は最終赤字のためPERが算出不能な状況が続いています。 そのため理論株価ラインはグラフ上で0円に張り付いています。これは 「理論的には株価はゼロ」という極端な評価ですが、 実際の株価が600~800円台で推移しているのは、 投資家が楽天の将来黒字化と事業価値に期待を寄せているからです。

楽天の適正株価をどう見るかは難しい問題ですが、 一つの考え方として「携帯事業が収益化すれば楽天全体で数千億円規模の純利益が見込める」と仮定すれば、 その15倍は現在の株価を大きく上回る可能性もあります。

8. リスクと注意点(初心者向け事例と留意事項)

● 携帯事業の行方

最大のリスクは楽天モバイル事業の不確実性です。 楽天は巨額の投資を行って携帯キャリアに参入しましたが、 先行するNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクという強力な競合がいる市場でシェアを取るのは容易ではありません。 仮に携帯事業の黒字化が大幅に遅れると、楽天全体の財務負担が増し、 最悪の場合追加の資金調達が必要になるリスクがあります。

● 財務状況と金利上昇

前述のように、楽天は自己資本比率が低く負債依存度が高い企業です。 そのため、金利上昇局面では社債や借入の利払い負担が重くなり、利益を圧迫する可能性があります。 実際、楽天が2022年に発行した外貨建て社債は利率が10%を超えており、 資金繰りへの市場の懸念が表面化しました。

● 競争環境の変化

楽天の各事業は競争が激しい分野に属しています。 例えばECではAmazonやヤフーショッピング等、金融ではメガバンクやフィンテック新興企業、 携帯では前述の大手3社に加えMVNOなど多くの競合がいます。そのため、 顧客獲得コストの増加や手数料率の引き下げなどで収益が想定より悪化するリスクがあります。

● ガバナンスと経営体制

楽天は創業者である三木谷浩史氏が代表取締役会長兼社長を務めており オーナー経営色が強い企業です。トップのリーダーシップで大胆な投資と事業拡大を行ってきた反面、 経営判断の巧拙が企業運命を左右するリスクも孕みます。

9. 今後の展望(製品計画・事業成長の見通し)

最後に、楽天の今後の展望について考察します。 楽天経営陣は「第2の創業」と位置づける携帯キャリア事業の成功にグループの将来がかかっていると強調しています。

実際、楽天モバイルは2025年にはEBITDA黒字化、 2026年には通期営業黒字化を目標に掲げています。 2024年時点で既に月次ベースではEBITDAがプラスに転じ始めており、 基地局投資も峠を越えたことから、今後は損益改善スピードが加速する可能性があります。

携帯事業が黒字転換すれば、楽天グループ全体の収益構造は大きく好転します。 オンラインとオフラインを融合した戦略や生成AIの活用、 フィンテックの海外展開など新たな挑戦も続いており、 成長ドライバーは国内EC・金融から国外へと広がる可能性があります。

10. まとめと免責事項

ここまで、楽天グループのビジネスモデル、20年間の財務・株価の歩み、 セグメント別の特徴、そして今後の展望について解説しました。 楽天はECと金融で築いた盤石の基盤を持ちながら、 新たな挑戦(携帯事業)に果敢に打って出ている企業です。

株価もその波を反映して大きく上下してきましたが、楽天経済圏の拡大による将来の成長ポテンシャルと、 現時点で直面する課題(携帯損失・財務リスク)を両天秤にかけて考えることで、 投資判断の材料が見えてくるでしょう。本記事がその一助になれば幸いです。

【免責事項】 本記事は情報提供を目的とし、特定の投資行動を推奨するものではありません。 株式投資には価格変動リスクがあり、最終的な判断はご自身の責任でお願いいたします。

【参考資料】楽天グループ有価証券報告書、決算説明会資料、Yahoo!ファイナンス、株探、Minkabu等より作成