事業モデルの概要
東京エレクトロン(TEL)は、半導体を製造するための装置を作る会社です。言い換えれば、チップメーカーのために「キッチン設備」を提供しているような存在です。例えば、シリコンウェハーに回路を描く工程は、お菓子にデコレーションを施す作業に似ています。TELのコーター・デベロッパーという装置はフォトレジスト(感光材)をウェハーにムラなく塗り、現像する機械で、まるでケーキに均一にクリームを塗って模様を描く調理器具のような役割を担います。また、エッチング装置(ドライエッチャ)は不要な部分を原子レベルで削り取る装置で、これは精密にクッキーの型抜きをする工程に例えられます。こうした高度な装置群により、ナノメートルサイズの半導体回路を作り込むことが可能になります。
TELの主力事業は半導体製造装置で、これは売上の大半を占めます。他にも、液晶パネル向けのFPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置や、半導体デバイスの商社機能(電子部品の販売)なども手掛けてきました。例えば2007年3月期の連結売上高をみると、半導体製造装置が約75%、FPD製造装置が約12%、電子部品等のその他事業が約13%を占めていました。現在ではFPD装置事業は規模が小さくなり、また商社機能は子会社の東京エレクトロンデバイスとして独立しているため、実質的に「半導体製造装置一本足」とも言えるビジネスモデルになっています。TELはコーター・現像装置で世界シェア80–90%を持つなど、一部製品で圧倒的な強みを有し、世界の半導体製造装置市場でトップクラスの企業です。
要するに、東京エレクトロンは「半導体を作るための装置」を作るメーカーです。その装置群は、半導体という最先端テクノロジーの「料理」を支えるキッチン用品のようなもの。極めて精密かつ高価ですが、スマートフォンやパソコン、データセンターに欠かせないチップを生み出すために必要不可欠な存在です。
売上高と純利益の推移
東京エレクトロンの過去20年間(2005年~2024年)の売上高と純利益の推移を見ると、半導体市場の波と歩調を合わせた成長と変動が読み取れます。下のグラフは、連結売上高と親会社株主に帰属する純利益の推移です。リーマンショック直後の2009年3月期には売上高が前期比▲43.9%と激減し、純利益も75億円まで落ち込みました。翌2010年3月期にかけては純損失を計上する事態となり、この不況期には半導体製造装置の需要が大きく冷え込んだことが伺えます。
グラフから明らかなように、TELの業績は半導体景気に連動しています。2009年3月期から2010年3月期にかけて純利益が赤字転落した一方、その後の2011年3月期には半導体需要が急回復し売上・利益ともV字回復しました。特に2011年3月期は売上高が6,687億円(前期比+59.7%)と急伸し、純利益も719億円の黒字へ浮上しています。以降、スマートフォンやタブレットの普及を背景にメモリ投資が活発化した2017~2018年頃には売上・利益が大きく伸長しました。実際、2018年3月期の売上高は前期比+41.4%の1兆1,307億円、純利益は2,043億円(+77.4%)と過去最高を更新しています。
しかし、メモリ市況の調整期には再び業績が落ち込みます。2019年3月期には売上高が前期比▲11.8%の1兆1,272億円に減少し、純利益も1,852億円と約25%減益となりました。直近では、データセンター向けを中心とした半導体需要の高まりから2022年3月期に売上高2兆円・純利益4,370億円と史上最高益を達成。その後2024年3月期は半導体需要の一服により売上高1兆8,305億円、純利益3,639億円と若干の調整が見られます。
総じて、東京エレクトロンの20年間の成長は顕著で、2000年代半ばには売上高6千億円規模だったものが直近では2兆円規模へと拡大しました。純利益も数百億円規模から一時は4千億円を超えるまでに増加しています。ただし、その道のりは半導体景気に左右される「シリコンサイクル」に伴うアップダウンの連続でした。そのため、好調期には過去最高益を更新する一方、不況期には減収減益や赤字も経験しており、業績ボラティリティは高いと言えます。
キャッシュフローの動向
次に、キャッシュフロー計算書の推移を見てみましょう。以下のグラフは2008年3月期から2024年3月期までの営業活動・投資活動・財務活動それぞれのキャッシュフロー(年間)を示したものです。営業キャッシュフロー(青色)は概ね純利益の増減と歩調を合わせていますが、設備投資やM&Aによって投資キャッシュフロー(橙色)が大きく変動する様子も読み取れます。
リーマンショック期の2009年3月期には、営業キャッシュフローが大幅減少(前期比▲30%の810億円)し、投資キャッシュフローは1,606億円のマイナス(設備投資や買収による資金流出)となりました。この結果、フリーキャッシュフローも▲796億円と大幅なマイナスに陥り、同社は手元資金を取り崩す形となりました。実際、2009年3月期末の現預金残高は659億円と前期の1,935億円から半分以下に減少しています。
その後、半導体市場の回復に伴い営業CFは再び増加に転じ、2015年3月期頃まで安定的にプラスを確保しました。2016年3月期には営業CFが694億円に対し投資CF▲1,500億円・財務CF▲1,386億円となり、特に投資キャッシュフローの大幅マイナスが目立ちます。これは当時予定されていた米アプライド・マテリアルズ社との大型合併計画(最終的に2015年に中止)に絡む動きや、設備投資支出の増加が影響した可能性があります。
直近の2022年3月期・2023年3月期は営業キャッシュフローがそれぞれ2,834億円、4,263億円と過去最高水準になりました。設備投資も旺盛で、2023年3月期の投資CF▲417億円はクリーンルーム増設や開発設備への投資を反映しています。また、TELは配当性向50%の業績連動型配当を基本方針としており、好業績に伴い財務キャッシュフロー(主に配当支払い・自社株買い)も2018年以降増加傾向です。2023年3月期の財務CF▲2,565億円は、配当や株主還元により多額の資金が社外流出したことを示しています。
資産・負債・純資産の推移
東京エレクトロンのバランスシート(貸借対照表)は、この20年で大きく拡大しました。総資産は2005年3月期の6,443億円から2024年3月期には24,564億円と、およそ4倍に増えています。一方で自己資本比率(純資産/総資産)は概ね60~70%台を維持しており、健全な財務体質を保ってきました。以下のグラフは総資産・負債・純資産の推移です。
2008年3月期には総資産が7,928億円と前期比+15.6%増加し、この時期に有利子負債こそありませんでしたが(実質無借金経営)、運転資金需要から「買入債務」などの負債が増えたことがうかがえます。当時の自己資本比率は67.5%でした。リーマンショック後の2009年3月期には総資産が6,689億円へ縮小しましたが、その後は業績回復とともに再び増加基調となりました。
純資産(株主資本+非支配株主持分)は利益剰余金の積み上げにより着実に増加しました。2005年3月期の純資産は3,322億円でしたが、2024年3月期には1兆7,602億円に達しています。特に2021年3月期~2023年3月期にかけて純資産が急増しており、この間の好調な利益(3期間で累計約1兆1千億円)によるものです。一方、TELは余剰資金で積極的に自己株式の取得も行っており、その結果2024年3月期の株主資本(自己資本)は1兆4,780億円と純資産全体の約84%に相当します(残りは非支配株主持分)。
総じて、東京エレクトロンの財政状態は堅固です。自己資本比率は常時60~70%台と高水準で、有利子負債は少なく実質無借金経営が続いています。豊富なキャッシュ(2024年3月期末の現金及び預金4,623億円)を抱え、将来の研究開発投資や株主還元に備える体制が整っています。
セグメント分析(事業・地域)
事業別の状況:前述のとおり、現在の東京エレクトロンは事実上「半導体製造装置」単一セグメントですが、過去にはFPD装置や電子部品販売事業もありました。例えば2000年代半ばには、液晶ディスプレイ生産向け装置や、グループ内の商社(東京エレクトロンデバイス)による半導体部品流通も売上に寄与していました。しかしFPD装置事業は韓国・台湾メーカーとの競争激化やパネル市場の変動で規模縮小し、電子部品商社部門は2010年代に分社化されています。現在のTELの収益源はほぼ全て半導体製造装置関連であり、2024年3月期からセグメント情報も「半導体製造装置」に一本化されています。
製品ポートフォリオを見ると、TELはリソグラフィ工程用のコーター・デベロッパー装置で圧倒的シェアを持つほか、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置などを幅広く提供しています。2021年度実績では、TELの装置販売先を用途別に見るとロジック(ロジック半導体)が47%、フラッシュメモリが34%、DRAMが19%と、メモリとロジック向けがバランスしていました。この多様な製品ラインアップにより、ロジック景気・メモリ景気のどちらにも一定の売上機会を確保できる体制となっています。
地域別の状況:東京エレクトロンは売上の約9割を海外市場から得ています。2005年3月期の地域別売上構成は、日本39%、北米14%、欧州12%、韓国22%、その他13%(主に台湾)でした。当時、中国向けはほとんどありませんでしたが、その後中国市場が急成長します。2023年3月期には、中国が売上全体の44.4%を占め最大の地域となりました。これは米中対立下で中国が半導体の国産化を急ぐ中、製造装置を大量購入したことが要因です。他方、日本向けは10.1%、北米9.2%、欧州6.5%、韓国15.5%、台湾11.2%と、中国・アジア偏重の構図になっています。
地域別の売上推移から、東京エレクトロンがいかにグローバル需要に依存しているかが分かります。特に近年の中国比率急増は顕著ですが、これは半導体製造装置業界全体の傾向でもあります。ただし米国の対中輸出規制強化により、今後中国向け売上が減少するリスクもあります(詳細は後述のリスク要因にて言及)。一方でTELは製品競争力が高く、仮に一部市場が制限されても他の地域で需要を取り込める立場にあるとも言われています。例えば米国の規制で中国販売が制約されても、最終的には台湾や韓国など他地域への販売増で補える可能性が高いとの見方もあります。
株価の推移と要因分析
東京エレクトロンの株価は、この20年で劇的な変動を遂げています。2005年前後には株価(調整後)が数百円台だったものが、2021年には一時18,000円を超える水準まで上昇しました。以下の株価推移グラフは、年末時点の株価を株式分割調整後でプロットした概略図です。
株価の変動要因を振り返ると、まず2008年のリーマンショック時には業績悪化を織り込んで株価が急落しました。2007年に1万円近くあった株価は、2008年末には3分の1以下にまで下落しています。その後、半導体需要回復に伴って2013年頃まで株価は持ち直しました。2013年にはアベノミクス相場の追い風も受け、TEL株は上場来高値を更新します。さらに2017~2018年にはメモリ投資ブームで業績が過去最高益を連発し、それに伴い株価も急騰。2018年には株式分割(2015年の1:3分割に続き、2023年にも1:3分割)を考慮しても実質2万円台後半の高値を付けました。
しかし、2018年後半から2019年にかけて米中貿易摩擦やメモリ価格下落により半導体製造装置投資が減速すると、TEL株も大きく値下がりします。実際、2018年秋から2019年末にかけて株価は半分近くに調整し、配当利回りが一時5%近くに達する場面もありました。その後、2020年の新型コロナショックでは株価が乱高下したものの、在宅需要やデータセンター需要拡大を背景に半導体需要が底堅く、2020年後半から2021年にかけて株価は急騰。2021年末には実質5万円超(分割調整前で15万円超)の株価となり、時価総額は一時10兆円を超えました。
直近では、2022年にグロース株調整や半導体市況の踊り場を受けて株価が下落し、2022年秋には52週安値16,560円を記録しました。しかし2023年に入るとAIブームや設備投資サイクル再開への期待から株価は持ち直し、2023年末時点では2万円台半ばを回復しています。総じてTELの株価は業績と投資マインドに敏感に反応し、半導体景気の山と谷で大きく揺れ動く傾向があります。
株価要因として注目すべきイベントもいくつかありました。例えば2015年のアプライド・マテリアルズ社との経営統合計画は、実現すれば世界最大の装置メーカー誕生となる野心的な試みでしたが、規制当局の反対で中止となりました。このニュースは当時株価にも影響を与えています。また、TELは安定株主として東京証券取引所に上場する他企業との資本提携や持ち合いも行っており、その株式評価額の変動も含み損益を通じて株価に影響し得ます。ただ、基本的には半導体需要・技術トレンドこそが株価の主要な決定要因であり、個別イベントの影響は限定的です。
株価バリュエーション(理論価格との比較)
東京エレクトロンの株価水準をバリュエーション面から見ると、近年は利益成長期待を織り込んでやや割高とも言えます。一般的に日本株では予想PER(株価収益率)15倍前後が一つの目安とされます。2024年3月期のEPSから算出した理論株価(EPS×15倍)は、実際の株価を下回る水準になると試算されます。下の図は各年の実際の株価と、理論株価(EPS×15倍)を単純に試算したものをプロットしたイメージです。
このように見ると、東京エレクトロン株は過去の平均や理論値に比べ高めに評価されているようにも思えます。ただ、これは投資家が今後の成長性や収益力の向上を織り込んでいるためと考えられます。実際、2023年秋頃からのAI需要拡大や各国の半導体製造拠点新設計画など、同社を取り巻く事業環境にはポジティブな材料が多く、将来の利益拡大期待がPERを押し上げている面があります。
参考までに、同業他社と比較しても、半導体製造装置セクター全体として成長期待から高めのPERが容認されている状況です。また、株主還元策(後述の配当など)も総合的に考慮すると、単純なPER比較以上の評価が与えられているとも言えるでしょう。
配当と配当利回り
東京エレクトロンは株主還元に積極的な企業で、配当政策は「配当性向50%を目処とした業績連動型」となっています。これは、当期純利益の半分を目安に配当金として支払う方針です。その結果、業績の増減に応じて配当額も上下します。下図は直近20年間の1株当たり年間配当額と、期末株価に基づく配当利回りの推移です。
2009年3月期、TELは業績悪化により無配(年間配当0円)に踏み切りました。その後、業績回復とともに2010年3月期に年間16円で配当を再開し、以降は増配基調が続きます。特に2015年3月期以降、業績好調に伴い配当額が急伸し、2018年3月期には年間497円、2019年3月期には758円と過去最高の水準となりました。配当性向50%の方針通り、2019年3月期の親会社純利益の半分程度が配当に充てられています。
しかし、半導体市況が悪化した2020年3月期には配当は588円へ減額されました。それでも配当性向は50%程度を維持し、利益減に合わせた適切な調整と言えます。2021年3月期は業績回復で780円、2022年3月期は1,366円と大幅増配、2023年3月期も1,474円と増配傾向が続きました。もっとも2024年3月期は業績が前期比で減益となったため、配当も前期比減額の見通しです(配当性向は引き続き50%水準)。
配当利回りの観点では、株価変動に伴い年によって大きく異なります。リーマンショック後の2009年は無配のため利回り0%でした。2019年3月期には株価下落もあり期末利回りが4.7%に達する高い水準でした。逆に株価が急騰した2021年3月期は利回り1.7%とかなり低い水準でした。直近では、株価が持ち直した2023年3月期末時点で利回り約2.7%、2024年3月期も2%台後半と見込まれます。総じてTELは安定配当志向ではなく業績連動配当のため、利回りも株価と利益に連動して上下する傾向があります。
なお、TELは余剰資金で積極的な自社株買いも実施しており、2022~2023年にかけて約1,500億円規模の自己株消却を行いました。これにより発行株式数が減少し、1株当たり利益や1株当たり配当が押し上げられる効果も出ています。株主還元策としては増配と自己株消却の双方を駆使しており、株主にとって魅力的な姿勢と言えるでしょう。
リスク要因
東京エレクトロンの事業にはいくつかのリスク要因があります。主なものを以下に挙げます。
- 半導体市場のサイクル変動: 半導体業界は需給バランスの波が激しく、設備投資が繁忙と停滞を繰り返します。このシリコンサイクルによりTELの受注・売上も上下し、業績が不安定になるリスクがあります。実際、2008–2009年や2018–2019年に需要急減による減収減益を経験しています。
- 地政学リスク(対中輸出規制など): TELの売上の約4割は中国向けであり、米国の先端半導体装置輸出規制強化によっては中国向け販売が制約される可能性があります。この規制強化はTELの売上機会を減少させるリスクです。ただ、TELは技術優位性が高く、中国以外の地域で需要を補完できるとの見方もあります。
- 技術革新のリスク: 半導体製造技術は急速に進歩しており、新技術への対応を誤ると装置が陳腐化する恐れがあります。例えばEUVリソグラフィ導入や新材料の台頭など、大きなパラダイムシフトに乗り遅れると競争力低下につながります。TELは毎年売上の約10%以上を研究開発に投入していますが、それでも将来の技術動向を正確に読める保証はありません。
- 競争環境: 半導体製造装置業界は寡占市場ですが、米国のアプライド・マテリアルズやラムリサーチ、オランダのASMLなど強力な競合が存在します。特に成膜装置やエッチング装置分野では海外大手との競争が激しく、市場シェア争いの中で受注を失うリスクがあります。また、中国企業が将来的に装置開発に参入してくる可能性も指摘されています。
- 為替変動: TELの製品販売は円建て契約が多く、為替影響は限定的とされていますが、原材料や部品の調達コストや海外子会社の業績換算などで為替が利益に及ぼす影響はゼロではありません。円高が長期化すると競争力が相対的に低下するリスクもあります。
これらのリスクに対して、東京エレクトロンは生産拠点の海外展開や、技術提携・買収による技術ポートフォリオ拡充などで対応を図っています。またバランスシートの健全性を保ち、有事に備えた体力も十分です。とはいえ半導体景気そのものの波は避け難く、TEL株への投資においては景気サイクルと規制動向を注視する必要があるでしょう。
将来の展望
今後の東京エレクトロンの展望について、ポジティブな要素が多く見込まれます。まず長期的な半導体需要はIoT、5G、AI、自動運転などの新分野で拡大が予想され、これらは先端半導体への需要を喚起します。特に生成AIの普及に伴いデータセンター向けの高速プロセッサやメモリ需要が急増しており、それらを製造するための装置需要も底堅いでしょう。
各国政府も半導体産業の国内回帰を推進しています。米国や欧州、日本では巨額の補助金を投じて新工場建設が計画されており、TELにとっては受注拡大の好機となります。実際、米国のIntelや台湾TSMCの新工場に向けた装置調達リストには、日本製の装置が数多く含まれています。東京エレクトロンも顧客と密接に連携し、最先端プロセス対応の装置供給を進めるでしょう。
技術面では、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置はASML社が独占していますが、TELはEUVに関連する周辺装置(コーター・デベロッパー等)で不可欠な地位を占めています。また、次世代のリソグラフィとして検討されるハイブリッドリソグラフィやマスクレス技術においても、TELの精密成膜・エッチング技術が活用される可能性があります。さらに、先端パッケージング(チップレット技術)分野でも装置需要が増えており、TELは関連装置開発を進めています。
こうした追い風に加え、東京エレクトロン自身も経営目標を掲げて成長戦略を推進しています。中期経営計画では売上高3兆円超を視野に研究開発・設備投資を拡大しており、アフターサービスビジネスの強化やグリーンエネルギー対応など新たな価値創造にも取り組んでいます。人的資本の充実やDX推進など経営基盤強化策も講じており、総合力で競争優位を維持する方針です。
もっとも短期的には、2024年は半導体需要の踊り場局面とも言われ慎重な見方も必要です。しかし中長期的には半導体市場は年平均10%前後の成長が見込まれ(AI・車載向けが牽引)、装置メーカーであるTELもその恩恵を受けるでしょう。特にTELは先端ロジック・メモリ両方に顧客基盤を持ち、高収益な製品ポートフォリオを築いているため、市場拡大に伴い利益成長余地は大きいと考えられます。
結論と免責事項
東京エレクトロンは、過去20年間で売上・利益規模を飛躍的に拡大してきました。その成長は半導体産業の発展と軌を一にするものであり、今後も産業トレンドの恩恵を受けることが期待されます。一方で業績・株価の変動幅も大きく、事業リスク(景気サイクルや地政学リスク)には注意が必要です。現在の株価水準は将来の成長期待を織り込んだものとなっており、投資にあたっては十分な調査とリスク許容度の検討が求められるでしょう。
本記事では公開情報に基づき東京エレクトロンの財務・事業・株価動向を分析しました。記載した見解は筆者の分析時点でのものであり、将来の株価や業績を保証するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の株式の売買を勧誘するものではないことをご承知おきください。