[2025年版] 九州電力(9508)徹底分析|売上・利益20年推移と株価戦略

[2025年版] 九州電力(9508)徹底分析|売上・利益20年推移と株価戦略

[2025年版] 九州電力(9508)徹底分析|売上・利益20年推移と株価戦略

公開日: 2025年7月8日 最終更新: 2025年7月8日 読了目安: 10分

この記事のポイント

  • 2024年純利益が過去最高の1,664億円を記録
  • 送配電事業の売上比率が大幅に増加(2024年:42%)
  • ICT事業が年平均成長率4.3%で拡大中
  • 配当利回り3.8%で電力株トップクラス
  • P/E5倍台の割安水準継続

1ビジネスモデル分析

(スマホでご覧の方は、スマホを横にしてページを再読み込みしていただくと、グラフが大きくなり見やすくなります。)

九州電力の事業構造は3つの柱で構成されています:

発電・販売事業

主力事業で売上高の約60%を占める。火力発電が中心だが、再生可能エネルギー比率向上に注力。

送配電事業

安定収益基盤。電力自由化後も独占的ポジションを維持。収益比率30%前後。

エネルギーソリューション

ICTを活用した新規事業。デジタルグリッドやHEMSなど成長領域。売上比率4%ながら伸長中。

九州電力は「エナジー・プラットフォーマー」への転換を推進中。従来の電力供給事業に加え、洋上風力発電水素アンモニア混焼技術で次世代エネルギーの主導権獲得を目指しています。

2売上高・純利益の推移(2005-2024)

出典: EDINETデータより作成 (2005-2024年度)

分析ポイント

  • 2024年純利益1,664億円:燃料費調整制度と規制料金改定が追い風
  • 2009-2013年の赤字期:原発停止とLNG価格高騰のダブルパンチ
  • 売上高は年率+2.3%で緩やかに増加
  • 2022年以降の収益改善:再稼働原発2基が安定収益に貢献

収益変動の主要ドライバー

  1. 燃料価格変動(特にLNG・石炭)
  2. 原子力発電所の稼働状況
  3. 再生可能エネルギー買取制度
  4. 規制料金の認可状況

3キャッシュフロー分析(2007-2024)

出典: IR BANKキャッシュフロー統計より作成

営業CFの特徴

2024年は過去最高の5,861億円を記録。燃料費調整制度による資金流入が主因。

投資CFの動向

再生可能エネルギー投資が継続中。年間3,500億円前後の設備投資が定着。

財務CFの変化

2020年以降は借入返済超過に転換。財務体質の改善が進行中。

九州電力のフリーキャッシュフロー(FCF)は2024年に初めて2,000億円超を達成。財務体質強化と株主還元拡大の余地が拡大しています。

4事業セグメント別業績(2021-2024)

出典: 九州電力IR資料より作成

発電・販売事業の特徴

2023年にピーク(1,750億円)を記録後、2024年に微減。主力事業ながら収益変動が大きい特徴があります。燃料価格変動の影響を直接受け、LNG価格が10%上昇すると営業利益が約150億円減少すると試算されています。

送配電事業の成長

2021年から2023年にかけて急成長(+276%)。電力自由化後、分離会計制度による収益の可視化が進んだ結果です。安定収益源としての役割が拡大し、2024年には全売上高の42%を占めています。

ICTソリューション事業

年平均成長率4.3%で堅調に拡大。スマートメーター普及率が95%に達し、データを活用した新サービス開発が進行中。2030年までに売上比率10%へ引き上げる目標を掲げています。

セグメント別戦略の方向性

  • 発電事業:石炭火力の段階的削減 → 再生可能エネルギーと水素アンモニア混焼技術へ移行
  • 送配電:次世代送電網「デジタルグリッド」への投資拡大(2025-2030年で5,000億円計画)
  • ICT:HEMS(家庭エネルギー管理システム)とVPP(仮想発電所)の統合プラットフォーム開発

5株価評価と投資判断

注: 理論株価=EPS×15倍で算出

2025年7月時点の主要指標

指標 数値 業界平均
株価 1,300円
PER (予想) 5.2倍 9.8倍
PBR 0.65倍 0.92倍
配当利回り 3.8% 3.2%
自己資本比率 15.5% 18.1%

投資戦略のポイント

  • インカム投資家向け:高配当利回り(3.8%)と安定性が魅力
  • バリュー投資家向け:PBR0.65倍の割安水準で底値圏の可能性
  • 成長投資家向け:洋上風力や水素事業の進展に注目

6主要リスク分析

燃料価格変動リスク

LNG・石炭価格の急騰が収益を直撃。2022年の経験からリスクヘッジ体制強化中。

原子力政策リスク

玄海3・4号機の運転継続が不透明。停止時の代替燃料コストが課題。

規制環境変化

送配電分離政策の進展が事業モデルに影響。収益構造の転換が必要に。

競争激化

新電力参入が増加も、地域密着型サービスで差別化を実施。

リスク軽減策

  • 燃料調達の多角化(LNG長期契約比率削減)
  • 再生可能エネルギー比率向上(2030年50%目標)
  • 規制対応事業の早期整備
  • デジタルソリューション事業の拡大

免責事項

本記事は九州電力の財務データに基づく分析情報を提供するものです。投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載情報は2025年7月8日時点のものです。

データ出典

  • EDINET 有価証券報告書(2005-2024年度)
  • 九州電力アニュアルレポート
  • 財務省法人企業統計
  • 東京証券取引所データ
  • 九州電力IR資料(セグメント情報)