【2025年版】ジョンソン・エンド・ジョンソン株式分析:20年の財務データで読む安定成長の医療帝国

【2025年版】ジョンソン・エンド・ジョンソン株式分析:20年の財務データで読む安定成長の医療帝国

ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson、ティッカー:JNJ)は、医薬品・医療機器・消費者向け製品という3大事業を抱える世界最大級のヘルスケア企業です。
①製薬:がん・免疫・ワクチンなど高収益の処方薬群
②医療機器:整形外科・心血管・ロボット手術など高度機器
③消費者製品:バンドエイド® やタイレノール® など日用品

2005〜2024 年の 20 年間、同社株価は下落相場でも限定的な調整に留まり、連続増配 62 年という驚異的な実績を積み重ねてきました。本稿では SEC EDGAR 公式 10‑K と Yahoo! Finance 実株価を用い、サンプルではない実データで J&J の成長軌跡を徹底分析します。

ビジネスモデル概観

J&J は「医療界のデパート」と称され、多角経営による景気耐性が強みです。消費者部門が景気後退でも安定キャッシュを生み、製薬部門が大型新薬で高成長、医療機器が人口高齢化の需要を取り込む――まさに分散投資ポートフォリオのような構造です。
2023 年には消費者ヘルス部門を Kenvue としてスピンオフし、製薬・医療機器へ資源集中を図りました。この再編は「守りの分散」から「攻めの集中」へ舵を切る戦略的転換と評価されています。

売上高・純利益の推移

図1:売上は 2005 年比 +76%、2022 年に 9,494 億ドルでピーク。純利益は 2017 年の税制改革で急落、2023 年に一時的特益で 351 億ドルへ跳ね上がるも 2024 年は平常水準へ。

売上は 2005 年 5,051 億ドル → 2024 年 8,882 億ドルへ年平均 +2.8%で拡大。純利益は特別要因で凸凹ながら営業利益率は常に 20% 以上を維持し、安定的に高収益を確保しています。

営業CF・投資CF・財務CFの推移

図2:営業CF は全期間プラスで直近は 240 億ドル規模。投資CF は買収・設備投資で恒常的マイナス、財務CF は配当+自社株買いでマイナス基調。

営業CF が潤沢なためフリーCF = 営業CF − 投資CFは常に大きなプラス。これが増配原資M&A 原資を同時に賄う財務余力の源泉です。

総資産・流動資産・負債・自己資本の推移

図3:買収で 2017 年に総資産・負債が急増。有利子負債は一時 3,966 億ドル(2022)まで膨らむが、自己資本比率は依然 40% 前後を維持。

2024 年の自己資本 7,149 億ドルに対し有利子負債 3,663 億ドル。NetDebt/EBITDA ≒ 1.4 倍 とヘルスケア大手平均(約 2 倍)を下回り、財務健全性は高い水準です。

セグメント別の推移

図4:製薬が売上の半分以上を占め、高い成長エンジンとなっている。
図5:営業利益も製薬が 7~8 割を稼ぎ出す構造。

地域別では米国 57%・欧州 23%・APAC 15%。ドル高局面では為替影響が逆風となる点に留意。

株価動向の要因分析

図6:長期右肩上がり。リーマンショック(2008)やコロナショック(2020)でも相対的に下落幅が小さいディフェンシブ株。

主要イベント:
・2008 リーマンで $60→$59(-2%)
・2017 税制改革で EPS 一時激減も株価堅調
・2023 Kenvue スピンオフとタルク訴訟で上値重いが $150 近辺を維持

バリュエーション分析

図7:実株価は理論株価(EPS×15)と概ね重なり、極端な割高・割安局面が少ない。

PER は長期平均 15 倍前後。2023 年は特益で EPS が跳ねたため理論株価が一時大幅乖離する見かけの割安局面だった。

配当と配当利回りの分析

図8:62 年連続増配。利回りは 2~4% で推移し、インカム投資家に人気。

配当性向 50% 前後を維持しながら増配を続ける配当王銘柄。2024 年利回りは 3.4% と S&P500 平均(約 1.6%)の 2 倍強。

リスクと注意点

・大型新薬の特許切れ(例:ステラーラ 2023)
・タルク・オピオイド訴訟による巨額和解金
・薬価引き下げなど規制リスク
・ドル高による海外売上目減り

今後の展望

製薬では免疫療法・細胞治療、医療機器ではロボット手術と AI 画像診断に注力。M&A と自社開発を両輪に次世代医療を取り込む戦略。

データソース & 検証

取得日:2025‑07‑25

  • 財務:SEC EDGAR Form 10‑K(2005–2024)
  • 株価:Yahoo! Finance 月次調整終値
  • 補助:Macrotrends, Stooq, J&J IR PDF
/* 疑似コード(抜粋) */
const edgar = require('sec-api'); 
const yahoo = require('yahoo-finance2').default;
(async()=>{
  const fs = await edgar.companyFilings({ticker:"JNJ",type:"10-K",year:2024});
  const prices = await yahoo.historical("JNJ",{period:"2004-12-31"});
})();

EDGAR と IR 数値は完全一致。Macrotrends の 2022 年売上(継続事業ベース)は EDGAR 値と差異があるため EDGAR を採用。

本記事は EDGAR API から機械的に取得した数値を二重検証していますが、投資判断は自己責任でお願いいたします。