株式投資をするうえで、財務分析をして企業のファンダメンタルを調べることは必修です。企業の発行する決算書(決算短信、有価証券報告書)には、大きく分けて損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、セグメント別報告の四つがありますが、この記事では2番目に出てくる貸借対照表(Balance Sheet)について解説します。
はじめに
貸借対照表は、企業が過去にしてきた活動の結果が、総まとめとして表れています。いままで、いい加減な経営をしてきていれば、内容の悪い貸借対照表になっているし、良い経営をしていれば、内容の良い貸借対照表になっています。
損益計算書やキャッシュフロー計算書がお金の流れを表す”フローの情報”であるのに対して、貸借対照表は、その時点での企業の財務状況のスナップショットで”ストック情報”になります。
貸借対照表は、英語でバランスシートと呼ばれます。この英語名でも示唆されるように、貸借対照表は右と左に項目が分かれていて、右側のほうを貸方(Credit)といい、左のほうを借方(debit)といいます。大雑把にいうと、決算書の右側は、どうやってお金を集めたか(資金調達)を示していて、左側はその集めたお金をどのように使っているか(資金運用)を示しています。なので、必ず、決算書の右側と左側の総金額は一致します。
貸借対照表は、左側に資産の部分、右側に負債と純資産の部分がありますが、順に詳細を見ていきましょう。
資産の部 | 負債・純資産の部 |
---|---|
流動負債 | |
固定負債 | |
右側(負債と純資産の合計)がどうやって資金調達をしたかを表しています。左側(資産)が、資金調達をしたお金をどのように運用しているかを表しています。
資産(liabilities)
では、貸借対照表の左のほうを見てみましょう。
資産とは、大ざっぱにいって貸借対照表の右側(負債、純資産)で調達してきた資金を、どのように使っているか(資金運用)を表したものです。大きく分けて、流動資産と固定資産に分けられます。流動性の高いもの(現金化しやすいもの)から順番に上から並んでいます。資産の上のほうにある流動化しやすい資産(流動資産など)は、資産として本当に価値がありますが、流動性の少ないもしくはないもの(固定資産などの一部)は、単に将来減価償却で費用化されるだけのマイナスの意味しかないものもあります。さて、これから資産の詳細項目である流動資産と固定資産を順に見ていきましょう。
流動資産(liquid assets)
流動資産とは、1年以内に現金化できる資産です。現金及び預金、受取手形及び売掛金、有価証券、棚卸資産(商品・製品、仕掛け品、原材料)などです。この中で現金、預金、有価証券などは額面通りの価値があります。受取手形や売掛金は、相手先企業が倒産すると回収できないこともあるので注意が必要です。また、粉飾ですが来季の売り上げを先回りして計上して売掛金としていることもあるので、この項目が普段より膨らんでいる時は注意が必要です。棚卸資産は流動資産の中では一番怪しい事が多いです。まだ、売れていない在庫を資産として計上してあるので、売れなければこれらは減損となり将来の利益を削ることになります。売掛金と同様に、普段よりこの額が膨らんできたら要注意です。
まとめると流動資産は固定資産と比べて、現金化しやすいことから、その項目に書かれている金額が、ほぼ額面通り会社の本当の財産考えることが多いです。(もちろん上に書いたように、取引先が倒産して売掛金などが回収できないとか、在庫が売れなくて減損することもありますが、、、)
固定資産(fixed asset)
固定資産とは、一年以上保有する目的の資産です。固定資産には、有形固定資産(建物、構築物、土地、建設仮勘定など)と無形固定資産(のれん、地上権、特許権、商標など)の2種類があります。この固定資産には、額面通りの資産価値がないものも多く含まれていることもあり、会社の資産評価をする際に注意が必要です。
以上が貸借対照表の左側の資産の部の説明でした。次は貸借対照表の右側の負債と純資産の部の説明をします。
Zzzz
負債(liabilities)
次に右側の上の部分の負債をみていきましょう。負債とは、大ざっぱにいって、他から借りてきたお金のことです。大きく分けて、流動負債と固定負債に分けられます。貸借対照表では、返済期限の短いものから順番に上から並んでいます。
流動負債(Current liabilities)
一年以内に返さなければいけない負債(借金)のことです。この金額が大きいと資金繰りに詰まって、倒産する可能性が高いです。支払い手形、買掛金、短期借入金、未払い法人税、賞与引当金などの項目があります。
固定負債(Long-term liabilities)
支払い期限が一年以上後の負債(借金)です。支払期限が一年以上あるので、これが大きくても当面の資金繰りには困りませんが、この返済期限が迫るときに注意が必要です。長期借入金、退職給付引当金などの項目があります。
純資産(net asset)
最後に、貸借対照表右下の純資産をみていきましょう。純資産とは、大ざっぱにいって、借りてきている負債(借金)を除いた会社自身が持っている資産です。
代表的なものとして、資本金と利益剰余金に分けられます。
資本金(share capital)
会社の設立や株式の発行に際して、会社への出資者が払い込んだお金です。
利益剰余金(Statement of retained earnings)
会社がもうけたお金のうち、配当や設備投資などに使った後に余った分を積み立てたお金です。内部留保ともいいます。毎年の利益が利益剰余金として蓄えられていきます。儲かっている会社だと、この利益剰余金が毎年増えていきます。
まとめ
株式投資をする上で注意するところは、貸借対照表をみて実際に価値のある資産がどれくらいあるかを知ることです。
本当に換金性のある価値のある資産は純資産とは異なります。一般的には換金性のある価値の資産は純資産より小さくなりめす。
上にも述べたように、資産の中(とくに固定資産)には将来減価償却して費用化しなければならないものをリスト化しただけのものも多いです。
大雑把にいって、流動資産から負債を引いたものを換金性のある資産ととりあえずみなして考えておけば良いでしょう。(ただし流動資産の中には売れない在庫などあることもあるので注意です。)