長期・短期のどちらの投資・トレーディングにも有効な手法にピラミッディング手法があります。ピラミッディング戦略は損小利大戦略の一つになります。
多くの投資のプロフェッショナルはこのピラミッディング手法を取り入れており、プロとアマ(素人)との差はこのピラミッディング戦略ができるかどうかにかかっているといっても過言でないでしょう。
この記事をざっくりとまとめると次の2点になります。
(1)ピラミッディングは、利益が出ている時に、さらに建て玉を増やしていく方法で、リスクを最小化して利益を最大化する手法である。
(2)ピラミッディングはナンピンと正反対の手法であり、実際に実行するのは心理的には非常に難しい。
(3)プロはピラミッディングをするが、個人投資家やトレーダーでピラミッディングをする人は少数派であり、ナンピンよりも有利な投資手法である。
ピラミッディングとは
ピラミッディングとは、利益が乗っているポジションにさらに、同じ方向にポジションを積み増していく手法です。いわゆるナンピンとは逆な手法になります
株式投資の場合、ピラミッディングは次のようになります。株価が1000円の時に100株買い、株価が上がって1200円になった時に100株追加で買い。さらに株価が上がって1400円になった時に、さらに100株追加購入すると言う感じです。
このピラミッディングは株に投資して、利益が出ている時に、それを売って利益を確定する代わりに、さらに同じ株を買い増していく手法です。
FXのトレーディングの場合も同様です。ドル円が100円の時に、一万通貨をロング(買い)にする。ドル円が101円になると、このポジションは利益が出ている状態ですが利確する代わりに、さらに一万通過をさらにロングにする。ドル円がさらに上昇して102円になってさらに利益が出ている状態で、さらに一万通貨をロングにすると言う具合です。
つまりピラミッディングと言う手法は、利益が出ている時にさらにリスクをとっていくという方法になります。
ピラミディングは、トレンドに上手く乗れれば莫大な利益になりますが、相場が揉みあっていたりすると、ほとんどの場合、損切になってしまい勝率はかなり低い手法になります。
また、ピラミッディング手法は平均購買価格を上げていくので、相場が反転した時にはやく利益がなくなってしまいます。
たまに大勝ちをするが、大部分のトレードは損切りになると言う、何ともストレスのたまる手法です。
これと逆のことをするのが、いわゆる「ナンピン手法」ですね。
ナンピン手法とは
ナンピンとは、損失がでているポジションに、さらにそのポジションと同じ方向にポジションを積み増す手法です。
株式投資の場合は、株価が1000円の時に100株買い、株価が900円になり含み損が出ている時に、さらに100株かきまします。さらに株価が800円に下がると更に100株買いますということをしていきます。FXトレーディングの場合も同様です。
ナンピン手法は勝率が高く、ほとんどのトレードを利益獲得で終えることができるので、非常に気持ちの良いトレード手法になります。
また、ナンピンでは平均購買価格が下がっていくので、相場が反転した場合は、ナンピンしない時より早く損失を回復させることができます。
ただ、ナンピンは、含み損が出ている時にさらにリスクをとっていくという手法のため、相場暴落時には大変危険な手法になります。
ナンピンとピラミッディング手法のどちらが有利か?
さて、建て玉の積み増し方法として、全く正反対の手法になるピラミッディングとナンピンを紹介しましたが、一体どちらの方が有利でしょうか?
キーポイントになるのが、投資、トレードの人間の心理学にあります。
ダニエル・カーネマン氏はこのプロスペクト理論で、2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。(エイモス・トヴェルスキー氏は1996年に他界)
行動経済学という学問分野にプロスペクト理論というものがあります。この理論により、ダニエル・カーネマンは2002年にノーベル経済学賞を受賞しました。このノーベル賞を輝いたプロスペクト理論の詳細は、別の記事に譲りますが、その要点は「人間は、利益が出ているときはリスクを避けてがり、損が出ているときはリスクをとりたがる」という人間の普遍的な心理です。
これプロスペクト理論を投資・トレードに応用すると、人が普通にトレードをすると、ナンピンは自然としたい衝動に駆られますが、ピラミッディングは心理的に非常に難しいことがわかります。
ナンピンは負けている場面でリスクを取っていく手法であり、人間の普遍的な心理に素直従っています。ところが、ピラミッディングは勝っている場面でリスクを取っていく手法であり、プロスペクト理論で確認されている人間の心理に逆らっており、非常に実行するのが難しいわけです。
実際に個人投資家やアマチュアトレーダーが投資やトレードすると、ほとんどの人はナンピンは自然と出来るが、ピラミッディングをする人はほとんどいません。
この記事を読んでいる方も、ほとんどの方がナンピンにすることには心理的抵抗はないけど、ピラミッディングをすることは心理的に難しいのではないでしょうか?
結局のところ、ナンピンするのは多数派で、ピラミッディングするのは少数派なわけです。
少数派のピラミッディング手法は有利
投資やトレーディングにおいて少数派でいることは重要なことです。特にトレーディングにおいては、ゼロサムゲームですので、大多数の負け組と一部の勝ち組がいるわけです。大多数の人と同じことをして、投資やトレードで勝つことはできません。大衆とは逆の少数派にいることが重要なのです。
ピラミッディング手法は、心理的な困難を乗り越えれば、実行すること自体は難しくありません。ピラミッディングを実行することにより、投資・トレーディングに重要な条件である大衆とは逆の少数派になることができます。ピラミッディングは投資やトレーディングに勝つための十分条件ではありませんが、すくなくとも必要条件をみたすことができます。
実際に、プロのトレーダーはピラミッディングをして、大きな利益を得ています。
ただ、先ほども述べたように、この手法を続けることは、いわゆるプロスペクト理論で説明されているような人間の本能に反しており、実際にこの手法で取引できる人間はめったにいないと思います。
損小利大を実行するのは、心理的に難しいですが、ピラミディング手法はもっと難しいわけです。
しかし、人ができないことをやるのが、勝ちトレーダーへの道ですので、ぜひ皆さんの投資・トレードにもピラミッディング手法を取り入れてみてください。