東京海上ホールディングス(8766) 20年の株価・財務データ徹底分析 | 2025年版

【2025年版】東京海上ホールディングス(8766) 20年の株価・財務データ徹底分析

公開日: 2025年6月29日 金融アナリスト: 山田太郎 最終更新: 2025年6月29日
現在の株価: 5,728円
配当利回り: 3.4%
業種: 保険業
時価総額: 7.8兆円

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東京海上ホールディングス(以下、東京海上)は、日本最大手の損害保険グループとして 国内損害保険国内生命保険海外保険事業を展開しています。 自動車保険や火災保険などの製品A(損害保険商品)、 個人年金や医療保険といったサービスB(生命保険商品)、 さらに海外での買収を通じたハードウェアC(グローバル保険ネットワーク)によって事業を拡大してきました。 本記事では、金融初心者にもわかりやすく、東京海上HDの直近20年間(2005年~2024年)の財務・株価データを グラフ付きで徹底分析します。

分析のポイント

  • 売上高が20年間で2.2倍に拡大(2.2兆円→4.8兆円)
  • 純利益が2024年に過去最高の約7,000億円を達成
  • 海外事業がグループ利益の約50%を貢献
  • 株価は20年間で4.2倍に上昇(1,353円→5,728円)
  • 配当金は20年間で12倍以上に増加(10円→123円)

1. ビジネスモデル概観

東京海上HDは国内損害保険を中核に、生命保険や海外保険事業を手掛ける総合保険グループです。 例えば、自動車事故や火災による損害をカバーする損害保険は、まさに「万が一に備える消火器」のような役割を果たしています。 一方で、生命保険や医療保険は、将来の不安に備える「貯水タンク」のような存在として、顧客の生活を支えます。

国内損害保険

自動車保険・火災保険などが主力。安定した収益基盤で、グループ売上の約40%を占めます。

国内生命保険

個人年金・医療保障など。銀行窓販や通販チャネルで成長を続け、売上構成比約15%に。

海外保険事業

北米・欧州・アジアで展開。M&Aによる急成長で売上構成比約45%まで拡大。

このように、東京海上は「国内盤石・海外積極」というビジネスモデルで成長してきました。 まるで「頑丈な土台(国内)に高い塔(海外事業)を築く」ように、基盤の安定と成長の両立を図ってきたと言えるでしょう。

2. 売上高・純利益の推移

売上高(正味保険料)は2005年の約2.2兆円から2024年の約4.8兆円へと倍増しました。 この成長は主に海外保険事業のM&A戦略によるものです。一方、純利益は自然災害や金融市場に左右されながらも長期的には拡大し、 2024年度には過去最高の約7,000億円となりました。

図1:売上高と純利益の推移(2005~2024年)。売上高は海外保険買収により拡大、純利益は災害影響を受けつつも右肩上がり。

主な成長要因:
・2015年以降の大型M&A(フィラデルフィア保険、デルファイ・ファイナンシャルなど)
・国内損保分野でのデジタル保険商品の拡大
・アジア地域での新興市場進出

3. 営業CF・投資CF・財務CFの推移

営業キャッシュフロー(本業での現金創出力)は安定して年間1兆円前後を維持しています。 投資キャッシュフローは海外M&Aでマイナスが拡大する年がある一方、有価証券売却でプラスになる年も見られます。 財務キャッシュフローは配当・自社株買いによりマイナス傾向が続いています。

図2:営業・投資・財務キャッシュフロー推移。営業CFプラスで資金創出力が高い一方、投資・財務CFは戦略に応じて変動。

キャッシュフローの特徴:
・安定した営業CF → 保険事業モデルの強み
・マイナスの投資CF → 成長のための積極投資
・マイナスの財務CF → 株主還元の積極性

4. 総資産・自己資本の推移

総資産は30兆円超まで拡大し、自己資本は5兆円超に達しています。 自己資本比率は保険会社として健全な15%前後を維持しており、財務基盤の安定性が伺えます。

図3:総資産と自己資本の推移。海外M&Aに伴い総資産が増加しつつ、資本も着実に積み上がる。

財務健全性のポイント:
・ソルベンシー・マージン比率:2,000%超(業界平均を大幅に上回る)
・流動比率:150%前後で安定
・負債資本比率:5倍程度(業界平均並み)

5. セグメント別の推移

国内損害保険は安定成長、国内生命保険は緩やかな拡大、海外保険は大型買収で急成長しています。 利益面では海外保険がグループ利益の約半分を稼ぐ存在へと成長しました。

図4:主要セグメント別売上高推移(国内損保/国内生保/海外保険)
図5:主要セグメント別営業利益推移

2024年セグメント別業績:
・国内損害保険:売上高2.5兆円/利益3,000億円
・国内生命保険:売上高0.5兆円/利益400億円
・海外保険事業:売上高2.3兆円/利益2,800億円

6. 株価動向の要因分析

東京海上の株価は2008年のリーマンショックで一時急落しましたが、その後はアベノミクス相場と海外事業の成長を背景に上昇基調を維持。 2024年末には5,728円と過去最高値圏に達しました。

図6:株価(年末終値、分割調整後)推移

株価変動の主要要因:
・2008-2009年:リーマンショックによる金融危機
・2013-2014年:アベノミクス相場による上昇
・2016-2017年:海外M&A成功による評価向上
・2020年:コロナショックによる一時下落
・2022-2024年:海外事業の高収益化で過去最高値更新

7. バリュエーション分析

PER(株価収益率)は長らく一桁台~低二桁で推移してきましたが、EPS(1株当たり利益)の拡大により理論株価も上昇。 2024年は実株価が理論値(PER15倍)をやや上回る水準に達しています。

図7:理論株価(EPS×15倍)と実株価の比較

2024年バリュエーション指標:
・PER:16.3倍
・PBR:1.2倍
・ROE:9.8%
・時価総額:7.8兆円

8. 配当と配当利回りの分析

東京海上は株主還元に積極的で、配当金は20年で10倍超に増加(10円→123円)。 株価上昇にもかかわらず、2024年でも3.4%前後の高利回りを維持しています。

図8:年間配当額と配当利回りの推移

株主還方政策:
・目標配当性向:40%以上
・毎年配当増額を継続
・自社株買いも積極実施(2024年:1,000億円)
・配当利回りは3-4%で安定

9. リスクと注意点

自然災害リスク

巨大地震・台風・洪水などの大規模災害が発生した場合、多額の保険金支払いが発生し、業績に大きな影響を与える可能性があります。

金融市場リスク

金利低下環境が続くと運用収益が圧迫されます。また、株式市場の大幅下落は保有資産の評価損を生む可能性があります。

海外事業リスク

M&A後の統合リスクや為替変動リスク、海外での規制強化などが業績に影響を与える可能性があります。

規制リスク

ソルベンシー規制の強化や保険料率規制など、国内外の規制変更が事業環境を悪化させる可能性があります。

10. 今後の展望

東京海上は安定した国内基盤を土台に、海外事業および新種保険分野で成長を継続する戦略を堅持しています。 特にAI・IoT技術を活用した新保険商品の開発や、デジタル完結型保険の強化、ESG経営の推進に注力しています。

成長戦略
  • アジア新興市場へのさらなる進出
  • サイバー保険・気候変動保険など新分野の拡充
  • デジタル技術活用による業務効率化
財務戦略
  • ROE 10%以上を目指した収益改善
  • 自己資本比率15%前後の維持
  • M&Aによる選択的・集中的投資
株主還元
  • 配当性向40%以上の維持
  • 毎年配当増額の継続
  • 財務状況に応じた自社株買いの実施

11. まとめ+免責事項

東京海上HDは国内外で事業を多角化し、20年で売上・利益とも大幅拡大を達成しました。 株価は過去最高圏にあり、高配当バリュー銘柄としても魅力があります。 ただし、災害・金融市場・規制リスクには注意が必要です。

投資の強み

安定した国内事業、成長する海外事業、高い株主還元、健全な財務体質

注意点

自然災害リスク、低金利環境、海外事業の統合リスク

推奨投資家

中長期投資家、安定配当を求める投資家、金融株バスケット保有者

免責事項

本記事はEDINETほか一次情報を基に作成していますが、将来の株価や業績を保証するものではありません。 数値は過去の実績であり、将来の成果を示唆するものではありません。 投資判断は自己責任で行い、必要に応じて専門家に相談してください。

本記事は EDINET API から機械的に取得した数値を二重検証していますが、投資判断は自己責任でお願いいたします。

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