東京海上ホールディングス(8766)株式分析|会計上は増益・修正純利益は減益、利益の63%を稼ぐ海外とC/Rの読み方

【2025年版】東京海上ホールディングス(8766) 20年の株価・財務データ徹底分析

公開日: 2025年6月29日 金融アナリスト: 山田太郎 最終更新: 2025年6月29日
現在の株価: 5,728円
配当利回り: 3.4%
業種: 保険業
時価総額: 7.8兆円

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東京海上ホールディングス(以下、東京海上)は、日本最大手の損害保険グループとして 国内損害保険国内生命保険海外保険事業を展開しています。 自動車保険や火災保険などの製品A(損害保険商品)、 個人年金や医療保険といったサービスB(生命保険商品)、 さらに海外での買収を通じたハードウェアC(グローバル保険ネットワーク)によって事業を拡大してきました。 本記事では、金融初心者にもわかりやすく、東京海上HDの直近20年間(2005年~2024年)の財務・株価データを グラフ付きで徹底分析します。

分析のポイント

  • 売上高が20年間で2.2倍に拡大(2.2兆円→4.8兆円)
  • 純利益が2024年に過去最高の約7,000億円を達成
  • 海外事業がグループ利益の約50%を貢献
  • 株価は20年間で4.2倍に上昇(1,353円→5,728円)
  • 配当金は20年間で12倍以上に増加(10円→123円)

【2027年3月期・最新】会計上は増益、しかし会社が重視する利益は減益でした

東京海上ホールディングスは2026年8月12日、2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の決算を発表しました。この決算には、2つの利益が正反対を向くという珍しい形が出ています。

2026年4〜6月前年同期今回増減
保険収益1兆8,228億円2兆471億円+12.3%
税引前四半期利益3,392億円3,782億円+11.5%
親会社の所有者に帰属する四半期利益2,560億円2,643億円+3.3%
修正純利益(会社の経営指標)2,711億円2,614億円△3.6%
修正EPS141円137円△2.8%

会計上の利益は3.3%増えたのに、修正純利益は3.6%減っています。どちらも同じ会社の同じ3か月の結果です。なぜこうなるのか、そしてどちらを見るべきなのかが、この会社を読む出発点になります。

「修正純利益」とは何か——会社が定義を公表しています

東京海上は決算短信の中で、修正純利益の算式を明記しています。

修正純利益の定義(会社の開示)
親会社の所有者に帰属する当期利益 − キャピタル損益 − ALM・ヘッジ関連損益 − 事業投資関連損益

ALMは資産・負債総合管理のことです。つまり「株や債券の売買で出た損益」「資産と負債の対応をとるための取引の損益」「事業投資に関する損益」を差し引いたものが修正純利益です。

保険会社は巨額の運用資産を持っているので、株式市場が良ければ売却益で利益が膨らみ、悪ければ縮みます。それは保険を引き受けて稼ぐ力とは別の話です。だから会社は「保険本業の実力」を測るために、この調整を行っています。

そして重要なのは、会社自身がこの修正純利益を株主還元の基礎に置いていることです。会計基準に定義がない指標であっても、会社が経営と配当をその数字で動かしているなら、投資家はそちらも見る必要があります。

会計上の利益と修正純利益のどちらが「正しい」ということはありません。会計上の利益は株主が最終的に負う結果、修正純利益は本業の実力——両方を並べて初めて、会社の状態が見えます。

★減益の中身——国内と海外が正反対を向いています

修正純利益をセグメント別に分けると、この四半期に何が起きたかがはっきりします。

修正純利益(億円)2025年度1Q2026年度1Q増減通期計画進捗率
グループ合計2,7102,613△4%9,50028%
海外保険1,5051,643+9%6,34026%
国内1,161988△15%3,05032%
ソリューション2914△50%1709%

ここで押さえておきたい事実が2つあります。

① 利益の3分の2は海外で稼いでいます。修正純利益2,613億円のうち海外が1,643億円=約63%。通期計画でも9,500億円中6,340億円(67%)が海外です。東京海上はもはや「日本の保険会社」ではなく、日本に本社を置く国際保険グループだと理解したほうが実態に合っています。

② 国内が15%減益になったことが、グループ全体を押し下げました。海外は9%増えているので、減益の原因は国内にあります。

損害保険の「稼ぐ力」はコンバインド・レシオで見ます

損害保険の本業の成績は、コンバインド・レシオ(C/R)という指標で測ります。計算はこうです。

コンバインド・レシオ = 損害率(L/R) + 事業費率(E/R)
損害率=支払った保険金 ÷ 保険料 / 事業費率=経費 ÷ 保険料
100%を下回っていれば、保険の引き受けだけで黒字。100%を超えると、引き受けでは赤字で運用益で補っていることになります

この数字を国内と海外で並べると、先ほどの明暗がそのまま出てきます。

2025年度1Q2026年度1Q2026年度計画
国内 C/R86.688.791.0
 うち損害率59.361.663.7
 うち自然災害の影響0.62.13.5
 うち事業費率27.327.227.3
海外 C/R88.988.888.9
 うち自然災害の影響1.60.92.3

国内のコンバインド・レシオは86.6から88.7へ2.1ポイント悪化しました。そしてその悪化分のほとんどが、自然災害の影響(0.6→2.1、1.5ポイント増)で説明できます。事業費率はむしろ0.1ポイント改善しているので、コストが緩んだわけではありません。

海外は逆でした。自然災害の影響が1.6から0.9へ減り、コンバインド・レシオは88.8とほぼ横ばい。会社は海外のスペシャルティ分野について「自然災害が少なかったことに加え、自然災害を除く損害率も堅調」と説明しています。

つまりこの四半期の国内減益は、経営の失敗ではなく天候です。損害保険会社の四半期業績は自然災害の発生状況で振れるので、1四半期だけを取り出して実力を判断することはできません。会社自身、通期計画では国内C/Rが91.0まで悪化する(自然災害3.5ポイントを織り込む)想定を置いています。

★円安がなければ、減益幅はもっと大きくなっていました

会社は為替の影響を除いた数字も開示しています。ここに、もうひとつ重要な事実があります。

公表ベース為替の影響を除くと
Total Business Volume(事業規模)+12%+6%
修正純利益△4%△9%

△4%という数字は、円安に助けられた後の数字です。実質は△9%。利益の3分の2を海外で稼ぐ会社なので、円安になれば海外子会社の利益が円換算で膨らみます。

これは裏返せば、円高に振れたときには同じだけ逆風になるということです。海外比率の高い会社の利益を見るときは、「除く為替」の数字が開示されていないかを必ず探してください。

通期予想では、2つの利益の差がさらに開きます

2027年3月期・通期予想金額前期比
親会社の所有者に帰属する当期利益8,300億円+56.2%
修正純利益9,500億円+7.8%
1株当たり当期利益441.83円
修正EPS514円

会計上の利益は56.2%増える予想なのに、修正純利益は7.8%増にとどまります。差は7倍以上です。

この乖離は、修正純利益が除外している項目——キャピタル損益や事業投資関連損益——が、今期は会計上の利益を大きく押し上げる方向に働くと会社が見ていることを意味します。「56%増益」という数字だけを見て実力が5割強くなったと考えると、実態を大きく取り違えます。

配当は「修正純利益」を基礎に決まります

2026年3月期2027年3月期(予想)
年間配当金218.00円245.00円
修正EPSに対する配当性向約47.7%(245円 ÷ 514円)
会計EPSに対する配当性向約55.5%(245円 ÷ 441.83円)

配当は27円の増配予想です。ここで配当性向を計算するなら、分母は修正EPSを使うのが会社の考え方に沿っています。会計上のEPSで割ると55.5%と高く見えますが、会社が見ているのは47.7%のほうです。

「その会社が何を基準に配当を決めているか」を確かめる——調整後利益や修正純利益のような独自指標を使う会社では、これが配当の持続性を判断する要になります。

財務と、比較するときの注意点

親会社所有者帰属持分比率は24.3%(前期末24.1%)。資産合計33兆6,770億円に対して株主資本は8兆1,973億円です。

製造業と比べれば低い数字ですが、保険会社は将来の保険金支払いに備える責任準備金が負債に計上されるため、構造的にこうなります。預金が負債に載る銀行と同じ理屈です。ちなみに同じ金融でも銀行はさらに低く、三菱UFJのような銀行は自己資本比率が一桁になることもあります。

もうひとつ、時系列を追うときの注意があります。東京海上は2026年3月期からIFRSを任意適用しました。そのため2026年3月期第1四半期については、短信でも対前年同四半期増減率が記載されていません。それ以前の日本基準の数字と単純に比べることはできません。

この四半期をどう受け止めるか

読み取れたこと根拠
2つの利益が逆を向いた会計上の利益+3.3%修正純利益△3.6%
減益の原因は国内、それも天候国内△15%。C/R 86.6→88.7の悪化のほとんどが自然災害0.6→2.1で説明できる
利益の3分の2は海外で稼いでいる修正純利益2,613億円のうち海外1,643億円(63%)。通期計画では67%
円安が減益幅を小さく見せている公表△4%に対し除く為替では△9%
通期の「56%増益」は額面どおりではない同じ通期予想で修正純利益は+7.8%

損害保険会社の決算は、四半期ごとの利益を追ってもあまり意味がありません。台風や豪雨が来た四半期は利益が落ち、来なかった四半期は増える——それは経営の巧拙ではなく天候だからです。

見るべきなのは、自然災害の影響を除いたコンバインド・レシオが改善しているか、事業費率をコントロールできているか、そして保険料を適正に引き上げられているかです。今回でいえば国内の事業費率は27.3→27.2とわずかに改善しており、悪化したのは災害の部分だけでした。

そしてこの会社を見るうえで最も大事なのは、会計上の利益と修正純利益という2つの数字が併存していることを知っておくことです。ニュースの見出しがどちらの数字を使っているかで、同じ決算が「増益」にも「減益」にも見えます。

※本節の数値はすべて、東京海上ホールディングス株式会社が2026年8月12日に開示した「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」「決算参考資料」「2026年度第1四半期決算プレゼンテーション資料」によります。

この節で使った読み方は、どの会社の決算にも使えます

記事の目次

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1. ビジネスモデル概観

東京海上HDは国内損害保険を中核に、生命保険や海外保険事業を手掛ける総合保険グループです。 例えば、自動車事故や火災による損害をカバーする損害保険は、まさに「万が一に備える消火器」のような役割を果たしています。 一方で、生命保険や医療保険は、将来の不安に備える「貯水タンク」のような存在として、顧客の生活を支えます。

国内損害保険

自動車保険・火災保険などが主力。安定した収益基盤で、グループ売上の約40%を占めます。

国内生命保険

個人年金・医療保障など。銀行窓販や通販チャネルで成長を続け、売上構成比約15%に。

海外保険事業

北米・欧州・アジアで展開。M&Aによる急成長で売上構成比約45%まで拡大。

このように、東京海上は「国内盤石・海外積極」というビジネスモデルで成長してきました。 まるで「頑丈な土台(国内)に高い塔(海外事業)を築く」ように、基盤の安定と成長の両立を図ってきたと言えるでしょう。

2. 売上高・純利益の推移

売上高(正味保険料)は2005年の約2.2兆円から2024年の約4.8兆円へと倍増しました。 この成長は主に海外保険事業のM&A戦略によるものです。一方、純利益は自然災害や金融市場に左右されながらも長期的には拡大し、 2024年度には過去最高の約7,000億円となりました。

図1:売上高と純利益の推移(2005~2024年)。売上高は海外保険買収により拡大、純利益は災害影響を受けつつも右肩上がり。

主な成長要因:
・2015年以降の大型M&A(フィラデルフィア保険、デルファイ・ファイナンシャルなど)
・国内損保分野でのデジタル保険商品の拡大
・アジア地域での新興市場進出

3. 営業CF・投資CF・財務CFの推移

営業キャッシュフロー(本業での現金創出力)は安定して年間1兆円前後を維持しています。 投資キャッシュフローは海外M&Aでマイナスが拡大する年がある一方、有価証券売却でプラスになる年も見られます。 財務キャッシュフローは配当・自社株買いによりマイナス傾向が続いています。

図2:営業・投資・財務キャッシュフロー推移。営業CFプラスで資金創出力が高い一方、投資・財務CFは戦略に応じて変動。

キャッシュフローの特徴:
・安定した営業CF → 保険事業モデルの強み
・マイナスの投資CF → 成長のための積極投資
・マイナスの財務CF → 株主還元の積極性

4. 総資産・自己資本の推移

総資産は30兆円超まで拡大し、自己資本は5兆円超に達しています。 自己資本比率は保険会社として健全な15%前後を維持しており、財務基盤の安定性が伺えます。

図3:総資産と自己資本の推移。海外M&Aに伴い総資産が増加しつつ、資本も着実に積み上がる。

財務健全性のポイント:
・ソルベンシー・マージン比率:2,000%超(業界平均を大幅に上回る)
・流動比率:150%前後で安定
・負債資本比率:5倍程度(業界平均並み)

5. セグメント別の推移

国内損害保険は安定成長、国内生命保険は緩やかな拡大、海外保険は大型買収で急成長しています。 利益面では海外保険がグループ利益の約半分を稼ぐ存在へと成長しました。

図4:主要セグメント別売上高推移(国内損保/国内生保/海外保険)
図5:主要セグメント別営業利益推移

2024年セグメント別業績:
・国内損害保険:売上高2.5兆円/利益3,000億円
・国内生命保険:売上高0.5兆円/利益400億円
・海外保険事業:売上高2.3兆円/利益2,800億円

6. 株価動向の要因分析

東京海上の株価は2008年のリーマンショックで一時急落しましたが、その後はアベノミクス相場と海外事業の成長を背景に上昇基調を維持。 2024年末には5,728円と過去最高値圏に達しました。

図6:株価(年末終値、分割調整後)推移

株価変動の主要要因:
・2008-2009年:リーマンショックによる金融危機
・2013-2014年:アベノミクス相場による上昇
・2016-2017年:海外M&A成功による評価向上
・2020年:コロナショックによる一時下落
・2022-2024年:海外事業の高収益化で過去最高値更新

7. バリュエーション分析

PER(株価収益率)は長らく一桁台~低二桁で推移してきましたが、EPS(1株当たり利益)の拡大により理論株価も上昇。 2024年は実株価が理論値(PER15倍)をやや上回る水準に達しています。

図7:理論株価(EPS×15倍)と実株価の比較

2024年バリュエーション指標:
・PER:16.3倍
・PBR:1.2倍
・ROE:9.8%
・時価総額:7.8兆円

8. 配当と配当利回りの分析

東京海上は株主還元に積極的で、配当金は20年で10倍超に増加(10円→123円)。 株価上昇にもかかわらず、2024年でも3.4%前後の高利回りを維持しています。

図8:年間配当額と配当利回りの推移

株主還方政策:
・目標配当性向:40%以上
・毎年配当増額を継続
・自社株買いも積極実施(2024年:1,000億円)
・配当利回りは3-4%で安定

9. リスクと注意点

自然災害リスク

巨大地震・台風・洪水などの大規模災害が発生した場合、多額の保険金支払いが発生し、業績に大きな影響を与える可能性があります。

金融市場リスク

金利低下環境が続くと運用収益が圧迫されます。また、株式市場の大幅下落は保有資産の評価損を生む可能性があります。

海外事業リスク

M&A後の統合リスクや為替変動リスク、海外での規制強化などが業績に影響を与える可能性があります。

規制リスク

ソルベンシー規制の強化や保険料率規制など、国内外の規制変更が事業環境を悪化させる可能性があります。

10. 今後の展望

東京海上は安定した国内基盤を土台に、海外事業および新種保険分野で成長を継続する戦略を堅持しています。 特にAI・IoT技術を活用した新保険商品の開発や、デジタル完結型保険の強化、ESG経営の推進に注力しています。

成長戦略
  • アジア新興市場へのさらなる進出
  • サイバー保険・気候変動保険など新分野の拡充
  • デジタル技術活用による業務効率化
財務戦略
  • ROE 10%以上を目指した収益改善
  • 自己資本比率15%前後の維持
  • M&Aによる選択的・集中的投資
株主還元
  • 配当性向40%以上の維持
  • 毎年配当増額の継続
  • 財務状況に応じた自社株買いの実施

11. まとめ+免責事項

東京海上HDは国内外で事業を多角化し、20年で売上・利益とも大幅拡大を達成しました。 株価は過去最高圏にあり、高配当バリュー銘柄としても魅力があります。 ただし、災害・金融市場・規制リスクには注意が必要です。

投資の強み

安定した国内事業、成長する海外事業、高い株主還元、健全な財務体質

注意点

自然災害リスク、低金利環境、海外事業の統合リスク

推奨投資家

中長期投資家、安定配当を求める投資家、金融株バスケット保有者

免責事項

本記事はEDINETほか一次情報を基に作成していますが、将来の株価や業績を保証するものではありません。 数値は過去の実績であり、将来の成果を示唆するものではありません。 投資判断は自己責任で行い、必要に応じて専門家に相談してください。

本記事は EDINET API から機械的に取得した数値を二重検証していますが、投資判断は自己責任でお願いいたします。

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