調整後利益・コア営業利益の見方|会社が自分で作った利益を、投資家はどう扱うか

決算のニュースを読んでいると、「調整後営業利益」「コア営業利益」「Core EPS」といった言葉に出会います。ふつうの営業利益や純利益とは別に、会社がもうひとつ利益を出しているのです。

そして厄介なことに、この2つは同じ会社の同じ期間なのに、まったく違う数字になります。 武田薬品では、会計上の利益が黒字から赤字へ4,000億円以上ひっくり返った年に、Core EPSは1円も動きませんでした

この記事では、実在する上場企業の決算資料を使って、会社が自分で作った利益をどう扱えばいいのかを整理します。基本の5つの利益については損益計算書の見方にまとめていますので、あわせてどうぞ。

「調整後利益」とは、会社が自分で定義した利益のことです

損益計算書に載っている営業利益や当期純利益は、会計基準というルールに従って計算された数字です。誰が計算しても同じになります。

一方で「調整後」と付いた利益は違います。会社が「うちの実力を測るならこの数字のほうが適切だ」と考えて、自分で定義したものです。会計基準には存在しません。

この点は、企業自身が決算短信にはっきり書いています。JTの短信には、こうあります。

当社グループは、当社が適用する会計基準であるIFRS会計基準において定義されていない非GAAP指標を追加的に開示しております。

「非GAAP指標」——GAAPとは会計基準のことなので、「会計基準では定義されていない指標」という意味です。会社は、それを承知のうえで開示しています。

では、なぜわざわざそんなものを作るのでしょうか。

調整する理由は、正反対の2つがあります

ここが最初の分かれ道です。「調整後」と聞くと「都合の悪い費用を隠して、よく見せているのでは」と疑いたくなりますが、実際には逆方向の調整もあります。

2026年、2つの会社がそれぞれ独立に配当方針を変えました。どちらも「会計上の利益では配当を決めない」という判断です。しかし理由は正反対でした。

図解:「調整後利益」は、正反対の2方向にずらされる
「調整=よく見せるための操作」と思われがちですが、実際は逆方向の調整も普通に行われます
出発点は同じ会計上の利益。そこから何を引くかで、行き先が分かれます。
出発点(会計基準に沿った利益)
会計上の利益
IFRS・日本基準など、外部のルールで決まる
▼  ▼
方向A:入ってこないお金を引く
調整後の利益は会計上より小さくなる
オリックス(8591)
持分法投資損益が2,079億円(+970%)に膨らんだ。中身はキオクシア株の評価益
同じ四半期の営業利益は+11.7%なのに、純利益は+161.8%
会社の理由=株価で変動し、現金の回収を伴わないから。この利益で配当を決めない、と決議した。
方向B:これから出ていくお金を引く
調整後の利益は会計上より大きくなる
JT・日本たばこ産業(2914)
カナダJTI-Macdonald訴訟の和解金の分割支払額を、調整後営業利益から除外する(「カナダ調整」)。
2026年12月期の第1四半期から定義そのものを変更した。
配当の基礎も調整後。調整後当期利益6,420億円 × 配当性向75.2%で決めている。
読者が確かめるべきこと
どちらの会社も「一時的なものを除いた」と説明しますが、片方は利益を減らす方向、もう片方は増やす方向です。調整の向きではなく、何を除いたかを短信で1行ずつ確かめてください。そして最後は「会社が何で配当を決めているか」を見ます。そこに会社の本音が出ます。
出典:オリックス・JT 各社の決算短信および決算説明会資料より作成

ケース1|オリックス – 「入ってこないお金」を除いた

オリックス(8591)の2027年3月期 第1四半期は、数字だけ見れば絶好調でした。

2027年3月期 第1四半期 実績 前年同期比
営業利益 1,339億円 +11.7%
株主に帰属する四半期純利益 2,808億円 +161.8%

本業を表す営業利益は+11.7%。ところが純利益は2.6倍です。差はすべて営業利益より下で起きていて、正体は持分法投資損益2,079億円(前年同期比+970%)。中身は、東芝が計上したキオクシア株式の売却益・評価益を、オリックスが持分法適用会社を経由して取り込んだものでした。

そしてオリックスは同じ日の取締役会で、配当をこの利益では決めないと決議します。新しい方針は「キオクシア関連の損益を差し引いた調整後当期純利益から計算した調整後EPSに39%を掛けた額」と「前期実績の1株156.10円」の高いほうを配当する、というものです。

短信に書かれた理由が明快です。この評価損益は今後の株価によって変動する見込みであり、かつ現金の回収を伴わないから。

利益として計上されているが、まだ1円も入ってきていないお金。 それを配当の計算から外す、と会社が自分で決めたわけです。

ケース2|JT – 「これから出ていくお金」を除いた

日本たばこ産業(2914)は逆方向でした。JTは2026年12月期の第1四半期から、「調整後営業利益」の定義を変更しています。

従来は営業利益から①買収で生じた無形資産の償却費と②調整項目(のれん減損、リストラ費用など)を除いていました。ここに③カナダの子会社JTI-Macdonald Corp.を被告に含む喫煙と健康に関する訴訟の和解金の分割支払額に相当する利益——会社が「カナダ調整」と呼ぶもの——を除外する調整が加わりました。

会計上の利益には乗るけれども、実際には和解金として長期にわたって出ていくお金。 それを事業の実力からは外す、という判断です。

オリックスは「入ってこない利益」を除き、JTは「出ていくお金」を除いた。方向は逆ですが、動機は同じ——会計上の利益をそのまま信じないという点です。

会社の本音は「何で配当を決めているか」に出ます

調整後利益が本気の指標なのか、それとも見栄えのための飾りなのか。いちばん分かりやすい判定方法は、その数字で配当を決めているかどうかです。

配当は実際に現金が出ていく、後戻りできない意思決定です。飾りの数字で配当を決める会社はありません。

会社 配当の計算に使っている利益
オリックス(8591) キオクシア関連を除いた調整後当期純利益×39%(または前期実績156.10円の高いほう)
JT(2914) カナダ訴訟の影響を調整した後の当期利益6,420億円に配当性向75.2%

どちらも、会計上の利益ではなく調整後の利益を分母に置いています。つまりこの2社にとって、調整後利益は飾りではなく本気の物差しです。

逆に言えば、「配当性向◯%」という数字を見たときは、分母にどの利益を置いているかを必ず確かめる必要があります。 同じ配当でも、分母を変えれば配当性向はまったく違う数字になります。この点は配当利回りと配当性向の見方で詳しく扱っています。

そもそも会計基準に「その利益」がない場合もあります

調整後利益が出てくる理由は、もうひとつあります。使っている会計基準に、その利益の定義がないケースです。

日本の会計基準には「営業利益」も「経常利益」もあります。しかしIFRS(国際会計基準)には、経常利益という区分がありません。 営業利益の扱いも日本基準ほど固定的ではありません。

そこでIFRSを採用する会社は、自社で本業の利益を定義します。ユニ・チャーム(8113)の「コア営業利益」がその例で、短信に定義がはっきり書かれています。

コア営業利益は当社グループの経常的な事業業績を測る指標として有用な情報であり、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除して算出しております。

売上総利益 − 販売費及び一般管理費。 日本基準の営業利益とほぼ同じ考え方です。この場合の「コア」は、何かを隠すためのものではなく、基準に定義がないので自分で決めたというだけです。

「調整後」「コア」と付いていても、中身は3種類あります。

  • 基準に定義がないから自分で作った(ユニ・チャームのコア営業利益)
  • 実力を測るために一時的なものを除いた(JTの調整後営業利益)
  • 現金を伴わない利益を除いた(オリックスの調整後当期純利益)

一括りに疑うのも、一括りに信じるのも間違いです。定義を読むしかありません。

同じ会社が、指標を変えるだけで別の顔になります

調整後利益の威力と怖さが同時に分かる例が、武田薬品工業(4502)です。

武田は2026年3月期について、5月13日にいったん黒字で決算を発表し、6月5日に最終赤字へ訂正しました。米国の反トラスト訴訟で陪審評決が出たため、訴訟引当金4,025億円を追加計上したのです。

2026年3月期 当初(5/13) 訂正後(6/5)
売上収益 4兆5,057億円 変わらず
営業利益 4,088億円 62億円
当期利益(親会社帰属) +1,918億円 △1,524億円
Core EPS 517円 517円(1円も動かず)

会計上の利益は黒字から赤字へ3,400億円以上ひっくり返ったのに、Core EPSは1円も動きませんでした。

これは操作ではありません。訴訟の引当金は「事業を続けた結果の実力」ではないので、Coreの定義上そこから除かれる——という理屈は筋が通っています。

しかし同時に、その4,025億円は実際に支払う可能性のある現金です。 株主が最終的に負うのは、Coreではなく会計上の結果のほうです。

この二重構造は、PERにもそのまま現れます。2026年8月14日の株価5,611円で計算すると、こうなります。

どの利益で割るか PER
実績の当期利益(赤字) 算出できない
会社予想EPS 104.26円 約53.8倍
Core EPS 472円(会社予想) 約11.9倍

同じ日の同じ株価で、PERが「算出不能」にも「53.8倍」にも「11.9倍」にもなります。 ネット上でPERの説明が食い違う原因の多くは、これです。理論株価とPERの考え方を使うときも、まず分母を確認してください。

逆に「調整しない」と、こう見えます

ここまでは会社が調整した例でした。では会社が調整せず、会計上の数字をそのまま出したとき、投資家はどうすればいいのでしょうか。

答えは「自分で調整して確かめる」です。難しい計算は要りません。

東京エレクトロン – 純利益 ÷ 経常利益で見抜く

東京エレクトロン(8035)の2026年3月期は、純利益が過去最高でした。ところが営業利益は△10.4%、経常利益は△10.9%の減益です。

ここで純利益 ÷ 経常利益を計算してみます。ふつう、経常利益から税金を引いたものが純利益になるので、この比率は7〜8割あたりで安定するはずです。

期間 純利益 ÷ 経常利益 状態
過去9年 72.6〜78.6% 正常
2026年3月期(通期) 91.1% 明らかに異常
2027年3月期 第1四半期 76.2% 正常レンジに復帰

91.1%という飛び値の正体は、政策保有株式の売却益1,155億円でした。株を売って得た利益が純利益を押し上げていたのです。

この一時的な利益を除いて計算し直すと、表面上のPER43.4倍は、実質では約51倍になります。「過去最高益だから割安」という見方が、逆さまになる差です。

そして翌年の第1四半期には76.2%へ戻りました。一時的な利益だったことが、あとから確認できたわけです。

SBIホールディングス – セグメント別に分解して見抜く

SBIホールディングス(8473)の2027年3月期 第1四半期は、税引前利益が+149.9%と大幅な増益でした。

セグメント別に分解すると中身が見えます。

セグメント 税引前利益 増減率
金融サービス(本業) 727億 → 1,159億円 +59.5%
PE投資事業 280億 → 1,199億円 +328.0%

PE投資事業だけで919億円の増益。全体の増益額の約7割がここから来ています。 しかもその中身は未上場株の評価益・売却益なので、毎期同じには出ませんし、評価益は現金を伴いません。

本業も+59.5%と好調なので、この決算は良い決算です。ただし「+149.9%」という見出しの数字をそのまま実力と受け取ると、判断を誤ります。 セグメント情報の使い方はファンダメンタル分析入門で扱っています。

調整後利益を見るときの、5つのチェック

ここまでを実務的な手順にまとめます。「調整後」「コア」と付いた数字を見たら、この5つを確認してください。

確認すること なぜ必要か
1 何を足して、何を引いたか 定義は決算短信や説明会資料に必ず書かれています。読まずに使うと、比べられない数字どうしを比べることになります
2 定義が変わっていないか JTは2026年12月期から定義を変えました。定義が変われば、前年との比較は成り立ちません(JTは前期も同じ基準に直したうえで増減率を出しています)
3 除いたものは現金を伴うか オリックスは「入ってこない利益」を、JTは「出ていくお金」を除きました。方向が逆なので、意味も逆です
4 会社は何で配当を決めているか 実際に現金を出す判断に使っている指標が、その会社の本音です
5 内訳がどこに書かれているか 会社ごとに違います。トヨタは決算説明会の質疑応答、NVIDIAはGAAP→non-GAAPの調整表、テスラは10-Qの注記にしか金額が出ていません。短い決算資料だけで判断しないでください

そして、いちばん大事な原則を最後に置きます。

調整後利益は「事業の実力」を、会計上の利益は「株主が最終的に負う結果」を表します。 どちらか一方が正しいのではありません。両方を見て、差がどこから来ているかを確かめる——それだけで、決算の見え方はかなり変わります。

★2026年の決算に、同じ形が繰り返し現れています

ここまでオリックスとJTを例に「調整の向きは正反対になりうる」と見てきました。2026年の決算を日米の大型企業で続けて読むと、さらにはっきりした共通点が出てきます。

本業の利益(営業利益)と、最終的な利益が、違う方向を向く決算が目立つのです。しかも増えているのは「株を売った益」や「持っている株の評価益」——つまり本業の外で作られた利益です。

会社 見出しになった数字 本業の外で作られた利益
トヨタ自動車
(2027年3月期 Q1)
最終利益 +75.6%
(営業利益は△8.8%
豊田自動織機株式の売却で約6,000億円
+ 海外事業体のドル資産の為替差益 約3,000億円
(営業外損益が860億円→9,003億円
NVIDIA
(2027年1月期 Q2)
GAAP純利益は前四半期比+2%
(non-GAAPは+18%
持分証券の評価益 77.7億ドル
(前四半期は159.4億ドル
GAAPの「その他収益」77.7億ドルのほぼ全額
テスラ
(2026年4-6月期)
最終利益 △5%
(営業利益は△57%
SpaceX株の評価益 10億ドル
+ 受取利息 4.22億ドル
受取利息が営業利益3.98億ドルより大きい

3社とも、見出しの数字だけを見ると事業の実態を読み違えます。トヨタは「大幅増益」に見えて本業は減益、NVIDIAは「伸びが止まった」ように見えて実力は+18%、テスラは「小幅減益」に見えて本業は57%減。方向が3社3様なので、「調整後のほうが良い数字だ」といった単純な決めつけが効きません。

★やっかいなのは「どこに書いてあるか」が会社ごとに違うこと

この3社を実際に調べて分かったのは、金額の内訳が載っている場所がまったく違うということです。

会社 内訳が書かれている場所 決算短信・プレスリリースだけで分かるか
トヨタ 決算説明会の質疑応答(要旨) 分からない。短信には「その他の金融収益」が増えたことしか出ていない
NVIDIA プレスリリース内のGAAP→non-GAAP調整表 分かる。ただし調整表まで開く必要がある
テスラ Form 10-Q(四半期報告書)の注記 分からない。四半期資料には金額が出ていない

つまり「短い決算資料だけ読んで判断する」と、3社のうち2社で中身を取り違えます。数字が動いた理由を知りたいときは、質疑応答・注記・調整表のどれかまで降りる必要がある——これが2026年の決算を読むうえで最も実務的な教訓です。

★なぜこの形が増えているのか(事実として言えること)

背景を断定はできませんが、各社が自ら説明している事実を並べると傾向が見えます。

  • トヨタ…ROE20%を目標に掲げ、質疑応答で「分母については、政策保有株を数年で相当縮小している」と明言。売却で得た資金を自社株買いに充てています。
  • NVIDIA…半年で持分証券が約588億ドル増加(市場性・非市場性の合計)。AI企業への出資者としての側面が大きくなっています。
  • テスラ…SpaceXへの出資分を評価替え。手元資金435億ドルから受取利息だけで四半期4.22億ドルを得ています。

「持ち合い株を売る」「成長企業に出資する」「厚い手元資金を運用する」——動機は違っても、結果として損益計算書の下半分が厚くなる点は共通しています。損益計算書の5つの利益で言えば、営業利益から下で起きていることの比重が増しているということです。

★読者としての対処は、たった1つの引き算

難しい知識は要りません。営業利益と最終利益の伸び率を並べて、方向が違えばその間を開く。それだけで3社とも中身にたどり着けます。

営業利益の伸び率 ≠ 最終利益の伸び率 → その間(営業外損益・調整表)を必ず開く

そして開いたときに「株の売却益」「評価益」「為替差益」という言葉が出てきたら、その利益は来期も同じ規模で出るとは限らないと考えてください。株価が下がれば評価損に変わりますし、売れる株には限りがあります。現金を伴っているかどうかはキャッシュフロー計算書で確かめられます。

まとめ

  • 「調整後」「コア」と付いた利益は、会計基準にはない、会社が自分で定義した数字です(企業自身が「非GAAP指標」と明記しています)
  • 調整の理由は正反対の2方向があります。 オリックスは「現金が入ってこない評価益」を除き、JTは「これから出ていく和解金相当」を除きました
  • 基準に定義がないから作った、というケースもあります(IFRSには経常利益がなく、ユニ・チャームはコア営業利益=売上総利益−販管費と自ら定義)
  • 指標を変えるだけで、同じ会社が別の顔になります。 武田薬品は同じ株価でPERが「算出不能」「53.8倍」「11.9倍」の3通りになります
  • 会社が調整していない場合は、自分で確かめられます。 純利益÷経常利益(東京エレクトロン)やセグメント分解(SBI)で、一時的な利益は見抜けます
  • 確認するのは4つ。 ①何を除いたか ②定義が変わっていないか ③現金を伴うか ④配当をどちらで決めているか

決算のニュースは、たいてい見出しの数字だけを伝えます。その数字がどの利益なのかを確かめる習慣が、いちばん確実な防具になります。財務諸表全体の読み方は決算書分析の基本から、貸借対照表の読み方は貸借対照表の見方からご覧ください。