株式投資で「この会社を買っていいのか」を判断するとき、最後に頼りになるのは決算書です。株価の予想やニュースの解説と違い、決算書は会社自身が法律にもとづいて公表した数字だからです。
決算書は3つの表からできています。よく財務三表と呼ばれます。
| 表の名前 | 何が分かるか | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 損益計算書(PL) | 1年間でいくら儲けたか | その年の成績表 |
| 貸借対照表(BS) | いま何を持っていて、いくら借りているか | ある一日の体重計 |
| キャッシュフロー計算書(CF) | 1年間で現金が実際にどう動いたか | 会社の通帳 |
大事なのは3つが別々のことを語っているという点です。利益が出ていても現金がない会社もあれば、赤字でも現金は回っている会社もあります。1つの表だけを見ていると、その会社の姿を読み違えます。
どの順番で読めばよいか
初めて決算書を開くと、数字の多さに圧倒されます。しかし見る順番を決めておけば、10分で会社の輪郭はつかめます。
| 順番 | 見るもの | 確認すること |
|---|---|---|
| ① | 損益計算書 | 売上と利益は伸びているか。どの段階の利益で増減が起きたか |
| ② | 営業キャッシュフロー | その利益に現金が伴っているか |
| ③ | 貸借対照表 | 借金は返せる範囲か。資産の中身は本物か |
| ④ | セグメント情報 | どの事業が稼いでいるか(売上の主役と利益の主役は違うことが多い) |
この手順の詳しい解説と実例はファンダメンタル分析(財務分析)入門【図解】にまとめています。まずここから読むのがおすすめです。
① 損益計算書 – 1年でいくら儲けたか
損益計算書には5つの利益が並びます。売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、当期純利益です。どれも「利益」ですが、意味はまったく違います。
いちばん大切なのは「どの段階で数字が変わったか」を見ることです。営業利益までは順調なのに当期純利益で赤字になったなら、原因は本業ではなく、その下——訴訟や減損や為替——にあります。
実例として、楽天グループの「営業黒字なのに最終赤字」や、武田薬品が営業利益4,088億円を62億円へ訂正した事例などを使って解説しています。
② キャッシュフロー計算書 – 現金は本当に増えたか
利益は会計上の計算です。売上をツケで計上すれば利益は出ますが、現金はまだ入っていません。 逆に減価償却費は費用として引かれますが、その年に現金が出ていくわけではありません。
だから「利益は伸びているのに営業キャッシュフローが伴っていない」会社は要注意です。現金の増減は、会計処理では動かしにくいからです。
営業・投資・財務の3つのキャッシュフローには、理想的な組み合わせがあります。
→ キャッシュフロー計算書の見方【図解】|符号8パターンで会社の状態を読む
→ キャッシュフローから理論株価を出す方法(フリーCF×20倍・営業CF×10倍)
③ 貸借対照表 – 何を持ち、いくら借りているか
貸借対照表は、決算日という一日の断面です。左側に資産、右側に負債と純資産が並びます。
よく使われるのが自己資本比率ですが、この数字だけで安全性を判断すると間違えます。 銀行や金融会社は預金が負債に乗るため比率が低く出ますし、逆に比率が高くても資産の中身が「のれん」ばかりなら、減損ひとつで吹き飛びます。
実例として、武田薬品ののれん+無形資産が自己資本の1.24倍である点や、楽天が自己資本比率3.4%でも直ちに危険とは言えない理由を扱っています。
→ 貸借対照表(バランスシート)の見方【図解】|自己資本比率の目安は業種で変わる
決算書が読めたら、次は「株価が高いか安いか」
決算書で会社の中身が分かったら、次の問いは「では、いまの株価は高いのか安いのか」です。ここで使うのがPERやPBRといった株価指標になります。
- 理論株価の計算方法【図解】|EPS×15の使い方と、それが効かない4つの場合
- 配当利回りと配当性向の見方|「配当性向482%」をどう読むか
- 調整後利益・コア営業利益の見方|会社が自分で作った利益をどう扱うか
まとめ
- 決算書は損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の3つ。それぞれ成績表・体重計・通帳にあたります
- 読む順番は①損益 → ②営業キャッシュフロー → ③貸借対照表 → ④セグメント
- 利益が出ていても現金がない会社、赤字でも現金が回っている会社が実在します。1つの表だけで判断しないこと
- 決算書が読めたら、次はPER・PBRなどの株価指標で「高いか安いか」を考えます
読み方を覚えたら、実際の決算で試す
ここまでの図解は、どの会社の決算にも同じように使えます。次は実際に公表された決算で練習してみてください。以下はこのサイトで、一次資料(決算短信・決算説明会資料・質疑応答)から読み解いた記事です。どれも「数字がこうなった理由」まで追っています。
値上げか、数量か|6社の決算で分かれた道
同じ「増収」でも、値上げで稼いだ会社と数量で稼いだ会社では中身がまったく違います。ANA・JAL・大和ハウス・積水ハウス・ヤマト・明治を並べて読みます。
- 増収なのに減益 → ヤマトHD(9064):値上げで+80億、失った荷物で△51億。会社が両方を開示しています
- 減収なのに増益 → 積水ハウス(1928):減っているのは国際事業だけ、増益の正体は粗利率
- 上方修正の中身 → 大和ハウス工業(1925):リスク引当1,000億のうち600億を取り崩した結果で、業績の上振れではありません
- 「過去最高益」の落とし穴 → イエローハット(9882):最高益の正体は不動産の売却益。営業利益は減っています
- 原価が利益を食う仕組み → 明治HD(2269):カカオは売上+12.7%で営業利益△34.2%
- 珍しい大幅上方修正 → オムロン(6645):営業利益3.26倍。理由はAI需要を受ける設備投資でした