積水ハウス(1928)が2026年9月10日に発表した2027年1月期第2四半期(中間期・2026年2月1日〜7月31日)は、売上高1兆9,656億円(前年同期比2.5%減)、営業利益1,803億円(同16.0%増)、経常利益1,690億円(同23.8%増)、親会社株主に帰属する中間純利益1,250億円(同23.1%増)でした。
減収なのに、営業利益は16%増えています。しかも利益の伸びは、営業→経常→純利益と下にいくほど大きくなっています。
同時に通期予想も修正されましたが、その中身が変わっています。売上高を930億円引き下げ、営業利益は据え置き、経常利益と当期純利益はむしろ引き上げました。売る量を減らして、利益は落とさない、という修正です。
この記事では、決算短信と決算説明資料、決算補足資料をたどって、①減収の正体 ②それでも増益になった理由 ③米国事業で何が起きているかの3点を確かめます。数日前に公開した大和ハウス工業と同じ業界でありながら、数字の出方がほぼ正反対なので、要所で並べて見ていきます。
| 指標 | 当中間期(2026年2〜7月) | 前年中間期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆9,656億円 | 2兆154億円 | △2.5% |
| 売上総利益(率) | 4,287億円(21.8%) | 3,984億円(19.8%) | +7.6%(+2.0pt) |
| 営業利益(率) | 1,803億円(9.2%) | 1,554億円(7.7%) | +16.0% |
| 経常利益 | 1,690億円 | 1,366億円 | +23.8% |
| 中間純利益 | 1,250億円 | 1,016億円 | +23.1% |
| 包括利益 | 1,583億円 | △193億円 | — |
| 自己資本比率 | 44.0% | 42.7%(前期末) | +1.3pt |
| 通期営業利益(修正後) | 3,500億円(期初計画から変更なし、前期比+2.5%) | ||
| 通期売上高(修正後) | 4兆2,600億円(期初計画から△930億円、前期比+1.5%) | ||
減収497億円の正体は、国際事業ひとつだけです
まず、売上がどこで減ったのかを見ます。積水ハウスは事業を「請負型・ストック型・開発型・国際事業」の4つに分けて開示しています。
| 売上高(億円) | 前年中間期 | 当中間期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 戸建住宅 | 2,470 | 2,441 | △1.1% |
| 賃貸・事業用建物 | 2,699 | 2,649 | △1.9% |
| 建築・土木 | 1,589 | 1,510 | △5.0% |
| 請負型 小計 | 6,759 | 6,601 | △2.3% |
| 賃貸住宅管理 | 3,578 | 3,680 | +2.9% |
| リフォーム | 928 | 1,047 | +12.8% |
| ストック型 小計 | 4,506 | 4,727 | +4.9% |
| 仲介・不動産 | 2,000 | 2,114 | +5.7% |
| マンション | 574 | 561 | △2.3% |
| 都市再開発 | 356 | 984 | +176.2% |
| 開発型 小計 | 2,931 | 3,660 | +24.9% |
| 国際事業 | 6,143 | 4,863 | △20.8% |
| その他・消去 | △187 | △197 | — |
| 合計 | 2兆154 | 1兆9,656 | △2.5% |
全社の減収497億円に対して、国際事業ひとつで1,280億円のマイナスです。国内は、請負型が158億円減った一方で、ストック型が221億円、開発型が729億円増えています。国内だけを合計すれば、むしろ増収です。
そして国内で最も動いたのが都市再開発事業で、売上が356億円から984億円へ2.8倍になりました。中身は、積水ハウス・リート投資法人への都市型賃貸マンション「プライムメゾン用賀砧公園」(東京都世田谷区)など6物件の売却です。
増益249億円を作ったのは、粗利率2.0ポイントの改善です
減収なのに増益になった理由は、損益計算書の上のほうに出ています。
| 損益計算書(億円) | 前年中間期 | 当中間期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 20,154 | 19,656 | △497 |
| 売上原価 | 16,169 | 15,368 | △801 |
| 売上総利益 | 3,984 | 4,287 | +303 |
| 売上総利益率 | 19.8% | 21.8% | +2.0pt |
| 販売費及び一般管理費 | 2,429 | 2,484 | +54 |
| 営業利益 | 1,554 | 1,803 | +249 |
売上が497億円減ったのに、売上原価は801億円減っています。差し引きで売上総利益が303億円増え、販管費の増加54億円を吸収して、営業利益が249億円増えました。
どの事業が利益を作ったかを見ます。
| 営業利益(億円) | 前年中間期 | 当中間期 | 増減率 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 戸建住宅 | 253 | 239 | △5.2% | 10.2% → 9.8% |
| 賃貸・事業用建物 | 366 | 366 | +0.1% | 13.6% → 13.8% |
| 建築・土木 | 149 | 150 | +0.5% | 9.4% → 10.0% |
| 請負型 小計 | 769 | 756 | △1.6% | 11.4% → 11.5% |
| 賃貸住宅管理 | 370 | 417 | +12.7% | 10.3% → 11.3% |
| リフォーム | 130 | 150 | +14.8% | 14.1% → 14.4% |
| ストック型 小計 | 501 | 567 | +13.3% | 11.1% → 12.0% |
| 仲介・不動産 | 143 | 167 | +17.2% | 7.2% → 7.9% |
| マンション | 85 | 157 | +83.8% | 14.9% → 28.0% |
| 都市再開発 | 50 | 273 | +437.7% | 14.3% → 27.8% |
| 開発型 小計 | 279 | 598 | +114.1% | 9.5% → 16.4% |
| 国際事業 | 152 | 10 | △93.2% | 2.5% → 0.2% |
| その他・消去 | △147 | △130 | — | — |
| 合計 | 1,554 | 1,803 | +16.0% | 7.7% → 9.2% |
増益249億円の内訳は、開発型が+319億円、ストック型が+66億円。ここから国際事業の△142億円が引かれています。都市再開発とマンションという2つの事業だけで295億円を作り、それが海外の穴を埋めた、という決算です。
注目したいのはマンション事業の営業利益率28.0%です。売上は2.3%減っているのに、利益は83.8%増えました。会社は「グラングリーン大阪 THE NORTH RESIDENCE」(大阪市北区)や「グランドメゾン渋谷大山町」(東京都渋谷区)の引き渡しが計画通り進んだと説明しています。都心部の高額マンションを、計画通りの価格で引き渡せた四半期だったということです。
もうひとつ、営業利益より経常利益のほうが伸びている点も見ておきます。
| 営業外損益(億円) | 前年中間期 | 当中間期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 受取利息 | 37 | 24 | △12 |
| 持分法による投資利益 | 19 | 47 | +27 |
| 為替差損益 | △19(差損) | +38(差益) | +57 |
| 支払利息 | △188 | △201 | △12 |
| その他 | △48 | △33 | +15 |
| 営業外収支 合計 | △188 | △112 | +75 |
営業外収支が75億円改善しています。大きいのは為替差損益の反転(57億円)と、持分法投資利益の増加(27億円、主にシンガポール事業)です。損益計算書の見方で整理したとおり、営業利益と経常利益で伸び率が違うときは、その間の行に理由があります。ここでは為替が味方に回った四半期でした。
同じことは包括利益にも出ています。前年中間期は△193億円のマイナスだったのが、今期は1,583億円。差の大半は為替換算調整勘定で、前年の△1,105億円が今期は+431億円に反転しました。海外資産を大きく持つ会社の包括利益は、事業の良し悪しよりも為替で振れます。
米国戸建住宅事業は、営業赤字△125億円です
ここがこの決算の中心です。国際事業の中身を分解します。
| 国際事業(億円) | 前年中間期 売上/営業利益 | 当中間期 売上/営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| 米国 戸建住宅 | 5,032/△29 | 4,135/△125 | △0.6% → △3.0% |
| うち、のれん償却等を除く | —/191 | —/38 | 3.8% → 0.9% |
| 米国 コミュニティ開発 | 277/91 | 467/111 | 32.8% → 23.9% |
| 米国 賃貸住宅開発 | 554/89 | 158/59 | 16.1% → 37.3% |
| アメリカ 計 | 5,865/150 | 4,761/44 | 2.6% → 0.9% |
| オーストラリア | 278/11 | 102/△22 | 4.1% → △21.9% |
| その他・共通費 | —/△9 | —/△11 | — |
| 国際事業 合計 | 6,143/152 | 4,863/10 | 2.5% → 0.2% |
| (参考)シンガポール持分法 | 21 | 46 | — |
米国戸建住宅事業の営業利益は△125億円の赤字です。前年も△29億円の赤字でしたが、赤字幅が4倍以上に広がりました。
のれん償却等で、年間326億円が引かれています
ただし、この赤字の読み方には注意が必要です。会社は「買収時のPPA(Purchase Price Allocation)による影響を除く」営業利益を併記しています。
その影響を除くと、米国戸建住宅事業の営業利益は前年191億円 → 今期38億円です。つまりPPAによる費用が、前年で220億円、今期で163億円差し引かれている計算になります。通期計画では、この控除額が326億円と見込まれています。
| 米国戸建住宅(通期・億円) | のれん等控除前 | PPA等の控除 | のれん等控除後 |
|---|---|---|---|
| 期初計画(2026年3月) | 333($230M) | △308 | 25 |
| 修正計画(2026年9月) | 173($111M) | △326 | △152 |
期初は「のれんを引いてもかろうじて25億円の黒字」という計画でしたが、修正後は△152億円の赤字計画になりました。ドルベースの営業利益が230百万ドルから111百万ドルへ、半分以下に落ちたためです。
この構造は、大和ハウス工業が住友電設について説明していたことと同じです。住友電設は単体の営業利益44億円が、のれん等の償却後には7億円になっていました。ただし積水ハウスの場合は、控除後がマイナスに沈んでいます。買収の規模と、事業環境の悪さが重なった結果です。
引渡戸数は24.6%減。ただし単価は上げています
米国戸建住宅事業の実物の数字を見ます。
| 米国戸建住宅 | 前年中間期 | 当中間期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 引渡戸数 | 6,064戸 | 4,572戸 | △1,492戸(△24.6%) |
| 受注戸数 | 6,631戸 | 5,509戸 | △1,122戸(△16.9%) |
| 引渡単価 | 54.0万ドル | 55.3万ドル | +1.3万ドル |
| 売上総利益率(PPA除く) | 16.6% | 15.9% | △0.7pt |
| 期中平均レート | 149.01円 | 158.30円 | 円安 |
会社の説明はこうです。
「売れなかった」ではなく「利益率とのバランスをとった」——つまり安売りしてまで数を追わなかった、という説明です。実際、引渡単価は54.0万ドルから55.3万ドルへ上がっています。
ここで、同じ米国住宅市場にいる大和ハウスと並べると、対照がはっきりします。
| 米国戸建住宅事業 | 積水ハウス(2〜7月) | 大和ハウス(1〜6月・1〜3月) |
|---|---|---|
| 受注戸数 | △16.9% | +21.4% |
| 引渡戸数 | △24.6% | +19.9% |
| 単価 | 上昇(54.0→55.3万ドル) | —(インセンティブ付与) |
| 粗利率 | 16.6% → 15.9%(△0.7pt) | 20.0% → 17.5%(△2.5pt) |
| 会社の説明 | 「利益率とのバランスをとった販売」 | 「販売促進のためにインセンティブを付与」 |
大和ハウスは量を取り、積水ハウスは量を捨てて単価を守りました。どちらも米国の住宅ローン金利が高止まりしているという同じ環境にいて、打ち手が正反対です。粗利率の下落幅は、量を追った大和ハウスのほうが大きくなっています。
この「量か、単価か」という分岐は、ANAとJALの国際線でも見た構図とまったく同じです。ANAは旅客数+14.3%で収入を伸ばし、JALは旅客数△0.4%でも単価を上げて収入+14.4%を作りました。業種が変わっても、需要が弱るときに会社が選べる道は2つしかない、ということです。
中期計画では、2年で営業利益を8倍にする絵が描かれています
会社は2026年3月に第7次中期経営計画(2026〜2028年度)を公表しており、米国戸建住宅事業の計画も開示されています。
| 米国戸建住宅(のれん償却等・連結調整除く) | 2025年度実績 | 2026年度期初 | 2026年度修正 | 2027年度 | 2028年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業利益(百万ドル) | 230 | 230 | 111 | 507 | 927 |
| 受注戸数 | 11,411戸 | 12,500戸 | 9,571戸 | 13,000戸 | 14,300戸 |
| 引渡戸数 | 11,712戸 | 11,500戸 | 9,500戸 | 12,200戸 | 13,600戸 |
| 売上総利益率 | 16.5% | 17.0% | 16.0% | 19.0% | 21.0% |
| 営業利益率 | 3.4% | 3.4% | 2.0% | 6.5% | 9.6% |
2026年度の111百万ドルから、2028年度の927百万ドルへ。8.4倍にする計画です。売上総利益率も16.0%から21.0%へ5ポイント引き上げる想定になっています。
会社が挙げている施策は3つです。①BTO(受注生産)比率の向上と中高級商品へのシフト ②One Company化に伴う拠点統廃合・人員削減による経費圧縮(一般管理費を前期比50百万ドル程度圧縮) ③低採算区画の早期販売。BTO比率は10%→20%→21%と上がっており、1〜6月のBTO受注時粗利率は約20%とされています。
保有土地は約50,000区画あり、うち低採算区画が約8,000区画。会社はこれを「エントリー層向け且つSPEC住宅(先に建てて売る方式)での販売を前提に取得した」ものと説明し、早期販売に注力するとしています。足元の粗利率低下は、この在庫処理を進めていることの裏返しでもあります。
ただし、2026年度の実績が計画の半分以下に落ちた直後に、2年で8倍という絵が残っていることは、正直に言えば見ておくべき点です。次の中期計画の見直しがあるとすれば、ここが最初の候補になります。
売っていないのではなく、引き渡していません
ここまでの数字だけを見ると、国際事業は縮小しているように見えます。ところが受注のデータは逆を示しています。
| 国際事業 | 前年中間期/前期末 | 当中間期/当中間期末 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,143億円 | 4,863億円 | △20.8% |
| 受注高 | 6,608億円 | 7,946億円 | +20.3% |
| 受注残高 | 2,951億円 | 6,034億円 | +104.5% |
売上が20.8%減っている一方で、受注高は20.3%増え、受注残高は2倍以上になりました。米国戸建住宅事業だけを取り出しても、受注残戸数は1,329戸から2,266戸へ70.5%増、受注残高は1,308億円から2,371億円へ増えています。
受注残が膨らんだ最大の要因は、米国賃貸住宅開発事業です。この事業の中間期の売上は554億円から158億円へ減っていますが、受注高は641億円から1,831億円へ約2.9倍になりました。会社はこう説明しています。
7月末までに引き渡しは終わっているのに、会計上の計上は第3四半期(8月以降)になる、という説明です。中間決算の数字には入っていません。通期計画では、米国賃貸住宅開発事業の売上が776億円から2,584億円へ、営業利益が154億円から369億円へ増える計画になっています。
つまり国際事業の中間期の数字は、下期に計上される分が抜けた状態です。ここを踏まえずに「海外が半減した」とだけ読むと、判断を誤ります。
中東情勢は、ここでは資材価格として効いています
今回の決算資料で、通期計画の説明の冒頭に置かれているのがこの一文です。
そして営業利益の期初計画からの増減要因では、「中東情勢など市況変化に伴う資材価格高騰の影響」として請負型ビジネスに△65億円が明示されています。国内事業は、この△65億円を含めてもなお+165億円のプラスです。
この夏の決算を追ってきて分かったのは、同じ中東情勢が、会社によってまったく違う場所に現れるということでした。同じ住宅業界の2社でも、出方が逆になっています。
| 会社 | 中東情勢の現れ方 |
|---|---|
| 積水ハウス | 資材価格上昇として請負型に△65億円。戸建住宅では「購入者マインドの低下傾向」 |
| 大和ハウス | 期初に営業利益△1,000億円を織り込み、Q1後に600億円を取り崩し。戸建住宅では逆に「早期購入の動き」という追い風 |
| スズキ | 期初に織り込んでいなかったと明言し、通期を下方修正 |
| 住友商事 | CFOが「期初計画にストレスとして織り込んでいる」と発言 |
| 日本郵船 | ホルムズ海峡封鎖が、あるセグメントに追い風・別のセグメントに逆風 |
| ANA・JAL | 航空燃油費の急騰として、費用側に直撃 |
| 丸紅 | 資源価格を通じて、利益と市況の両面に影響 |
とくに面白いのが、大和ハウスと積水ハウスが、同じ国内戸建住宅事業について正反対の説明をしている点です。大和ハウスは「今後の建築コスト上昇等への懸念から顧客の早期購入の動きがみられ」と、値上がり前の駆け込みを増収要因に挙げました。積水ハウスは「中東情勢緊迫化に端を発した更なるインフレ進行等を背景とした購入者マインドの低下傾向」と書いています。
同じ出来事が、片方では「今のうちに買おう」、もう片方では「様子を見よう」として現れたということになります。両社の主力商品の価格帯や顧客層の違いが背景にあると考えるのが自然ですが、決算資料からそこまでは読み取れません。少なくとも、同じ環境説明が正反対の結論を導くことがある、という事実は覚えておく価値があります。
通期は、売上だけを930億円下げました
通期予想の修正内容です。
| 通期(億円) | 前期実績 | 期初計画(2026年3月) | 修正計画(2026年9月) | 期初比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 41,979 | 43,530 | 42,600 | △930 |
| 売上総利益 | 8,398 | 8,710 | 8,660 | △50 |
| 営業利益 | 3,414 | 3,500 | 3,500 | ±0 |
| 経常利益 | 3,278 | 3,140 | 3,160 | +20 |
| 当期純利益 | 2,320 | 2,180 | 2,240 | +60 |
| EPS | 358.07円 | 336.30円 | 345.55円 | +9.25円 |
| ROE | 11.3% | 10.1% | 10.1% | — |
修正の内訳は、会社が金額で開示しています。
| 期初計画からの増減 | 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|
| 国内 請負型 | △350億円 | △15億円 |
| 国内 ストック型 | ±0 | +55億円 |
| 国内 開発型 | +220億円 | +125億円 |
| 国内 小計 | △130億円 | +165億円 |
| 国際事業 | △840億円 | △85億円 |
| 消去または全社 | +40億円 | △80億円 |
| 合計 | △930億円 | ±0 |
国際事業の売上を840億円落とし、国内の利益改善165億円で営業利益を守った、という修正です。経常利益の+20億円は持分法投資利益(主にシンガポール事業)、当期純利益の+60億円は特別利益(主に政策保有株式売却益)によるものと説明されています。
ただし、ここで注意したい点が2つあります。
1つ目は、通期と中間期で利益の方向が違うことです。中間期は営業+16.0%・経常+23.8%・純利益+23.1%でしたが、通期計画は営業+2.5%・経常△3.6%・純利益△3.5%です。中間期の進捗率は営業利益で51.5%、当期純利益で55.8%。下期は前年同期を下回る計画になっています。
2つ目は、都市再開発事業です。中間期に営業利益+437.7%と最も貢献したこの事業は、通期計画では前期比△206億円の減益(481億円→275億円)です。期初計画比では+125億円と上振れていますが、前期との比較では落ちます。中間期の好調は、物件売却がこの半年に集中したことによるもので、通年ではならされる、ということです。
| 通期営業利益(億円) | 前期実績 | 修正計画 | 前期比 | 期初計画比 |
|---|---|---|---|---|
| 請負型 小計 | 1,457 | 1,475 | +17 | △15 |
| ストック型 小計 | 946 | 1,050 | +103 | +55 |
| うちリフォーム | 259 | 300 | +40 | +20 |
| 開発型 小計 | 940 | 825 | △115 | +125 |
| うちマンション | 175 | 230 | +54 | ±0 |
| うち都市再開発 | 481 | 275 | △206 | +125 |
| 国際事業 | 383 | 480 | +96 | △85 |
| 消去または全社 | △319 | △340 | △20 | △80 |
| 合計 | 3,414 | 3,500 | +85 | ±0 |
なお、国際事業は通期では+96億円の増益計画です。中間期に△142億円だったものが通年で増益に転じる前提は、先ほど見た米国賃貸住宅開発事業の物件売却(第3四半期計上)にあります。この売却が計画通り計上されるかどうかが、通期を左右します。会社は売却計画6〜7物件のうち4物件が完了したとしています。
為替の前提も変わりました。1ドル145円から155円へ(前期実績150.43円)。オーストラリアドルも100円から108円へ引き上げられています。円安方向に前提を置き直したということです。
在庫を積むのをやめ、借金を返し始めています
この決算でいちばん静かに、しかし大きく変わったのがキャッシュ・フローです。
| キャッシュ・フロー(億円) | 前年中間期 | 当中間期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 営業活動によるCF | △129 | +889 | +1,019 |
| 投資活動によるCF | △458 | △323 | +135 |
| フリー・キャッシュ・フロー | △588 | +566 | +1,154 |
| 財務活動によるCF | +198 | △689 | △888 |
| 現金及び現金同等物 期末残高 | 3,351 | 4,261 | +910 |
営業キャッシュ・フローが1,019億円改善し、マイナスからプラスへ転じました。会社が挙げている理由は1つです。
前年は半年で1,495億円ぶん在庫を積み増していたのが、今期はほぼゼロ(9億円)になりました。そして借入は653億円の純増から209億円の純減に転じています。キャッシュ・フロー計算書の見方で整理したとおり、不動産開発業の営業CFがマイナスなのは「仕入れている」ことを意味し、プラスに転じたのは「売って回収している」ことを意味します。
ここでも大和ハウスと並べておきます。両社とも同じ「投資から回収へ」という局面にいますが、進み具合が違います。
| 財務の状況 | 積水ハウス(2026年7月末) | 大和ハウス(2026年6月末) |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 42.7% → 44.0%(上昇) | 34.4% → 33.8%(低下) |
| D/Eレシオ (ハイブリッド考慮後) |
0.80 → 0.77倍(低下) | 0.98 → 1.10倍(上昇) |
| 有利子負債 | +339億円 (うち為替影響538億円) |
+3,872億円 |
| 棚卸資産・販売用不動産 | +1,414億円 (うち為替影響944億円) |
+2,128億円 |
| 会社の言葉 | 「財務健全性指標は着実な改善を見込む」 | D/Eレシオは「高い水準です」 |
積水ハウスの有利子負債339億円の増加は、その大半(538億円)が円安による為替換算です。為替の影響を除けば、実質的には減っている計算になります。販売用不動産の増加1,414億円も、944億円が為替影響です。
会社は通期末の目標も数字で示しています。
| 財務健全性 | 2024年度末 | 2025年度末 | 2026年度末(修正計画) |
|---|---|---|---|
| D/Eレシオ(ハイブリッド考慮後) | 0.86倍 | 0.80倍 | 0.65倍 |
| 債務償還年数(Net Debt/EBITDA) | 3.54年 | 3.29年 | 2.79年 |
| Net Debt | 13,868億円 | 13,465億円 | 11,660億円 |
| EBITDA | 3,920億円 | 4,098億円 | 4,173億円 |
会社は第7次中期経営計画の最終年度で債務償還年数2年程度を目指すとしています。第7次中計の3か年では、購入・投資が5兆6,000億円に対して、売却・回収が6兆6,500億円。差し引き1兆500億円ぶん、資金を回収する計画です。中間期までの進捗は購入7,003億円(12.5%)、売却8,195億円(12.3%)。
格付はJCRがAA、R&IがAA-、S&PがBBB+です。貸借対照表の見方で触れたとおり、在庫と借入が同時に膨らむ業態では、この指標の方向が業績以上に重要になることがあります。
配当145円で15期連続増配。ただし増配幅は1円です
株主還元は、期初計画から変更されていません。
| 株主還元 | 方針(第7次中計) | 2026年度 修正計画 |
|---|---|---|
| ROE | 最終年度(2028年度)で12%後半 | 10.1%(前年度比△1.2pt) |
| 1株当たり配当金 | 中期的な平均配当性向40%以上 配当金の下限値145円 |
145円(前年度比+1円) 配当性向42.0% |
| 自己株式取得 | 機動的に実施 | 成長投資と財務健全性のバランスを考慮し、見送る方針 |
配当の推移を並べると、今期の性格がはっきりします。
| 年度 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026(計画) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1株当たり配当金 | 84円 | 90円 | 110円 | 123円 | 135円 | 144円 | 145円 |
| 増配幅 | — | +6円 | +20円 | +13円 | +12円 | +9円 | +1円 |
直近5年は年10円前後ずつ増やしてきましたが、今期は+1円です。これは会社が方針として掲げる「配当金の下限値145円」にちょうど届く水準でもあります。配当利回りと配当性向の見方で整理したとおり、増配が続いていることと、増配のペースが保たれていることは別の話です。連続増配の記録は伸びますが、増え方は明確に緩んでいます。
そして自己株式取得は「見送る方針」と明記されました。方針上は「機動的に実施」でありながら、今期は実施しないと宣言しています。理由は「成長投資と財務健全性のバランスを考慮し」。米国事業への投資と、債務削減を優先する、という判断です。
ROEは前期11.3%から10.1%へ下がる計画です。2028年度に12%後半という目標から見ると、今期はいったん後退する年になります。PER・PBR・ROEの見方で扱ったとおり、ROEの低下が「利益が減ったから」なのか「資本が増えたから」なのかは分けて見る必要があります。今期は、当期純利益が前期比△3.5%になる一方で、純資産が中間期だけで1,147億円増えているため、両方が効いています。
なお、発行済株式数は6億6,312万株から6億5,158万株へ1,153万株減少し、自己株式も1,488万株から318万株へ減っています。ただし短信の「株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記」は「該当事項はありません」とされています。
この決算から言えること
整理します。
- 減収497億円の正体は、国際事業ひとつ(△1,280億円)。国内はストック型+221億円、開発型+729億円で、合計すれば増収でした。
- それでも増益になったのは、粗利率が19.8%から21.8%へ2.0ポイント上がったから。売上が497億円減ったのに、売上総利益は303億円増えています。
- 増益249億円を作ったのは都市再開発(+223億円)とマンション(+72億円)。マンション事業の営業利益率は28.0%でした。
- 米国戸建住宅事業は営業赤字△125億円。のれん償却等(PPA)を除いても38億円で、前年の191億円から大きく落ちました。通期ではPPAによる控除が326億円見込まれています。
- 引渡戸数は△24.6%、受注戸数は△16.9%。ただし引渡単価は54.0万ドル→55.3万ドルへ上昇。会社は「利益率とのバランスをとった販売」と説明しています。大和ハウスが米国で量を取ったのと、正反対の選択です。
- それでも受注残高は2倍(+104.5%)。米国賃貸住宅開発の4物件は7月に引き渡し済みで、計上は第3四半期です。中間決算の数字には入っていません。
- 中東情勢は資材価格として請負型に△65億円。会社は「その影響を除けば国内全ビジネスで期初計画を上回る」と明記しました。大和ハウスが同じ中東情勢を国内戸建の追い風と説明したのとは逆です。
- 通期は売上を930億円下げ、営業利益は据え置き、経常・純利益は引き上げ。ただし中間進捗51.5%に対して下期は減益計画で、都市再開発は通期では前期比△206億円です。
- 営業CFが△129億円から+889億円へ。棚卸資産の積み増しが1,495億円からほぼゼロになり、借入は209億円の純減。D/Eレシオは0.77倍へ低下しました。
- 配当145円で15期連続増配。ただし増配幅は+1円で、自己株式取得は見送り。ROEは11.3%から10.1%へ低下する計画です。
次の四半期で確かめたいのは4点です。①米国賃貸住宅開発の残り2〜3物件の売却が進むか ②米国戸建の受注戸数が下げ止まるか ③下期に減益計画となっている都市再開発が計画通りか ④営業キャッシュ・フローのプラスが続くか。
この決算を一言でまとめるなら、「国内で稼いで、海外の穴を埋めた半年」です。そして海外の穴は、事業そのものが壊れたというより、買収の会計処理(年間326億円)と、あえて量を追わなかった選択と、下期にずれた売上の3つが重なったものでした。
同じ週に読んだ大和ハウス工業と並べると、住宅業界の2社がいま正反対の位置にいることが分かります。大和ハウスは増収増益で通期は前期の一時要因の反動に沈み、借入を増やしながら在庫を積んでいる。積水ハウスは減収増益で通期は利益を守り、在庫を積むのをやめて借入を返している。どちらが正しいかは数年後にしか分かりませんが、同じ業界・同じ金利環境でも、会社の立ち位置はこれだけ違うということは、いま確認できます。
※本記事は2026年9月10日発表の2027年1月期第2四半期(中間期)決算短信、同日公表の「2026年度第2四半期 経営計画説明会」資料および決算補足資料に基づいています。大和ハウス工業の数値は同社の2027年3月期第1四半期決算資料によります。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
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