【2026年版】JAL・日本航空(9201)の今後の業績と株価の見通し|航空事業は赤字、黒字を作ったのはマイルと金融だった

日本航空(JAL・9201)が2026年8月3日に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上収益5,237億円(前年同期比11.2%増)、EBIT(財務・法人所得税前利益)127億円(同72.1%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益53億円(同80.2%減)でした。

最終利益が5分の1になっています。ただ、この決算でいちばん重要なのはそこではありません。セグメント別に見ると、飛行機を飛ばす2つの事業がどちらも赤字でした。

フルサービスキャリア事業のEBITは△8億円(前年307億円)、LCC事業は△1億円(前年42億円)。黒字を作ったのはマイル/金融・コマース事業の120億円です。会社自身が「マイル/金融・コマース事業による安定した収益が黒字の土台」と書いています。

そしてANAホールディングスと並べると、同じ四半期・同じ環境で戦略がほぼ正反対だったことが分かります。この記事では決算短信・決算説明会資料・質疑応答をたどって、①航空事業が赤字になった理由 ②ANAとの決定的な違い ③会社が示した今後の条件、の3点を確かめます。

この決算を1枚で(2027年3月期 第1四半期)
指標 当期 前年同期 増減率
売上収益 5,237億円 4,710億円 +11.2%
営業費用 5,168億円 4,354億円 +18.7%
 うち航空燃油費 1,488億円 940億円 +58.4%
EBIT 127億円 455億円 △72.1%
EBITマージン 2.4% 9.7% △7.2pt
親会社帰属四半期利益 53億円 270億円 △80.2%
1株当たり年間配当 96円(据え置き)
EBITマージンが9.7%から2.4%へ。燃油費が548億円増えたことが効いています。

飛行機を飛ばす2つの事業が、どちらも赤字でした

JALは事業を3つに分けています。その内訳が、この決算の性格をはっきり示します。

セグメント 売上収益 前年比 EBIT 前年
フルサービスキャリア事業 4,202億円 +13.8% △8億円 307億円
LCC事業 324億円 +6.7% △1億円 42億円
マイル/金融・コマース事業 563億円 +13.3% 120億円 102億円(+17.6%)
連結EBIT 127億円 455億円

売上の8割を占めるフルサービスキャリア事業が、13.8%の増収でありながら赤字に転落しました。LCC事業も同様です。連結でかろうじて黒字を保ったのは、マイル・カード・金融の事業が120億円を稼いだからでした。

会社の説明は率直です。

会社の説明(短信):「中東情勢の緊迫化に伴う需給変化や燃油価格急騰など、ボラティリティの極めて高い外部環境下においても、国際路線事業の外貨獲得力と非航空事業による収益多角化を両輪に連結黒字を堅持しました。特に『マイル/金融・コマース事業』による安定した収益が黒字の土台となっておりますが、これは当社がコロナ禍以降進めてきた事業構造改革および事業ポートフォリオ変革が着実に進捗している結果です」

コロナ禍で航空需要が消えた経験から、航空以外の収益源を育ててきた。その成果が、燃料高の四半期に効いたという説明です。

航空燃油費が940億円から1,488億円へ

赤字の直接の原因は、費用です。会社は営業費用を燃油費とそれ以外に分けて開示しています。

項目 前年同期 当期 増減 比率
売上収益 4,710億円 5,237億円 +526億円 111.2%
営業費用 4,354億円 5,168億円 +813億円 118.7%
 航空燃油費 940億円 1,488億円 +548億円 158.4%
 航空燃油費以外 3,414億円 3,679億円 +265億円 107.8%

売上が526億円増えたのに、費用が813億円増えました。そのうち548億円(67%)が燃油費です。

会社は別の切り口でも分解しています。市況の影響と、それ以外です。

EBITの増減(前年差 △328億円) 金額
市況影響 △501億円
 うち燃油市況 △689億円
 うち為替 △130億円
 燃油サーチャージ・ヘッジ損益等による回収 +316億円
市況以外 +173億円

市況を除けば173億円のプラスでした。燃料と為替という、自分ではどうにもならない要素で501億円を失い、EBITが455億円から127億円へ落ちたという構図です。

月ごとの燃料価格も質疑応答で開示されています。シンガポール・ケロシンの月次平均は4月195ドル、5月200ドル、6月151ドル。会社は「6月にかなり下がった。これが収支改善のポイントの一つ」と説明しています。

ANAとJALは、同じ四半期に正反対のことをしていました

ここが今回いちばん面白い点です。両社の国際線旅客の数字を並べます。

国際線旅客(2026年4〜6月) ANA JAL
旅客数 +14.3% △0.4%
旅客キロ(需要) +11.6% △2.1%
座席キロ(供給) +4.0% △0.7%
座席利用率 79.3% → 85.1% 86.1% → 84.9%
旅客収入 +20.0% +14.4%

ANAは人を14.3%多く乗せて収入を20%伸ばしました。JALは人が0.4%減ったのに収入を14.4%伸ばしています。

JALの収入増は、ほぼ全部が単価です。旅客収入を旅客キロで割ると、前年の約16.7円/人キロから約19.6円へ、17%程度の上昇になります。会社も質疑応答で「燃油サーチャージを除いたネット単価は、第1四半期+17%」と述べており、計算が一致します。

国内線はもっと対照的です。

国内線旅客(2026年4〜6月) ANA JAL
旅客数 +3.9% △2.7%
旅客収入 +1.1% +3.6%
単価の方向 下げた(タイムセール実施) 上げた(レベニューマネジメント)

ANAは単価を下げて席を埋め、JALは単価を上げて席が空いた。同じ市場で、正反対の選択です。

JALはこの戦略を続ける構えです。質疑応答では7月以降の予約動向として「国際は旅客数△6%・単価+23%、国内は旅客数△1%・単価+5%」という数字が示されました。第2四半期も「人は減らして単価を上げる」路線です。

使える読み方:同じ業界の2社を比べるときは、売上の伸び率ではなく「量」と「単価」に分けて見ると、経営の選択が見えます。量で伸ばす会社と単価で伸ばす会社では、市況が変わったときの効き方も変わります。なお、6月にJALの国内線旅客数が減った理由について、会社は「関東地方に2回来た台風の影響であり、競合他社の運賃体系の影響は無いと考えている」と答えており、ANAのタイムセールの影響は否定しています。

国際貨物は、量も単価も伸びました

貨物では、JALのほうが量を伸ばしています。

国際貨物(2026年4〜6月) ANA JAL
貨物トンキロ(量) +0.1% +13.7%
貨物郵便収入 +37.9% +52.4%

JALの国際線貨物郵便収入は355億円から541億円へ増えました。会社は理由を「大型貨物機の増便や高付加価値貨物輸送拡大、需給ひっ迫やサーチャージ適用による単価向上」と説明しています。

需給がひっ迫した背景として、短信には「中東における外国航空会社の運休に伴う需給のひっ迫」と書かれています。ANAも「地政学的影響により中東方面のマーケット全体の供給量が回復途上」と述べており、両社が同じ現象を別の言葉で説明していることになります。

両社とも、社債型種類株式を発行しました

財務面で共通する動きもあります。JALは2026年6月3日に第1回社債型種類株式を発行しました。

会社の説明は「経営ビジョンの実現に向かい、強固な財務基盤を維持しつつ、大規模な成長投資をしていくため」で、調達資金は「エアバスA350型機やボーイング737-8型機など、最新鋭機材購入に係る設備投資の一部」に充てる予定とのことです。

これにより、親会社所有者帰属持分は1兆2,896億円から1兆4,473億円へ増え、持分比率は40.3%から42.9%へ改善しました。一方で1株当たり親会社所有者帰属持分は2,586.99円から2,499.09円へ減っています。増えた資本のうち普通株主に帰属しない部分があるためです。

ANAにも社債型種類株式があり、2027年3月期の配当予想は1株175円です。貸借対照表の見方で触れたとおり、資本と負債の中間にある調達手段は、普通株主の取り分に影響します。航空2社がそろってこの手段を使っているのは、機材投資の重さを示しています。

通期はEBIT△17.4%。条件は会社が数字で示しています

通期予想は据え置かれました。

項目 JAL 通期予想 前期比 (参考)ANA
売上 2兆950億円 +4.1% +9.1%
EBIT / 営業利益 1,800億円 △17.4% △31.0%
最終利益 1,100億円 △20.1% △43.2%

Q1ではJALのほうが悪かったのに、通期見通しではJALのほうが減益幅は小さくなっています。

その達成条件を、会社は質疑応答で具体的に示しました。

会社の回答(要旨):「燃油市況次第。8〜9月のシンガポール・ケロシンが150ドルで推移すれば計画並となり、120ドルで推移すれば第1四半期の120億円のビハインドを取り戻せる見通し」

ここまで具体的な条件提示は珍しく、投資家にとっては追いかけやすい指標になります。なおQ1は計画に対してEBITで120億円のビハインドでした。内訳は「売上+340億円に対して、費用+430億円(燃油費+460億円、燃油費以外△30億円)」と説明されています。

第2四半期の需要見通しについては、やや慎重です。「日本の猛暑でインバウンド需要はあまり強くないことに加えて、今年度は燃油サーチャージが高いため日本発観光需要もやや厳しい」。一方で「日本発業務需要は引き続き強い」「秋以降はインバウンド需要も強い」としています。

国内線に燃油サーチャージを導入する準備が進んでいます

今後の材料として、国内線の収益構造を変える動きがあります。

会社の回答(要旨):燃油サーチャージの導入は有識者会議の結論とは関係なく、来年4月をターゲットに準備している」「有識者会議においては、ダイヤ調整・コードシェア・供給調整の話が出た。第一段階としてのダイヤ調整は、下期もしくはFY2027上期を目途に考えている。コードシェアはシステム改修が必要なので、まだ時間がかかる。供給調整については独禁法の適用除外が前提となるが、実現を目指し、まずは認可取得の準備を進めている

国内線に燃油サーチャージが導入されれば、燃料高をそのまま運賃に転嫁できるようになります。現在は国際線にしかない仕組みです。ANAも国内有識者会議を受けて「新幹線に対して需要シェアが劣後している路線を中心にダイヤの最適化」を進めており、両社とも国内線の採算改善に動いていますJR西日本との競合が、航空会社側の資料に明示されている点も注目に値します。

もうひとつ、マイル事業ではMarriott Bonvoyとの提携が発表されました。会社は狙いをこう説明しています。「Marriott Bonvoy会員数は約3億人と、JALカード会員数約300万人に対して非常に規模が大きく、海外発顧客の集客を一気に進める機会」。会員数で100倍の差がある相手と組むということです。

LCC事業については、内訳も示されました。「ZIPAIR・SPRING JAPAN・ジェットスター・ジャパンのうち、ZIPAIRはマイナス、SPRING JAPANはプラスで差し引きなし。ジェットスター・ジャパンのマイナスが大きく、計画対比ではマイナス」。SPRING JAPANについては「中国線の需給がタイトで単価は5割ほど上がっており、事業環境は悪くない」とのことです。

配当は96円で据え置き(ANAは減配)

株主還元でも両社の判断が分かれました。

項目 JAL ANA
前期の年間配当 96円 65円
今期の配当予想 96円(据え置き) 60円(減配)
通期の最終利益予想 △20.1% △43.2%
自己資本比率(6月末) 40.3% → 42.9% 37.7% → 35.6%

JALは配当を据え置き、自己資本比率も改善。ANAは減配し、自己資本比率は低下。ただしANAは自己株式を1,779万株増やしており、還元の形が違うという面もあります。配当利回りと配当性向の見方で整理したとおり、減益局面での配当方針は、会社が何を優先しているかを示します。

この決算から言えること

整理します。

  • フルサービスキャリア事業(△8億円)とLCC事業(△1億円)が両方赤字。連結黒字127億円を支えたのは、マイル/金融・コマース事業の120億円でした。
  • 費用増813億円のうち548億円(67%)が航空燃油費。940億円から1,488億円へ1.58倍になりました。
  • 市況影響は△501億円(燃油△689億円、為替△130億円)。市況を除けば+173億円のプラス。EBITマージンは9.7%から2.4%へ低下しました。
  • ANAとは正反対の戦略。ANAは国際線の旅客数+14.3%・収入+20.0%(量で伸ばす)、JALは旅客数△0.4%・収入+14.4%(単価で伸ばす)。国内線もANAは単価を下げ、JALは上げました。
  • 国際貨物では逆にJALが量を伸ばしました(トンキロ+13.7%、収入+52.4%)。理由は大型貨物機の増便と、中東での外国航空会社の運休による需給ひっ迫です。
  • 2026年6月3日に社債型種類株式を発行。A350やB737-8の購入に充てる予定で、自己資本比率は42.9%へ改善しました。
  • 通期はEBIT△17.4%・最終△20.1%で据え置き。条件は「8〜9月のケロシンが150ドルなら計画並、120ドルならQ1の120億円のビハインドを取り戻せる」と数字で示されています。
  • 国内線の燃油サーチャージを2027年4月をターゲットに準備中。実現すれば燃料高を運賃に転嫁できるようになります。

次の四半期で確かめたいのは3点です。①ケロシン価格が150ドルを上回るか下回るか ②「人を減らして単価を上げる」戦略が続くか ③マイル/金融・コマース事業の黒字がどこまで伸びるか。

航空2社を並べて分かるのは、同じ環境でも会社によって打ち手が違い、その結果も違うということです。ANAは量で、JALは単価で収入を伸ばしました。Q1の利益はANAが上でしたが、通期の減益幅はJALのほうが小さい見通しです。JR東日本JR西日本も含めて、国内の運輸業は「客は来るがコストが先に上がる」局面にあり、鉄道は人件費、航空は燃料という違いはあっても、構図は同じです。

※本記事は2026年8月3日発表の2027年3月期第1四半期決算短信、同社ウェブサイト掲載の決算説明会資料(説明付)および主な質疑応答(要旨)に基づいています。ANAの数値は同社の2027年3月期第1四半期決算資料によります。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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