【2026年版】第一生命(8750)の今後の業績と株価の見通し|利益が4つあり、最終利益+368%と通期+2%が同居する

第一生命ホールディングス改め第一ライフグループ(8750)が2026年8月7日に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、経常収益2兆8,930億円(前年同期比25.3%増)、経常利益2,510億円(同195.6%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,600億円(同367.8%増)でした。

最終利益が4.7倍です。ところが通期の見通しは据え置きで、その中身は最終利益+17.5%、会社が重視する「グループ修正利益」では+2%。さらに主力子会社である第一生命単体の通期純利益は、前期3,779億円に対し3,710億円と、2%の減益予想です。

この会社の決算資料には、利益の名前が4つ出てきます。どれを見るかで話がまったく変わります。この記事では決算短信・決算報告・電話会議の説明要旨と質疑応答をたどって、①4つの利益指標の違い ②増益を作ったのは何か ③会社が「2,000億円の損」を出した理由、の3点を確かめます。

この決算を1枚で(2027年3月期 第1四半期)
利益指標 Q1実績 前年同期比 通期見通し 通期の前期比
連結経常利益 2,511億円 +196% 8,690億円 +15%
連結純利益 1,601億円 +368% 5,130億円 +17%
グループ修正利益 1,581億円 +113% 5,600億円程度 +2%
基礎利益 1,551億円 +74% 6,500億円程度 +3%
 うち第一生命(DL)単体の純利益 1,191億円 +211% 3,710億円 △2%
1株当たり配当 72円 +32%
Q1は+368%、通期は+2%〜+17%、主力子会社は△2%。全部が同じ決算の数字です。

この会社には、利益の名前が4つあります

まず整理します。生命保険会社の決算では、次の4つが並びます。

指標 何を表すか
経常利益・純利益 会計基準どおりの利益。有価証券の売却損益もすべて入る
基礎利益 生保の本業の利益。保険料と保険金の差、運用の利息・配当が中心で、有価証券の売却損益は含まない
グループ修正利益 会社独自。海外子会社を含めたグループ全体の実力を測る。株主還元の基準にもなる
グループEV(エンベディッド・バリュー) 利益ではなく保有契約の将来価値を現在価値に直したもの。経済価値ベースの指標

今回の決算では、この4つが+368%・+74%・+113%とばらばらに動きました。会社は決算報告で「MVA関連損益やのれん償却額による差異はあるものの、会計利益とグループ修正利益に大きな乖離は発生していない」と説明しています。前期はPLC(米プロテクティブ)の出再関連評価損など一過性の差異が多かったのが、今期は剥落したためです。

会社が実際に通期の目標として掲げ、進捗を管理しているのはグループ修正利益5,600億円程度です。Q1の1,581億円は進捗率28%調整後利益・コア営業利益の見方で整理したとおり、会社が自分で作った指標を使うときは「会社自身がどれで管理しているか」を見るのが実務的です。

Q1は+368%、通期は+2%。差は「前年の低さ」でした

Q1の伸び率が異常に大きく見えるのは、前年同期の水準が低かったからです。前年(2026年3月期Q1)は経常利益が△59.3%、最終利益が△74.7%と大きく落ちていました。

CFOの西村泰介氏は電話会議でこう説明しています。

CFOの説明(要旨):「グループ修正利益は1,581億円となり、前年同期の742億円から約840億円増益となっております。前年が債券リバランスの前倒し等の影響もありまして、利益水準が低かったことが要因となっておりまして、前年同期比では113%の増加となりました」

つまり前年に同じことをやっていたのです。分母が低いだけで、事業が4.7倍になったわけではありません。

主要子会社の通期見通しを並べると、この決算の性格がはっきりします。

純利益 Q1実績 Q1の伸び 進捗率 通期見通し 通期の前期比
第一生命(DL) 1,191億円 +211% 32% 3,710億円 △2%
第一フロンティア生命(DFL) 217億円 +63% 56% 390億円 +109%
米プロテクティブ(PLC・百万ドル) 171 +498% 33% 510 +301%
豪TAL(百万豪ドル) 114 +14% 21% 540 +49%

最大の子会社である第一生命は、通期では減益を見込んでいます。一方で第一フロンティア生命はすでに進捗56%と、通期の半分以上を1四半期で稼いでいます。

増益840億円のうち864億円が国内事業。他は差し引きマイナスです

グループ修正利益の増減を事業別に分解すると、構造がはっきりします。

事業 前年同期 当期 増減 通期進捗率
国内事業 427億円 1,292億円 +864億円 32%
海外事業 333億円 338億円 +6億円 21%
アセットマネジメント・新規事業 29億円 51億円 +23億円 19〜27%
HD・その他 △47億円 △100億円 △53億円
グループ合計 742億円 1,581億円 +840億円 28%

増益840億円に対し、国内事業だけで+864億円。海外・アセマネ・HDその他を合計すると△24億円で、国内が全部を作り、他がわずかに削っている形です。

会社別に見ると、さらに集中しています。

  • 第一生命(DL)=+809億円(増益840億円の96%)
  • 第一フロンティア生命(DFL)=+57億円
  • 米プロテクティブ(PLC)=△39億円(代理店子会社売却に伴う前期の一時益が剥落)
  • 豪TAL=+41億円、ベトナムDLVN=+12億円
  • HD等=△45億円(販管費・支払利息の増加)

海外の進捗が21%と遅れている理由も、CFOが質疑応答で具体的に答えています。

CFOの回答(要旨):「TALについては、オーストラリアにおいて従来より就業不能等の支払いが増えてきていた。これに対応してリプライシングや商品改定を行い回復を図りつつある。計画した対策が実行できているという意味では予定どおりである。一方で、回復のペースについて少し遅れがあり、予算をやや下回っている

ベトナムのDLVNが予算を超過した理由は、少し皮肉なものでした。会社の記載は「販売量低下に伴う新契約費用抑制により予算を超過」。生命保険は契約を取るときに費用が先に出るため、売れないほうがその期の利益は増えるという性質があります。

2,000億円の損を出して、年170億円の改善を買っています

ここがこの決算のいちばん面白いところです。

第一生命は日本の金利上昇を受けて、Q1に約5,000億円の円建て債券を入れ替えました。低い利回りの古い債券を売り、高い利回りの新しい債券を買う操作です。数字はこうなっています。

項目 Q1実績 通期見通し
円建て確定利付資産の入替え額 約5,000億円 期初想定から上振れる見通し
入替えに伴う売却損 約2,000億円 5,400億円程度
順ざや改善効果(年換算) 約170億円/年 約340億円/年(うち今期寄与260億円)

2,000億円の損を確定させて、年170億円の収益改善を手に入れたということです。単純に割れば回収に12年かかります。通期ベースでは5,400億円の損に対し年340億円ですから、約16年です。

普通の事業会社なら無茶な計算に見えますが、生命保険の負債(保険契約)は数十年続きます。10年以上先まで効き続ける収益改善を買うのであれば、成立するという判断です。「順ざや」とは、運用で得られる利回りが、契約者に約束した予定利率を上回る部分のことで、これが生保の収益力の土台になります。

ではその原資はどこから来たのか。ここも質疑応答ではっきり語られています。

CFOの回答(要旨):株の売却益の上振れた分は、今の状況であれば円債のリバランスに優先的に充てていくということで、益と損がオフセットしている状況になっている」「今期については、株価上昇に伴う売却益の増加を、円債のリバランスの損で吸収させていくというのが大きな考えである」

つまり株で出た利益を、そのまま債券の入替え損にぶつけているのです。円債の売却損の通期見通しは、期初の3,600億円から5,400億円へ1,800億円増えていますが、これは株の売却益が上振れたぶんを充てているためです。

利益を出すことではなく、利益を使って将来の収益力を買うことが目的——決算の見え方より、この意図のほうが重要です。

株を売っているのに、株式残高は増えています

政策保有株の削減も進んでいます。ただし数字の見え方には注意が要ります。

  • Q1に約3,000億円の国内上場株式を売却(通期見通し約8,000億円に対して順調)
  • ところが6月末の国内株式残高は約3.7兆円に増加

会社の説明は「株価上昇による時価の増加が売却額を上回ったため」。売った以上に、残った株が値上がりしたということです。三井住友フィナンシャルグループでも、政策保有株を売っているのに純資産に占める比率が上がる(簿価1.01→0.69兆円なのに時価は2.76→3.31兆円)という同じ現象が起きていました。

削減目標そのものは明確です。質疑応答では「2031年3月末に1.5兆円以下を目安として、ほぼ均等ペースで売却を進めていくという方針に変更はない」と述べられ、アナリストからは「足元3.7兆円のところ、来年3月末に2.8兆円以下にする=9,000億円以上売らなければいけない」という指摘も出ています。

なお、売却損益が売却額を上回ることがある理由も説明されています。「株式売却を進めてネットの残高を減少させつつ、株式ポートフォリオの質向上の観点から買入れも行っている」——売るだけでなく、買ってもいるということです。

金利上昇には裏側があります(ESRが13ポイント低下)

金利上昇は生保にとって追い風とされますが、会社は同時にリスクも明言しています。

CFOの説明(要旨):金利上昇は収益力の向上に寄与する反面、債券の含み損や大量解約リスクを増加させる側面もあります

実際、資本の健全性を示すグループESR(エコノミック・ソルベンシー・レシオ)は前期末の220%から約206%へ、13ポイント低下しました。理由は3つです。

  • 国内金利上昇に伴う大量解約リスクの増加
  • 米Portfolio社の買収、M&G社への出資による株式リスクの増加
  • 国内株価の上昇(株式リスクが増える)

所要資本は約4,000億円増加しました。ただし会社は「引き続き200%を超える十分な資本水準を確保している」としています。

リスク管理の状況も数字で開示されています。金利上昇に備えるマッチング比率(ダラーデュレーション比率)は6月末で91%(前期末87%)。CFOは「従前から100%以下にコントロールしたいと申し上げている。一定のアローワンスを持つことで、金利上昇局面においてもオペレーションについて若干幅を持つことができる」と説明しています。解約率は第一生命の一時払貯蓄性商品で1.2%弱と、低位安定とのことです。

一方で、グループEVは国内株価の上昇などにより約9.8兆円(前期末から約2%増)。EVは増え、ESRは下がる——経済価値の指標どうしでも方向が分かれています。

「販売は好調」なのに、新契約価値は26%減です

営業の数字も、指標によって向きが逆になります。

指標 Q1実績 前年同期比
グループ新契約年換算保険料(ANP) 1,350億円 +6.7%(為替除き+3.9%)
国内3社の新契約価値 約200億円 △26%

保険料ベースでは増えているのに、新契約価値では26%減っています。理由は2つあると会社は説明しています。

ひとつは前年第4四半期に実施した第一生命のモデル変更の影響。計算の前提が変わったための減少です。

もうひとつが新契約マージンの低下で、こちらは中身があります。質疑応答での説明が正確です。

CFOの回答(要旨):「DLの保険関係損益への影響に関しては、インフレについては予算にすでに織り込まれており、予算対比の進捗でマイナスに効くわけではない。一方で、新契約価値の計算では、新契約獲得の収益とコストを計上していく中で、コスト側が増えている影響が少し目立って見える状況になっている」

同じインフレが、会計上の利益には効かず、経済価値ベースの新契約価値には効く。指標の性格の違いがそのまま数字の差になっています。新契約価値の通期進捗は約20%で、会社も「期初の想定を下回っている」と認めています。

営業職員(生涯設計デザイナー)については、採用数が増加傾向にある一方、1人当たりの保険料はやや低下。会社は「販売員の数×1人当たりの件数×1件当たりの保険料」を総合した営業収益価値はほぼ横ばいとしています。

通期を据え置いた理由を、CFOが具体的に語っています

Q1の進捗が28%(グループ修正利益)にとどまることもあり、通期見通しは期初から変更されていません。据え置きの理由は2か所で語られています。

ひとつは市場環境への慎重さ。「まだ第1四半期であり、今後の金利、株価などの市場環境等によって業績が変動する可能性があります。こうした点を踏まえ、現時点では通期業績予想を期初予想から変更しておりません」

もうひとつが具体的で、第一生命の保険関係損益の進捗が高かった理由についての回答です。

CFOの回答(要旨):「第1四半期では、死亡保険金の支払いが予算よりも低かった。これが年度を通じて継続する傾向なのか、季節的な要因なのか現段階では判断できないため、通期見込みは変えていない」

生命保険の利益は、亡くなった方への支払いが想定より少なければ増えます。それが一時的なものか続くものか分からないので上げない——据え置きの理由としては、かなり率直な部類です。

利益+2%の見通しで、配当は+32%です

株主還元は大きく増えています。

項目 2026年3月期 2027年3月期(予想) 増減
1株当たり年間配当 54.5円 72円 +32%
グループ修正利益 5,515億円 5,600億円程度 +2%
連結純利益 4,366億円 5,130億円 +17%

会社が管理指標とするグループ修正利益は+2%の見通しなのに、配当は+32%。利益の伸びを超えて還元を厚くする方針です。配当利回りと配当性向の見方で触れたとおり、こうしたケースでは「増配の原資が利益成長なのか、方針変更なのか」を分けて見る必要があります。

財務の全体像も押さえておきます。総資産は76兆3,227億円。うち有価証券が57兆3,329億円、負債側では保険契約準備金が61兆9,720億円を占めます。自己資本比率は6.0%(前期末5.7%)。これは経営が危ういという意味ではなく、預かった保険料を長期で運用する生保のバランスシートがもともとそういう形をしているためです。貸借対照表の見方を、銀行・保険に当てはめるときの注意点でもあります。

この決算から言えること

整理します。

  • 利益の名前が4つあり、Q1の伸びは+368%・+196%・+113%・+74%とばらばら。会社が通期目標として管理しているのはグループ修正利益5,600億円程度で、進捗は28%です。
  • Q1が大きく伸びたのは、前年に債券リバランスを前倒しして利益水準が低かったから。分母の問題です。
  • 通期見通しは、グループ修正利益で+2%、主力の第一生命単体の純利益では△2%の減益。Q1の数字だけで判断できません。
  • 増益840億円のうち864億円が国内事業、うち第一生命だけで809億円(96%)。海外・アセマネ・HDその他は差し引き△24億円でした。
  • Q1に約5,000億円の円債を入れ替え、2,000億円の売却損を確定させて、年170億円の順ざや改善を得た。通期では5,400億円の損に対し年340億円。原資は株式の売却益で、会社は「益と損がオフセットしている」と説明しています。
  • 国内株式を約3,000億円売ったのに、残高は約3.7兆円へ増加。株価上昇が売却額を上回ったためです。2031年3月末に1.5兆円以下という目標は不変。
  • 金利上昇はESRを13ポイント押し下げた(220%→約206%)。会社も「債券の含み損や大量解約リスクを増加させる側面がある」と明言しています。
  • 保険料ベースの販売は+6.7%だが、新契約価値は△26%。モデル変更とインフレによるコスト増が理由で、会社は「期初の想定を下回った」としています。
  • 利益+2%の見通しに対し、配当は54.5円→72円(+32%)。

次の四半期で確かめたいのは3点です。①第一生命の死亡保険金の支払いが引き続き低いのか(季節要因か) ②TALの回復が下期にキャッチアップするのか ③新契約価値が想定に戻るのか。

生命保険会社の決算は、見出しの利益がいちばん当てにならない業種かもしれません。今回のように、最終利益が4.7倍でも、会社自身は通期+2%の計画を動かさない、ということが起こります。東京海上ホールディングスでも会計上は増益・修正純利益は減益という食い違いがありました。三井住友FG野村ホールディングスと並べて読むと、同じ「金融」でも銀行・証券・保険で見るべき数字がまったく違うことが分かります。

※本記事は2026年8月7日発表の2027年3月期第1四半期決算短信、同日公表の決算報告資料、機関投資家・アナリスト向け電話会議の説明要旨および質疑応答要旨に基づいています。社名は2026年に第一生命ホールディングスから第一ライフグループへ変更されています(証券コード8750は同じ)。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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