【2026年版】三井住友フィナンシャルグループ(8316)決算分析|経常利益+43.4%、増益を作ったのは貸出ではなかった

三井住友フィナンシャルグループ(8316)が2026年7月31日に発表した2027年3月期 第1四半期(2026年4〜6月)の決算は、数字だけ見ればほぼ完璧です。

経常収益2兆8,504億円(前年同期比+16.6%)、経常利益6,931億円(+43.4%)親会社株主に帰属する四半期純利益5,014億円(+33.0%)。前年の第1四半期が経常利益△7.2%の減益だったところからの、はっきりした反転です。

理由は誰でも思いつきます。金利が上がったから。日本の政策金利は2026年6月に1.0%へ引き上げられました。銀行は預金より高い金利で貸す商売ですから、金利が上がれば儲かる——そう説明されます。

ところが、決算の数字を金額まで分解すると、この説明は半分しか当たっていません。

貸出金から受け取る利息は約735億円増えました。同じ期間に、預金者へ払う利息は約670億円増えています。差し引きすると、残るのは約65億円だけです。

では、2,098億円の経常増益はどこから来たのか。順に確かめていきます。

図解:貸出で増えた利息は、どこへ消えたのか
「金利が上がったから銀行が儲かった」——その中身を金額で見ると、想像とは違う姿が出てきます。
受け取る側
貸出金利息 +735億円
9,747億円 → 10,482億円(+7.5%)
払う側
預金利息 △670億円
4,140億円 → 4,811億円(+16.2%)
差し引きで手元に残るのは
+65億円
では、資金利益の増加1,656億円はどこから来たのか
有価証券の利息配当金 +766億円(2,257億円 → 3,023億円、+34.0%)
貸出・有価証券以外の資金運用 +731億円(日銀当座預金51.0兆円などの市場性運用)
・預金以外の調達コストの減少 +94億円
貸出−預金の差 +65億円
読み方:金利上昇の恩恵は確かに大きい。ただしそれが入ってくる場所は「貸出」ではなく、有価証券と市場性運用でした。銀行を「貸して稼ぐ会社」とだけ見ていると、この決算は読み違えます。
出典:三井住友フィナンシャルグループ 2027年3月期 第1四半期決算短信・2026年度1Q実績(2026年7月31日)より作成

全体像 ― 3つの利益がすべて同じ方向を向いた

単位:億円 2026年3月期 Q1 2027年3月期 Q1 増減
連結粗利益 10,878 14,034 +3,157(+29.0%)
営業経費 △5,997 △7,122 △1,125(+18.8%)
持分法投資損益 562 311 △251
連結業務純益 5,443 7,223 +1,780(+32.7%)
与信関係費用 △756 △748 +9
株式等損益 411 755 +344
経常利益 4,833 6,931 +2,098(+43.4%)
親会社株主純利益 3,769 5,014 +1,245(+33.0%)
1株当たり四半期純利益 97.46円 131.62円 +35.0%

トヨタのように営業利益と最終利益が逆を向くこともなく、ホンダのように前年の巨額損失の反動でもありません。粗利益・業務純益・経常利益・最終利益が、すべて同じ方向にそろって伸びています。

ただし、いくつか目を留めておきたい行があります。

  • 営業経費が+18.8%(1,125億円)増えている。粗利益の伸び(+29.0%)より小さいので経費率は改善していますが、金額としては最大の押し下げ要因です
  • 持分法投資損益が251億円減っている。ここは後で三菱UFJと比べると意味が出てきます
  • 株式等損益が344億円増えている。これは政策保有株の売却などによるもので、性質が違います

収益性の指標も改善しました。ROTE 13.8%(+2.5pt)、東証基準ROE 12.6%(+2.3pt)、株主資本ROE 17.1%(+3.5pt)。

ここで一つ注意があります。同じ会社が3種類のROEを並べて開示しています。分母(自己資本)の取り方が違うからで、どれを使うかで印象は変わります。PER・PBR・ROEの見方で書いたとおり、指標は名前ではなく定義で読む必要があります。

①「金利上昇で銀行が儲かる」を、金額まで分解する

まず、利ざやそのものは確かに広がっています。三井住友銀行が開示している国内の預貸金利回りを見てください。

三井住友銀行 単体・国内 2025年度 Q1 2026年度 Q1 変化
貸出金利回(A) 1.26% 1.61% +0.35pt
預金等利回(B) 0.18% 0.30% +0.12pt
預貸金利回差(A−B) 1.08% 1.31% +0.23pt

貸出金利は0.35ポイント上がったのに、預金金利は0.12ポイントしか上がっていません。差の0.23ポイントが、そのまま銀行の取り分の拡大になります。金利上昇の初期がいちばん儲かる——三菱UFJ(8306)で確認したのと同じ構造です。

しかもこの利回り差は、1.08%(25年度1Q)→ 1.11% → 1.15% → 1.21% → 1.31%(26年度1Q)と5四半期連続で広がっています。

ところが、金額に直すと話が変わる

ここからが本題です。利回り「率」ではなく、損益計算書の「金額」を見ます。

単位:億円 2026年3月期 Q1 2027年3月期 Q1 増減
資金運用収益 17,124 19,356 +2,232
 うち貸出金利息 9,747 10,482 +735
 うち有価証券利息配当金 2,257 3,023 +766(+34.0%)
 うちそれ以外 5,120 5,851 +731
資金調達費用 △10,861 △11,437 △576
 うち預金利息 △4,140 △4,811 △670(+16.2%)
 うちそれ以外 △6,721 △6,626 +94
資金利益(差引) 6,263 7,919 +1,656(+26.4%)

貸出金利息の増加735億円に対し、預金利息の増加は670億円。差は65億円しかありません。

資金利益を1,656億円押し上げたのは、次の3つでした。

  • 有価証券の利息配当金 +766億円(+34.0%)——貸出金利息の増加を上回っています
  • 貸出でも有価証券でもない資金運用 +731億円——この中心が日銀当座預金です
  • 預金以外の調達コストの減少 +94億円

会社が開示している円貨バランスシート(2026年6月末)を見ると、この構造がはっきりします。運用側は貸出金70兆円に対し、市場性運用が60兆円。そのうち日銀当座預金が50兆円を占めます。調達側は預金135兆円です。

つまり三井住友銀行は、集めた預金の相当部分を貸し出さずに日銀へ置いています。連結ベースの預貸率は59.8%——預金200.4兆円に対し貸出金119.8兆円という姿です。政策金利が上がると、この50兆円の付利がそのまま収益になります。

会社は「政策金利+0.25%あたり初年度+1,100億円」と数字で出している

ここは押さえておく価値があります。SMFGは金利感応度を金額で開示しています。

  • 政策金利+0.25%あたり、初年度+1,100億円・5年目+1,500億円(長短金利ともに+25bpsずつ上昇、預金金利は過去実績を使用という前提)
  • 2026年度の資金利益は前年比+1,800億円の見込み。うち第1四半期は+300億円。
  • これには6月の追加利上げ影響+800億円が含まれる
  • さらに「貸出金の残高・スプレッド増加や国債ポートフォリオの再構築等でさらなるアップサイドあり」と明記

日本の政策金利は2024年3月のマイナス金利解除 → 同7月0.25% → 2025年1月0.50% → 同12月0.75% → 2026年6月1.00%と段階的に上がってきました。会社が「2026年度の資金利益は前年比+1,800億円」と見込んでいるのは、この積み重ねの結果です。ただし第1四半期の実績は+300億円——年間の見込みに対して、まだ6分の1しか出ていません。6月の利上げ分(+800億円)が効いてくるのはこれからです。

そして重要なのが貸出の中身です。国内貸出金の56%が市場金利連動(変動)で、固定金利が20%、プライム連動が2%、住宅ローン等が13%。過半が市場金利にすぐ反応する構成になっています。

②セグメントで見ると「預金で稼いでいる」がはっきりする

事業部門別の連結業務純益です。

単位:億円 2026年3月期 Q1 2027年3月期 Q1 増減 今期の経費率
ホールセール(国内法人) 2,193 2,715 +522(+23.8%) 34.1%
リテール(国内個人) 745 1,209 +464(+62.3%) 72.1%
グローバル(海外) 1,847 1,512 △335(△18.1%) 69.6%
市場 1,149 1,789 +640(+55.7%) 26.9%
本社管理等 △491 △2 +489
合計 5,443 7,223 +1,780(+32.7%) 50.7%

ここで、国内2部門の粗利益の内訳を見てください。会社は「預金収益」と「貸金収益」を分けて開示しています。

単位:億円 預金収益 貸金収益
リテール(国内個人) 682(+273) 153(△32
ホールセール(国内法人) 1,037(+300) 784(+124)
グローバル(海外) 503(+21) 1,384(△74)

※前年同期比は会社の内部管理ベース(為替影響等調整後)

国内では、リテールもホールセールも「預金収益」のほうが「貸金収益」より大きく、増加額でも上回っています。とくにリテールは、預金収益が273億円増えた一方で、貸金収益は32億円減っています。

これが、冒頭で見た「貸出金利息の増加が預金利息の増加でほぼ消える」構造と同じことを、別の角度から示しています。国内の個人向け銀行業は、いま「貸して稼ぐ」より「預金を集めて運用して稼ぐ」形になっています。

逆に海外(グローバル)だけは貸金収益1,384億円が預金収益503億円を大きく上回ります。同じ銀行でも、国内と海外では稼ぎ方が違うということです。

経費率の差も大きい

もう一つ、経費率の差に注目してください。市場26.9%、ホールセール34.1%に対し、グローバル69.6%、リテール72.1%。

リテールは粗利益4,288億円に対して経費が3,092億円かかります。店舗と人手が必要な事業だからです。ただし改善幅も最大で、会社は「コストコントロール施策の着実な積み上げにより経費率が改善」と説明しています(経費率△7.0pt)。Oliveの獲得件数は2026年6月に800万件を突破しました。

③グローバル事業部門だけが減益 ― 会社は「選別」と説明している

4部門のうち、海外だけが減益です。粗利益は3,867億円(△66億円)とほぼ横ばいなのに、業務純益は335億円減りました。

会社の説明を整理します。

  • 「貸出金の選別的な取組により貸金収益が減少し、業務粗利益は減益」——貸金収益は1,384億円(△74億円)
  • 「低採算アセットの削減に加え、新規案件の選別的な取組により貸出金残高は減少」
  • 経費が172億円増加し、経費率は69.6%へ悪化(△5.5pt)
  • 持分法投資損益が273億円(△126億円)へ減少——SMBC Aviation Capitalにおける保険金受領の剥落によるもの

ここは読み方が分かれるところです。「海外が振るわない」と読むこともできますが、会社は「収益性の改善に向けて案件を選別している」と明言しています。採算の低い貸出を意図的に落としているのなら、残高の減少は悪材料ではありません。

ただし結果として業務純益は335億円減っており、経費率も悪化しています。選別の成果が数字に出るかどうかは、次の四半期以降で確認する必要があります。

④会社が開示した「増益1,780億円のうち550億円は環境要因」

ここは見落とされやすいところです。会社は連結業務純益の増益1,780億円について、その内訳を資料の1ページ目に書いています。

「+1,780億円 うち環境要因+550金利+300、為替+250)」

増益1,780億円のうち550億円は、金利と為替という「外の環境」が作ったものです。差し引き1,230億円が、それ以外の要因ということになります。

為替の影響も具体的に開示されています。連結粗利益への為替影響は+520億円、営業経費への為替影響は△280億円。1ドルは2025年6月末の144.81円から2026年6月末には162.39円まで円安が進みました。

この「会社自身が環境要因を金額で切り出す」姿勢は、ホンダが為替+908億円・関税+781億円と開示したのと同じです。調整後利益・コア営業利益の見方でも触れたとおり、「見出しの数字」と「実力」を分けて示す会社は、読む側にとって親切な会社です。

⑤政策保有株 ― 売っているのに、比率はむしろ上がっている

日本の銀行を見るとき、避けて通れないのが政策保有株式(取引先との関係維持のために持つ株式)です。SMFGは削減を進めていますが、その進み方が独特です。

2024年3月末 2025年3月末 2026年3月末 2026年6月末
国内上場株式(簿価) 1.01兆円 0.83兆円 0.70兆円 0.69兆円
同(時価) 2.76兆円 3.12兆円 3.31兆円
時価残高÷連結純資産 32.9% 27.3% 27.5% 28.4%

簿価は着実に減っているのに、時価は増え、連結純資産に対する比率は2025年3月末を底に上がっています。株価が上がっているからです。

会社自身がこう書いています——「足元の株価上昇で、連結純資産に対する時価残高比率の上昇が続いているため、時価残高の削減にも注力」。

削減計画は2024〜2028年度で簿価6,000億円。実績は24年度△1,850億円、25年度△1,240億円、26年度第1四半期は△160億円で累計△3,250億円と、計画に対しては前倒しで進んでいます。それでも目標である「2029年3月末までに純資産比20%未満」には距離があります。

株式等損益の中身 ― 政策保有株の売却益は「減っている」

ここが面白いところです。株式等損益は344億円増えて755億円になりましたが、その中身は政策保有株の売却益ではありません。会社の説明を分解します。

  • 政策保有株式の売却益は390億円で、前年同期比△220億円の減少
  • 東亜銀行株式の売却に伴う損失の剥落 +280億円(前年にあった損失が今年はない)
  • 株高を捉えたETF売却益の増加 460億円(前年同期比+320億円)

三菱UFJの記事で「政策保有株の売却益は終わりのある収益」と書きました。SMFGの数字はそれを裏づけつつ、もう一つの事実を足しています——政策保有株の売却益が減った分を、ETFの売却益が埋めているということです。

どちらも保有資産を売って得た利益であり、本業の利ざやとは性質が違います。経常増益2,098億円のうち344億円(16.4%)がここから来ていることは、押さえておくべきです。

⑥金利上昇の裏面 ― 債券には3,045億円の含み損

金利上昇は銀行に良いことばかりではありません。金利が上がれば、すでに持っている債券の価格は下がります。

連結・その他有価証券の評価損益 2026年3月末 2026年6月末 変化
国内株式 +24,972億円 +26,969億円 +1,997億円
国内債券 △2,712億円 △3,191億円 △479億円
うち国債 △1,204億円 △1,629億円 △424億円
外国債券 △3,004億円 △3,436億円 △431億円
満期保有目的 △1,786億円 △2,685億円 △898億円

株式には約2.7兆円の含み益、債券には数千億円規模の含み損。同じ金利上昇が、片方には追い風、もう片方には向かい風として効いています。

実際、三井住友銀行単体の「国債等債券損益」は前年の+143億円から△198億円へ、341億円悪化しました。それでもコア業務純益が2,922億円→4,866億円(+66.5%)と伸びたのは、資金利益と手数料がそれを上回ったからです。

もう一つ、興味深い動きがあります。三井住友銀行の円債デュレーション(平均残存期間)が伸びています。

三井住友銀行 円債 2023年3月 2024年3月 2025年3月 2026年6月
デュレーション 2.1年 1.0年 3.9年 5.0年
評価損益 △982億円 △1,409億円 △2,597億円 △3,045億円
満期保有残高 223億円 223億円 40,876億円 53,376億円

2024年3月に1.0年まで短くしていたデュレーションを、その後5.0年まで伸ばしています。金利が上がった局面で、高い利回りの債券を長期で買い直していると読めます。会社が「国債ポートフォリオの再構築等でさらなるアップサイドあり」と書いているのは、このことです。

同時に満期保有目的の残高を223億円から5.3兆円へ大きく増やしています。満期保有目的の債券は時価評価をせず償却原価で計上するため、金利が上がっても評価損が貸借対照表に反映されません(その他有価証券は時価評価し、評価差額が純資産の部に載ります)。制度上認められた区分ですが、「含み損が自己資本に効かない置き方をしている」という事実は知っておくべきです貸借対照表の見方【図解】)。

⑦進捗率29%なのに通期は据え置き ― ただし前提は上振れている

通期の業績予想は親会社株主純利益1兆7,000億円(前期比+7.4%)で据え置きです。第1四半期の5,014億円は進捗率29%——単純に4倍すれば2兆円を超えます。

ここで確認したいのが、会社が置いている前提です。

2026年度の計画前提 2026年6月末の実際
政策金利(日本) 0.75% 1.00%
為替(1ドル) 150円 162.39円

金利も為替も、計画前提より会社に有利な方向へ動いています。それでも通期予想を据え置いたうえで、会社は「国内利上げ等の好環境、本業の増益も踏まえアップサイドを追求」と書いています。

KDDI(9433)も同じ第1四半期に、進捗率26%で通期を据え置きました。ただし理由は逆です。KDDIは「下期に戦略的コストを投下する計画」を明示していました。SMFGは前提が上振れしていることを認めたうえで据え置いています。同じ「据え置き」でも、中身を読まないと意味が反対になります。

株式分割と増配、そして自社株買い

2026年3月期 2027年3月期(予想)
年間配当金(分割考慮前) 157円 180円(+14.6%)
期末発行済株式数 38.27億株 38.27億株
期末自己株式数 1,063万株 2,929万株
期中平均株式数 38.67億株 38.09億株(△1.5%)

2026年9月30日を基準日として、普通株式1株につき2株の株式分割が予定されています(2026年5月13日の取締役会決議)。分割そのものは価値を変えませんが、1株当たりの数字を見るときは分割前後どちらの基準かを必ず確認してください。

また自己株式が1,063万株から2,929万株へ増えており、自社株買いが進んでいます。期中平均株式数は1.5%減少。1株当たり四半期純利益が+35.0%と純利益の+33.0%を上回っているのは、この株数の減少分です配当利回りと配当性向の見方【図解】)。

⑧気をつけたい点 ― カード事業は増収減益

全体が好調ななかで、逆を向いている数字もあります。

三井住友カード(SMBCCFを含む) 2026年3月期 Q1 2027年3月期 Q1 増減
営業収益 2,494億円 2,719億円 +225億円
うち貸倒費用 △361億円 △403億円 △42億円(悪化)
親会社株主純利益 323億円 145億円 △178億円

収益は増えているのに、最終利益は半分以下になっています。貸倒費用の増加が効いています。SMBCコンシューマーファイナンスの不良債権比率は10.61%——銀行本体(連結0.81%)とは桁が違う世界です。

一方、グループ全体の資産の質はむしろ改善しました。連結の不良債権比率は0.97%から0.81%へ、残高も1兆3,493億円から1兆1,489億円へ2,004億円減っています。与信関係費用も748億円と前年並みで、会社は「中東情勢に関連する影響は顕在化せず、通期予想に対しては標準進捗の範囲内」としています。

⑨三菱UFJと並べて読む ― 同じ追い風、違う中身

同じ四半期の三菱UFJ(8306)と並べます。

三井住友FG(8316) 三菱UFJ(8306)
業務純益 7,223億円(+32.7%) 8,090億円(+49.0%)
経常利益 6,931億円(+43.4% 11,179億円(+57.8%
親会社株主純利益 5,014億円(+33.0%) 8,094億円(+48%)
通期進捗率 29% 30%
ROE 東証基準12.6%(+2.3pt) 東証定義14.4%(+3.6pt)
持分法投資損益 311億円(△251億円)=減益要因 2,615億円(+1,036億円)=経常増益の約4分の1
株式等損益 755億円(+344億円) 989億円(+686億円)

同じ金利上昇という追い風を受け、同じように進捗率30%前後で通期を据え置き、同じように株式等損益が増えている。ここまでは似ています。

決定的に違うのが持分法投資損益です。三菱UFJはモルガン・スタンレー持分の増加で1,036億円のプラス——経常増益の約4分の1が本業の外でした。対してSMFGは251億円のマイナスで、足を引っ張る側に回っています(SMBC Aviation Capitalの保険金受領の剥落など)。

つまりSMFGの増益は、三菱UFJより「本業寄り」だと言えます。同じ業界・同じ四半期でも、どこで稼いだかは会社ごとに違う——決算は必ず並べて読む価値があります。

この決算から持ち帰る5つのチェック

  • ① 利回り「率」ではなく、利息の「金額」を見る。預貸金利回り差は+0.23pt広がりましたが、貸出金利息の増加735億円は預金利息の増加670億円でほとんど相殺されていました。率だけ見ていると気づけません。
  • ② 銀行の運用先は貸出だけではない。市場性運用60兆円(うち日銀当座預金50兆円)に対する付利が、貸出金利息を上回る増益要因になっていました。預貸率59.8%という数字が示すとおりです。
  • ③ セグメントの粗利益は「預金」と「貸金」に分けて見る。国内2部門はどちらも預金収益が貸金収益を上回り、リテールの貸金収益はむしろ減っていました。
  • ④ 会社が示す「環境要因」を探す。SMFGは増益1,780億円のうち550億円(金利+300、為替+250)を環境要因と明記しています。
  • ⑤ 金利上昇の裏面を確認する。株式に約2.7兆円の含み益がある一方、債券には含み損があり、デュレーションは1.0年から5.0年へ、満期保有残高は223億円から5.3兆円へ動いていました。

まとめ

2027年3月期第1四半期の三井住友フィナンシャルグループは、粗利益・業務純益・経常利益・最終利益がすべてそろって伸びた、きれいな決算でした。一時的な損益に頼った数字でもありません。

ただし「金利が上がったから貸出で儲かった」という理解は、この決算には当てはまりません。

見出しになりやすい事実 一次資料で確かめた実態
金利上昇で利ざやが拡大(+0.23pt) 事実。ただし貸出金利息+735億円は預金利息+670億円でほぼ相殺。差は65億円
経常利益+43.4%の大幅増益 資金利益+1,656億円の主役は有価証券利息配当金+766億円と市場性運用+731億円
全事業が好調 グローバル事業部門だけが△18.1%の減益(会社は「案件を選別」と説明)
実力で伸びた 会社自身が「増益1,780億円のうち環境要因+550(金利+300、為替+250)」と開示
政策保有株の削減が進んでいる 簿価は減少。しかし株高で時価は増え、純資産比は27.3%→28.4%へ上昇
進捗率29%=上振れ確実 金利・為替とも前提より有利。会社は「アップサイドを追求」としつつ通期は据え置き

この会社を評価するときに見るべき数字は、貸出金利ではありません。政策金利がどこまで上がるか、そして預金金利がどれだけ遅れて追いかけてくるか——その差が、この決算を作っています。

会社が開示した「政策金利+0.25%あたり初年度+1,100億円」という感応度は、次の利上げがあったときに何が起きるかを見積もる材料になります。同時に、預金金利が本格的に上がり始めたときには、この構造が逆に働くことも覚えておく必要があります。

本記事は2026年7月31日公表の決算短信および「2026年度1Q実績」など、三井住友フィナンシャルグループが公開している一次資料に基づいて作成しています。情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

実際に買うところまで進むなら
決算の読み方はどの証券会社でも同じように使えます。違うのは手数料・取扱商品・使い勝手です。