キャッシュフローから理論株価を出す方法|フリーCF×20倍・営業CF×10倍の使い方

キャッシュフロー計算書は「現金がどう動いたか」を示す表です。その読み方そのもの——3つのキャッシュフローの意味や理想的な組み合わせ——はキャッシュフロー計算書の見方と理想形にまとめています。

このページで扱うのは、その一歩先です。キャッシュフローの数字から、その会社の企業価値(理論株価)を見積もる方法を解説します。

株価が割安か割高かを判断するとき、多くの人は純利益(EPS)を使います。EPS×15やEPS×20といった計算です(理論株価の計算方法)。しかし利益は会計上の見積もりが入る数字なので、現金ベースでも同じことを確かめておくと判断の精度が上がります。

なぜ利益ではなく現金で見るのか

理由は利益が計上される時点と、現金が動く時点がズレるからです。売上をツケで計上すれば利益は出ますが現金は入っていませんし、減価償却費は費用になりますが現金が出ていくわけではありません。

そして貸借対照表や損益計算書は会計処理の選び方である程度よく見せられますが、現金の増減は動かしにくいという違いがあります。だから「利益は伸びているのに営業キャッシュフローが伴っていない」会社は要注意です。

キャッシュフロー計算書の項目

キャッシュフローは次の三つの項目があります。

営業キャッシュフロー)営業キャッシュフローは、日常的な売上や経費などで入ってきたり出て行く現金の総量です。この値はプラスの値であるべきです。

投資キャッシュフロー)設備投資など、投資に使った現金の総量です。設備投資などで使ったお金は、いずれ減価償却で損益計算書の利益を削ることになります。この値は通常マイナスになりますが、営業キャッシュフローのプラスと合計すると少しでもプラスになることが望ましいです。

財務キャッシュフロー)銀行からの借り入れや返済、新株発行などで得た資本金のによる現金の総量です。これは好調企業でもプラスの時もあればマイナスの時もあります。

フリーキャッシュフロー)また、キャッシュフロー計算書から計算できる重要な指標としてフリーキャッシュフローがあります。フリーキャッシュフローは、営業キャッシュフローに投資キャッシュフローを足して求めることができます。ただ、実際には営業キャッシュフローはプラスそして、投資キャッシュフローはマイナスのことが多いので、結果的に引き算になる事が多いです。

EBITDA) 営業キャッシュフローと似たような指標で、Ebitdaも有名です。これは純利益に減価償却を足した数字で、営業キャッシュフローと同じような数字になることが多いです。とりあえずebitdaは営業キャッシュフローの近似値と考えておいて良いでしょう。

 

損益計算書とキャッシュフロー計算書の関係

また、営業キャッシュフロー(近似値としてはEBITDA)は純利益に減価償却費を足したものにほぼ等しいです。目安として営業キャッシュフローは純利益の2倍程度あればまあまあですね。純利益に比べて、営業キャッシュフローが小さすぎる会社(例えば純利益より営業キャッシュフローのほうが小さい会社とか)に投資するときは気をつけた方が良いですね。

長いスパンでならしてみると、損益計算書の純利益の推移と、フリーキャッシュフローの推移は大体一致します。

 

時価総額、理論株価の推定の仕方

損益計算書の純利益から理論株価を推定する方法(EPSの20倍など)は有名ですが、キャッシュフローから理論株価を見積もる方法を説明します。理論株価に発行済み株式数をかけると時価総額になるので、以下では理論株価の代わりに、理論的な時価総額(会社価値)を推定する方法について説明します。

二つの方法があります。

(1)フリーキャッシュフローを用いる方法

過去5年くらいのフリーキャッシュフローの平均値の20倍を理論時価総額と推定します。フリーキャッシュフローは年度毎に大きく変動するので、過去の平均値を使います。この方法は理論時価総額を純利益の、20倍で見積もる方法に対応します。(PERが20倍と同じことです)

 

(2)営業キャッシュフローを用いる方法
過去5年くらいの営業キャッシュフロー(近似値としてはEBITDA)の平均値の10倍を理論時価総額と推定します。(1)のフリーキャッシュフローと比べて半分の倍数(10倍)にしたのは、営業キャッシュフローの半分くらいが減価償却と考えるからです。

理論株価が知りたければ、上の二つの方法のどちらかでまとめた理論時価総額を発行済み株式数で割ればOkです。

この方法を使うときの注意点

キャッシュフローから企業価値を出す方法は便利ですが、万能ではありません。 次の3点は必ず頭に置いてください。

注意点 内容
倍率(20倍・10倍)は目安にすぎない 成長が速い会社にはもっと高い倍率が、成熟した会社には低い倍率がつきます。業種と成長率で変わるため、絶対的な基準ではありません
設備投資が重い会社は要注意 営業キャッシュフローが大きくても、その大半を設備投資に使う会社ではフリーキャッシュフローが残りません。装置産業や通信インフラはこの傾向が強いです
5年平均をとる理由を忘れない キャッシュフローは単年で大きく振れます。1年だけの数字で判断すると、たまたま良かった年・悪かった年に引きずられます

実際の企業でどう現れるかは、個別株の記事で扱っています。たとえば営業キャッシュフローより投資キャッシュフローが大きく、差を借入で埋めている会社や、設備投資を減らしても減価償却費が増え続ける会社が実在します。

利益ベースの理論株価とあわせて確認するのが基本です。2つの方法で近い答えが出れば信頼度が上がり、大きく食い違えばその理由を調べる価値がある——そういう使い方をしてください。

まとめ

  • キャッシュフローから理論的な時価総額を出す方法は2つ。①フリーキャッシュフローの5年平均×20倍 ②営業キャッシュフローの5年平均×10倍
  • ②の倍率が①の半分なのは、営業キャッシュフローの半分程度が減価償却にあたると考えるためです
  • 営業キャッシュフローは純利益の2倍程度が目安。 純利益より営業キャッシュフローが小さい会社は注意が必要です
  • 倍率は業種と成長率で変わります。利益ベースの理論株価とあわせて確認し、食い違ったらその理由を調べてください
  • 決算書全体の読み方は決算書の読み方(財務三表を読む順番)にまとめています