【2026年版】セブン&アイ(3382)の今後の業績と株価の見通し|増益の98%は海外コンビニ、その正体はガソリンだった

セブン&アイ・ホールディングス(3382)が2026年7月9日に発表した2027年2月期第1四半期(2026年3〜5月)は、営業収益2兆3,788億円(前年同期比14.3%減)、営業利益1,050億円(同61.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益606億円(同23.6%増)でした。

売上は14%減ったのに、営業利益は6割増えています。しかもこの決算には、同じ期間の業績を表す数字が2組あります。会社が「実質ベース」として併記しているほうで見ると、営業収益は2.4%増、営業利益は122.4%増、最終利益は95.3%増。3つとも数字が変わります。

そして通期予想は、開示ベースでは△5.0%の減益、実質ベースでは+9.1%の増益。同じ会社の同じ予想です。

この記事では決算短信・決算説明資料・決算サマリーをたどって、①なぜ数字が2組あるのか ②増益を作ったのは何か ③会社が下期をどう見ているか、の3点を確かめます。

この決算を1枚で(2027年2月期 第1四半期)
指標 当期 開示ベースの伸び 実質ベースの伸び
営業収益 2兆3,788億円 △14.3% +2.4%
営業利益 1,050億円 +61.4% +122.4%
経常利益 1,007億円 +89.1% +120.0%
親会社株主帰属四半期純利益 606億円 +23.6% +95.3%
グループCVS商品売上 2兆4,233億円 +3.2%(コンビニの商品売上は増えている)
EPS 26.21円 +38.2% +118.4%
「営業収益△14.3%」と「営業収益+2.4%」が同じ四半期の数字です。どちらも会社の開示です。

同じ決算に、数字が2組あります

まず、なぜ2組あるのかから。会社は決算短信に「(ご参考:実質ベースにおける連結業績)」という表を載せています。定義は注記のとおりです。

会社の注記:「連結の範囲から除外された株式会社ヨーク・ホールディングス傘下の子会社及び株式会社セブン銀行等の影響を調整し、コンビニエンスストア事業を主とする業績に組み替えた2026年2月期第1四半期数値(実質ベース)と比較した前年同期比」

つまり、前年の数字から「もういない会社」を引いて比べ直したものです。前年同期と当期を並べると、こうなります。

項目 前年同期(開示) 前年同期(実質ベース) 当期
営業収益 2兆7,773億円 2兆3,241億円 2兆3,788億円
営業利益 650億円 472億円 1,050億円
経常利益 532億円 457億円 1,007億円
親会社株主帰属純利益 490億円 310億円 606億円

前年の営業収益2兆7,773億円のうち4,532億円、営業利益650億円のうち178億円が、いまはグループの外にあります。比較の分母が変わっているので、開示ベースの前年同期比は事業の実態を表していません。

実際、コンビニの商品売上(グループCVS商品売上)は2兆3,472億円から2兆4,233億円へ3.2%増えています。売上が14%減ったのは、店が売れなくなったからではありません。

抜けたのは、イトーヨーカ堂とセブン銀行です

連結から外れた2つを短信の記載で確認します。

  • 2025年6月24日付で、株式会社セブン銀行およびその子会社9社が連結の範囲から除外
  • 2025年9月1日付で、株式会社ヨーク・ホールディングス傘下の子会社が連結の範囲から除外

ヨーク・ホールディングスはイトーヨーカ堂やヨークベニマルなどを傘下に置いていた中間持株会社です。現在はセブン銀行と株式会社BCJ-95が持分法適用会社として扱われ、BCJ-95の子会社・持分法適用会社の業績は、同社の損益を通じて連結に反映される形になっています。

この結果、セグメント区分も変わりました。「その他の事業」の営業収益は4,665億円から162億円へ、96.5%減っています。スーパーも銀行も、もうこの会社の連結売上には乗りません。

使える読み方:「減収なのに大幅増益」を見たら、まず連結範囲が変わっていないかを確認する。会社を切り離すと、売上は消え、利益率は上がります。事業が良くなったのか、悪い事業がいなくなっただけなのかは、別の話です。

なお、会社が自分で作った指標を並べて出すこと自体は珍しくありません。丸紅は「実態純利益」、資生堂は為替を除いた「実質増減率」を併記しています。調整後利益・コア営業利益の見方で整理したとおり、大事なのは定義が書いてあるか、検証できるかです。セブン&アイの場合は調整内容が注記されており、追いかけられます。

増益578億円のうち、569億円が海外コンビニ1つです

ここからが中身です。会社は決算説明資料で、実質ベースの営業利益の増減をセグメント別に分解しています。

要因 金額
2025年度Q1(実質ベース) 472億円
国内コンビニエンスストア事業 △22億円
海外コンビニエンスストア事業 +569億円
その他の事業 △1.2億円
消去/全社 +33億円
2026年度Q1 1,050億円(+578億円)

増益578億円のうち569億円、98.4%が海外コンビニです。国内コンビニはむしろ22億円の減益でした。

セグメント別の営業利益(開示ベース)でも同じことが起きています。

セグメント 前年同期 当期 伸び
国内コンビニエンスストア事業 545億円 522億円 △4.2%
海外コンビニエンスストア事業 86億円 655億円 +655.0%
その他の事業 194億円 15億円 △92.3%
調整額(消去及び全社) △176億円 △142億円
合計 650億円 1,050億円 +61.4%

海外コンビニの営業利益は7.55倍です。この1つを説明できれば、この決算はほぼ説明できます。

その海外の増益は、ほとんどガソリンでした

会社は決算説明資料で、北米の7-Eleven, Inc.(SEI)の営業利益の増減もドル建てで分解しています。

要因 金額(百万ドル)
2025年度Q1 245
商品等 +9.9
ガソリン +349
販管費 △44
2026年度Q1 560(+315)

増益315百万ドルに対して、ガソリンだけで349百万ドル。増益額を超えています。コンビニの本業である商品の貢献は9.9百万ドル、増益の3%です。

会社自身、決算サマリーでこう書いています。

会社の説明:「7-Eleven, Inc.(SEI)は…営業利益は、業界全体と同様に四半期を通じた石油製品市場の大幅な変動を背景とした燃料荒利の改善により、880億円となりました」

「石油製品市場の大幅な変動」というのは、この四半期に原油・石油製品の価格が大きく動いたことを指します。ガソリンスタンドの利益は、仕入価格と店頭価格の差(燃料荒利)で決まります。仕入が急落する局面では店頭価格の引き下げが遅れるため、荒利が広がります。店が何かをうまくやったから増えたのではなく、市況がそうさせた利益です。

中東情勢が石油価格を動かした四半期については、他の会社の決算でも別の形で現れています。日本郵船ではエネルギー輸送の追い風と自動車輸送の逆風が同時に起き、丸紅では化学品トレードの増益になり、スズキでは原材料コストの逆風になりました。セブン&アイでは、北米のガソリン販売の荒利として現れたということです。

なお本業のほうも、悪くはありません。SEIの米国内既存店商品売上は+1.4%で、前年同期からの推移はこうなっています。

四半期 FY2025 1Q 2Q 3Q 4Q FY2026 1Q
既存店商品売上(前年比) △1.0% △0.8% +0.5% △0.6% +1.4%

マイナス圏から抜けてきたところです。ただし商品荒利率は33.2%で前年と同水準(±0.0%)。売上は戻りつつあるが、利益はまだガソリン頼みという状態です。

会社は「下期は燃料市況が平準化する」と書きました

ここがこの決算のいちばん重要なところだと思います。

会社は通期の営業利益予想を4,050億円から4,250億円へ200億円上方修正しました。ところが中間期は1,900億円から2,340億円へ440億円上げています。中間期を440億円上げて、通期は200億円しか上げていない。差の240億円は、下期を下げたということです。

営業利益予想の修正 上期 下期 通期
国内コンビニ ±0 ±0 ±0
海外コンビニ +416億円 △194億円 +222億円
その他 +17億円 +14億円 +31億円
消去/全社 +7億円 △60億円 △53億円
合計 +440億円 △240億円 +200億円

上期に416億円上げた同じ海外コンビニを、下期は194億円下げています。理由は会社が明記しています。

会社の説明:「上期の業績が当初計画を上回って推移することを受け、通期の営業利益の見通しを当初計画比200億円上方修正しました。今後、戦略的成長に向けた施策を加速するための投資に充当するとともに、下期については燃料市況がより平準化していく想定としております

「平準化」=いまの燃料荒利は続かない、という意味です。会社自身が、Q1の増益の主因が一時的なものだと認めています。上振れ分は投資に回すとも書いています。

もうひとつ、北米の見通しにも下方修正が入っています。SEIの既存店売上伸び率の前提です。

SEI 既存店売上伸び率 期初計画 修正後
中間期 +1.9% +0.5%
下期 +2.1% +2.1%

Q1の実績が+1.4%だったのに、中間期の前提を+1.9%から+0.5%へ下げています。Q1が+1.4%で中間期が+0.5%なら、逆算するとQ2はマイナスを見込んでいることになります。会社は北米の消費環境について「物価上昇懸念の高まり等により、低所得者層を中心に食品や生活必需品への節約志向が引き続き見られました」と書いています。

国内は「売れているのに減益」です

国内のセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)は、営業利益が544億円から524億円へ20億円の減益でした。ただし中身を見ると、売れていないわけではありません。

要因 金額
2025年度Q1 544億円
収入等(既存店売上+2.0%) +49億円
荒利率(32.0%、+0.3pt) +17億円
販管費 △88億円
2026年度Q1 524億円(△20億円)

売上と荒利率でおよそ66億円ぶん押し上げたのに、販管費が88億円増えて、差し引きでは20億円の減益です(各要因は会社が示した概数のため、合計と端数が一致しません)。会社は費用増加の主な内訳まで出しています。システム費用△42億円、広告宣伝費△15億円。この2つで57億円ですから、販管費の増加はほぼ「システムと広告」だったことになります。

既存店売上の推移を見ると、5四半期連続で改善しています。

四半期 FY2025 1Q 2Q 3Q 4Q FY2026 1Q
既存店売上(前年比) +0.6% +0.9% +1.5% +2.0% +2.0%

会社は施策の効果も数字で出しています。出来立てカウンター商品の平均日販は+14.7%(日販効果+5.5千円)、玩具・IPコンテンツは+26.5%(同+2.4千円)。「セブンカフェ ベーカリー」は約11,000店(通期計画約18,000店)、「セブンカフェ ティー」は約3,200店(同約10,000店)まで導入が進みました。

つまり国内は、売れる仕組みへの投資が先に費用として出ている段階です。通期のセグメント予想は営業収益9,500億円・営業利益2,242億円で、期初計画から一切修正されていません。会社は国内について、上振れも下振れも見ていないということになります。

経常+89.1%が、最終+23.6%に落ちる理由

もうひとつ、伸び率が段階で大きく変わります。

段階 前年同期 当期 伸び率
営業利益 650億円 1,050億円 +61.4%
経常利益 532億円 1,007億円 +89.1%
税金等調整前四半期純利益 779億円 851億円 +9.2%
親会社株主帰属純利益 490億円 606億円 +23.6%

経常利益は89.1%増なのに、税引前では9.2%増まで落ちます。特別損益を見ると理由がわかります。

項目 前年同期 当期
固定資産売却益 372億円 11億円
特別利益 合計 378億円 39億円
減損損失 8億円 98億円
固定資産廃棄損 36億円 41億円
特別損失 合計 131億円 195億円
特別損益 差引 +246億円 △155億円

前年同期に372億円の固定資産売却益があり、当期は98億円の減損損失が出ています。特別損益は+246億円から△155億円へ、402億円悪化しました。経常段階で475億円増えた利益が、ここで大きく削られます。

実効税率も動いています。前年34.6%(法人税等270億円÷税引前780億円)から、当期28.5%(243億円÷851億円)へ低下しました。

また、四半期のれん償却額は358億円あります。年間では1,400億円規模です。だからEPS 26.21円に対してのれん償却前EPSは38.04円と、会社は2つのEPSを併記しています。北米事業の買収で積み上がったのれんが、いまも損益を押し下げている構図です。

発行済株式の10.92%を消却します

決算と同じ日、2026年7月9日の取締役会で、自己株式の消却が決議されました。

項目 内容
消却する株式の総数 2億8,429万7,500株
発行済株式総数に対する割合 10.92%
消却予定日 2026年7月15日
消却後の発行済株式総数 23億2,025万8,349株
理由 将来の株式の希薄化懸念を払拭するため

発行済株式の1割超を消すという規模です。前年同期には自己株式の取得で900億円を支出しており、期中平均株式数は25億8,438万株から23億1,173万株へ10.5%減っています。これがEPSに効いています。実際、通期のEPS予想116.9%増(実質ベース比)に対し、当期純利益の伸びは9.1%です。差はすべて株数の減少です。

配当予想は年間60円(中間30円、期末30円)。前期は50円でしたから20%の増配です。配当と株主還元の見方で触れたとおり、自社株買いと消却は配当と並ぶ還元の手段で、EPSを通じて1株の価値に効きます。

財務面では、長期借入金が7,184億円から9,564億円へ2,379億円増えています。自己資本比率は39.6%から38.6%へ低下。総資産9兆5,657億円のうち、無形固定資産(のれんを含む)が2兆4,827億円を占めます。

通期予想は、どちらのベースで見るか

通期予想を整理します。

項目 前回予想
(2026年4月9日)
今回予想
(2026年7月9日)
開示ベース
前期比
実質ベース
前期比
営業収益 9兆4,480億円 10兆4,300億円 0.0% +9.7%
営業利益 4,050億円 4,250億円 +0.5% +10.5%
経常利益 3,670億円 3,900億円 +3.3% +10.7%
当期純利益 2,700億円 2,780億円 △5.0% +9.1%
EPS 117.42円 120.89円 +1.7% +16.9%

当期純利益は、開示ベースでは5%の減益、実質ベースでは9.1%の増益。減益に見えるのは、前期にヨーク・ホールディングスやセブン銀行の非連結化に伴う損益が入っていたためです。

営業収益を9,820億円も上方修正しているのに、営業利益の修正が200億円にとどまっている点にも触れておきます。理由は為替前提の変更です。

為替前提(通期) 修正前 修正後
米ドル 150.00円 157.00円
人民元 21.00円 23.00円

売上の大半を占める北米事業を円換算するため、7円の円安で営業収益は大きく膨らみます。しかし営業収益の上方修正9,820億円のうち9,600億円が海外コンビニ、それに対する営業利益の上方修正は222億円。ガソリンを含む北米の売上は規模が大きい一方で利益率が低いため、円安で売上は増えても利益はあまり増えません。

ちなみにQ1の為替影響は、営業収益で602億円のプラスに対し、営業利益ではわずか18億円でした。増益399億円の4.5%です。この会社の場合、円安は「売上を膨らませるが、利益はほとんど動かさない」と考えたほうが実態に近くなります。

この決算から言えること

整理します。

  • 営業収益△14.3%の正体は、イトーヨーカ堂などを傘下に持つヨーク・ホールディングスとセブン銀行が連結から外れたこと。コンビニの商品売上は+3.2%と増えています。実質ベースでは営業収益+2.4%です。
  • 営業利益の増益578億円(実質ベース)のうち、569億円=98.4%が海外コンビニ1つ。国内コンビニは22億円の減益でした。
  • その海外の増益315百万ドルのうち、ガソリンが349百万ドル。商品の貢献は9.9百万ドルです。会社は「石油製品市場の大幅な変動を背景とした燃料荒利の改善」と説明しています。
  • 会社は下期の海外コンビニを194億円下方修正し、「下期については燃料市況がより平準化していく想定」と明記。中間期を440億円上げながら通期は200億円しか上げていないのは、そのためです。
  • 国内は「既存店+2.0%・荒利率+0.3ポイントで66億円稼いだが、販管費が88億円増えて減益」。システム費用42億円、広告宣伝費15億円と内訳も開示されています。通期の国内予想は据え置きです。
  • 経常+89.1%が税引前+9.2%まで落ちるのは、前年に固定資産売却益372億円があり、当期に減損98億円が出たから。
  • 発行済株式の10.92%を消却。実質ベースの当期純利益+9.1%に対しEPSは+16.9%で、差は株数の減少です。配当は50円→60円へ増配。

次の四半期で確かめたいのは3点です。①Q2の北米既存店売上が、会社の前提どおりマイナスになるのか ②燃料荒利が「平準化」してどこまで戻るのか ③国内の販管費増が、いつ売上の伸びに追い越されるのか。

この決算は、「見出しの数字」と「事業の実態」がこれほど食い違う例としても読めます。営業収益△14.3%も、営業利益+61.4%も、通期△5.0%も、どれも会社の正式な開示です。それでも、実際に起きたことは「スーパーと銀行が抜けて、北米でガソリンが儲かった四半期」でした。

※本記事は2026年7月9日発表の2027年2月期第1四半期決算短信、同日公表の決算説明資料および決算サマリーに基づいています。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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