【2026年版】大和ハウス工業(1925)の今後の業績と株価の見通し|Q1は過去最高、通期は△25.2%減益予想の中身

大和ハウス工業(1925)が2026年8月6日に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高1兆4,083億円(前年同期比9.0%増)、営業利益1,306億円(同10.6%増)、経常利益1,230億円(同9.9%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益831億円(同9.1%増)でした。会社は資料の1ページ目に「売上高、営業利益および経常利益は過去最高を更新」と記しています。

同時に、通期予想も上方修正されました。営業利益は5月公表の4,000億円から4,600億円へ600億円の引き上げです。

ところが、その上方修正後の通期予想を前期と並べると、営業利益は△25.2%の減益になります。過去最高のスタートを切り、予想も上げたのに、着地は前期の4分の3。この3つの数字は、並べただけでは意味が通りません。

答えは会社の資料にすべて書かれています。この記事では、決算短信と決算概要、そして質疑応答要旨をたどって、①通期が△25.2%になる理由 ②上方修正600億円の中身 ③Q1の増益125億円の出どころの3点を確かめます。先に結論を言うと、△25.2%の大半は前期側の事情であり、上方修正600億円は業績が上振れたから積み増した数字ではありません。

この決算を1枚で(2027年3月期 第1四半期)
指標 当期(2026年4〜6月) 前年同期 増減率
売上高 1兆4,083億円 1兆2,921億円 +9.0%
売上総利益率 21.3% 21.2% +0.1pt
営業利益(率) 1,306億円(9.3%) 1,181億円(9.1%) +10.6%
経常利益 1,230億円 1,119億円 +9.9%
四半期純利益 831億円 762億円 +9.1%
1株当たり四半期純利益 134.33円 123.25円 +9.0%
通期営業利益(修正後) 4,600億円(当初計画4,000億円から+600億円、前期比△25.2%
同・前期の一時要因を除く 前期4,992億円に対して△7.9%(会社が併記)
売上高・営業利益・経常利益はいずれも第1四半期として過去最高。通期の△25.2%は、前期の数字の側に理由があります。

通期△25.2%の正体は、前期にあった2つの一時要因です

まず、通期予想を前期実績と並べます。

通期(億円) 2026年3月期 実績 2027年3月期 修正計画 前期比
売上高 55,768 59,000 +5.8%
売上総利益(率) 12,418(22.3%) 11,800(20.0%) △5.0%
管理販売費 6,269 7,200 +14.8%
営業利益(率) 6,148(11.0%) 4,600(7.8%) △25.2%
経常利益 5,719 4,020 △29.7%
当期純利益 3,505 2,660 △24.1%

売上は+5.8%で伸びるのに、営業利益は△25.2%。営業利益率が11.0%から7.8%へ3.2ポイント落ちる計算です。

この落差について、会社は決算短信の添付資料に「(参考)退職給付数理差異等償却額を除く前期実績との比較」という表を独立して載せています。決算概要のP21にも同じ表があります。

前期の営業費用を1,156億円押し下げていたもの

その表の中身です。

2026年3月期(億円) 実績 数理差異の影響 影響を除く(A)
売上高 55,768 55,768
売上原価 43,350 △511 43,861
管理販売費 6,269 △645 6,915
営業利益 6,148 +1,156 4,992
当期純利益 3,505 +791 2,714

前期の営業利益6,148億円のうち1,156億円は、退職給付にかかわる会計処理が費用を押し下げたことによるものでした。売上原価で511億円、管理販売費で645億円。合計1,156億円が「本来なら費用として出ていたはずの金額が出なかった」分にあたります。

「退職給付数理差異」という言葉は見慣れないので、簡単に整理します。企業年金や退職金は、将来いくら払うかを利率や退職率などの前提を置いて見積もります。その前提と実際のズレが「数理計算上の差異」です。年金資産の運用が想定より良ければプラス方向のズレ、悪ければマイナス方向のズレが出ます。このズレは一度に損益へ反映せず、一定の年数に分けて費用として償却していくのが一般的な処理です。

つまり、この1,156億円は事業活動で稼いだ利益ではなく、過去に積み上がった見積もりのズレが会計上ほどけた分です。そして今期の計画には、この影響が「—」と置かれています。前期にはあって今期にはない。それだけで営業利益の比較は1,156億円ぶん不利になります。

会社が併記している数字:数理差異の影響を除くと、前期の営業利益は4,992億円。今期計画4,600億円との比較は△7.9%になります。当期純利益も前期2,714億円に対して2,660億円で△2.0%です。見出しの△25.2%・△24.1%とは、まったく印象が変わります。

会社が自分から2つの数字を並べるパターンは、これまで見てきた決算にも繰り返し出てきました。丸紅の「実態純利益」、セブン&アイの「実質ベース」、資生堂の「実質増減率」。調整後利益・コア営業利益の見方で整理したとおり、会社が併記を始めたときは、素の数字だけでは事業の実態が伝わらないと会社自身が判断しているということです。

もうひとつ、前期には919億円の土地売却益がありました

ただし、前期の特殊事情はこれだけではありません。同じ決算概要のP4に、こう書かれています。

2026年3月期実績のうち(億円) 売上高 営業利益
米国大型土地売却 1,053 919

前期には、米国での大型土地売却が売上1,053億円・営業利益919億円として含まれていました。売上に対する利益率が87%という数字が、通常の事業ではないことを示しています。今期の計画には、この項目は載っていません。

会社が公式に「除いた数字」として示しているのは数理差異のぶんだけですが、前期6,148億円のうち、数理差異1,156億円と米国大型土地売却919億円を合わせた2,075億円は、今期には繰り返されないことが資料上はっきりしている金額です。差し引くと前期は4,073億円で、今期計画4,600億円はそれを上回ります。

この919億円がどこにあったかは、セグメント別の通期計画を見ると分かります。

通期営業利益(億円) 前期実績 今期修正計画 前期比
戸建住宅 1,556 550 △64.7%
 うち海外 1,498 486 △67.6%
賃貸住宅 1,411 1,420 +0.6%
マンション 59 180 +200.3%
商業施設 1,624 1,630 +0.3%
事業施設 1,276 1,580 +23.8%
環境エネルギー 138 140 +1.2%
その他 42 6 △85.7%
合計 6,148 4,600 △25.2%

全社の減益1,548億円に対して、戸建住宅だけで1,006億円。そのうち1,012億円が海外です。戸建住宅の国内は差し引きでほぼ横ばいということになります。戸建住宅事業の通期の売上総利益率は前期25.4%から今期18.4%へ7.0ポイント下がる計画で、米国だけを取り出すと28.1%から16.3%へ11.8ポイントの低下です。住宅を建てて売る事業の粗利率が28%というのは高すぎます。土地売却益が混ざっていた、と読むのが自然です。

ここまでをまとめると、通期△25.2%という見出しは、前期の数字が2つの要因で膨らんでいたことの裏返しです。会社が併記する△7.9%のほうが、事業の実勢に近い比較になります。

上方修正600億円は、期初に積んだ中東リスクを取り崩したものです

次に、上方修正の中身を見ます。ここがこの決算でいちばん珍しい開示です。

決算概要のP4に、通期計画の修正表があります。当初計画の欄には、カッコ書きで数字が添えられています。

通期(億円) 当初計画(2026年5月) うち中東情勢の影響 今回見直し 計画比
売上高 58,000 △3,000 59,000 +1,000
売上総利益 11,200 △1,000 11,800 +600
管理販売費 7,200 7,200
営業利益 4,000 △1,000 4,600 +600
当期純利益 2,270 △650 2,660 +390

2026年5月に通期計画を出したとき、大和ハウスは中東情勢の影響として売上△3,000億円・営業利益△1,000億円・当期純利益△650億円をあらかじめ差し引いていました。そして今回、営業利益をちょうど600億円戻しています。

これが何を意味するのか、会社は質疑応答で明確に答えています。

質問:5月に公表した通期計画では、中東情勢の影響として営業利益で1,000億円の下振れを織り込んでいましたが、今回その見込みから600億円の上方修正をしたことで、差額の400億円についてはどのような影響を想定されていますか。

回答:「当初見込んでいた1,000億円の下振れリスクの内訳は、国内830億円、海外170億円でした。今回の見直しで、国内分のうち600億円を上方修正しています。資材価格の高騰など先行き不透明な要素も残っているため、国内で230億円、海外で170億円のリスクは引き続き織り込んでいます」

つまり上方修正600億円は、Q1の利益が想定を600億円上回ったから積み増した数字ではありません。「起きると思って引いておいたリスクの一部が、実際には起きなかったので戻した」という性質のものです。残る400億円のリスクは、まだ計画に入ったままです。

この構造は、セグメント別の修正理由を並べるとさらにはっきりします。

セグメント 当初→修正(営業利益) 会社の説明
戸建住宅 490 → 550(+60) 中東情勢による国内事業への影響が想定を下回る見通し
賃貸住宅 1,320 → 1,420(+100) 中東情勢の影響を保守的に見込んでいた請負・分譲事業を上方修正
商業施設 1,530 → 1,630(+100) 同上(売上高・営業利益とも)
事業施設 1,280 → 1,580+300 同上(売上高・営業利益とも)
環境エネルギー 110 → 140(+30)
マンション・その他 変更なし
合計 4,000 → 4,600(+600) 海外事業の計画に修正はなし

上方修正600億円の半分にあたる300億円が事業施設事業で、海外事業の計画は1円も動いていません。質疑応答の「国内分のうち600億円を上方修正、海外170億円のリスクは引き続き織り込む」という説明と、数字が完全に一致します。

中東情勢を、会社はこれだけ違う形で扱っています

この夏の決算を読み続けてきて分かったのは、同じ中東情勢が、会社によってまったく違う形で財務諸表に現れるということでした。大和ハウスは、そのなかで最も具体的な開示をしています。

会社 中東情勢の扱われ方
大和ハウス 期初計画に営業利益△1,000億円(国内830・海外170)として織り込み、Q1後に600億円を取り崩した
スズキ 期初に1,000億円規模のリスクを織り込んでいなかったと会社が明言し、通期を下方修正
住友商事 CFOが「期初計画にストレスとして織り込んでいる」と発言
日本郵船 ホルムズ海峡封鎖が、あるセグメントには追い風・別のセグメントには逆風
ANAJAL 航空燃油費の急騰という形で、費用側に直撃
丸紅 資源価格を通じて、利益と市況の両面に影響

「織り込んでいたか」「金額で示しているか」「取り崩したか」の3点で、会社の情報開示の姿勢がはっきり分かれます。大和ハウスは3つすべてを金額で示した、かなり珍しい例です。

もっとも、これには裏返しの読み方もできます。期初に1,000億円という大きなリスクを積んでおけば、それが起きなければ上方修正になり、起きても計画は守られる。期初計画が保守的だったぶん、上方修正の余地が最初から用意されていたとも言えます。会社自身も質疑応答で「第1四半期終了時点で業績予想を上方修正するにあたり、事業環境や足元の業績動向を十分に精査したうえで、営業利益4,600億円という計画を設定しています。現時点では、この計画は十分に達成を目指せる水準と考えています」と答えており、達成を意識した水準であることを認めています。

中東情勢が、戸建住宅では追い風になっていました

ここでもうひとつ、他社の決算では出てこなかった話があります。決算概要の戸建住宅事業のページに、こう書かれています。

会社の説明(決算概要P25):「国内事業では、中東情勢を背景とした今後の建築コスト上昇等への懸念から顧客の早期購入の動きがみられ、販売および引渡戸数が増加し増収増益」

「これから資材が値上がりしそうだから、いま買っておこう」という需要の前倒しが起きたという説明です。実際、国内の住宅売上戸数(個別)は934戸から1,003戸へ増えています。内訳を見ると、戸建住宅(請負)は576戸→545戸と減っており、増えたのは分譲住宅(建売)で358戸→458戸です。

国内住宅売上戸数(個別) 前年同期 当期 増減
戸建住宅(請負) 576戸 545戸 △31戸
分譲住宅(建売) 358戸 458戸 +100戸
合計 934戸 1,003戸 +69戸

すでに建っている家のほうが増えている、という形です。注文住宅は契約から引き渡しまで時間がかかるため、「値上がり前に」という動機は、すぐ手に入る建売のほうに向かいやすいと考えれば、数字の動きと整合します。

ただし、需要の前倒しは将来の需要を先に食べる行為でもあります。今期のどこかで反動が出るかどうかは、次の四半期以降で確かめるべき点です。

なお、会社は「工事の前倒しによる押し上げ」については明確に否定しています。

会社の回答(質疑応答):「中東情勢を背景に工事を前倒ししたことで業績が押し上げられたわけではありません。当初は工事遅延のリスクを懸念していましたが、代替品の活用などにより大きな影響はなく、工事は順調に進捗しています」

心配していたのは「資材が届かず工事が止まること」で、それが起きなかった——これが600億円を戻せた実務上の理由です。懸念していたのは価格ではなく供給でした。そして今後については「主に今後の資材価格高騰に関するもの」が残るリスクだと述べています。

Q1の増益125億円を、5つに分解する

ここからは第1四半期の実績を見ます。会社は決算概要のP9で、営業利益の増減要因を分解して示しています。

営業利益の増減要因 金額
前年同期(2025年4〜6月) 1,181億円
売上高の増加 +149億円
原価率の改善 +22億円
開発物件売却利益の増加 +11億円
住友電設のグループ入りによる影響 +7億円(のれん等償却前+44億円)
管理販売費の増加 △65億円
当期(2026年4〜6月) 1,306億円(+125億円)

この表で目を引くのは、買収した住友電設の貢献が7億円しかないという点です。会社は質疑応答でこの数字を補足しています。

会社の回答(質疑応答):「第1四半期の住友電設の業績は順調に推移し、営業利益は44億円でしたが、のれん等の償却を考慮した利益で7億円となりました。通期では、のれん等の償却を反映した利益を113億円で見込んでおり、計画に対して順調に進捗しています」

住友電設単体の営業利益44億円(売上532億円、利益率8.3%)のうち、37億円がのれん等の償却で消えています。通期では売上2,436億円・営業利益243億円に対して、のれん償却後は113億円。買収した会社が稼いでも、買収価格の分だけ毎期費用が計上されるため、連結の利益に乗る金額はその差し引きになります。

これは会計上の仕組みであって、事業が悪いという話ではありません。ただ「大型買収をしたのに利益があまり増えない」という現象の、典型的な形です。会社はまた「住友電設については、約2年分の受注残があり、まずは受注済み案件を着実に進めながら、グループ内での連携を拡大していきたい」とも述べています。

もうひとつの主役は管理販売費の△65億円です。損益計算書で見ると、管理販売費は1,559億円から1,699億円へ140億円増えており、そのうち人件費(福利厚生費を含む)が885億円から957億円へ72億円増えています。売上が+9.0%なのに対して管理販売費も+9.0%、人件費は+8.1%。売上の伸びとほぼ同じペースで費用も増えている形です。

売上の増加要因も分解されています。

売上高の増減要因 金額
住友電設のグループ入り +544億円
国内事業(主に賃貸住宅・商業施設) +532億円
海外事業 +521億円
開発物件の売上減少 △112億円
重複調整 △323億円
合計 +1,162億円

増収1,162億円のうち544億円は住友電設の連結によるもので、買収がなければ売上の伸びは半分近くに縮みます。損益計算書の見方で触れたとおり、連結範囲が変わった期の売上成長率は、そのまま前年と比べられません。

セグメント別に見る:主役は事業施設、唯一の減益はマンション

第1四半期のセグメント別実績です。

セグメント 売上高 増減率 営業利益 増減率 営業利益率
戸建住宅 2,692億円 +14.3% 92億円 +29.2% 3.0% → 3.4%
賃貸住宅 3,866億円 +10.7% 428億円 +12.6% 10.9% → 11.1%
マンション 560億円 △13.6% 18億円 △46.5% 5.4% → 3.4%
商業施設 3,154億円 +9.1% 356億円 +0.5% 12.3% → 11.3%
事業施設 3,688億円 +6.9% 544億円 +13.5% 13.9% → 14.7%
環境エネルギー 320億円 +14.6% 49億円 +12.9% 15.7% → 15.4%
その他 130億円 △7.8% 8億円 △46.0% 11.5% → 6.7%
合計 1兆4,083億円 +9.0% 1,306億円 +10.6% 9.1% → 9.3%

増益125億円の内訳は、事業施設+65億円、賃貸住宅+48億円、戸建住宅+21億円が主で、マンションが△17億円を引いています。金額の大きい2つ(事業施設と賃貸住宅)で増益の9割が説明できます。

事業施設:粗利率が3.0ポイント上がった

事業施設事業は、売上+6.9%に対して営業利益+13.5%。売上総利益率が19.8%から22.8%へ3.0ポイント改善しています。会社は「資材価格や労務費の上昇に対応した取り組みが奏功し利益率も改善」と説明しており、質疑応答ではもう一歩踏み込んでいます。

会社の回答(質疑応答):「事業施設事業の売上総利益率の改善は、住友電設のグループ入りによる効果というよりは、好調な受注環境を背景にお客さまへ価格転嫁について丁寧にご説明し、ご理解をいただけていることが主な要因です」

値上げが通っている、という話です。この事業には物流施設やデータセンターが含まれます。需要が強い分野では価格を通せる、というのは、オムロンが制御機器で、信越化学が半導体材料で示していたことと同じ構図です。

データセンターについては、2026年4月にデータセンター事業本部を新設しています。会社は「請負」「デベロッパー」「モジュール型商品」の3つを柱にすると説明しており、実際に2026年4月には福島県大熊町でモジュール型データセンターが竣工・稼働しています。ただし「データセンター事業の収益性については、事業モデルや案件ごとに異なるため、現時点で一律にお示しすることは難しい」とも述べており、金額での開示はまだありません。

賃貸住宅:管理戸数72.8万戸、入居率96.6%

賃貸住宅事業は、請負・分譲と賃貸・管理の2本立てです。

賃貸住宅事業 前年同期 当期 売上総利益率
請負・分譲 1,459億円 1,747億円 24.2% → 22.9%
賃貸・管理 1,828億円 1,900億円 17.6% → 19.1%
開発物件売却 205億円 218億円 17.6% → 8.7%
合計 3,492億円 3,866億円 20.4% → 20.2%

賃貸住宅の管理戸数は70万5,980戸から72万8,685戸へ増え、うち一括借上(入居保証)は65万6,606戸。入居率は96.2%から96.6%へ上がっています。会社は増益の理由として「管理戸数の拡大や、高い入居率を維持しながらの賃料改定による収益向上」を挙げており、賃貸・管理の売上総利益率が17.6%から19.1%へ1.5ポイント上がっているのがその結果です。

注目したいのは、価格転嫁と金利上昇についての質疑です。

会社の回答(質疑応答):「現時点では、価格転嫁による賃貸住宅需要への大きなマイナス影響は見られておらず、受注も堅調に推移しています。金利上昇の影響はあるものの、賃料上昇を織り込んだ将来キャッシュフローをお客様に提案できていることに加え、長期のローンを活用した提案などにより、受注を確保できていると考えています」

賃貸住宅の顧客は、土地を持つオーナーです。建築費が上がり、借入金利も上がる。それでも受注が落ちないのは、賃料も上がっているから——という説明です。会社は「賃料上昇が期待できるエリアを戦略的に選定していることも、良好な受注環境を支えている要因の一つ」とも述べています。なお、戸建住宅・賃貸住宅については「7月以降、一定程度の価格転嫁を進めていきます」としており、値上げの効果はまだQ1には入っていません。

商業施設:増益だが、粗利率は1.9ポイント低下

商業施設事業は営業利益+0.5%とほぼ横ばいですが、中身は動いています。売上総利益率が23.2%から21.3%へ1.9ポイント低下しました。会社の説明は2つです。

  • 販売期間が長期化していた分譲物件について、早期資金化を目的とした販売を実施した
  • 建設コストの上昇に対するテナント賃料への転嫁の進捗が想定を下回った

1つ目は意図的な在庫処理、2つ目は値上げが通っていないという話です。事業施設で「価格転嫁にご理解をいただけている」と説明されていたのと、同じ会社のなかで正反対の結果になっています。相手がテナント企業か、需要の強い分野の発注者かで、転嫁の通りやすさが違うということです。会社も通期の粗利率計画について「今後の改善を見込んでいますが、計画の達成に向けて取り組みを強化する必要がある」と、達成を保証していません。

この事業には都市型ホテル(ダイワロイネットホテル)が含まれます。ここにインバウンドの変化が出ています。

都市型ホテル運営事業(宿泊事業のみ) 前年同期 当期
売上高 215億円 215億円
営業利益(率) 52億円(24.5%) 38億円(17.8%)
稼働率 90.4% 88.2%
平均客室単価 14,275円 14,798円
施設数 76施設 76施設

客室単価は+3.7%上がったのに、稼働率が2.2ポイント落ちて、売上は横ばい、営業利益は6.7ポイントぶんの利益率低下。短信では「インバウンド需要の減速等の影響を受けて平均稼働率は減少したものの、ADR・RevPARは前年同期比で増加」と説明されています。

インバウンドの減速は、JR西日本でも訪日客の動きとして、JR東日本ではホテル事業が計画を超える一方で鉄道が未達という形で出ていました。業種をまたいで、同じ方向の話が並び始めています。

マンション:唯一の減益セグメント

マンション事業は売上△13.6%・営業利益△46.5%と、唯一のはっきりした減益です。理由は単純で、分譲マンションの引渡戸数が前年を下回ったことによります。国内のマンション売上戸数(大和ハウス単体)は201戸から169戸へ減りました。分譲マンションの売上だけを見ると275億円から153億円へほぼ半減しています。

ただし、完成在庫は437戸から554戸へ増え、そのうち受注済みが105戸から207戸へ倍増しています。引き渡しが後ろにずれているだけ、という読み方もできます。通期計画では営業利益59億円→180億円(+200.3%)と大幅増益が見込まれており、この計画は今回の上方修正でも一切変更されていません。期初から下期偏重の計画だった、ということです。

海外は売上+30.9%でも、戸建住宅だけが減益です

海外事業は売上1,684億円→2,206億円(+30.9%)、営業利益80億円→124億円(+55.6%)と、全体では大きく伸びています。ただし中身は二極化しています。

海外(Q1) 売上高 増減 営業利益 営業利益率
戸建住宅 1,150 → 1,437億円 +25.0% 73 → 58億円 6.4% → 4.1%
事業施設 190 → 484億円 +153.9% 7 → 74億円 3.9% → 15.3%
商業施設 58 → 18億円 △68.2% 1 → 42億円 2.6% → 25.7%
賃貸住宅 206 → 203億円 △1.3% 10 → 2億円 4.9% → 1.3%
マンション 68 → 51億円 △25.7% △5 → △8億円
合計 1,684 → 2,206億円 +30.9% 80 → 124億円 4.7% → 5.6%

海外の増益44億円のうち67億円は事業施設(米国物流施設の一部売却)で作られ、戸建住宅が15億円を引いています。

米国:売れる戸数は増えているのに、利益率が落ちている

米国戸建住宅事業は、この会社の海外の中心です。数字を並べます。

米国戸建住宅 前年同期 当期 通期計画
売上高(米国のみ) 1,092億円 1,372億円 7,614億円(前期7,810億円)
売上総利益率(米国のみ) 20.0% 17.5% 16.3%(前期28.1%)
営業利益(米国のみ) 76億円 61億円 452億円(前期1,489億円)
住宅受注戸数(1〜6月累計) 3,852戸 4,678戸
住宅引渡戸数(1〜3月累計) 1,315戸 1,577戸 8,000戸(前期7,776戸)
為替(US$/JPY) 152.95円 156.48円 150.00円

受注は+21.4%、引き渡しは+19.9%。売る量は確実に増えています。それでも利益は減りました。会社の説明はこうです。

会社の回答(質疑応答):「米国戸建住宅事業については、販売戸数の拡大により、売上高は好調に推移しています。これは、M&Aや優良な土地の確保を継続して進めてきた成果だと考えています。一方で、金利は高止まりしているため、販売促進のためにインセンティブを付与しており、それが売上総利益率の低下につながっています

金利が高いので、値引きや金利補助といった販促費を積んで売っているという構図です。決算概要では「前年下期の需要低迷局面でインセンティブを付与して販売した契約案件の引渡しが増加したことから、利益率が低下」とも説明されており、今期のQ1に出ている利益率低下は、前期下期に売った物件の引き渡しによるものだと分かります。契約から引き渡しまでのタイムラグがあるぶん、決算に現れるのが遅れる、ということです。

会社は来期以降について「金利が高止まりする場合と低下する場合では事業環境が大きく異なるため、現時点で一律に見通すことは難しい」としつつ、「ファーストバイヤー比率が高いエリアでは、現在の金利水準が住宅ローンの利用を制約するケースもあります。今後、金利が低下すれば、こうした潜在需要が顕在化し、事業環境が大きく改善する可能性がある」と述べています。米国の住宅ローン金利次第、というのが率直な回答です。

なお、通期計画の為替前提は1ドル150円で、Q1の実績レートは156.48円でした。円安が前提より進んだままなら、海外事業の円換算額にはプラスに働きます。会社は今回、海外事業の計画を一切修正していないので、為替の上振れ余地も計画には入っていないことになります。

エリア別:中国は通期でも赤字計画

今期から海外のエリア区分が見直され、欧州が独立して開示されるようになりました。

エリア Q1売上 Q1営業利益 通期計画売上 通期計画営業利益
米州 1,665億円 127億円 8,582億円 520億円
ASEAN・南アジア 77億円 △0億円 782億円 37億円
大洋州 80億円 △5億円 490億円 11億円
欧州 149億円 △1億円 560億円 △9億円
東アジア 274億円 1億円 496億円 △14億円
その他 50億円 0億円 50億円 5億円
合計 2,206億円 124億円 10,960億円 550億円

通期の海外営業利益550億円のうち520億円が米州で、東アジアと欧州は赤字計画です。会社はそれぞれこう説明しています。

  • 中国(東アジア):「市場環境の改善は見られず、厳しい状況が続いています。現在2物件の販売を進めており、まずは投資資金の回収を優先しています。そのため、現時点で大きな利益貢献を期待できる状況ではありません」
  • 豪州(大洋州):「金利の高止まりが続いており、第1四半期の実績は当初の想定を下回りました」。ただしメルボルンの賃貸住宅開発は順調で、売却時の利益貢献を見込む
  • 欧州:「過去に採算の悪い2物件で大きな損失が発生しましたが、既存事業は安定して黒字を確保しています」

中国については、資生堂エーザイオムロンでも同じ方向の説明が続いていました。化粧品・医薬品・血圧計に続いて、不動産でも「回復していない」という認識です。

金利上昇が、いちばん効いてくるのはバランスシートです

この会社を見るうえで、損益計算書と同じくらい重要なのが貸借対照表です。3か月で何が起きたかを見ます。

項目(億円) 2026年3月末 2026年6月末 増減
総資産 84,124 86,163 +2,039
棚卸資産 31,796 33,924 +2,128
 うち販売用不動産 30,643 32,680 +2,036
有利子負債(リース債務等除く) 30,767 34,639 +3,872(+12.6%)
純資産 30,222 30,026 △196
D/Eレシオ(資本性考慮後) 0.98倍 1.10倍 +0.12pt
自己資本比率 34.4% 33.8% △0.6pt

3か月で有利子負債が3,872億円増えました。内訳は短期借入金+2,935億円、コマーシャル・ペーパー+710億円が中心です。増えた資金は販売用不動産の仕入れ(+2,036億円)に向かっています。

短信の説明は「商業施設事業及び戸建住宅事業における販売用不動産の仕入により、棚卸資産が増加」。つまり、これから売る不動産を買うために借りているという、この業態では正常な動きです。貸借対照表の見方で整理したとおり、不動産開発業のバランスシートは在庫と借入が同時に膨らみます。

問題は、その規模と金利です。会社のCFOは質疑応答でこう答えています。

会社の回答(質疑応答):「当社のD/Eレシオは2026年6月末時点で1.1倍と、高い水準です。そのため、不動産投資と資金回収のバランスを適切に管理し、キャッシュの創出を進めながらD/Eレシオの改善を図ることが重要な課題と認識しています」

「第7次中期経営計画の4年間では、米国の住宅用地や国内の分譲住宅・賃貸住宅用地への投資を積極的に進めた結果、不動産の保有残高が当初計画を上回る水準まで増加しました

今後3〜4年は、これまでのように投資を拡大していく段階というよりも、投資と回収のバランスを重視する期間になると考えています」

会社自身が「借りすぎた」に近いことを認めています。そして今後は、積み上げた販売用不動産を売って資金を回収する局面だと明言しています。「新規投資については、現在の調達金利や建設コストの上昇を踏まえ、投資採算性を従来以上に慎重に見極めていく方針」とも述べています。

実際、営業外費用は前年同期の137億円から173億円へ+25.8%増えており、通期計画でも718億円→830億円と111億円の増加が見込まれています。金利上昇は、この会社では売上や営業利益ではなく、営業外費用と資金繰りの側から効いてきます。

未稼働の開発物件が9,195億円あります

会社は投資不動産の内訳も開示しています。ここが今後の利益の源泉であり、同時にリスクでもあります。

流動化不動産(2026年6月末・億円) 金額
稼働中 4,749(NOI利回り4.6%)
未稼働 9,195
 うち竣工済 3,906
 うち建設中 3,239
 うち未着手 2,049
合計 13,944

流動化不動産1兆3,944億円のうち、賃料を生んでいるのは4,749億円だけで、残る9,195億円(66%)はまだ稼いでいません。「流動化不動産」とは、会社の定義では「値上がり益を得る目的で投資後、早期に売却可能な不動産」です。売って初めて利益になる資産で、それまでは借入金利だけがかかります。

このうち、実際に売って利益にしている部分の実績と計画です。

開発物件売却 Q1実績 通期計画 進捗率
売上高 1,338億円 3,930億円 34.1%
営業利益 461億円 953億円 48.4%
 うち事業施設 442億円 815億円 54.3%

開発物件売却の営業利益461億円は、全社の営業利益1,306億円の35.3%にあたります。そして通期計画に対する進捗は48.4%。Q1で半分近くを稼いだことになります。会社は「第1四半期の開発物件売却は計画通りに進捗し、売却金額が計画を上回って推移したことから、営業利益も計画を上回りました。通期計画については、足元の売却環境を踏まえると、上振れの楽しみがあります」と述べています。

ただし、通期計画の953億円は前期実績1,074億円を120億円下回る水準です。この会社の利益の3分の1程度は「不動産を売った利益」で、その金額は年によって動きます。決算を見るときに、請負・分譲といった本業部分と分けて見る必要がある理由がここにあります。

配当178円と、1株→2株の株式分割

配当は、今回の上方修正に合わせて引き上げられました。ただし数字の見え方が株式分割で複雑になっているので、順に整理します。

1株当たり配当 2026年3月期実績 2027年3月期 当初 2027年3月期 修正
中間配当 75円 86円 86円
期末配当(分割前換算) 100円(うち記念配当10円) 90円 92円
年間配当(分割前換算) 175円(うち記念配当10円) 176円 178円
1株当たり当期純利益 566.47円 366.51円 429.48円
配当性向 30.9%(数理差異除く39.9%) 48.0% 41.4%

まず株式分割です。2026年9月30日を基準日、2026年10月1日を効力発生日として、1株につき2株の割合で株式分割が実施される予定です。上の表の期末配当は、比較しやすいように分割前換算で書かれています。実際に支払われる期末配当は、分割後の株式に対して46円です(46円×2株=92円)。中間配当は基準日が9月30日で分割前なので、86円がそのまま支払われます。

次に、前期との比較です。前期の175円には創業70周年記念配当10円が含まれているため、普通配当だけを取り出すと165円。今期の178円と比べると13円の増配になります。記念配当を無視して「175円→178円で3円の増配」と読むと、実態より小さく見えます。

今回2円引き上げた理由は、明快です。

会社の回答(質疑応答):「今回、営業利益の計画を600億円上方修正したことを踏まえ、株主の皆さまの期待にもお応えする必要があると判断し、一株当たりの配当金額を2円引き上げました」

「現在お示ししている今期の配当性向は40%を超える水準となっていますが、配当性向の新たな目標や方針を示したものではありません。今後の株主還元方針については、11月ごろに改めてお示ししたいと考えています」

配当性向41.4%は、これまでの「35%以上」という方針を大きく上回りますが、会社はそれを新方針とは認めていません。利益が前期より減るのに配当は増やすので、配当性向が上がるのは計算上の結果です。配当利回りと配当性向の見方で整理したとおり、配当性向が上がったときは「増配したから」なのか「利益が減ったから」なのかを分けて見る必要があります。今回は両方です。

なお、次期中期経営計画については「公表時期は現時点では未定」とされています。会社は「11月には株主還元方針やROEなどの資本政策の考え方・方向性などについて、一定の考え方をお示ししたい」と述べており、株主還元の枠組みが変わるとすれば、そのタイミングになります。PER・PBR・ROEの見方で扱った資本効率の議論が、この会社でも次の論点になるということです。

この決算から言えること

整理します。

  • Q1は売上・営業利益・経常利益がいずれも過去最高。売上1兆4,083億円(+9.0%)、営業利益1,306億円(+10.6%)でした。
  • 通期の△25.2%は、前期の数字が膨らんでいたことの裏返し。前期の営業利益6,148億円には、退職給付の数理差異による費用押し下げ1,156億円と、米国大型土地売却919億円が含まれていました。会社は数理差異を除いた比較として△7.9%を併記しています。
  • 上方修正600億円は、期初に積んだ中東リスクの取り崩し。5月時点で営業利益△1,000億円(国内830・海外170)を織り込んでおり、そのうち国内600億円を戻しました。残る400億円のリスクは計画に入ったままです。
  • 中東情勢は、戸建住宅では追い風にもなっていました。「今後の建築コスト上昇への懸念から顧客の早期購入の動き」があり、分譲住宅の売上戸数が+100戸。需要の前倒しは、いずれ反動が出る可能性があります。
  • 増益125億円の分解では、住友電設の貢献は7億円。単体の営業利益44億円のうち37億円がのれん等の償却で消えています。通期でも243億円→113億円です。
  • 事業施設は価格転嫁が通り、商業施設は通っていない。粗利率は事業施設が+3.0ポイント、商業施設が△1.9ポイント。同じ会社のなかで結果が分かれています。
  • 米国は売る戸数が増えても利益率が落ちている。金利高止まりでインセンティブを付与しているためで、通期の米国粗利率は28.1%→16.3%の計画です。
  • 3か月で有利子負債が3,872億円増え、D/Eレシオは1.10倍。CFOが「高い水準」と認め、「今後3〜4年は投資と回収のバランスを重視する期間」と明言しました。
  • 配当は年間178円(分割前換算)へ2円増配。前期175円には記念配当10円が含まれるため、普通配当では165円→178円です。2026年10月1日に1株→2株の株式分割が予定されています。

次の四半期で確かめたいのは4点です。①残した400億円の中東リスクを取り崩すか、使うことになるか ②7月から進める価格転嫁が粗利率に現れるか ③商業施設のテナント賃料転嫁が改善するか ④販売用不動産の残高と有利子負債が減り始めるか。

この決算を一言でまとめるなら、「見出しの数字が3つとも違う方向を向いていて、そのどれもが正しい」ということになります。Q1は過去最高(事実)、通期は△25.2%(事実)、上方修正+600億円(事実)。矛盾しているように見えるのは、比べている相手が前期の特殊な数字だったり、比べている基準が保守的に作られた期初計画だったりするからです。

会社はそのどちらについても、除外後の数字と、リスクの金額内訳を自分から開示しています。丸紅セブン&アイでも見たとおり、会社が2つ目の数字を出してきたときは、そちらが会社の見ている景色に近いと考えて読むのが実際的です。

※本記事は2026年8月6日発表の2027年3月期第1四半期決算短信、同日公表の決算概要(決算説明会資料)および「アナリスト・機関投資家向け決算説明会 質疑応答(要旨)」に基づいています。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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