【2026年版】NEC(6701)決算分析|航空宇宙・防衛が売上+49.6%。富士通と同じ現象が起きていた

NEC(6701)が2026年7月29日に発表した2027年3月期 第1四半期(2026年4〜6月)の決算には、前回取り上げた富士通(6702)同じ現象が、もっとはっきりした形で出ていました。

航空宇宙・防衛事業の売上が49.6%増えています。利益は45億円から137億円へ、3倍です。

  • 売上収益 8,198億円(前年同期比+14.5%)
  • 営業利益 588億円(+66.1%)
  • Non-GAAP営業利益 747億円(+86.9%)
  • 親会社の所有者に帰属する四半期利益 497億円(+157.4%)
  • 通期のNon-GAAP営業利益予想を4,200億円→4,300億円へ上方修正

富士通の決算では「ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティ」の受注が139%でした。2社の数字が揃ったことで、これは1社の事情ではなく、業界に起きていることだと分かります。

そしてこの決算には、もう一つ読むべきものがあります。売上を捨てて利益を取る——NECはそれを、事業の名前を分けて開示しています。順に確かめていきます。

図解:増益347億円は、どこから来たか
Non-GAAP営業利益 400億円 → 747億円(+347億円)
① 社会インフラ +130億円 ― 主役は防衛
航空宇宙・防衛:売上741億→1,108億円(+49.6%)/利益45億→137億円(利益率6.1%→12.4%
海洋システム:売上151億→230億円(+52.3%)/△15億→28億円の黒字転換
ネットワークインフラ:売上312億→314億円(+0.8%)/△0億→△4億円
② ITサービス +170億円 ― 国内は売上+1.9%で利益+134億円
国内:売上4,684億→4,772億円(+1.9%)/利益320億→453億円(利益率6.8%→9.5%
海外:売上987億→1,443億円(+46.2%)/利益89億→125億円 ※CSGの新規連結
③ 国内ITサービスの中身 ― 売上を捨てて利益を取っている
BluStellar:売上1,247億→1,661億円(+33.2%)/利益150億→227億円
ベース事業:売上3,437億→3,111億円(△9.5%)/利益169億→226億円(+57億円)
★会社の説明=「BluStellarへのシフト加速により減収も、収益性改善などにより増益」
読み方:増収の一部は買収によるものです。会社は買収がなかった場合の数字(プロフォーマ)も併記しています。
出典:NEC 2027年3月期 第1四半期決算短信・2026年度第1四半期決算概要(2026年7月29日)より作成

全体像 ― Non-GAAPも会計基準も、両方が大幅増益

単位:百万円 2026年3月期 Q1 2027年3月期 Q1 前年比
売上収益 715,658 819,774 +14.5%
Non-GAAP営業利益 39,995 74,738 +86.9%
(対売上比率) 5.6% 9.1% +3.5pt
営業利益 35,389 58,770 +66.1%
税引前四半期利益 32,103 56,529 +76.1%
親会社帰属 四半期利益 19,310 49,698 +157.4%
Non-GAAP四半期利益 22,281 60,880 +173.2%
1株当たり四半期利益 14.49円 37.47円
親会社所有者帰属持分比率 49.2%(前期末) 49.6% +0.4pt

前回の富士通とは対照的です。富士通は最終利益が会計基準で△76.6%、調整後で+40.7%と符号が逆になりましたが、NECはどちらの数字でも大幅な増益です。

ただしNon-GAAPのほうが数字は良くなります(営業利益で+86.9%と+66.1%)。差は160億円で、その中身も開示されています。

Non-GAAPからの調整項目(百万円) 前年Q1 今期Q1
買収により認識した無形資産の償却費 △6,325 △5,750
M&A関連費用 △1 △7,472
構造改革関連費用、減損損失 △2,069
株式報酬 △465 △677
その他の一過性損益 +2,185

M&A関連費用が1百万円から74.7億円へ跳ね上がっています。後述するCSG買収のアドバイザリー費用です。

ここでNECの定義には「株式報酬」が入っている点に注目してください。会社の説明はこうです。

「Non-GAAP営業利益」は、営業利益から、買収により認識した無形資産の償却費およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用等)ならびに構造改革関連費用、減損損失、株式報酬、その他の一過性損益を控除した本源的な事業の業績を測る利益指標です

会社が独自の利益指標を持つ例は、これで4社目になります。そして「何を除くか」は会社ごとに違います。

会社 指標名 特徴
日本製鉄(5401) 実力ベース事業利益 在庫評価差を除く。独自指標のほうが悪くなる
中外製薬(4519) Core実績 業績予想そのものがCoreベース
富士通(6702) 調整後利益 最終利益で符号が逆転。ただし不動産売却益は除かれない
NEC(6701) Non-GAAP利益 株式報酬まで控除。通期予想もNon-GAAPのみ

同じ「独自指標」でも、除いているものは会社ごとに違います。定義を読まずに横並びで比べることはできません(調整後利益・コア営業利益の見方)。

①航空宇宙・防衛が売上+49.6% ― 富士通と同じ現象

社会インフラ事業の中身を、会社は3つに分けて開示しています。

社会インフラ(十億円) 2025年度Q1 2026年度Q1 前年比
航空宇宙・防衛 売上 74.1 110.8 +49.6%
 Non-GAAP営業利益 4.5 13.7 +9.2
 (利益率) 6.1% 12.4% +6.2pt
海洋システム 売上 15.1 23.0 +52.3%
 Non-GAAP営業利益 △1.5 2.8 黒字転換
ネットワークインフラ 売上 31.2 31.4 +0.8%
 Non-GAAP営業利益 △0.0 △0.4
社会インフラ 合計 120.4 165.3 +37.3%
 Non-GAAP営業利益 3.0 16.1 +13.0
 (利益率) 2.5% 9.7% +7.2pt

社会インフラの増益130億円のうち、92億円が航空宇宙・防衛です。会社は「引き続き好調を維持し、大幅な増収増益」と書いています。

そして重要なのは、量だけでなく利益率も上がっていることです。6.1%→12.4%と、倍以上になりました。受注が増えて工場や人員の稼働が上がると、固定費が薄まって利益率が改善する——典型的な形です。

ここで前回の記事とつながります。富士通の国内受注は、分野別に次のようになっていました。

富士通 国内受注(前年同期比) 2026年度 1Q
国内 合計 110%
金融 91%
ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティ他 139%

富士通で受注139%、NECで売上+49.6%。1社だけなら個別の大型案件で説明できますが、2社に同時に現れているなら、需要そのものが動いていると考えるほうが自然です。

防衛関連の予算は複数年で執行されるため、この流れは短期では止まりません。ただし予算に依存する事業である以上、政策が変われば影響を受けます。民間需要とは別のリスクがあることも押さえておく必要があります。

②ITサービス国内 ― 売上+1.9%で、利益は134億円増えた

ITサービス(十億円) 2025年度Q1 2026年度Q1 前年比
国内 売上 468.4 477.2 +1.9%
 Non-GAAP営業利益 32.0 45.3 +13.4
 (利益率) 6.8% 9.5% +2.7pt
海外 売上 98.7 144.3 +46.2%
 Non-GAAP営業利益 8.9 12.5 +3.6
 (利益率) 9.0% 8.7% △0.3pt

国内は売上が1.9%しか伸びていないのに、利益は134億円増えています。成長ではなく、採算の改善だけで作った利益です。

その中身を、会社は2つに分けています。

ITサービス国内(十億円) 2025年度Q1 2026年度Q1 前年比
BluStellar 売上 124.7 166.1 +33.2%
 Non-GAAP営業利益 15.0 22.7 +7.6
 (利益率) 12.1% 13.7% +1.6pt
ベース事業 売上 343.7 311.1 △9.5%
 Non-GAAP営業利益 16.9 22.6 +5.7
 (利益率) 4.9% 7.3% +2.4pt
BluStellar売上比率 27% 35% +8pt

ベース事業は売上が9.5%減っているのに、利益は57億円増えています。会社の説明はこうです。

BluStellar:官公・金融マーケットへのシナリオ浸透拡大により増収増益
ベース事業BluStellarへのシフト加速により減収も、収益性改善などにより増益

「減収も、増益」。売上の大きい低採算の仕事を減らし、利益率の高い事業へ移している——意図した減収だということです。

前回の富士通も、同じテーマを別の言葉で説明していました。「人月型から提供価値ベースプライシングへ」——AIで工期が短くなると人月型では減収になるため、価格モデルを変えるという話です。

2社が同時に「売上より利益率」へ舵を切っています。システム開発という業種で、売上規模を追う時代が終わりつつあることの表れかもしれません。

なお受注動向(実質ベース=大型案件・特需・低収益事業終息の影響を除く)は、ITサービス国内が+3%。内訳はパブリック+3%、エンタープライズ+6%、アビーム+16%(二桁成長の強い需要が継続)です。

③CSGの新規連結 ― 買収を除いた数字も会社が出している

売上収益が14.5%も伸びた背景には、大型買収があります。

  • 2026年5月よりCSG(CSG Systems International, Inc.)を新規連結
  • 短信の注記では「連結範囲の重要な変更:新規47社(CSG Systems International, Inc.他46社)」
  • その影響でITサービス海外の売上が+46.2%

ここでNECの開示が丁寧なのは、買収がなかった場合の数字も併記していることです。

プロフォーマベース(十億円) 2025年度Q1 2026年度Q1 前年比
売上収益 759.1 833.5 +9.8%
Non-GAAP営業利益 46.7 74.0 +27.4
(対売上比率) 6.1% 8.9% +2.7pt

※2025年4月1日よりCSGが連結されていたと仮定した数値

実績の+14.5%に対して、プロフォーマでは+9.8%。差の4.7ポイントが、買収による見かけの増収です。会社が自分でその線を引いている点は評価できます。

地域別の外部収益を見ると、この構造がさらにはっきりします。

地域別 外部収益(百万円) 前年Q1 今期Q1 増減
日本 563,993 598,125 +34,132
北米および中南米 21,547 53,645 +32,098(2.5倍)
ヨーロッパ、中東およびアフリカ 75,244 112,536 +37,292(+49.6%)
中国・東アジアおよびアジアパシフィック 54,874 55,468 +594

増収1,041億円のうち、694億円(67%)が海外です。

ここも富士通と対照的です。富士通の通期計画は国内サービス+10.6%に対し海外△11.3%で、成長が国内に寄っていました。NECは買収で海外を取りにいっています。同じ業種の2社が、逆方向を向いていることになります。

④通期は上方修正 ― ただしCSGの影響は「まだ入れていない」

単位:十億円 2025年度 実績 4月28日 予想 修正額 7月29日 予想
売上収益 3,582.7 3,500.0 +40.0 3,540.0
Non-GAAP営業利益 397.2 420.0 +10.0 430.0
(対売上比率) 11.1% 12.0% 12.1%
Non-GAAP当期利益 279.8 285.0 +5.0 290.0
フリー・キャッシュ・フロー 472.1 300.0 ±0 300.0
1株当たり配当金 38円 40円 ±0 40円

上方修正の理由は「1Qの業績進捗を考慮し」。そして注記に、見逃せない一文があります。

「売上400億円、Non-GAAP営業利益100億円を上方修正
CSG新規連結による影響は反映せず。上期決算発表時に織り込み予定)」

今回の上方修正には、買収したCSGの寄与が入っていません。第2四半期の決算で改めて織り込むとしています。つまり、この予想には上振れの余地が残されています。

セグメント別の通期計画も見ておきます。

通期計画(十億円) 2025年度実績 2026年度予想 前年比
ITサービス 売上 2,736.1 2,625.0 △4.1%
 Non-GAAP営業利益 359.3 381.0 +6.0%
 (利益率) 13.1% 14.5% +1.4pt
社会インフラ 売上 708.4 780.0 +10.1%
 Non-GAAP営業利益 53.4 99.0 +85.4%
 (利益率) 7.5% 12.7% +5.2pt
合計 売上 3,582.7 3,540.0 △1.2%

通期は売上が1.2%減る計画で、Non-GAAP営業利益は8.2%増える計画です。ITサービスにいたっては売上△4.1%で利益+6.0%。第1四半期で見た「減収増益」の構図を、年間でも続けるつもりだということです。

そして社会インフラの利益は534億円→990億円と、通期で85.4%増える計画です。防衛が主役の年になります。

この決算から持ち帰る5つのチェック

  • ① 独自指標の定義を読む。NECのNon-GAAPは株式報酬まで控除しています。富士通・日本製鉄・中外製薬とは除いているものが違います。
  • ② 買収があった四半期は、買収抜きの数字を探す。NECはプロフォーマで+9.8%(実績+14.5%)と併記しています。
  • ③ 減収でも増益なら、意図を確かめる。ベース事業は売上△9.5%で利益+57億円。会社は「BluStellarへのシフト加速により減収」と説明しています。
  • ④ 同業他社と突き合わせる。航空宇宙・防衛+49.6%は、富士通のナショナルセキュリティ受注139%と符合します。
  • ⑤ 上方修正に何が入っていないかを見る。今回の修正にはCSGの寄与が反映されていません(上期決算で織り込み予定)。

まとめ

2027年3月期第1四半期のNECは、防衛が量と利益率の両方で伸び、国内ITサービスが売上を落としながら採算を上げ、買収で海外を取りにいった決算でした。

見出しになりやすい事実 一次資料で確かめた実態
最終利益+157.4%の大幅増益 事実。Non-GAAPでも+173.2%で、富士通のように符号は逆転しない
売上+14.5%の増収 CSGの新規連結を除くと+9.8%(会社がプロフォーマで開示)
ITサービスが好調 国内は売上+1.9%。利益+134億円は採算改善によるもの
DXで成長している BluStellarは+33.2%だが、ベース事業は△9.5%の意図した減収
社会インフラが伸びた 増益130億円のうち92億円が航空宇宙・防衛(売上+49.6%・利益率6.1%→12.4%)
通期を上方修正 CSGの影響は未反映。売上は通期△1.2%の減収計画で利益+8.2%

この会社で次に確かめるべきことは3つです。

  • 第2四半期でCSGがどう織り込まれるか。会社は「上期決算発表時に織り込み予定」としています
  • 航空宇宙・防衛の利益率12.4%が続くか。通期の社会インフラは利益+85.4%の計画で、達成の鍵はここです
  • ベース事業の減収が、どこで止まるか。△9.5%は意図したものですが、BluStellarの伸びが追いつかなければ全体が縮みます

国内のシステム会社2社が、そろって「売上より利益率」へ動き、そろって防衛で稼いでいる。この2つは、次の決算でも確かめる価値のある論点です。

本記事は2026年7月29日公表の決算短信および2026年度第1四半期決算概要など、NECが公開している一次資料に基づいて作成しています。同社は2026年度第1四半期より報告セグメントを変更しており(国内通信事業者向けITサービスおよびNetcracker Technology Corporationを「社会インフラ事業」から「ITサービス事業」へ)、前年同期の数値は組み替え後のものです。また全社合計・報告セグメントともに開示指標を「Non-GAAP営業利益」のみに変更しています。情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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