Netflix(NFLX)の長期株式分析|10年分の財務・株価データで見る今後の展望

【2025年版】Netflix(NFLX)の長期株式分析|10年分の財務・株価データで見る今後の展望

【2025年版】Netflix(NFLX)の長期株式分析|10年分の財務・株価データで見る今後の展望

Netflix(ネットフリックス、ティッカー:NFLX)は、世界中で動画ストリーミングサービスを提供しているリーディングカンパニーとして知られています。初心者の方にとっては、「映像配信の会社」というイメージが強いかもしれませんが、同社は大きく分けて3つの事業を手掛けています。第一に「ストリーミング(国内向け)事業」、第二に「ストリーミング(国際向け)事業」、そして昔ながらのDVDを郵送で貸し出す「DVDレンタル事業」です。もっとも、近年はDVDレンタルは縮小傾向にあり、メインは世界中の会員向けに配信を行う動画ストリーミング事業と、そこから派生したオリジナルコンテンツ製作が中心となっています。

こうした映像コンテンツを軸としたビジネス展開に加え、オリジナルドラマ・映画の制作に積極的に投資し、多種多様なジャンルの作品を拡充してきたNetflixは、新興企業から大型テック企業へと成長を遂げました。株価も過去10年で大きく変動してきましたが、特にサブスクリプションモデルが広く認知された2010年代後半から2020年代にかけて、一気に投資家の注目を集めました。

本記事では、Netflixの直近10年間(2013年~2022年)の財務データや株価をチャート化し、初心者でも理解しやすい言葉を使って丁寧に解説します。さらに、売上高・純利益、営業キャッシュフロー(CF)や投資CFの推移、さらには主要セグメント別の業績推移、バリュエーション(株価の理論値比較)などを幅広くカバーします。投資判断にはリスクや今後の展望も大切なポイントですので、それらを含め総合的に整理した内容をお伝えします。ぜひ最後までご覧いただき、投資アイデアや知識の一助となれば幸いです。

ビジネスモデル概観

Netflixのビジネスモデルを一言で表すなら、「サブスクリプション型動画配信サービスの世界的大手企業」です。月額料金を払うことで、映画やドラマ、ドキュメンタリー、アニメなど多数の作品をインターネット経由で視聴できる形態をとっています。いわば「巨大な映像ライブラリを会員と共有する図書館」のようなイメージです。さらに、近年では独自の映像コンテンツを自社で制作し、それを自社サービスで独占配信することで差別化を図っています。

こうしたモデルの肝は、「継続利用を促す魅力あるコンテンツの確保」と「サービスの使いやすさ」にあります。Netflixは最初、郵送DVDレンタルを行っていた会社でしたが、インターネット時代の到来とともにストリーミング配信へと大きく舵を切りました。ストリーミングによって、ユーザーは場所を選ばずデバイス1つで好きな映像を観ることができます。まるで巨大な映画館をいつでもポケットに入れて持ち歩いているようなイメージです。

さらに、Netflixは全世界でユーザーを獲得するため、多言語対応や各地域ごとの独自コンテンツの投入にも力を入れています。韓国ドラマの制作や日本アニメとの提携などもその好例です。全世界的なユーザーベースを持つことで、地域ごとの景気変動などにもある程度分散効果が働き、売上全体が大きく伸びやすいという特徴もあります。一方で、その動画コンテンツを制作・ライセンス取得するための費用は莫大であり、キャッシュフロー管理や資金調達が重要となるビジネスでもあるのです。

今日では、「国内向けストリーミング(主に米国)」「国際向けストリーミング」「DVDレンタルサービス」の3つを主要なセグメントとして報告しています。DVD部門は今後さらに縮小が見込まれますが、一部のファンやネット環境が整わない地域向けに一定の需要が残されています。売上規模としては圧倒的にストリーミング部門が中心であり、そのコンテンツ拡充への投資が同社の成長を支えるキーとなっています。

売上高・純利益の推移

次に、Netflixの直近10年間(2013~2022年)にわたる売上高(Revenue)と純利益(Net Income)の推移を見ていきましょう。世界的なストリーミング需要の拡大やオリジナルコンテンツ制作の成功に伴って、同社の売上高は継続的に伸長し、純利益も徐々に増加しているのが特徴です。特に、2017年以降は急速に純利益が伸びている点に注目が集まります。

上図は、赤い折れ線が売上高の推移(単位:億ドル)、青い折れ線が純利益の推移(単位:億ドル)を示しています。2013年から2016年にかけては純利益がそれほど伸びない時期がありましたが、2017年以降、コンテンツ投資の成果と世界的な会員数拡大に伴い、収益性が急激に高まったことが見てとれます。特に2020年から2021年にかけて、コロナ禍による巣ごもり需要が後押しとなり、売上および純利益ともに大きく成長しました。

この売上高・純利益の拡大要因は、主に2つの側面が考えられます。1つは新規の加入者数増加、もう1つは既存会員の継続利用による売上積み上げです。Netflixは世界各国にローカライズされたコンテンツや人気の高いオリジナルシリーズを投入し続けることで、加入者ベースを拡大してきました。また、年に数度実施される月額料金の改定によって、ARPU(1ユーザーあたりの平均売上)を着実に引き上げる戦略も功を奏しています。

一方で、純利益が売上に比してやや抑えられている背景には、コンテンツ制作やライセンス取得にかかるコストが大きいことが挙げられます。Netflixは「魅力ある作品を迅速に提供するための投資」を惜しまない方針であり、その結果、売上成長の初期段階では利益率が限定的になる時期が続きました。しかし、ユーザーベースが拡大した近年では規模の経済が働きはじめ、利益率も上昇傾向を示しています。

営業CF・投資CFの推移

売上高と純利益の動向を把握したところで、次にキャッシュフローに注目してみましょう。キャッシュフローは、「実際に会社に現金がどれだけ入ってきて、どれだけ出ていったか」を示す重要な指標です。なかでも営業キャッシュフロー(営業CF)は本業の活動から得られる現金収支を、投資キャッシュフロー(投資CF)は設備投資やコンテンツ投資などに使われる現金収支を示します。

上図の赤い折れ線が営業キャッシュフロー、青い折れ線が投資キャッシュフローです(単位:億ドル)。Netflixの場合、コンテンツ制作やライセンス取得のために大きな投資が発生しがちで、投資CFが大きくマイナスになる傾向があります。特に2018年から2020年ごろにかけては大型投資を積み上げた結果、投資CFが一時的に大きく落ち込んでいるのがわかります。

営業CFが継続的にプラスであることは、Netflixが本業によってキャッシュをきちんと稼げていることを示しています。2013年~2016年あたりは営業CFがそれほど大きくなく、「売上成長はしているがキャッシュリターンとしてはまだ限定的」という状況でした。しかし2017年以降、規模拡大と費用管理の最適化が進んだことで、営業CFはプラス幅を大きく伸ばしています。

投資CFが大きくマイナスである点は、Netflixならではのビジネスモデルを反映しています。ストリーミング業界はコンテンツが命といえるため、映画やドラマの版権取得、さらにオリジナル作品制作のコストは避けては通れません。そのため投資CFは常にマイナス圏を推移しがちですが、これは「将来的なユーザーベース拡大のための投資」と位置づけることができます。

とはいえ、コンテンツ投資への依存度が高いビジネスでは、万一作品が不発に終われば投資が回収できないリスクも内在しています。近年のNetflixはデータ分析を駆使し、視聴者の嗜好を反映した作品選定・制作を実施しているとされますが、競合も増えつつあるなかで引き続き高水準の投資が必要となることは間違いありません。ここで稼いだ営業CFを今後もコンテンツ投資に回していく形が続くでしょう。

セグメント別の推移

Netflixは主として「国内向けストリーミング(米国内)」「国際向けストリーミング」「DVDレンタル」の3つのセグメントに分けて業績を報告しています。ここでは特に売上と営業利益の面で、直近10年間の推移をチャート化して見てみましょう。国内向けストリーミングは米国内ユーザーへのサービス提供、国際向けストリーミングはそれ以外の国のユーザーへのサービス提供、DVDレンタルは従来型の郵送サービスを指します。

赤い折れ線が「国内向けストリーミング」、青い折れ線が「国際向けストリーミング」、緑の折れ線が「DVDレンタル」の売上推移を示しています(単位:億ドル)。2013年時点では国内向けストリーミングが売上の大半を占めていましたが、2016年前後から国際向けが急速に増加し、2022年までに2つの規模差はかなり縮まっています。一方、DVDレンタルは緩やかに縮小傾向を辿っています。
こちらはセグメントごとの営業利益推移(単位:億ドル)です。国内向けストリーミングは安定的に利益を出し続けているのに対し、国際向けストリーミングは投資フェーズが長かったため2015年頃までは赤字が続きました。しかし2017年以降、契約者数の増加と月額料金の値上げ効果で大きく黒字化し、現在では国内向けに匹敵する収益源となっています。DVDレンタルは利益率こそ比較的高いものの、規模自体が縮小していることから将来的には重要度が下がるとみられています。

国内向けストリーミングと国際向けストリーミングを比べると、国際向けのほうがビジネス成長の伸び代は大きいと言われています。米国市場はすでに成熟段階にあり、Disney+ や Amazon Prime Video、HBO Max など強力な競合がひしめいているため、市場シェアを伸ばすのが難しい局面です。一方、国際市場は新たな加入者を獲得しやすい途上国を含み、さらなる拡張性が見込まれます。ただし国際的なコンテンツ開発や言語対応などへの投資も欠かせず、引き続きコスト負担は大きいでしょう。

DVDレンタルは、ネット環境が十分でない地域や固定ファン向けのニッチサービスとして残っています。Netflixのルーツとも言える事業ですが、売上全体に占める割合はどんどん低下しているのが現状です。将来的には完全にストリーミングに移行する可能性も指摘されています。

株価動向の要因分析

ここでは、直近10年間のNetflixの株価動向に影響を与えた主要な要因をいくつか取り上げてみましょう。株価は実体経済や企業業績だけでなく、外部環境や投資家のセンチメントなどさまざまな要素によって変動します。

まず大きな要因として挙げられるのが、動画ストリーミング市場の爆発的拡大です。2010年代前半はまだテレビ放送やケーブルテレビが主流の地域が多かったのですが、高速インターネットやスマホ、スマートTVなどの普及に伴い、一気にストリーミングサービスが浸透していきました。そのパイオニアとしてNetflixは投資家からの期待を集め、株価は大きく上昇するフェーズを迎えました。

次に、オリジナルコンテンツの成功も大きな株価上昇要因です。例えば「ハウス・オブ・カード 野望の階段」や「ストレンジャー・シングス」など、Netflixオリジナル作品のヒットによって会員数が増え、業績面だけでなくブランドイメージの向上につながりました。投資家は「Netflixがコンテンツ制作の覇権を握るのではないか」という期待を抱き、株価は急騰した局面があります。

反対に、株価が下落する要因としては競合サービスの台頭が挙げられます。2019年にDisney+ や Apple TV+が本格始動し、HBO Maxや Peacock なども参入したことで「ストリーミング戦国時代」と言われるほど業界の競争は激化しました。さらにコンテンツ費用の増大による利益率の悪化への懸念や、世界経済の変調、為替の影響なども株価の下ブレ要因となってきました。2022年以降は急速な利上げとハイテク株全体の下落が重なり、Netflixに限らず多くのグロース銘柄が株価調整局面を迎えています。

バリュエーション分析

株式投資においては、企業価値(株価)が理論上の妥当な水準と比べて割高か割安かを考える作業が重要です。初心者向けによく用いられる指標としてPER(株価収益率)がありますが、ここでは簡易的な目安として「EPS(1株当たり利益)×15倍」を理論株価と仮定し、実際の株価推移と比較してみましょう。

Netflixの直近10年間(2013~2022年)におけるEPSは、純利益を発行済株式数で割り算することで求められます。純利益が増加した年度はEPSも伸び、結果として理論株価も高く算出される傾向にあります。一方で、実際の市場株価は投資家心理や成長期待を反映し、理論値を上回ったり下回ったりを繰り返します。以下のグラフでは、赤い折れ線で「実際の株価(年末時点を想定)」、青い折れ線で「EPS×15倍」の理論株価をプロットしています。

2015年や2017年など、実際の株価が理論株価を大きく上回っている局面があります。これは市場の成長期待や人気化によるプレミアムが乗っていると考えられます。逆に2022年には急落によって実際株価が理論株価を下回った時期も存在し、投資家のセンチメントが変化することで株価の振れ幅が大きいことがわかります。PERはあくまで一つの目安に過ぎませんが、「企業の実力以上に買われすぎていないか」「不当に売られすぎていないか」を知る指標として有用です。

Netflixの場合、特にコンテンツ投資による将来の成長期待が株価に反映されやすい特徴があります。PER水準だけをみると割高に映る時期が多いのですが、それは長期的な会員数増加や国際拡大を織り込んだ上昇とも言えます。一方で、同業他社との競争にさらされる中で、万一の失敗が起これば株価が大きく急落するリスクも常に抱えています。

リスクと注意点

ここまでNetflixの成長性やビジネスモデルを肯定的に評価する部分が目立ちましたが、投資にあたってリスクを正しく理解することも重要です。初心者の方に向けて、具体的に考えられるリスクシナリオをいくつか挙げてみます。

第一に競合リスクです。Disney+やAmazon Prime Videoなど、資金力とブランド力を兼ね備えたプレイヤーが激しく争うストリーミング業界において、コンテンツ獲得競争は熾烈を極めています。Netflixは大規模投資を続けることでサービス品質を維持してきましたが、競合他社も同等以上の投資を行っており、いつまでも独走できる保証はありません。

第二にコンテンツリスクです。巨額の投資を行っても、ヒット作が生まれなければ費用を回収できずに赤字が膨らむ可能性があります。視聴者の嗜好は予測が難しく、オリジナル作品が期待外れに終われば、Netflixのブランドイメージにも影響が及びかねません。また、版権契約切れによって人気タイトルが競合サービスに渡るリスクも存在します。

第三に経済リスクや為替リスクです。国際事業が拡大しているNetflixでは、海外の景気後退や為替変動が業績に直接影響を与えます。さらに、投資家のリスク許容度が下がる局面(例えば金融引き締めや金利上昇)では、成長企業の株価が大きく下振れすることがある点にも注意が必要です。

こうしたリスクを踏まえても、長期的に高い成長が期待できるという見方が市場には根強く存在します。しかしリスクとリターンは表裏一体であり、ポートフォリオの中でどれくらいの割合をNetflix株に配分するかは、各投資家のリスク許容度や投資目的に依存すると言えるでしょう。

今後の展望

Netflixが今後さらなる成長を実現するためには、新規会員数の拡大と既存会員の継続率向上が引き続き主要なポイントとなります。新興国市場の開拓はまだ余地が大きく、特にアジア地域での有望なユーザーベース拡充が期待されています。一方、月額料金の値上げによるARPU向上も継続的に模索していくでしょう。

また、競合他社との差別化として重要なのがコンテンツの質です。Netflixはこれまでに多くのオリジナル作品を送り出し、それがヒットに繋がれば会員数を大幅に伸ばしてきました。今後も積極的にオリジナル作品を投入し、世界各国の視聴者ニーズに対応する姿勢を続けることが予想されます。アニメ、ドラマ、映画、ドキュメンタリーなど、ジャンルの多彩さも強みとなるでしょう。

テクノロジー面でも、UI/UXの改善やパーソナライズ機能の強化、モバイル向けの新機能追加など、利用体験を向上させる取り組みが進むと考えられます。動画配信だけに留まらず、ゲームや関連グッズ展開など新たな事業領域を検討しているとの報道もあり、ブランドを軸とした多角化の可能性もあります。

ただし、ストリーミング業界全体が成熟に向かう中で、コンテンツの独占や差別化が難しくなるという懸念もつきまといます。常に「次の大ヒット作品」を生み出し続けなければ、会員が他社サービスに流れてしまうおそれがあります。そのため、今後も巨額の投資とデータ分析による作品開発が不可欠となり、その投資が実を結ぶかどうかが企業としての命運を左右するといえるでしょう。

まとめ+免責事項

Netflix(NFLX)は、動画ストリーミングサービスを世界規模で展開する代表的な企業として、この10年間で大きな成長を遂げました。売上高や純利益、営業キャッシュフローが拡大し、株価も一時期は理論株価を大きく上回るプレミアムがつくほど投資家からの人気を集めました。しかし、競合が激化するストリーミング市場で常にトップを走り続けるには、コンテンツ投資や技術革新への継続的な努力が求められます。

本記事では、ビジネスモデルから財務指標、株価動向の要因、バリュエーション指標、リスク、そして将来展望に至るまで、初めてNetflixへの投資を検討している方にもわかりやすい形で説明してきました。投資判断には複数の情報源を参照し、短期的な相場の変動だけでなく、長期的な企業価値の推移を総合的に検討することが大切です。

なお、本記事は執筆時点で得られる公表データや一般的な分析手法を用いてまとめたものであり、いかなる投資判断を推奨するものでもありません。株式投資にはリスクが伴い、最終的な投資決定はご自身の責任と判断で行ってください。また、本記事の内容は将来の業績や株価の動向を保証するものではありません。投資にあたっては最新の情報を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをおすすめいたします。

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