米国株の代表的な銘柄であるウォルト・ディズニー(Walt Disney:DIS)について、これまでの業績と株価の推移を振り返り、今後の業績、株価の予想(見通し)をしたいと思います。
ウォルト・ディズニーの概要
ウォルト・ディズニー(Walt Disney)はミッキーなどのキャラクターで知られた米国発の総合娯楽産業の最大手です。創業は1923年と古く、本社は米国のカリフォルニア州にあります。日本でもオリエンタルランドが経営する東京ディズニーランドが有名ですね。オリエンタルランドは米国のウォルト・ディズニー本社にライセンス料を払っています。
ABCなどのTVネットワーク放送事業、ESPNのスポーツ放送、ディズニーリゾートなどのテーマパーク、映画事業、ゲーム事業など幅広く事業展開をしています。その中でも中心的なキャクターがミッキーで、ウォルトディズニーのブランド力を高めています。
ウォルト・ディズニー(Walt Disney)の売上高、EBITDA、純利益の推移
まず下図で、損益計算書の主要項目であるウォルト・ディズニー(Walt Disney)の売上高、EBITDA、純利益の推移を見てみましょう。
上の図で青色がウォルトディズニーの売上高で、赤色がEBITDAで黄色が純利益の推移です。この30年間もの長期の間、ウォルトディズニーの売上高は順調に伸びていますね。
ウォルト・ディズニー(Walt Disney)のキャラクターは世界的なブランドになっており、ミッキーなどに並び立つ世界的キャラクターはありません。ウォルトディズニーはこの強力なディズニーブランドでこの30年間世界でビジネスを拡大してきました。
上の図で、売上高を除いて、EBITDAと純利益だけを表示させたものが以下の図です。
ウォルトディズニーのEBITDAと純利益の両方ともにこの三十年間、売上高ほどではないですが順調に伸びていますね。
大雑把にいって、EBITDAは営業キャッシュフローと同じもので、純利益に減価償却費が乗っかったものと考えるとわかりやすいですね。もちろんこれは正確さに欠けるものですが、初学者が会計の大雑把なイメージを掴むには良いと思います。
ウォルト・ディズニー(Walt Disney)の場合も純利益よりもEBITDAの方が大きく、順調に減価償却費をこなしてしっかり黒字の純利益を残しています。
ウォルトディズニーの安定的な経営が印象的ですね。
一方、2000年のITバブルの崩壊、2008年のリーマンショックを発端とする世界大不況のとき、上図のウォルトディズニーのEBITDAと純利益の推移をみると、少し利益を減らしており、多少は景気循環の影響を受ける業界と思います。
他の業界が不況になると、世帯収入が減り家族でディズニーにいったり、子供にディズニーに行く金を渡す金額が小さくなるなどの影響で値上げができなかったり、取引先から仕入れる原材料の原価が上がることが考えられます。
ただ、ウォルト・ディズニー(Walt Disney)は、売上高だけをみると不況の影響はあまり受けていないので、ディフェンシブ株と景気循環株の中間の位置する株と考えればよいでしょう。
ウォルトディズニーの営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローの推移
下図はウォルトディズニーの一株あたりの営業キャッシュフロー(青色)とフリーキャッシュフロー(赤色)です。
上図をみると、ウォルトディズニーの営業キャッシュフローもフリーキャッシュフローも右肩あがりに順調に伸びています。
一般的には、フリーキャッシュフローは営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いたものです。投資が膨らむと、営業キャッシュフローがプラスでもフリーキャッシュフローがマイナスになります。
ウォルトディズニーの場合は、営業キャッシュフローも投資キャッシュフローもパラレルに伸びていますので、営業キャッシュフローの範囲内で無理なく適切な額の投資をしていることがわかります。
ウォルトディズニーの総資産、流動資産、負債、自己資本の推移
次の図はウォルトディズニーの総資産(青色)、流動資産(赤色)、負債(黄色)、自己資本(水色)の推移です。
ウォルトディズニーの資産面の各項目も事業の拡大とともに少しづつ拡大しています。
少し気になるのが流動資産の比率が小さいことです。ウォルトディズニーは、パーク事業や映像配信などの設備が多く、固定資産が大きくなっているのが流動資産が小さい原因です。基本的にディズニーのようなハコモノの娯楽産業は流動資産の比率が小さくなるのは仕方なく特に問題ではないでしょう。
ウォルトディズニーのセグメント別営業利益
ウォルトディズニーには主に次の4つのセグメントがあります。
⑴Media Networks(メディア事業):全米ABCテレビネットワーク、ESPNスポーツ放送、Huluにも出資
⑵parks and Resorts:米国カルフォルニアや東京、上海など世界中にあるディズニーリゾート
⑶Studio entertainment:世界中の映画館やテレビ放送されるウォルトディズニーやピクサーなどのアニメ映画(動画)事業
⑷Consumer products & Interactive Media:世界中のディズニーストアなどで販売されているディズニ関連のグッズやオンラインビデオなどの販売事業
このようにウォルト・ディズニー(Walt Disney)には4つのセグメントがありますが、それそれのセグメント別の利益を見てみましょう。次の表はウォルトディズニーのセグメント別の営業利益を表します。(2015年から2017年まで)
(ウォルトディズニーの2017年の年間報告書からの抜粋です。)
上の表を見ても分かる通り、ウォルトディズニーで最も利益を出しているのがABCのTVネットワークなどのメディア事業です。次がディズニーランドなどのパーク・リゾート事業ですね。3番目がアニメ映画事業で、4番目がグッズ事業です。
2番目のパーク・リゾート事業と、3番目のアニメ映画などの事業はディズニーのキャクターを世界中に宣伝してブランド化をしている宣伝塔とも言えます。このディズニーのパークやアニメとの相乗効果で、この企業の最大の利益をもたらしているメディア事業もうまくいっていると考えられます。
ウォルトディズニーの地域別の営業利益
次の図がウォルト・ディズニー(Walt Disney)の地域別の営業利益の表です。
上の表をみると北米がやはりダントツで営業利益を上げていて、全体の六割以上利益を上げています。米国以外の国では、日本も含めていわゆるライセンス料によってウォルトディズニーは利益を得ています。
日本では、オリエンタルランド社が東京ディズニーを経営していますが、得た利益の一部を米国のウォルト・ディズニー(Walt Disney)本社にライセンス料としての払っています。
ウォルトディズニーのPL,BS,株価のバランスとそれに伴う投資指標
さて、ウォルト・ディズニー(Walt Disney)の基本的なファンダメンタルの指標を見てみたいと思います。
ウェルトディズニーを3つの側面(2017年9月期)から見てみたいと思います。ここで3つの側面とは、PL面(損益計算書)、BS(貸借対照表)、時価総額です。
(1)BS(貸借対照表)
総資産 95BD、 自己資本 41BD
(2)PL(損益計算書)
売上高 55BD、 純利益 8.9BD (来期予想10.6BD)
(3)時価総額 155BD (2018年3月時)
(ここでBDは10億ドルを表します。およそ1BDは1000億円です。)
また、上記の数字から、投資に重要な指標を計算すると以下の通りになります。
自己資本比率:43%
売上高純利益率:16%
ROA:9.3%、
ROE:21%
PER:17倍
PBR:1.6倍
ウォルト・ディズニー(Walt Disney)の売上高純利益率、ROA、ROEは米国の優良企業らしく非常に良い水準です。PERやPBRも高くはありません。
ウォルト・ディズニー(Walt Disney)の景気循環面・成長面の分析。
ウォルトディズニーは、先ほども分析しましたが、景気循環株かデフェンシブ株のどちらかと言えば、多少景気循環的な要素がある株と思われます。テレビネットワーク事業などは景気が悪くなっても解約が相次ぐということはないでしょうが、パーク事業などは景気の悪化で客足が遠のいたり値上げをするのが難しくなると考えられます。
また、ウォルトディズニーが成長・成熟・衰退のどの段階にいるかを考えてみましょう。30年以上にわたって世界で愛されてきたディズニーのブランドは非常に強く、業績、株価もともに現在も成長し続けています。ミッキーをはじめとするキャラクターは人種や地域を問わずに人気です。
今後も新興国を中心に世界の人口は増え続けますので、ウォルトディズニーの成長はまだまだ続くと考えられます。
ウォルト・ディズニー(Walt Disney)の株価と理論株価
下の図はウォルトディズニーの株価(緑色)と理論株価(青色)の推移です。(理論株価は一株あたりの純利益の15倍で計算されています。)
ウォルト・ディズニー(Walt Disney)の場合は株価と理論株価がほとんど乖離することなく推移しています。そして、株価も理論株価も力強く右肩あがりに上昇していますね。
ウォルトディズニーの株価は景気の循環で多少上下するとは言え、一貫して右肩上がりで上昇しています。景気の悪化などで大きく株価が下がったところで、買い場を探したいところですが、そのような場面はなかなか来ないかもしれません。
ウォルトディズニーへの投資戦略としては、多少株価が緩んだところで少しづつ押し目買いをしていくのが良いと思われます。