知っているつもりの日経平均株価のファンダメンタルズ指標(PER,PBR)を解説

テレビや新聞では日経平均株価やTOPIXの数値、そしてチャートを用いて直近の株価の動きが示されます。そして株価が大きく下落する局面では、PERやPBRの指標から「いまの日経平均株価は割安な水準にあります」といった説明がなされることがあります。しかしこれらの説明は本当に正しいのでしょうか。少し詳しく確認していきます。

「日経平均株価」「TOPIX」「PER」「PBR」といった用語は、投資に興味があったりすでに投資の世界に足を踏み入れている方であれば、よく耳にする用語だと思います。今回はこれらの用語を、日経の指数公式サイトである「日経平均プロフィル」を確認しながら少し詳しく解説していきます。この日経平均プロフィルでは、日経平均株価をはじめとした日本経済新聞社が算出、公表する指数に関する情報を提供してくれています。

さっそく日経平均プロフィルのページで「日経平均株価」という用語を確認してみましょう。「日経平均株価とは、日本経済新聞社が算出する東京証券取引所市場第一部に上場している225銘柄の平均株価指数です。日経225ともいいます。」とあります。式で表すなら「225銘柄の株価の合計/225」となります。実際には株式併合や銘柄入替にともない除数で割って算出し、単純な平均とも違うことから指数ベースが使われます。ここで重要なことは、日経平均株価は225社による平均が計算の基本なのだという点です。そのため日経平均株価は、株価の数字が大きないわゆる値がさ株の影響が強くなります。ファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、KDDIなどが日経平均株価に影響の強い個別銘柄です。日経平均株価への寄与度の大きな銘柄と呼ばれます。

次に、東京証券取引所の運営を行っている日本取引所グループのホームページでTOPIXの計算式を確認してみました。TOPIXは東証株価指数ともいい、東京証券取引所が算出している指数です。昭和43年(1968年)1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化しています。「算出時点の構成銘柄の時価総額/基準時価総額×100」と計算されますが、もう少し詳しく説明すると、TOPIXでは銘柄の株価変化率を計算し時価総額のシェアをかけたものを合計します。重要な点は時価総額によって計算されている点で、そのため時価総額の大きな銘柄の影響が強くなります。

日経平均株価が平均を用いていますので、株式時価総額の割に株価の数値が大きな銘柄があると時価総額以上の影響を受けてしまいます。その代表銘柄がユニクロなどを経営するファーストリテイリングです。時価総額ベースでは、ファーストリテイリングは東京証券取引所に上場している銘柄のなかで10位にも入っていません。しかし日経平均株価の構成率でみれば8%以上あり最も影響力のある銘柄です。

逆に時価総額の割に株価の数値が大きくはない銘柄は、時価総額の大きさほど日経平均株価には影響しないことになります。トヨタ自動車の時価総額はTOPIXのなかで最も大きいですが、日経平均株価の構成率でみれば10位にも入っていません。例えばある日、トヨタ自動車をはじめ多くの銘柄の株価が上昇し多くの人の含み益が増加したとします。しかしファーストリテイリングの株価が大きく下落することで、この日の日経平均株価はマイナスになることはあり得るのです。

このように、日経平均株価は株価の高い寄与度の大きな銘柄の影響が大きいため、投資家の実感と異なることがあるのです。そして日経平均株価よりも時価総額ベースのTOPIXが実態に近いと言われるのです。なお最新の日経平均株価へのウェートは、日経平均プロフィルにて確認することができます。

ここで、日経平均に採用されている225銘柄だけに絞ってみても同じように、加重平均を用いて算出するか単純平均を用いて算出するのかによって二つにわけた上で株価水準を考えてみます。

「PER=株価/1株当たり利益」
「PBR=株価/1株当たり純資産」

と算出します。PERやPBRは株価の割安/割高を判定する代表的な指標です。これを応用してPERやPBRを日経平均のような株価指数についても計算することができます。ただし、日経平均株価のPERやPBRといった株価の水準を示す指標が、225銘柄の加重平均を用いて考えるのか、225銘柄の平均を用いて考えるのかによって違った数字になるのでした。よってPERもPBRも加重平均と指数ベースのものと用意すると、以下の4つの計算式となります。

(加重平均) PER=時価総額合計/予想利益合計
(指数ベース) PER=日経平均/日経平均EPS
(加重平均) PBR=時価総額合計/自己資本合計
(指数ベース) PBR=日経平均/日経平均BPS
※正確な計算式は日経平均プロフィルのユーザーズガイドをご覧ください。

ここでも日経平均株価と加重平均であるTOPIXの違いと同じで、日経平均という指数ベースで考えると値がさ株の影響が大きくなります。

そして、加重平均、指数ベースによるそれぞれのPERやPBRも、日本経済新聞社の日経平均プロフィルにて確認することができます。すると、(2020年3月27日大引けの数値によると)加重平均のPERは12.76倍なのに対して、指数ベースのPERは16.02倍です。そして加重平均のPBRは0.96倍なのに対して、指数ベースのPBRは1.43倍です。加重平均ベースのPERやPBRと、指数ベースでのPERやPBRはだいぶ違った印象に見えます。こうして考えると、例えば日経朝刊の日経平均株価では加重平均が用いられていますが、テレビや新聞などで解説されている日経平均株価のPERやPBRが本当に割安な水準とも言えないのかもしれません。

このようにテレビや新聞の解説を鵜呑みにするのではなく、日経平均株価とTOPIXの両方を確認します。日経平均でも加重ベースの指標だけでなく、指数平均ベースの指標も確認することをお勧めします。

もう一点注意していただきたいのは、今回は日経新聞社の日経平均プロフィルのデータを参照にしました。ここでは日経新聞社の予測に基づく利益によってPERを計算しています。しかし上場している各会社が出してくる予想に基づいたEPSは、別の数字になるかもしれません。そして今後の経済状況によっても、利益は大きく変わる可能性があります。
ファンダメンタルに基づく投資は、一つの数字をみても簡単に利益がでるものではありません。しかしできるだけ色々な角度からのデータを確認することで、負けにくい株式投資へと一歩近づくことはできると思います。

参考URL
日本取引所グループhttps://www.jpx.co.jp/
日経平均プロフィルhttps://indexes.nikkei.co.jp/nkave
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*本稿は協力執筆者による記事です。