九州電力(9508)はなぜPER5.2倍なのか|純利益1,664億円と自己資本比率15.5%、送配電が売上の42%になった20年
目次
この記事の要点
- 2024年の純利益は1,664億円で過去最高
- 送配電が売上の42%まで上がった(2024年)
- ICT事業は年率4.3%で成長
- 配当利回り3.8%は電力会社のなかでは高い水準
- PERは5倍台。ただし自己資本比率は15.5%と低く、倍率の低さはこれとセットで見る必要があります
1ビジネスモデルの分析
(スマートフォンの方は、画面を横にして再読み込みするとグラフが見やすくなります)
九州電力の事業は3本柱です。
発電・販売
売上の約60%を占める本業です。火力が中心ですが、再生可能エネルギーへ移行しつつあります。
送配電
収益の土台です。自由化後も地域独占が残っており、売上の約30%を占めます。
エネルギーソリューション
ICTを軸にした新規事業です。デジタルグリッドやHEMSが成長分野で、売上の約4%ですが伸びています。
九州電力は「エネルギープラットフォーマー」への転換を掲げています。従来の電力供給にとどまらず、洋上風力と水素・アンモニア混焼技術で次世代のエネルギーを担うという方針です。
2売上高・純利益の推移(2005〜2024年)
読み取れること
- 2024年の純利益1,664億円:燃料費調整制度と規制料金の改定が効いています
- 2009〜2013年の赤字期:原発の停止とLNG価格の高騰が重なった時期です
- 売上の伸びは年率2.3%
- 2022年以降の回復:2基の再稼働が収益の安定に寄与しています
利益を動かす4つの要因
- 燃料価格の変動(LNG・石炭)
- 原子力発電所の稼働状況
- 再生可能エネルギーの固定価格買取
- 規制料金の改定の可否
3キャッシュフロー分析(2007〜2024年)
営業CFの特徴
2024年は5,861億円で過去最高。燃料費調整の仕組みが主因です。
投資CFの傾向
再生可能エネルギーへの投資が続き、年間3,500億円規模で安定しています。
財務CFの転換
2020年以降は借入の純返済。財務体質は改善に向かっています。
フリーキャッシュフローは2024年に初めて2,000億円を超えました。株主還元と財務改善の両方に回せる余力が出てきた段階です。
4セグメント別の業績(2021〜2024年)
発電・販売
2023年の1,750億円をピークにやや低下。利益の振れが大きく、LNG価格が10%上がると営業利益が約150億円減ります。
送配電の伸び
2021〜2023年で276%の急拡大。会計の分離で数字が見えるようになったことも大きく、いまは売上全体の42%を占めます。
ICTソリューション
年率4.3%で着実に成長。スマートメーターの普及率は95%で、2030年に売上構成比10%を目指しています。
セグメントごとの方向
- 発電:石炭を段階的に縮小し、再エネと水素・アンモニア混焼へ
- 送配電:「デジタルグリッド」への投資を拡大(2025〜2030年で5,000億円を計画)
- ICT:HEMS(家庭のエネルギー管理)とVPP(仮想発電所)の基盤づくり
5バリュエーションの現在地
主要指標(2025年7月)
| 指標 | 九州電力 | 業種平均 |
|---|---|---|
| 株価 | 1,300円 | – |
| 予想PER | 5.2倍 | 9.8倍 |
| PBR | 0.65倍 | 0.92倍 |
| 配当利回り | 3.8% | 3.2% |
| 自己資本比率 | 15.5% | 18.1% |
この数字をどう読むか
- PER5.2倍が低いのには理由があります。電力会社の利益は燃料価格と規制料金で大きく振れ、1,664億円という過去最高の利益が続く前提ではありません。分母がピークのとき、PERはいちばん低く見えます
- PBR0.65倍も同様です。自己資本比率15.5%は業種平均を下回り、純資産そのものが薄いことを示します。「PBRが1倍を割っているから割安」とは言い切れません
- 配当利回り3.8%は電力会社としては高い水準ですが、原資は燃料価格に左右される利益です
- 成長の材料として会社が挙げているのは洋上風力と水素です。いずれも収益化はこれからです
6主なリスク
燃料価格の変動
LNG・石炭の高騰は利益を直接圧迫します。2022年の危機以降、ヘッジは強化されています。
原子力政策
玄海3・4号機の稼働をめぐる不確実性。停止した場合の代替燃料費が効きます。
規制の変更
送配電分離の政策が事業構造に影響する可能性があります。
競争の激化
新規参入は増えていますが、地域に密着したサービスが差別化になっています。
会社が挙げている対応策
- 燃料調達の多様化(LNGの長期契約への依存を下げる)
- 再エネ比率の引き上げ(2030年に50%を目標)
- 規制変更への早期の備え
- デジタル関連事業の拡大