九州電力(9508)はなぜPER5.2倍なのか|純利益1,664億円と自己資本比率15.5%、送配電が売上の42%になった20年

九州電力(9508)はなぜPER5.2倍なのか|純利益1,664億円と自己資本比率15.5%で読む20年

九州電力(9508)はなぜPER5.2倍なのか|純利益1,664億円と自己資本比率15.5%、送配電が売上の42%になった20年

公開:2025年7月8日 最終更新:2025年7月8日 読了目安:10分

この記事の要点

  • 2024年の純利益は1,664億円で過去最高
  • 送配電が売上の42%まで上がった(2024年)
  • ICT事業は年率4.3%で成長
  • 配当利回り3.8%は電力会社のなかでは高い水準
  • PERは5倍台。ただし自己資本比率は15.5%と低く、倍率の低さはこれとセットで見る必要があります

1ビジネスモデルの分析

(スマートフォンの方は、画面を横にして再読み込みするとグラフが見やすくなります)

九州電力の事業は3本柱です。

発電・販売

売上の約60%を占める本業です。火力が中心ですが、再生可能エネルギーへ移行しつつあります。

送配電

収益の土台です。自由化後も地域独占が残っており、売上の約30%を占めます。

エネルギーソリューション

ICTを軸にした新規事業です。デジタルグリッドやHEMSが成長分野で、売上の約4%ですが伸びています。

九州電力は「エネルギープラットフォーマー」への転換を掲げています。従来の電力供給にとどまらず、洋上風力水素・アンモニア混焼技術で次世代のエネルギーを担うという方針です。

2売上高・純利益の推移(2005〜2024年)

出典:EDINET(2005〜2024年度)

読み取れること

  • 2024年の純利益1,664億円:燃料費調整制度と規制料金の改定が効いています
  • 2009〜2013年の赤字期:原発の停止とLNG価格の高騰が重なった時期です
  • 売上の伸びは年率2.3%
  • 2022年以降の回復:2基の再稼働が収益の安定に寄与しています

利益を動かす4つの要因

  1. 燃料価格の変動(LNG・石炭)
  2. 原子力発電所の稼働状況
  3. 再生可能エネルギーの固定価格買取
  4. 規制料金の改定の可否

3キャッシュフロー分析(2007〜2024年)

出典:IR BANK キャッシュフロー統計

営業CFの特徴

2024年は5,861億円で過去最高。燃料費調整の仕組みが主因です。

投資CFの傾向

再生可能エネルギーへの投資が続き、年間3,500億円規模で安定しています。

財務CFの転換

2020年以降は借入の純返済。財務体質は改善に向かっています。

フリーキャッシュフローは2024年に初めて2,000億円を超えました。株主還元と財務改善の両方に回せる余力が出てきた段階です。

4セグメント別の業績(2021〜2024年)

出典:九州電力 IR資料

発電・販売

2023年の1,750億円をピークにやや低下。利益の振れが大きく、LNG価格が10%上がると営業利益が約150億円減ります

送配電の伸び

2021〜2023年で276%の急拡大。会計の分離で数字が見えるようになったことも大きく、いまは売上全体の42%を占めます。

ICTソリューション

年率4.3%で着実に成長。スマートメーターの普及率は95%で、2030年に売上構成比10%を目指しています。

セグメントごとの方向

  • 発電:石炭を段階的に縮小し、再エネと水素・アンモニア混焼へ
  • 送配電:「デジタルグリッド」への投資を拡大(2025〜2030年で5,000億円を計画)
  • ICT:HEMS(家庭のエネルギー管理)とVPP(仮想発電所)の基盤づくり

5バリュエーションの現在地

注:理論株価=EPS×15

主要指標(2025年7月)

指標九州電力業種平均
株価1,300円
予想PER5.2倍9.8倍
PBR0.65倍0.92倍
配当利回り3.8%3.2%
自己資本比率15.5%18.1%

この数字をどう読むか

  • PER5.2倍が低いのには理由があります。電力会社の利益は燃料価格と規制料金で大きく振れ、1,664億円という過去最高の利益が続く前提ではありません。分母がピークのとき、PERはいちばん低く見えます
  • PBR0.65倍も同様です。自己資本比率15.5%は業種平均を下回り、純資産そのものが薄いことを示します。「PBRが1倍を割っているから割安」とは言い切れません
  • 配当利回り3.8%は電力会社としては高い水準ですが、原資は燃料価格に左右される利益です
  • 成長の材料として会社が挙げているのは洋上風力と水素です。いずれも収益化はこれからです

6主なリスク

燃料価格の変動

LNG・石炭の高騰は利益を直接圧迫します。2022年の危機以降、ヘッジは強化されています。

原子力政策

玄海3・4号機の稼働をめぐる不確実性。停止した場合の代替燃料費が効きます。

規制の変更

送配電分離の政策が事業構造に影響する可能性があります。

競争の激化

新規参入は増えていますが、地域に密着したサービスが差別化になっています。

会社が挙げている対応策

  • 燃料調達の多様化(LNGの長期契約への依存を下げる)
  • 再エネ比率の引き上げ(2030年に50%を目標)
  • 規制変更への早期の備え
  • デジタル関連事業の拡大

免責事項

本記事は九州電力の財務データにもとづく分析情報です。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。情報は2025年7月8日時点のものです。

データの出典

  • EDINET 有価証券報告書(2005〜2024年度)
  • 九州電力 アニュアルレポート
  • 財務省 法人企業統計
  • 東京証券取引所のデータ
  • 九州電力 IR資料(セグメントデータ)
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