【2026年版】SUMCO(サムコ・3436)株式分析 – 景気循環株の「谷(トラフ)」をどう評価するか

SUMCO(サムコ)は、あらゆる半導体(チップ)の土台になるシリコンウェハーを作る、世界2位のメーカーです(首位は信越化学で、この2社が市場を寡占)。半導体の需要サイクルに業績が大きく揺れる典型的な景気循環株で、いまは業績の「谷(トラフ)」——コロナ後の半導体ブームで過去最高益を出したあと、2023〜2025年の調整局面で利益がほぼ消え、14年ぶりの最終赤字に沈みました。前回の景気循環株コマツ(業績のピークで低PERが「割安の罠」になる例)とはちょうど裏返しで、SUMCOでは谷では利益が赤字のためPERが算出できず、しかも株価はAIによる回復を先取りして史上最高値まで買われています。本記事では公式決算(日本基準)の実データで、循環株の“底”をどう評価するかを図解します。

📌 会計と最新動向に注意:SUMCOの会計年度は12月末締め(暦年)会計基準は日本基準(連結)で「経常利益」があります。最新の確定通期はFY2025(2025年12月期、2026年2月10日発表)で、営業利益はほぼゼロ・経常&最終は赤字FY2026は通期予想を「未定(非開示)」とし、上期のみ赤字見通しを開示(谷はなお継続中)。株式分割はこの10年ありません(1株あたり数値は連続比較可)。株価は2026年に急騰し、本記事執筆時点で史上最高値圏の¥5,244(当日ストップ高)で、赤字ゆえPBR・PSRで見るしかない点にご注意ください。

主要指標

ビジネスモデル概観

  1. シリコンウェハー(単一事業):高純度シリコンの円板で、この上に半導体回路が作られる“土台”。SUMCOは先端の300mmウェハーで世界2位。信越化学と合わせて300mm市場の過半(約5割超)を握る2社寡占
  2. 高い参入障壁(堀):極限の純度・平坦度、巨額の設備、そして半導体メーカーによる長期の品質認定(一度採用されると替えにくい)——これらが強力な参入障壁です。
  3. 激しい景気循環:半導体(メモリ・ロジック)の在庫・設備投資サイクルで需要が大きく振れ、売上はさほど動かなくても利益(マージン)が激変します。
  4. 資本集約・長期供給契約(LTA):新工場に巨額を投じ、顧客と長期供給契約を結ぶモデル。不況期に投資が重なると減価償却が利益を圧迫します。

まず全体像 – 売上は横ばいでも、利益は消えた

図1:売上高(青・棒)と営業利益(橙・線)の推移(FY2015〜FY2025)

左軸=売上高、右軸=営業利益。単位 億円。日本基準・12月期。FY2022の過去最高(営業利益1,097億円)からFY2025はほぼゼロ(13億円)へ。

図1:売上高(青・棒)と営業利益(橙・線)の推移(FY2015〜FY2025)

循環株を評価するうえで最も大事なのは、「売上はさほど動かなくても、利益が激変する」という点です。図1のとおり、SUMCOの売上高は近年おおむね4,000億円前後で大きくは動いていません(FY2025は+3.3%)。ところが営業利益は、半導体ブームのFY2022に過去最高の1,097億円(利益率24.9%)を記録した後、FY2025にはわずか13億円(利益率0.3%)とほぼ消滅しました。さらに経常利益・最終利益は赤字(最終▲118億円=14年ぶりの赤字)に転落しています。原因は、①半導体メーカーの在庫調整による需要減、②新工場(佐賀・伊万里)の減価償却費の増加です。まさに景気循環株の「谷」で、コマツが「業績ピークで利益率最高」だったのと正反対の局面にいます。

1株利益は「¥200のピークから赤字」へ

図2:1株当たり利益(EPS)の推移(FY2015〜FY2025)

単位 円。FY2022のピーク¥200.49からFY2025は▲¥33.60の赤字へ。株式分割はなく連続比較可能。

図2:1株当たり利益(EPS)の推移(FY2015〜FY2025)

1株利益(EPS)で見ると、循環の激しさは一目瞭然です。図2のとおり、SUMCOのEPSはFY2022の¥200.49(ピーク)から、FY2025には▲¥33.60の赤字まで振れました。ここで決定的に重要なのは、赤字(EPSがマイナス)だと、PER(株価÷EPS)は計算できないということです。コマツの記事では「業績ピークでPERが最低(=低PERは割安ではなくピークのサイン)」という罠を見ましたが、循環株の“谷”では逆に、利益が消えてPERが算出不能(または異常に高く)なります。つまり循環株はピークでもボトムでも、その年のPERで割安・割高を判断してはいけない——これが循環株評価の鉄則で、SUMCOはその「ボトム側」の教科書です。

【核心その1】不況期に大型投資を断行した「設備投資の谷」

図3:設備投資(青・棒)と営業CF(緑・線)・フリーCF(濃青・線)の推移(FY2020〜FY2025)

単位 億円。設備投資はFY2023に3,154億円へ急拡大。営業CFを上回り、フリーCF(営業CF−設備投資)はFY2023〜24に大きくマイナス。

図3:設備投資(青・棒)と営業CF(緑・線)・フリーCF(濃青・線)の推移(FY2020〜FY2025)

SUMCOの谷を深くした最大の要因が、この設備投資です。図3のとおり、SUMCOは先端300mmウェハーの新工場(佐賀・伊万里)に投資を積み増し、設備投資はFY2023に3,154億円と、その年の営業CF(963億円)を大きく上回りました。結果、フリーCF(営業CF−設備投資)はFY2023〜2024で合計約▲3,600億円と大きなマイナスに。需要がまだ弱いうちに新工場の減価償却だけが先に立ち上がり、それが利益を押し下げて赤字の主因になりました。資本集約的な循環株が「不況期に大型投資が重なる」と、財務と損益の両方が痛む——その典型例です(会社はその後、佐賀の新工場計画を延期・縮小し、投資規律に舵を切りました)。

【核心その2】循環株にEPS×15は効かない – 市場は「谷で回復を先取り」する

図4:実際の年末株価(青)と理論株価(EPS×15、橙・破線)の推移(FY2017〜現在)

単位 円。理論株価=その年のEPS×15。業績ピーク年(FY2018/2022)は株価がEPS×15を大きく下回り、赤字のFY2025は理論株価が定義不能。現在の株価はAI回復を織り込み急騰。

図4:実際の年末株価(青)と理論株価(EPS×15、橙・破線)の推移(FY2017〜現在)

「理論株価=EPS×15」を当てはめたのが図4です。循環株では、この目安がまったく機能しないことがよく分かります。業績がピークだったFY2018・FY2022には、株価はEPS×15の線を大きく“下回って”いました——市場は「ピークの利益は続かない」と見て、高い利益に15倍を払わなかったのです(=コマツで見た「低PER」の別の顔)。逆に、赤字のFY2025は理論株価が計算できず、そして現在の株価¥5,244は、赤字にもかかわらず史上最高値まで買われています。これは市場が「今の赤字」ではなく「AI(HBM・先端ロジック)による将来の回復」を先取りしているためです。株価は2026年初の底¥1,434から約3.7倍。循環株の株価は業績に先行して動く(谷で回復を織り込む)ため、目先の利益やPERではなく、サイクルを均した「正常化利益」と回復シナリオの確度で評価する必要があります。

谷では株価÷純資産(PBR)で見る

図5:PBR(株価純資産倍率)の推移(FY2017末〜現在)

単位 倍。利益が振れてPERが使えない循環株では、PBRが目安になる。FY2024末は0.70倍(純資産割れ=割安)まで沈み、現在はAI期待で約3.2倍へ。

図5:PBR(株価純資産倍率)の推移(FY2017末〜現在)

赤字でPERが使えない循環株では、PBR(株価÷1株純資産)が有力な目安になります。図5のとおり、SUMCOのPBRは業績の谷だったFY2024末に0.70倍(純資産割れ=解散価値より安い)まで沈みました。この「純資産割れの谷」で仕込むのが循環株投資の一つの型ですが、実際、そこから株価は急騰し、現在のPBRは約3.2倍とバンドの上限近くまで買い直されています。PSR(株価÷売上高)も約4.5倍と、過去(1〜2倍)に比べて高い水準です。「谷の純資産割れ」で安全余裕を見て買い、「回復を織り込んだ高PBR」では過熱に注意する——これが赤字の循環株を評価する実践的な視点です。現在の株価は、AI回復への期待をかなり織り込んだ水準にあると言えます。

売上の8割は海外 – 台湾(先端ロジック)が最大

図6:地域別(顧客所在地別)の売上高(FY2025)

単位 億円。台湾が最大の37%。海外比率は約81%。台湾向けはTSMC等の先端ロジック需要の目安。

図6:地域別(顧客所在地別)の売上高(FY2025)

SUMCOの売上は約8割が海外で、図6のとおり台湾が37%と最大、次いで日本19%、中国13%と続きます。台湾向けが最大なのは、TSMCをはじめとする先端ロジック(AI向け半導体)の生産拠点が台湾に集中しているためで、台湾比率は「AI・先端需要への感応度」の目安になります。実際、FY2025はAI・データセンター向けの300mmウェハーは通年で回復傾向だった一方、スマホ・PC・産業機器向けの汎用(200mm以下)は低迷という「二極化」でした。回復の主役はAI/HBM・先端ロジック、重しは汎用品と中国の増産による供給過剰リスクです。

配当も業績連動 – ピーク¥81から¥20へ減配

図7:1株配当DPS の推移(FY2015〜FY2025)

単位 円。配当性向ベースのため業績に連動。FY2022のピーク¥81から、FY2025は¥20へ減配。

図7:1株配当DPS の推移(FY2015〜FY2025)

SUMCOの配当は配当性向(利益に対する割合)ベースのため、業績とともに大きく上下します。図7のとおり、1株配当は好業績のFY2022に¥81まで増えた後、FY2025は¥20へ減配されました(FY2026は中間¥10のみ決定、通期は未定)。前回のコマツ(フロア型・累進ではないが減配は限定的)や、ましてやユニ・チャーム(累進増配)とは異なり、循環株のSUMCOは業績の谷で配当も削られるのが特徴です。株価が急騰した結果、配当利回りは約0.4%と低く、この株は「配当(インカム)」ではなく「サイクルの回復(キャピタルゲイン)」を狙う銘柄だと理解しておくべきです。

ネット無借金から純有利子負債へ – 財務ストレス

図8:有利子負債(青・棒)と純有利子負債(赤・線)の推移(FY2016〜FY2025)

単位 億円。純有利子負債=有利子負債−現金。FY2022はネットキャッシュ(▲1,183億=実質無借金)だったが、大型投資でFY2025は純有利子負債+2,782億へ。

図8:有利子負債(青・棒)と純有利子負債(赤・線)の推移(FY2016〜FY2025)

不況期の大型投資は、財務にも表れます。図8のとおり、SUMCOは好業績のFY2022にはネットキャッシュ(現金が有利子負債を上回る実質無借金、純有利子負債▲1,183億円)でした。ところが新工場投資で有利子負債が3,500億円超へ急増し現金は減ったため、FY2025には純有利子負債+2,782億円へと反転しました。自己資本比率は約51%とまだ健全ですが、「谷で利益が出ないのに投資と負債は増える」という、資本集約的な循環株特有のストレスがかかっています。ここから業績が回復すれば財務も改善しますが、回復が遅れれば負担が続く——この綱引きが、今後の焦点です。

【2026年12月期・最新】中間決算 – 増収なのに営業赤字。谷は、まだ終わっていませんでした

本記事は「売上は横ばいでも、利益は消えた」という一文から始まりました。2026年8月6日に発表された2026年12月期 中間決算(1〜6月)は、その状態がさらに一段深くなったことを示しています。

2026年12月期 中間期(1〜6月) 実績 前年同期
売上高 2,150億円 2,053億円(+4.7%
営業利益 △63億円 +74億円
経常利益 △121億円 +47億円
親会社株主に帰属する中間純利益 △128億円 +30億円
1株当たり中間純利益(EPS) △36.87円 8.81円

出所:SUMCO「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」および決算説明会資料(2026年8月6日)。億円は百万円単位の開示を四捨五入。

売上は97億円増えたのに、営業利益は137億円悪化して赤字に転落しました。 しかも同じ期間に為替は1米ドル149.5円から157.7円へ8.2円の円安——輸出企業には追い風です。追い風が吹き、売上も増えて、それでも赤字。これが循環株の谷です。

数量は増えています。それでも赤字なのはなぜか

「売れていないから赤字なのだろう」と思うところですが、事実は逆です。会社の説明はこうです。

  • 300mm:AI・データセンター用の先端ロジックとメモリー向けの強い需要が継続し、出荷は大きく増加
  • 200mm以下:顧客や製品により強弱があるものの出荷は増加

つまり数量は回復しています。問題は価格です。会社は価格についてこう書いています。「LTA価格は守られた。スポット価格は、見直しの交渉が始まった」

LTAとは長期供給契約のことで、あらかじめ決めた価格で複数年にわたり売買する取り決めです。これは守られている。一方で、そのつど値決めするスポット価格については「見直しの交渉が始まった」——値下げ圧力がかかり始めた、という意味に読むのが自然です。

数量が戻っても、価格が戻らなければ利益は戻らない。 本記事の【核心その1】で扱った「売上横ばいでもマージンが激変する」構造が、いま進行形で起きています。

【最重要】設備投資は6割減らしたのに、減価償却費は増えています

この決算でいちばん見てほしい2つの数字がこれです。

中間期(1〜6月) 前年同期 今回 増減
設備投資額(検収ベース) 519億円 194億円 △325億円
減価償却費 494億円 644億円 +150億円

投資は6割以上絞っているのに、減価償却費は逆に150億円増えました。

矛盾しているようですが、当然のことです。減価償却費は過去に建てた工場や買った装置の代金を、何年もかけて費用に配分したものだからです。本記事の【核心その1】で扱った「不況期に断行した大型投資」が、いま費用となって損益計算書にのしかかっています。

設備投資は、決めた瞬間ではなく、その後何年もかけて利益を削る。 装置産業の谷が深く長くなる理由がここにあります。今から投資を止めても、この費用はすぐには消えません。

ただし「現金が出ていっている」わけではありません

ここで見落としてはいけないのが、会社が開示しているEBITDAマージンです。第2四半期(4〜6月)単独では26.9%、第3四半期の予想は28.6%とされています。

EBITDAは営業利益に減価償却費を足し戻した数字です。減価償却費は実際に現金が出ていく費用ではありません(現金が出たのは工場を建てたときです)。

だから営業利益は赤字でも、現金の出入りで見れば2割台後半の利益率で回っている——SUMCOの現状はそういう状態です。「赤字=現金が減り続けている」ではないという区別は、装置産業を読むうえで欠かせません。この考え方は損益計算書の見方でも触れています。

会社の見通し – 「赤字は止まる。でも黒字にはならない」

SUMCOは通期予想を出さず、翌四半期までの累計予想だけを開示する方針をとっています。今回示されたのは第3四半期(1〜9月)累計の予想です。

その累計予想から中間期の実績を引くと、第3四半期(7〜9月)単独の計画が見えてきます。決算説明会資料も同じ数字を示しています。

四半期単独 第2四半期(実績) 第3四半期(予想)
売上高 1,136億円 1,180億円
営業利益 △11億円 0億円
経常利益 △42億円 +10億円
親会社株主に帰属する純利益 △44億円 0億円

営業利益ちょうど0億円、純利益ちょうど0億円。 売上1,180億円を売って、利益はトントンという計画です。経常利益だけは為替の影響で10億円の黒字を見込んでいます。

言い換えれば「出血は止まる。しかし、まだ稼げてはいない」。これが会社自身が描く、いまの立ち位置です。ちなみに第2四半期は当初予想の営業△25億円に対し実績△11億円と、会社の想定より良い着地でした。回復の方向自体は出ています。

期末配当は「未定」のままです

配当は中間10円を予定どおり実施します。しかし期末配当は「未定」とされ、年間の配当予想も開示されていません。短信には「現時点において、2026年12月期期末の1株当たり配当金については未定であります」と明記されています。

本記事の「配当も業績連動 – ピーク81円から20円へ減配」の節で書いたとおり、SUMCOの配当は業績に連動します。中間期が赤字である以上、期末配当が据え置かれる保証はありません。

高い配当利回りを期待してこの銘柄を持つのは、そもそも設計が合っていません。業績連動型の配当と、方針で下限を約束する配当の違いは配当利回りと配当性向の見方で整理しています。

財務 – 自己資本比率は50.0%まで低下

財政状態 2025年12月末 2026年6月末
総資産 1兆1,280億円 1兆1,367億円
自己資本 5,784億円 5,682億円
自己資本比率 51.3% 50.0%

本記事で扱った「ネット無借金から純有利子負債へ」という財務ストレスは続いています。赤字で自己資本が102億円減り、自己資本比率はちょうど50.0%まで下がりました。まだ厚い水準ですが、方向は下向きです。谷が長引くほど、財務の余力は削られていきます。

この決算をどう受け止めるか

本記事の【核心その2】は「循環株にEPS×15は効かない。市場は谷で回復を先取りする」でした。この決算は、その構図をさらに極端にしました。

業績は赤字で、EPSはマイナス36.87円。PERは計算できません。 それでも株価は、AI需要による将来の回復を織り込んで動いています。利益で測れない以上、EPS×15の理論株価は使いようがありません。 本記事が「谷ではPBRで見る」と書いた理由がここにあります。

そのうえで、この決算から拾える前向きな材料も整理しておきます。

  • 第2四半期は会社予想より良い着地(営業△25億円の計画に対し△11億円)
  • 第3四半期は営業利益トントン、経常黒字の計画=出血は止まる見通し
  • 出荷数量は300mm・200mmとも増加しており、顧客の在庫調整も進んでいる
  • EBITDAマージンは26.9%で、現金の面では回っている

逆に、慎重に見るべき材料はこうです。

  • スポット価格の見直し交渉が始まっている=数量が戻っても価格が戻らない可能性
  • 減価償却費が増え続けている=過去の投資の負担はまだピークを越えていない可能性
  • 期末配当が未定=減配の可能性が残る

循環株の谷では、「いつ利益が戻るか」を当てにいくより、「谷でも会社が壊れないか」を確かめるほうが確実です。自己資本比率50.0%とEBITDAマージン26.9%は、その問いへの現時点での答えです。業界全体の位置づけはAI半導体市場の全体地図にまとめています。

SUMCOという銘柄の全体像

図9:SUMCOのサイクル・堀・財務・回復シナリオの関係図

「事実」と「報道・計画」を区別して整理。

図9:SUMCOのサイクル・堀・財務・回復シナリオの関係図

リスクと注意点

  • 谷が長引くリスク:FY2026も上期は赤字見通しで、通期は非開示。回復(特に汎用品)が遅れれば赤字・財務負担が続く。
  • 高いバリュエーション:赤字でPERは算出不能、PBR約3.2倍・PSR約4.5倍と、株価はAI回復をかなり織り込んだ水準。期待外れの場合の下振れに注意。
  • 設備投資と減価償却の負担:新工場の減価償却が利益を圧迫。需要回復のタイミングと投資規律が問われる。
  • 中国の増産:中国勢の汎用(レガシー)ウェハー増産による供給過剰・価格下落リスク。先端では影響は限定的だが、汎用の重しに。
  • 顧客・地域の集中:台湾向けが37%と高く、先端ロジック(AI)需要と地政学の影響を受けやすい。
  • 減配・低利回り:業績連動で配当は減る(¥81→¥20)。利回り約0.4%で、インカム目的には向かない。

今後の展望

SUMCOは、①信越化学と市場を二分する強い堀を持つ一方、②いまは半導体サイクルの谷(14年ぶり赤字)にあり、③不況期の大型投資でネット無借金から純有利子負債へと財務がストレスを受けている、という現在地にあります。焦点は、AI・HBM・先端ロジックの需要が本格的に回復して新工場の稼働率と利益率が戻るか、そして汎用品の在庫調整と中国の増産がどこで収まるかです。株価はすでにAI回復を大きく先取りして史上最高値圏にあり、循環株は「谷の純資産割れ(PBR1倍割れ)」で仕込み、「回復を織り込んだ高PBR」では慎重に——目先の赤字やPERに惑わされず、サイクルの位置と正常化利益で評価するのが賢明です。

まとめ

SUMCOは、「景気循環株の“谷(トラフ)”をどう評価するか」を学ぶのに最適な題材です。ポイントは3つ。①売上は横ばいでも利益は激変し、谷では赤字でPERが算出不能になる(コマツの「ピークで低PER」の裏返し)こと。②循環株にEPS×15は効かず、市場は谷で「将来の回復」を先取りするため、株価は業績に先行して動く(PBR・正常化利益で見る)こと。③不況期の大型投資でネット無借金から純有利子負債へと財務がストレスを受けている一方、信越化学との2社寡占という堀とAI回復が支えになること。コマツ(ピーク)と対にして読むと、循環株はピークでもボトムでも、その年のPERで割安・割高を判断してはいけないという本質が、両側から立体的に理解できます。

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データソース & 検証

  • 財務・決算:SUMCO公式IR/決算短信〔日本基準〕(連結、FY2025は2026年2月10日発表)・有価証券報告書(EDINET)。クロスチェックにIRBANK・日本経済新聞・kabutan・stockanalysis.com。
  • 株価・EPS・配当系列:IRBANK、Yahoo!ファイナンス。2026年7月10日時点で株価¥5,244(当日ストップ高)、時価総額約1.84兆円。この10年で株式分割はなく連続比較可能。
  • 市場シェア・寡占・回復シナリオ:会社IR・統合報告書、および第三者調査(市場シェア)・報道(AI需要・値上げ・中国増産)。

本記事は公開情報を複数系統で二重検証していますが、数値には集計方法による軽微な差異が含まれる場合があります。会計年度は12月末締め、日本基準(連結)で「経常利益」があります。1株あたり数値・株価はこの10年に株式分割がなく連続比較できます。FY2025の最終損失は親会社株主帰属ベースで▲118億円です。年末PBR・年末株価・理論株価(EPS×15)は各年12月末終値に基づく概算で、実績PBR・PSR・時価総額等は2026年7月10日時点の株価(当日ストップ高で変動が大きい点に留意)に基づきます。FY2026は通期予想が未定(非開示)で、市場のフルイヤー予想はアナリストの推計です。市場シェア・回復シナリオは開示・第三者調査・報道ベースの概算です。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。