【2026年版】レーザーテック(6920)株式分析|10期ぶりの減収減益と、決算翌日−13.5%の意味

結論から書きます。2026年8月6日に発表されたレーザーテックのFY2026/6は、10期ぶりの減収減益でした(売上−8.3%・営業利益−14.3%)。翌7日の株価は−13.55%。決算を期待して4営業日で+38.8%も上げていた分を、2日でほぼ全部吐き出しました。ただし内容を開けると、粗利率はむしろ改善(59.0%→59.2%)していて、営業減益の主因は研究開発費の+39.5%です。売れなくなったのではなく、減収の年に投資を積んだ決算でした。一方で会社が出したFY2027/6予想は+25.8%増収と強気なのに、それでも売られた——ここに、この銘柄の本質があります。本記事では、EUVマスク検査という「顕微鏡の中の独占」、受注高+126%の裏で受注残が+2.2%しか増えていない事実、そしてPER8.7倍〜101倍という常識外れのレンジを、実データで図解します。

📌 会計年度に注意(この記事で最重要):レーザーテックの決算期は6月末締めです。本記事の「FY2026/6」=2025年7月1日〜2026年6月30日を指します。この期の本決算は2026年8月6日に発表済みで、これが最新の確定実績です。会社予想が出ているのはFY2027/6(2026年7月〜2027年6月)だけ。他サイトは「26/6期」「今期=27/6期」など表記が混在するため、数字を突き合わせるときに1年ずれやすい点にご注意ください。会計基準は日本基準(経常利益あり)、報告セグメントは単一です。

レーザーテックの主要指標

株価37,460円(2026年8月7日終値)・自己株式控除後89,630,666株で算出。PBRは約13.6倍、実績配当利回りは約0.88%。

ビジネスモデル概観:半導体の「型紙」の傷を見つける会社

半導体は、回路が描かれた「フォトマスク」という型紙に光を通し、その像をウェーハに焼き付けて作ります。型紙に微細なゴミや欠陥が1つでもあれば、そこから作られるチップは全部同じ場所が不良になります。だから型紙は、使う前も使っている最中も検査され続けます。レーザーテックはこの検査装置を作る会社です。売上の内訳は3つですが、実質2本柱です。

  1. 半導体関連装置(FY2026/6で1,680億円・売上の72.9%) … 主力です。とくにEUV(極端紫外線)用マスクの検査で強く、実際の露光と同じ波長13.5nmの光を使って検査する「アクティニック検査」という狭い領域で、他社が追いつけていないとされます。ただし−17.2%と大きく落ちたのがFY2026/6でした。
  2. サービス(同586億円・25.4%) … 納入済み装置の保守・部品です。+36.5%と伸び、装置の落ち込みのクッションになりました。売上に占める比率は2年前の13.6%から25.4%へ、急速に厚くなっています。この会社の「守り」はここです。

顧客は極端に絞られています。FY2025/6時点でインテル33.3%、TSMC 26.3%、サムスン電子19.9%——上位3社で売上の79.4%(有価証券報告書の開示値)。世界最先端の工場を持つ数社だけが客であり、その数社の投資判断で業績が上下します。東京エレクトロンの上位2社28.0%と比べても、集中度は桁違いです。

1. 9期連続増収増益が、10期目で止まった

図1:売上高(棒・左軸)と営業利益(線・右軸)の推移(FY2017/6〜FY2026/6)

単位 億円。日本基準・連結。いちばん右のFY2026/6が10期目で初めての減収減益。

売上高と営業利益の10年推移

売上は10年で173億円→2,304億円、13.3倍になりました。FY2017/6からFY2025/6まで9期連続の増収増益という、日本の製造業では滅多にない記録です。その連続記録が、FY2026/6でついに止まりました。

ただし落ち方の中身が大事です。売上−8.3%に対して営業利益−14.3%と、利益の減り方が大きい。ふつうこれは「値引き競争に巻き込まれた」サインですが、この会社は違いました。粗利率は59.0%→59.2%へむしろ改善しています。原因は販管費で、254億円→312億円(+22.8%)。うち研究開発費が117億円→163億円(+39.5%)です。売上が減った年に、開発費を4割積み増した——これが減益の正体です。

データ表:10年間の売上高・営業利益・経常利益・純利益(億円)
年度 売上高 営業利益 経常利益 純利益 EPS(円)
FY2017/6 173.7 49.6 49.9 35.5 39.20
FY2018/6 212.5 56.9 57.1 43.7 48.42
FY2019/6 287.7 79.4 78.3 59.3 65.79
FY2020/6 425.7 150.6 151.2 108.2 120.02
FY2021/6 702.5 260.7 264.4 192.5 213.47
FY2022/6 903.8 324.9 335.8 248.5 275.56
FY2023/6 1,528.3 622.9 636.7 461.6 511.89
FY2024/6 2,135.1 813.8 820.2 590.8 655.04
FY2025/6 2,514.8 1,228.4 1,194.4 846.5 938.60
FY2026/6 2,304.8 1,052.6 1,079.0 774.9 862.99

出典:各期決算短信。EPSは株式分割調整後。FY2026/6は2026年8月6日発表。

2. キャッシュフロー ── 「儲かるほど現金が出ていく」構造

図2:営業CF・フリーCF・財務CF・設備投資の推移(FY2017/6〜FY2026/6)

単位 億円。フリーCF=営業CF−設備投資。設備投資は支出なのでマイナス表示。

キャッシュフローの推移

目を引くのはFY2022/6です。当時としては過去最高益(純利益248億円)だったのに、営業CFは−34億円のマイナスでした。原因は棚卸資産が500億円増えたこと。装置1台の製造に1〜2年かかるため、注文が急増すると、まず仕掛品という形で現金が沈みます。この会社は「受注が良すぎると現金が出ていく」のです。

これは一時的な話ではありません。10年間の累計で見ると、純利益3,361億円に対して営業CFは2,361億円=70.2%しか現金化していません。差額の約1,000億円は運転資本(主に棚卸資産)に吸い込まれています。利益の質を疑う話ではなく、そういうビジネスモデルだと理解するのが正しい読み方です。

FY2026/6の営業CFが485億円と前年比−37.7%まで落ちたのも同じ理屈で、前受金が211億円減ったためです。前期に受注が−61%も落ち込んだ影響が、1年遅れて現金の形で出てきました。なお設備投資は10年累計でわずか412億円と極端に軽く、工場に金を使わない会社でもあります(FY2023/6の205億円だけが例外的な土地・建物投資)。

3. 利益率 ── 装置メーカーとして異常な水準

図3:営業利益率・経常利益率・純利益率の推移(FY2017/6〜FY2026/6)

単位 %。営業利益率は10年で28.6%→45.7%(FY2025/6は48.8%)。

利益率3本の推移

営業利益率45.7%。前期はさらに高く48.8%でした。半導体装置メーカーとして、これは突出しています。同じ2026年に東京エレクトロンは25.6%、アドバンテストが44.2%でした。売上規模はレーザーテックが最も小さいのに、利益率は最上位です。「代わりがいない装置は、値段を叩かれない」——利益率はそれをそのまま映します。

もう1つ、地味ですが重要な点があります。3本の線がきれいに平行に動いています。純利益÷経常利益は10年間70.9%〜76.5%の狭いレンジに収まり、FY2026/6も71.8%。特別損益はゼロで、税引前利益=経常利益です。つまり「本業以外の何かで最終利益だけがふくらむ」という歪みがありません。東京エレクトロンが政策保有株の売却益1,155億円で純利益だけ最高益になったのとは対照的で、この点はこの会社の数字の素直さを示しています。

4. 【この会社の心臓】受注 ── +126%回復でも、残高は+2.2%

図4:受注高(棒)と受注残高(線)の推移(FY2017/6〜FY2026/6)

単位 億円。受注高=その期に受けた注文、受注残高=期末に残っている未消化の注文。売上高とは別物。

受注高と受注残高の推移

この会社の株価を動かしているのは、実は売上ではなく受注です。そして受注は、業績よりはるかに激しく振れます。

FY2022/6に3,237億円まで急増し、FY2025/6には1,052億円へ−61.4%の暴落、そしてFY2026/6は2,375億円へ+125.7%のV字回復。1年ごとに倍増と半減を繰り返しています。

ここで見落としてはいけない事実があります。受注高が+126%も回復したのに、受注残高は3,159億円→3,230億円と+2.2%しか増えていません。受けた注文を、ほぼ同じ期間で売り切ってしまったということです。受注残は将来の売上の在庫ですから、「受注が急回復したから来期以降も安泰」とは言えない——ここが冷静に見るべきところです。受注残でカバーできる年数は、ピーク時の2.17年から1.40年に縮んでいます。

💡 3つの数字を混同しないでください:受注高(その期に受けた注文=2,375億円)②受注残高(期末に残る未消化=3,230億円)③売上高(2,305億円)。ニュースで「3,230億円」という数字を見て売上や利益と勘違いすると、話が全く変わります。

5. 装置が落ちても、サービスが支えた

図5:品目別の売上高(FY2025/6 → FY2026/6)

単位 億円。装置は−17.2%、サービスは+36.5%。

品目別売上高の比較

装置は2,030億円→1,681億円へ349億円減りました。にもかかわらず全社の減収が210億円で済んだのは、サービスが430億円→586億円へ157億円増えたからです。

サービスの比率は13.6%(FY2024/6)→17.1%→25.4%と、2年で倍近くになりました。すでに納入した装置が世界の工場で動き続ける限り入ってくる売上なので、装置の受注が止まっても急には減りません。この会社の業績の振れ幅は、以前より小さくなりつつあります。ただし装置が主役であることは変わらず、サービスだけで成長を作れるわけではない点は押さえておく必要があります。

6. 地域 ── 欧州が−61.8%で消えた

図6:地域別の売上高(FY2026/6・合計2,305億円)

単位 億円。中国は独立開示されておらず「その他アジア」に含まれます。

地域別売上高

顧客の顔ぶれからも分かる通り、売上は韓国28.7%・米国22.4%・台湾19.9%という最先端3拠点に集中しています。日本は12.2%にすぎません。

FY2026/6で目立つのは欧州の−61.8%です。203億円→78億円へ縮み、うち製品売上は168億円→36億円(−78.9%)と、ほぼ消えました。残っているのはサービスがほとんどです。台湾−29.7%、米国−24.0%も減り、逆に韓国+23.2%、日本+36.0%、その他アジア+31.5%が伸びました。顧客が数社しかないため、1社の投資タイミングがずれるだけで地域構成がここまで変わります。単年の増減で「その地域から撤退した」と読むのは早計です。

7. 株価と理論株価 ── 「EPS×15」が一度も当たらない銘柄

図7:年度末(6月30日)の実際の株価と「EPS×15」の理論株価(FY2015/6〜FY2026/6)

単位 円。株式分割調整後。青が実際、灰色がEPS×15。

実際の株価とEPS×15の比較

当ブログでは「EPS×15」を目安の理論株価として使ってきました。コマツイエローハットではよく機能します。ですがレーザーテックでは、12年間で一度もまともに当たっていません。

実際の株価はEPS×15の0.58倍から6.74倍まで振れました。FY2021/6には理論値の6.74倍まで買われ、FY2016/6には0.58倍まで叩き売られています。この銘柄でEPS×15を「適正株価」として使うと、ほぼ確実に判断を誤ります。

では何の役に立つのか。「期待の温度計」としてなら、はっきり機能します。次の2つが証拠です。

  • 買われすぎのサイン:FY2021/6末、理論値の6.74倍まで買われた(PER101倍)。その翌年、株価は21,590円→16,150円へ−25%
  • 売られすぎのサイン:FY2025/6末、1.38倍まで叩き売られた(PER20.7倍)。その翌年、19,410円→49,700円へ約2.6倍

2026年8月7日時点は、EPS×15の2.89倍です。過去12年のレンジ(0.58〜6.74倍)の中では真ん中よりやや上、といったところです。

8. PERは8.7倍から101倍まで振れる

図8:年度末(6月30日)時点のPERの推移(FY2015/6〜FY2026/6)

単位 倍。同じ会社が、12年のあいだに8.7倍から101倍まで評価された。

年度末PERの推移

この図が、この銘柄のすべてを表しています。最低8.7倍(FY2016/6)から最高101.1倍(FY2021/6)まで、約11.7倍の開きがあります。事業内容も顧客も大きくは変わっていないのに、市場がつける値段だけがこれだけ動く。

だから「PER43倍は割高か」という問い自体が、この銘柄ではあまり意味を持ちません。過去には20倍でも買われず、100倍でも買われた実績があるからです。見るべきは絶対値ではなく、いま自分がレンジのどのあたりにいるかと、その前提(受注とEUVの普及)が続くかどうかです。

実際の値動きも極端です。2024年5月23日の45,500円から2025年4月7日の10,245円まで、約11か月で−77.5%。時価総額の4分の3以上が消えました。そこから2026年6月19日には58,580円の高値を付け、約5倍に戻しています。1年で4分の1になり、1年で5倍になる株だという事実は、数字として知っておくべきです。

9. 【速報】決算翌日−13.55%の中身

図9:決算前後の株価(2026年7月30日〜8月7日・終値)

単位 円。8月6日の取引終了後に本決算を発表。

決算前後の株価推移

決算前の4営業日で、株価は33,620円→46,680円へ+38.8%上げていました。明らかに好決算を期待した先回り買いです。そして8月6日の引け後に決算が出て、翌7日は−13.55%。8月5日の高値から2日で−19.8%、上げた分をほぼ全戻ししました。

ここで大事なのは、会社が出した数字は決して悪くなかったことです。FY2027/6の会社予想は売上2,900億円(+25.8%)、営業利益1,250億円(+18.8%)、純利益900億円(+16.2%)。増収増益への復帰を見込んでいます。

それでも売られた理由は、報道ベースでは「市場予想に届かなかった」とされています。株探は営業利益のコンセンサスを約1,380億円と伝えており、会社計画1,250億円はそれを約9%下回ります。また受注高の見通しが3,000〜4,000億円というレンジで示され、事前の市場期待(約4,000億円)に対して幅の下限が意識された、とも報じられました。これらのコンセンサス値はアナリストの推計であり、会社の開示ではありません。

💡 この決算から学べること:株価は「良いか悪いか」ではなく「期待に対してどうか」で動きます。増収増益予想でも、期待が+30%だったなら+18.8%は失望になる。決算前に株価が急騰している銘柄ほど、このリスクは高くなります。なおこの会社は、FY2026/6も期初に純利益600億円(−29.1%)と保守的に置いてから期中に上方修正し、実績774億円で着地しました。期初計画が保守的な会社である可能性も、あわせて頭に入れておく価値があります(過去2期の傾向であり、今期もそうなる保証はありません)。

10. 2024年の空売りレポート騒動 ── 事実だけを整理する

この銘柄を調べると必ず出てくる話なので、事実関係だけを時系列で整理します。

  • 2024年6月5日:米国の空売り投資家 Scorpion Capital が300ページ超のレポートを公表。同社は冒頭で自らが空売りポジションを持ち、株価下落で利益を得ると明記しています。内容は会計処理と製品性能をめぐる疑義の主張です。
  • 同日〜:会社は当日中に不正会計を明確に否定し、6月6日には数値を用いた補足説明を開示。株価は3営業日で−13.9%下落した後、反発しました。
  • 2024年6月18日〜8月5日:会社は社外取締役2名と外部専門家からなる特別調査委員会を設置。2024年8月5日に「会計処理に不正は認められなかった」と結論したと開示・報道されています。
  • その後過去の決算の修正再表示は一度も行われていません(FY2026/6決算短信の注記でも「修正再表示:無」)。当局による処分や調査の公表は、本記事の執筆時点では確認できていません。

空売り側の主張はいずれも立証されていません。本記事では主張の中身を列挙しません。読者として押さえるべきなのは、論点になったのが「棚卸資産の大きさ」だったという点です。実際、FY2026/6末の仕掛品1,224億円+原材料453億円=1,678億円は総資産の49.8%、年間売上の72.8%にあたり、10年で21.5倍に膨らみました。装置1台の製造に1〜2年かかり、検収まで売上を立てない会計方針なので構造的にこうなります——という説明が会社の立場です。数字は事実として示し、判断は読者に委ねます。なおFY2026/6は10年で初めて棚卸資産が前期から減少しました。

11. 株主還元と財務

配当方針は「連結配当性向35%を目安とした、業績に応じた弾力的な配当」です。累進配当やDOEの下限といった約束はありません。実績の配当性向はFY2016/6からFY2025/6まで35.1〜35.7%と、ほぼ機械的に守られてきました。

FY2026/6の配当は329円で据え置き(性向38.1%)。13期続いた増配が止まりました。ただしこれには背景があります。会社は1年前の時点でFY2026/6を純利益600億円(−29.1%)と予想したうえで、配当性向49.5%になることを覚悟して329円の据え置きを掲げていました。実際には業績が上振れたため、結果的に38.1%に収まった、という順番です。「減益だから渋った」わけではありません。FY2027/6は351円(性向35.0%)を予想しています。

また10年で初めての自社株買いを実施しました。2025年8月に上限120億円で決議し、同年12月に560,600株・約120億円で完了(平均取得単価21,403円)。金額枠は99.99%使い切った一方、株数枠は56.1%しか使えていません。株価が上がって金額枠が先に尽きたためです。消却はしておらず、会社は将来のM&A等への活用を検討するとしています。

財務は極めて強固です。有利子負債ゼロ、現金915億円、自己資本比率73.3%、未実行のコミットメントライン400億円。ただしネットキャッシュ915億円は時価総額3.36兆円の2.7%にすぎず、現金がバリュエーションを支えているわけではありません。

データ表:配当・還元・投資
年度 DPS(円) 配当性向 研究開発費(億円) 自己資本比率
FY2022/6 97 35.2% 40.7%
FY2023/6 180 35.2% 40.2%
FY2024/6 230 35.1% 55.8%
FY2025/6 329 35.1% 116.8 63.7%
FY2026/6 329 38.1% 162.9 73.3%
FY2027/6(予) 351 35.0%

DPSは株式分割調整後。配当性向は当方が DPS÷EPS で再計算。

12. 「顕微鏡の中の独占」の地図

図10:レーザーテックの立ち位置と、半導体装置の他社との比較

数値はFY2026/6(東京エレクトロン・アドバンテストは2026年3月期)。

レーザーテックの立ち位置の関係図

この図の要点は②の集中度です。上位3社で79.4%という数字は、この3社の設備投資計画がそのまま業績になることを意味します。受注が1年で−61%になったり+126%になったりするのは、そのためです。事業が強いことと、業績が安定することは別問題です。

リスクと注意点

  • 値動きが極端:2024年5月から2025年4月までの11か月で−77.5%、そこから約5倍。1日で±10%動くのが常態です(6/17 +13.2%、8/7 −13.6%)。
  • 顧客が3社で8割:インテル・TSMC・サムスンの投資が止まれば直撃します。FY2026/6の欧州売上が−61.8%になったように、1社の都合で数字が大きく動きます。
  • 受注残がほとんど増えていない:受注高+125.7%に対し受注残は+2.2%。カバー年数は2.17年→1.40年に短縮しました。
  • シェアを断定できない:会社はシェアを開示しておらず、名前のある調査機関の定量推計も見当たりません。「独占」と書かれた記事を見たら、どの製品のどの工程の話かを確認してください。
  • EUVの普及ペース次第:需要はASMLのEUV/High-NA EUV露光機の導入ペースに連動します。自社でコントロールできない外部要因です。
  • 棚卸資産が総資産の約半分:構造的な理由がありますが、2024年の空売りレポートで論点になった箇所でもあります。
  • 「EPS×15」が使えない:過去12年でPERは8.7倍〜101倍。理論株価の目安として使うと判断を誤ります。

今後の展望

短期の焦点は受注です。FY2027/6は会社が+25.8%の増収を見込んでおり、その前提が受注として積み上がるかどうかで、株価の振れ方が決まります。受注残のカバー年数が1.40年まで縮んでいるため、今期の受注が積み上がらないと、来期の売上が細ります。四半期ごとの受注高は、この銘柄では売上以上に注目すべき数字です。

中期では、High-NA EUVという次世代の露光技術がどこまで実用化されるかが効いてきます。より微細になるほどマスクの欠陥許容度は下がり、検査の重要性は増す——というのが強気シナリオの骨格です。会社もFY2030/6に売上4,000〜5,000億円という目標を掲げています(会社計画であり、確定した見通しではありません)。

一方で、減収の年に研究開発費を4割増やしたという今回の決算は、会社が短期の利益より次の技術を優先したことを示しています。これを「将来への仕込み」と見るか「利益率の低下」と見るかで、評価は分かれます。事業の質が高いことと、いまの株価が妥当であることは、やはり別の話です。

まとめ

レーザーテックは、営業利益率45.7%・有利子負債ゼロ・自己資本比率73.3%という、極めて質の高い会社です。純利益÷経常利益は10年間70〜76%で安定し、一時的な利益で数字を作る歪みもありません。

しかしFY2026/6は10期ぶりの減収減益で、決算翌日には−13.55%。会社は次期に+25.8%増収を見込んでいるにもかかわらず、市場予想(報道ベース)に届かなかったことで売られました。「良い決算」と「株価が上がる決算」は違うという、教科書のような事例です。

そしてこの銘柄の最大の特徴は、PERが8.7倍から101倍まで振れてきたことです。EPS×15という物差しは、ここでは一度も機能していません。強い会社を、いくらで買うか——その問いから逃げられない銘柄だと言えます。

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データソース & 検証

  • 財務データ:レーザーテック「2026年6月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月6日発表)および過年度の決算短信・有価証券報告書(EDINET)。クロスチェックに IRBANK・stockanalysis.com。利益率・成長率・配当性向は当方が再計算。
  • 会計年度:6月末締め。FY2026/6=2025年7月1日〜2026年6月30日。最新の確定通期はFY2026/6、会社予想はFY2027/6のみ。会計基準は日本基準(経常利益あり)、報告セグメントは単一。
  • 株式分割:有価証券報告書が遡及調整の対象として明記しているのは1株→2株の分割3回(効力発生日 2013年7月1日/2017年4月1日/2020年1月1日)。それ以前にも分割があったとする二次情報がありますが、本記事の系列(FY2015/6以降)には影響しません。1株あたりの数値はすべて現行ベースに調整済みです。
  • 株価・バリュエーション2026年8月7日終値37,460円。時価総額は自己株式控除後89,630,666株ベース(発行済94,286,400株で計算すると約3.53兆円になり、媒体によって表示が異なります)。ROE33.9%は期中平均自己資本ベース(期末ベースだと31.4%)。この銘柄は1日で±10%動くため、最新の株価は必ずご自身でご確認ください。
  • 市場予想:営業利益コンセンサス約1,380億円、受注高期待約4,000億円はいずれも報道ベース(株探・財経新聞等)のアナリスト推計であり、会社の開示ではありません。FY2027/6の受注高見通し3,000〜4,000億円も決算短信本文には記載がなく、決算説明会・報道ベースです。
  • シェア:会社はシェアを開示しておらず(「高シェア」等の定性表現のみ)、名前のある調査機関による定量推計も確認できませんでした。本記事はシェアの数値を掲載していません。
  • 空売りレポート関連:2024年6月5日のScorpion Capitalによるレポート公表、会社の否定、特別調査委員会の設置(2024年6月18日)と結論(2024年8月5日)は、開示および複数の報道により確認しました。報告書本体のPDFは未取得のため「開示・報道されています」という表現にとどめています。空売り側の主張はいずれも立証されておらず、修正再表示は行われていません。当局処分・訴訟の有無は執筆時点で確認できていません。

本記事は公開情報を複数系統で二重検証していますが、数値には集計方法による軽微な差異が含まれる場合があります。会計年度は6月末締めのFY表記(FY2026/6=2026年6月期)で、会計基準は日本基準です。株価・理論株価(EPS×15)は分割調整後の概算で、バリュエーションは2026年8月7日終値時点のものです。本銘柄は1日で10%超動くことが常態であり、記載の株価・PER・利回りは短期間で大きく変動します。会社見通し・市場予想・第三者の推計は確定した事実ではありません。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではなく、個別の投資助言でもありません。当サイトは投資助言・代理業者ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。