Tesla(テスラ、ティッカー: TSLA)は、世界をEV(電気自動車)シフトへ導いた自動車メーカーであり、いまやFSD(自動運転)・Robotaxi・人型ロボットOptimusといったAI・ロボティクスへの“賭け”で評価される異色の企業です。2010年6月の上場以来(約15年)の実データを用いて、売上や利益、キャッシュフロー、事業セグメント、株価、バリュエーション、そしてイーロン・マスクのxAIとの関係までを、初心者にもわかりやすく解説します。数値はすべて米SEC提出のTesla公式決算(10-K)を一次ソースとし、複数系統で二重検証しています。
要点(2025年12月期):売上高 $94.8B(上場来初の減収)/ 純利益 $3.8B(連続減益)/ PER 約371倍 / 時価総額 約$1.43兆(2026/6)。
【2026年7月22日発表】2026年 第2四半期 ― 売上は過去最高、営業利益は57%減
テスラが2026年7月22日に発表した2026年4〜6月期の決算は、この会社が今どういう局面にいるかがはっきり出た内容でした。
売上は282億3,600万ドル(前年同期比+26%)。会社は「直近12か月の売上が初めて1,000億ドルを超えた」と発表しています。第2四半期としての納車台数も過去最高でした。
ところが、本業の儲けを示す営業利益は3億9,800万ドル。前年から57%減っています。営業利益率は4.1%から1.4%へ。
それでも最終利益(親会社株主に帰属する純利益)は11億1,400万ドルで、減少はわずか5%にとどまりました。営業利益が半分以下になったのに、最終利益はほとんど減っていない。この差がどこから来たのかが、この四半期を理解する鍵です。
前年の9.23億ドルから△57%。
営業利益率は4.1%→1.4%。
+ その他収益5.90億
= 税引前利益の70%。
※SpaceXの新規株式公開に伴う売却制限が2026年12月まで残っている、とも記載されています。
全体像 ― 売上は伸び、利益率だけが落ちている
| 単位:百万ドル | 2025年4-6月 | 2026年4-6月 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 自動車 売上 | 16,661 | 20,516 | +23% |
| エネルギー発電・蓄電 | 2,789 | 3,139 | +13% |
| サービス・その他 | 3,046 | 4,581 | +50% |
| 総売上 | 22,496 | 28,236 | +26% |
| 売上総利益 | 3,878 | 4,751 | +23% |
| 粗利率 | 17.2% | 16.8% | △0.4pt |
| 営業費用 | 2,955 | 4,353 | +47% |
| 営業利益 | 923 | 398 | △57% |
| 営業利益率 | 4.1% | 1.4% | △2.7pt |
| 純利益(GAAP・親会社帰属) | 1,172 | 1,114 | △5% |
| 純利益(non-GAAP) | 1,393 | 1,153 | △17% |
| EPS(GAAP・希薄化後) | $0.33 | $0.32 | △3% |
売上は26%も伸びているのに、営業利益は57%減りました。この落差はどこで生まれたのか。損益計算書の基本どおり、粗利の増加と販管費の増加を引き算すれば確かめられます。
粗利の増加 +873百万ドル − 営業費用の増加 +1,398百万ドル = △525百万ドル
(営業利益 923 → 398 の減少額と一致)
答えは明快です。粗利は873百万ドル増えたのに、営業費用が1,398百万ドル増えた。売上が26%伸びるあいだに、営業費用は47%伸びています。費用の伸びが売上の伸びを大きく上回った——これが営業減益の骨格です。
①もう一つの理由 ― 規制クレジットが67%消えた
粗利の伸びが鈍かった理由に、見逃せない項目があります。自動車の規制クレジット(Automotive regulatory credits)収入です。
| 自動車売上の内訳 | 2025年4-6月 | 2026年4-6月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 車両販売 | 15,787 | 20,006 | +27% |
| 規制クレジット | 439 | 146 | △67% |
| リース | 435 | 364 | △16% |
規制クレジットとは、環境規制を満たせない他社に、余った排出枠を売って得る収入です。テスラは電気自動車しか作らないので枠が余り、それを売ってきました。
ここが重要です。この収入には原価がほとんどありません。つまり売上がそのまま利益になる性質のお金です。それが293百万ドル減りました。
営業利益の減少額525百万ドルのうち、規制クレジットの減少だけで56%を説明できます。残りが人件費・研究開発などの営業費用増です。
この収入は政策で決まります。米国の規制が緩めば需要が減り、テスラの利益も減る——会社の努力と関係のないところで利益が動く構造だという点を押さえておいてください。
②最終利益を支えたのは、本業の外にあるもの
営業利益が57%減ったのに、最終利益は5%減で済みました。理由は損益計算書の下半分にあります(単位:百万ドル)。
| 項目 | 2025年4-6月 | 2026年4-6月 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 923 | 398 |
| 受取利息 | 392 | 422 |
| 支払利息 | △86 | △81 |
| その他収益(純額) | 320 | 590 |
| 税引前利益 | 1,549 | 1,329 |
| 法人税 | 359 | 201 |
| 実効税率 | 23.2% | 15.1% |
| 純利益(親会社帰属) | 1,172 | 1,114 |
受取利息422百万ドルは、営業利益398百万ドルより大きい。手元に435億ドルの現金・短期投資を持っているので、金利が付くだけでこれだけ入ってきます。クルマを作って売った利益より、預金の利息のほうが大きい四半期だったということです。
そしてその他収益590百万ドル。10-Qには次のように明記されています。
For the three months ended June 30, 2026, we recorded a $1.00 billion net gain on our SpaceX equity investment.
(2026年6月30日までの3か月間で、SpaceXへの持分投資について10億ドルの純評価益を計上した)
SpaceX株の評価益だけで10億ドル——営業利益の2.5倍です。あわせてSpaceXの新規株式公開に伴う売却制限が2026年12月まで残っていることも記載されています。
ここは冷静に区別してください。評価益は株価が動けば消えるお金であり、現金が入ってきたわけでもありません。この構図はNVIDIAが持分証券の評価益77.7億ドルでGAAP純利益を膨らませたのと同じ、トヨタ自動車が豊田自動織機の株式売却益で最終利益を75.6%増やしたのとも同じ方向です。2026年の決算は「本業の外で作られた利益」を見分ける作業が欠かせません(調整後利益・コア営業利益の見方)。
さらに実効税率が23.2%から15.1%へ下がったことも最終利益を支えています。税率は毎期同じではありません。
なおnon-GAAP純利益は△17%と、GAAPの△5%より大きく減っています。テスラの場合はnon-GAAPが株式報酬費用などを調整した数字で、GAAPより実態に近い動きを示しています。
③フリーキャッシュフローがマイナスに転落した
この四半期で最も見落とされやすいのがここです(単位:百万ドル)。
| 項目 | 2025年4-6月 | 2026年4-6月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 営業活動によるCF | 2,540 | 4,697 | +85% |
| 設備投資 | △2,394 | △5,789 | +142% |
| フリーキャッシュフロー | +146 | △1,092 | マイナス転落 |
| 現金・現金同等物・短期投資 | 36,782 | 43,524 | +18% |
営業CFは85%も増えているのに、フリーキャッシュフローはマイナス10億9,200万ドルです。理由は明快で、設備投資が142%増えて57億8,900万ドルになったから。
会社は「テスラは最大かつ最も刺激的な投資期にある」と述べており、意図的な先行投資です(Megafactory Texas、Cybercab、Optimus、半導体・太陽光の製造拠点など)。手元資金は435億ドルあり、資金繰りの問題ではありません。
ただし投資家として押さえるべきは、「稼いだ現金より使った現金のほうが多い局面に入った」という事実です。これが実を結ぶかどうかは、今後の売上と利益率で確かめるしかありません(キャッシュフロー計算書の見方)。
④静かに主役になりつつある「サービス・その他」
セグメント別で最も伸びたのは、実は自動車ではありません。
| セグメント | 2026年4-6月 売上 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 自動車 | 20,516百万ドル | +23% |
| エネルギー発電・蓄電 | 3,139百万ドル | +13% |
| サービス・その他 | 4,581百万ドル | +50% |
サービス・その他が50%増え、会社は「四半期として過去最高の収益性とマージンを達成した」と明記しています。ここにはスーパーチャージャー(充電網)、整備、中古車、保険などが含まれます。
充電ステーションは7,377→8,704基(+18%)、充電コネクタは70,228→82,357口(+17%)。他社のEVもテスラの充電網を使うようになったことが、この伸びの背景にあります。
クルマを売る会社から、クルマを使い続けてもらって稼ぐ会社へ——NVIDIAがGPUメーカーからAIデータセンターの設備会社へ変わったのと同じように、テスラも収益の重心が動きつつあります。
⑤納車は第2四半期として過去最高、FSD購読は56%増
| 指標 | 2025年4-6月 | 2026年4-6月 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 生産台数 | 410,244 | 451,758 | +10% |
| 納車台数 | 384,122 | 480,126 | +25% |
| 累計納車(万台) | 800万 | 970万 | +21% |
| FSD有効購読数 | 95万 | 148万 | +56% |
| 蓄電池の設置量 | 9.6GWh | 13.5GWh | +41% |
| 在庫日数 | 24日 | 15日 | △38% |
納車台数は生産台数を上回っています(480,126台 vs 451,758台)。在庫日数も24日から15日へ縮まりました。作った以上に売れているということで、需要そのものは弱くありません。
ソフトウェア側ではFSD(監視付き自動運転)の購読が148万件へ56%増加。会社は「バッテリーパックの生産能力が、短期的な車両生産増加の主な制約」だと明言しています。売れないのではなく、作れない。これは需要不足とはまったく違う課題です。
⑥Model S・XのラインをOptimusへ転換した
この四半期の発表で、事業の姿勢がよく分かる出来事があります。
- フリーモント工場でModel SとModel Xの生産ラインを廃止し、Optimus(人型ロボット)向けの建設を開始。年内の生産開始を見込む。
- Cybercabがギガファクトリー・テキサスで生産開始。
- Tesla Semi はネバダの新工場で年内生産の予定。
- Robotaxiの展開が進み、米国の7大都市圏で稼働中。
- Megafactory Texas が完成間近。太陽光と半導体製造についても用地選定・建設・設備調達が進行。
看板車種だったModel S・Xの生産をやめて、その場所をロボットに明け渡した——象徴的な決断です。「その他モデル」の生産台数が13,409台から8,822台へ34%減っているのは、この動きを反映しています。
投資家にとっての意味は明快です。いまのテスラの利益は自動車から出ていますが、会社が資金と工場を振り向けている先は、まだ売上をほとんど生んでいない事業です。設備投資が142%増えてFCFがマイナスになったのは、この転換の費用だと言えます。
この決算から持ち帰る5つのチェック
- ① 営業利益と最終利益が別方向なら、必ず下半分を見る。営業利益△57%に対し最終利益△5%。差を作ったのは受取利息422百万ドル、SpaceX株の評価益10億ドル、そして実効税率23.2%→15.1%でした。
- ② 増収なのに減益なら、粗利増と販管費増を引き算する。粗利+873 − 営業費用+1,398 = △525。営業利益の減少額とぴったり一致します。
- ③ 「原価のない売上」が減っていないか確かめる。規制クレジットが439→146百万ドル(△67%)。営業減益の56%はこれで説明できます。
- ④ 営業CFが増えていてもFCFは別物。営業CF+85%でも、設備投資+142%でFCFは△1,092百万ドル。
- ⑤ 評価益は現金ではない。SpaceX株の10億ドルは株価が動けば消えます。理論株価をEPSから逆算するときは、どのEPSを使うかで答えが変わります。
まとめ ― 2026年の決算に共通するテーマ
2026年4〜6月期のテスラを一言でまとめると、「売上は過去最高、本業の利益はほぼ消えかけ、最終利益は本業の外で支えられた」四半期でした。
| 見出しになりやすい事実 | 一次資料で確かめた実態 |
|---|---|
| 売上が26%増で過去最高(TTM初の1,000億ドル超) | 事実。納車も第2四半期として過去最高の480,126台 |
| 最終利益は5%減にとどまった | 営業利益は△57%。差は受取利息422百万ドル+SpaceX株の評価益10億ドル+税率低下 |
| 営業利益率1.4% | 営業費用が+47%(売上は+26%)。加えて規制クレジットが△67% |
| 営業CFが85%増 | FCFは△1,092百万ドル。設備投資が+142% |
誤解のないように書いておくと、これは「悪い決算」と決めつけられる内容ではありません。納車は過去最高、在庫は15日まで縮み、サービス部門は過去最高の収益性。制約は需要ではなくバッテリー生産能力だと会社は明言しています。設備投資の急増も、Optimus・Cybercab・Megafactoryへの意図的な先行投資です。
問われているのは「その投資が利益に変わるまで、株主が待てるかどうか」です。いまの株価が織り込んでいるのは1.4%の営業利益率ではなく、その先にあるロボットや自動運転でしょう。だとすれば見るべき数字は、四半期の利益ではなく、投資が売上に変わり始める時期です。PER・PBR・ROEの見方で扱ったとおり、期待で買われている会社の指標は、実績値だけでは説明できません。
本記事は2026年7月22日公表のQ2 2026 Update、および米国SECに提出されたForm 10-K・10-Qなど、テスラが公開している一次資料に基づいて作成しています。情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
ビジネスモデル概観
Teslaの収益は、大きく次の3本柱と、それを覆う“AIの賭け”で構成されています(金額は2025年12月期)。
- 自動車…売上約695億ドル(連結の約73%)。柱だが値下げと販売減で粗利率は約18%へ低下、利益の一部は原価ほぼゼロの規制クレジット依存。
- エネルギー(発電・蓄電)…売上約128億ドル(+27%)。展開量46.7GWh(過去最高)、粗利率29.8%と自動車を逆転した高採算の成長源。
- サービス等…約125億ドル(+19%)。スーパーチャージャー・保険・中古車等。
そして全体を覆うのがAI・ロボティクスへの賭けです。FSD・Robotaxi・Optimus・自社AIチップ——市場はTeslaを「自動車会社」ではなく、これらの将来事業化に期待する“AI企業”として評価しています(後述)。
売上高・純利益の推移

売上高は2010年の1.2億ドルから2025年に948億ドルへと約812倍に拡大。一方、純利益は2010〜2019年まで10年連続の赤字で、2020年に初の通期黒字($6.9億)を達成。その後2021〜2022年に急拡大(2022年$126億)しましたが、2023年の純利益$150億には一時的な税ベネフィット$59億を含み(実質約$91億)、2024年$71億・2025年$38億と連続減益。さらに2025年は上場来初の通期減収(−2.9%)。利益が縮んでも株価は高いまま——ここがTeslaの最大の謎です。
営業CF・投資CF・財務CFの推移

かつてTeslaは度重なる増資・転換社債で赤字期の資金を賄ってきました(2020年まで財務CFは一貫してプラス=外部調達超過)。しかし2020年に営業CFが二桁$Bへ定着し、2021〜2022年に財務CFがマイナス(純債務返済)へ転換。いまや現金+市場性証券 約$44B・ネットキャッシュ約$36Bの財務優良企業です(配当・自社株買いはなし)。
収益性(粗利率・営業利益率)の推移

収益性のピークは2022年(粗利率25.6%・営業利益率16.8%)でした。しかし2023年初の大幅値下げ以降、粗利率は約18%、営業利益率は2025年に4.6%まで連続低下。「需要を価格で買う」値下げ戦略と、FSD・Robotaxi・Optimus等への先行投資(R&Dは2025年に+41%の$64億)が同時に効いた結果で、自動車という本業の“稼ぐ力”は明確に弱まっています。
セグメント別の推移
主要事業セグメント(事業別売上)

自動車は依然として売上の約73%(695億ドル)を占めますが、2年連続で前年割れ。一方でエネルギーとサービスが二桁成長で台頭し、収益構造が「自動車一本足」から多角化へ向かっています。
売上推移と「クルマは減り、電池は増える」転換


この2枚が示すのは「クルマは減り、電池は増える」という事業転換です。納車台数は2023年の181万台をピークに、2024年−1.1%・2025年−8.6%と2年連続減(世界EV首位の座はBYDへ)。対して蓄電池展開量は2021年4.0GWh→2025年46.7GWhへ約12倍。しかもエネルギー事業の粗利率は29.8%と、自動車(17.8%)を逆転。いまやテスラの“稼ぐ伸びしろ”は電池にあります。
| セグメント | 2025 売上 | 粗利率 | 2021→2025 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 69.5 | 17.8% | 47.2 → 69.5 |
| エネルギー | 12.8 | 29.8% | 2.8 → 12.8(約4.6倍) |
| サービス等 | 12.5 | — | 3.8 → 12.5 |
※単位 十億ドル。自動車粗利率は規制クレジット込み(除くと約15.4%)。
株価動向の要因分析

Tesla株は、分割調整後IPO価格$1.13から現在の約$382へ、上場来で約338倍(CNBCは2025年6月時点で「約300倍」と報道、年率およそ44%)に成長 ― S&P500(年率約11%)を桁違いに上回りました。2020年に急騰(年内+743%)、2021年ピーク、2022年に約−65%の暴落、その後反発し2025年12月に上場来高値$489.88。図6で衝撃的なのは、実際の株価(青)が「EPS×15倍の理論株価」(橙)を一貫して桁違いに上回っていること。2025年は株価$449.72に対し理論株価はわずか$16(プレミアム約28倍)。つまりTesla株は、現在の自動車事業の利益ではなく、ほぼ全額が“将来のAI/ロボティクス事業化への期待”で説明されます。
なお、こうして「割高か割安か」を判断できるようになっても、実際に買う場所がなければ始まりません。口座ごとの手数料や取扱商品の違いはNISA対応の証券口座比較にまとめています。
バリュエーション分析 ― なぜPER371倍なのか

TeslaのPER(実績)は約371倍(予想ベースでも約177倍)。Amazon(約29倍)・Alphabet(約27倍)はおろか、同じ「自動車メーカー」のトヨタ(約9倍)の約40倍という異常値です。市場はTeslaを「自動車会社」ではなく、Robotaxi・Optimus・AIの将来覇者として評価しているため、現在の利益では到底説明できない倍率がついています。
ただしPSR(株価売上倍率)で見ると景色が少し変わります。TeslaのPSRは約14.6倍で、これはNvidia(約20倍)やAlphabet(約10倍)と同水準。利益の薄さを映すPER(372倍)ほどは突出していません。つまり「売上」を基準にするとTeslaはAIメガキャップ並み、「利益」を基準にすると唯一無二に高く評価されている——この二面性がTesla株の本質です。
| 企業 | 区分 | 時価総額 | PER | PSR |
|---|---|---|---|---|
| Tesla | EV/AI | $1.44兆 | 約372倍 | 約14.6倍 |
| Nvidia | AI半導体 | $5.4兆 | 約37倍 | 約20倍 |
| Alphabet | テック | $4.2兆 | 約27倍 | 約10倍 |
| Amazon | テック | $2.5兆 | 約29倍 | 約3.6倍 |
| トヨタ | 自動車 | 約$2,745億 | 約8.8倍 | 約0.8倍 |
| BYD | 自動車(EV) | 約$1,400億 | 約19倍 | 約1.1倍 |
※出典: stockanalysis.com / companiesmarketcap.com 等(2026年6月時点・概算)。BYDの時価総額は上場区分・通貨で振れ幅あり。
世界EV販売首位のBYD(PER約19倍)と比べても、Teslaの時価総額は約10倍・PERは約20倍。同じ「クルマを売る会社」でも市場の評価軸がまったく違うこと、そして「自動車」ではなく「Nvidiaのような成長テック」の物差しで価格がついていることが読み取れます。逆に言えば、将来期待が剥落すれば下落余地は極めて大きいハイリスク・ハイリターンの典型です。
利益の質 ― 規制クレジットへの依存

もう一つの注意点が規制クレジット(他社へ売る排出枠)への依存です。原価がほぼゼロのため、その売上はほぼ丸ごと利益になります。2020年の黒字化はクレジット$1,580Mに支えられ(純利益$690Mを上回る規模)、2025年もクレジット$1,993M=純利益$3,794Mの約53%を占めました。米国の政策変更でクレジット収入は2024年のピーク$2,763Mから2025年は−28%へ。本業の“素の利益”はさらに薄いことを意味します。
AI・ロボティクスと、イーロン・マスクのxAIとの関係
Teslaの株価を支えるのは、財務ではなくAI・ロボティクスの“賭け”です。同時に、CEOイーロン・マスクの別会社xAI(対話AI「Grok」開発元)との関係が、機会とリスクの両面で重みを増しています。
TeslaのAI/自動運転・ロボット(事実と計画を区別)
- FSD(自動運転ソフト):加入者は2025年末で約110万、2026年Q1で約128万。累計走行は100億マイル突破。2026年2月に買い切りを廃止し月額サブスク専業へ。“監視不要”の完全自動運転は2026年Q4へ後ろ倒し(計画)。
- Robotaxi:2025年6月にオースティンで限定開始(改造Model Y・車内に安全監視員)。2026年から無監視運行を一部開始。専用車Cybercabは2026年2月に量産車製造を開始(まだ商用投入前)。
- 人型ロボット Optimus:まだ量産前。2026年に5万〜10万台、長期で年産100万台超を目標(いずれも“計画値”で不確実)。
- AI計算基盤:自社スパコンDojoは2025年8月にチーム解散。以後はNVIDIA/AMD+自社チップAI5(TSMC製)・AI6(Samsungと$16.5B契約、2027年後半量産)へ集約。
xAIとの関係 ― Grok車載・$2B出資・利益相反

xAIは2025年3月にX(旧Twitter)を買収統合し、評価額は$200B超(2026年初で約$230B)へ。Teslaとの関係は深まる一方です ― 2025年7月にGrokをTesla車へ搭載、2026年1月にはTeslaがxAIへ$2Bを出資しました(株主が2025年11月に最大$5Bの出資案を否決した直後に、別スキームで実行)。さらにマスクの諸事業間で$573Mの関連当事者取引が10-Kで開示され、GPU・人材・資金の融通に利益相反の懸念が指摘されています。2025年11月に承認された最大$1兆のマスク報酬パッケージは、その達成条件が「車2,000万台・FSD 1,000万加入・Optimus 100万台・Robotaxi 100万台」——まさにTeslaの将来=マスクのAI/ロボの賭けそのものであることを示しています。
リスクと注意点
- 超高バリュエーション(最大の論点):PER約371倍は、FSD/Robotaxi/Optimusが計画通り事業化する前提。将来期待が剥落すれば株価の下落余地は極めて大きい。
- 本業の失速:2年連続の販売減・上場来初の減収、粗利率低下、規制クレジット依存(純利益の53%)。
- 実行リスク:Robotaxi無人化・Optimus量産・無監視FSDはいずれも「計画」段階で度々延期。規制当局の認可も不透明。
- マスク依存と利益相反:政治関与によるブランド毀損、xAI出資・$573M関連取引、経営リソースの分散。
- 競争激化:BYDが世界EV首位に。中国勢・既存メーカーのEV/自動運転攻勢。
今後の展望
- Robotaxiの全米展開:2025年オースティン開始→2026年に無監視化・都市拡大。Cybercab量産の立ち上がりが鍵。
- Optimus量産:2026年に5万〜10万台計画、長期で年産100万台超。成功すれば自動車を超える事業に化ける可能性。
- エネルギー貯蔵の高成長:46.7GWh(+49%)、粗利率29.8%。AIデータセンター電力需要も追い風の堅実な成長源。
- 自社AIチップ・FSDの収益化:AI5/AI6への集約、FSDサブスクの経常収益化。
まとめ
Teslaは、「EV会社」から「AI・ロボティクス企業」への転換に賭けた銘柄です。現在の自動車事業は2年連続の販売減・初の減収・薄利化・規制クレジット依存と、財務面では明確に逆風。それでも市場は時価総額$1.4兆・PER371倍という評価を与えていますが、これは現在の利益ではなくFSD・Robotaxi・Optimusという“未来”への期待です。エネルギー貯蔵という堅実な高採算事業が育っている点は心強い一方、将来期待が剥落すれば下落余地が大きいハイリスク・ハイリターン。さらにxAIとの関係・マスクの利益相反・政治リスク・最大$1兆の報酬パッケージなど固有のリスクが多い銘柄です。「自動車の数字」で評価すると割高すぎ、「AIの夢」で評価すると割安にも見える——その評価軸の選択こそが投資判断の核心です。
データソース & 検証
- 財務(売上・利益・CF・BS):米SEC EDGAR提出のTesla公式決算(10-K、XBRL company facts、CIK 0001318605)。FY2025は2026年1月公表の確報値。クロスチェックにstockanalysis.com。
- セグメント・規制クレジット・納車・エネルギー貯蔵:Tesla 10-K/IRに加え、stock-analysis-on.net、CNBC、Electrek等で二重検証。
- 株価・リターン・バリュエーション:statmuse(15:1分割調整後の年末終値)、stockanalysis.com、companiesmarketcap.com、CNBC。
- AI・ロボティクス・xAI関係:Tesla決算、CNBC、TechCrunch、Bloomberg、Electrek、NBC News等の主要報道。
本記事は公開情報を複数系統で二重検証していますが、数値には集計方法による軽微な差異が含まれる場合があります。株価・年末株価・理論株価(EPS×15)は15:1分割調整後で、上場来リターン・S&P500比較・類似企業比較は概算です。FSD・Robotaxi・Optimus・xAI出資・xAI評価額などには「実現済みの事実」と「将来計画・報道値」が混在し、後者は変動・未確定です。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
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